訪問サービスの場は、サービスを提供する側にとっても密室であるという怖さがある。
特に女性ヘルパーなどは、要介護者といえども威嚇的な男性利用者に恐怖を覚えるという声を多数聞かされる。
そのような恐怖を放置せず、顧客と云えども理不尽な態度や要求には屈せず、毅然として対策するのが介護事業者の責任でもあり、そのためにカスタマーハラスメント対策を十分に講じる必要がある。
そうした体制作りに乗り遅れる介護事業者には、人材が集まらず定着しないと考えなければならない。
カスタマーハラスメントの中には言葉の暴力も含まれてくるが、従業員に対して度を超えた要求をするものなどいわゆる「行き過ぎたクレーム」もカスハラに該当し得る。
しかし顧客のクレームが行き過ぎているか否かという判断自体が難しい。要求している内容にとどまらず、威嚇的な態度や言葉遣いであるかということがカスハラか否かの判断基準に関連してくるからである。

いくら従業員側がカスハラだと訴えようとも、顧客が「威嚇的態度はとっていないし、正当なことを冷静な態度で訴えただけだ」と主張すれば、水掛け論とならざるを得ない。
それは言った言わないという、問題解決には結びつかない言い合いに終わってしまうことになり、それを放置すればヘルパーが心身に重大な被害を被りかねないことになる。
その為、暴言を繰り返す利用者については、その暴言がカスハラに当たるか否かを第3者の判断に委ねようとして、サービス提供中に秘かに録音を取りたいと考える関係者も少なくない。
だが果たして利用者に承諾を得ずに、その発言を録音する行為が許されるだろうか。基本的にそれはプライバシーの侵害となるため、録音して第3者に公開することも、録音すること自体も違法行為とされる可能性が高い。
だがサービス提供中に暴言があるかないかを証明するために録音を承諾してくださいと言っても、相手は承諾しないだろうし、仮に承諾した場合は、録音している最中だけ不適切な言動を行わないということも考えられる。
その為、利用者に承諾を得ない秘密録音を行い、カスハラと云える暴言の証拠を残し、それを根拠にサービス提供拒否するなどしてヘルパーの身を護らなければならないというケースがある。
その場合は、利用者に承諾を得ない秘密録音も違法性阻却として認められるという判例がある。
違法性阻却とは形式的には犯罪に該当する行為であっても、例外的にその違法性を否定する根拠となる事情がある場合に適用されるという意味である。
介護関係者にとって違法性阻却という言葉は、決して馴染みのない言葉ではない。なぜなら喀痰吸引・経管栄養は、現在特定医療行為とされ、認定特定行為業務従事者認定証を交付を受けた介護福祉士が一定条件下で行うことができるようになったが、それ以前の喀痰吸引・経管栄養は、医行為に該当し医師法等により医師・看護職員のみが実施可能とされていた。その例外として、一定の条件下(本人の文書による同意、適切な医学的管理等)で ヘルパー等による実施を違法性阻却として容認していた経緯があるため、その言葉自体は介護関係者に広く知られているからだ。
このようにやむぬやまれない事情で、証拠として利用者の暴言を秘密録音することによって被害を最小限に防ぐことができるわけであるから、その知識だけは持っていてほしい。
なおこうした録音はあくまで違法性阻却で認められるので、確たる証拠を開示する必要にない場所で、むやみに秘密録音音声を公開してはならないことは言うまでもないことだ。
そんなことをしたら違法性は阻却されないことも理解しておくべきである。
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