科学的介護とは科学的エビデンスに基づいた介護という意味である。
それは、「こうすれば、こうなる」という原因と結果の因果関係を抽出し、自立支援やQOLの向上といった暮らしの質に結びつく介護の具体的方法論を探り出して、それに基づいた介護実践法である。
国はそうした介護実践が実現可能であるとしているのだ。そしてすべての介護事業者がそうした介護実践を行うことができれば、介護事業の生産性は向上し、今より人もお金もかけずに、より良い結果を引き出せると考えているのである。
そのために構築したシステムがLIFE(科学的介護情報システム)であった。
しかしせっかく構築したシステムが極めてオンボロで、意味のあるデータ解析とフィードバックができなかったことから、国は怒り心頭に達して2022年4月にシステムを構築した東芝を切り捨て、NECにシステム運営委託事業者を変更している。
そこでこのシステムの修正に取り組んだことにより、やっと6月30日から事業所フィードバックと利用者フィードバックがダウンロードできるようになった。
そのため今後は、科学的介護推進体制加算などを算定している事業所は、このフィードバックをPDCA活用していく必要があることは先週金曜日に更新した、「報酬改定に影響する二つの出来事」でもアナウンスしたところである。
これによって科学的介護と言えるものが実現・実践されていくことになるのだろうか・・・。
しかしフィードバック内容を見ると、これが本当に科学的エビデンスに結びつくのか大いに疑問を持たざるを得ない。
span style="color: #66FF66;">事業所フィードバックは、相変わらず全国平均値と提出事業所数値の比較でしかない。地域性も利用者属性も異なる事業者の数値を、全国一律に均した数値と比較してどのような科学的エビデンスに結びつくというのだろう・・・。まったく意味不明だ。
利用者のケアプランの再作成の際に活用される利用者フィードバックは、前回提出分データと近直データの比較でしかない。
これによってADLの向上・維持・減退等がわかると言っても、それはわざわざ情報システムを使わないと比較できないものではない。
僕が大学新卒で特養に入職した昭和58年でも、ADL調査は行っていたし、定期的に調査結果を記録する際は前回数値と比較して、ADLの維持・変化などを評価し個別処遇計画に反映していた。
そういう意味で利用者フィードバックとは、昭和の時代に行っていた紙ベースの作業を、LIFE(科学的介護情報システム)を通して行ってるだけの話ではないのか・・・。そしてLIFEにデータを送る分だけ、業務負担は増えているのではないのか。
そのような昭和レトロの方法でフィードバックして何の意味があるのか・・・こんなことで介護実践の科学など生まれるわけがない。
さすれば現行のLIFE(科学的介護情報システム)は、全国の介護事業者の様々なデータを集積していると言っても、まったく意味のないデータ集積となっており、それは巨大なゴミ集積システム化しているのではないだろうか。
そもそも個人の感情に寄り添うべきサービスに、原因と結果の因果関係を導き出すことは無理があるということではないのか。
いやそうではないという人も居るのかもしれない。この世に科学で解明できないものなど存在しないのかもしれない。
しかし科学的思考というものは、凡てが証明され明白になっていない限り、結論を出してはならないものだ。
いずれ凡てがわかるという希望的観測を述べるだけなら良いが、証明されていない部分を含めて解かったような顔をするのは驕りに過ぎない。
科学的思考に依って理解しようとするなら、現状わからないものは、わからないままに棚に上げておくしかないという腹の括り方をしておかねばならないのである。
しかるに科学的介護を唱え、それを実践させようとする国の動きは、この驕り高ぶったエセ科学的な動きになっていないだろうか。
理論的に正しくとも、推論は推論であって結論ではない。それでは困るというのであれば、一旦科学を捨てるしかないと思う。
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