今日のタイトルを読んだとき、今から更新する記事がコロナウイルスに関する内容だと思っている人が多いと思うが、実は今日の主要テーマはそのことではない。

今日僕がこれから書こうとしていることとは、他者の尊厳を護るとはどういうことなのかということであり、このブログで何度も提唱している、「介護サービスの割れ窓理論」や、「介護事業者のサービスマナー」という立場から、そのことを検証する内容になっている。

具体的には、今回のコロナ禍でクラスター感染が発生施設にも、「割れ窓」があり、それが感染発生や被害拡大への関連性があるのではないかという個人的な見解を書き綴ろうと思っている。

そのため被害が広がった中で、一生懸命に対応に追われた一部の当事者の方には不快な思いを与えかねない内容も含まれてくると思うが、それは個別の事業者や個人への批判ではなく、介護業界全体として今後にわたって考えていかねばならない重い課題を明らかにし、それに対応するための提言であることをご了承願いたい。最初からそれを受け入れる気持ちがない人は、ここまで読んだ時点で、どうぞ読むのをやめていただきたいと思う。

特に介護サービスにマナーなど必要なく、無礼な「タメ口」で利用者対応することを何とも思わず、それがフレンドリーな対応だと思い込んでいる人は、このブログがある場所につないでくることもやめにしていただきたい。

ということで本題。

道内でクラスター感染が発生した老健施設では、5月24日以降新たな感染者がいないことや、基礎疾患を持ち長期入院している入所者以外は全員退院して施設に戻ってきたことから、約1か月設置した現地対策本部を6月22日に解散し、7月3日付でクラスター感染の終息を宣言している。

そのため道内の地方新聞や放送局では、今回のクラスター感染の発生から終息に至るまでの動きを特集して記事にしたり、放映したりしている。

そこでは人手が少なくなる中で最後まで頑張り続けた職員の姿も浮かび上がっていたし、たくさんの方が感染したり死亡したりする中で、利用者の家族からずっと信頼し続けられた施設や職員の姿も感じ取られ、日ごろから良い介護サービスを提供しようと努めてきたのであろう姿勢も垣間見られた。

今日までの一連の報道内容に接して、そうしたことも理解できたという前提の上で、取材対象となった施設や、そこに勤める従業員の方々に対して、あえて対人援助として人の暮らしに寄り添うプロとしての姿勢を問いたい部分がある。

先週土曜日にテレビで特番報道では、当該施設について、「アットホームな対応をしてくれる職員が多く、地域住民の信頼も得られている。」という内容がテレビ画面を通じて伝えられており、その具体例として、「職員が利用者の頬にチューしてくれることもある施設」というナレーションが流されていた。(※メモを取っていなかったので言葉は正確ではないが、意味はその通り。)

僕はこのナレーションを聴いた途端がっかりした。

赤ん坊や幼児ではあるまいし、赤の他人が人生の先輩でもある高齢者の方の頬にキスすることが、「アットホーム」だと考えるテレビ局や家族にもがっかりしたし、そういう行動をとっている施設職員にもがっかりする。

他のどの職業で、顧客の頬にキスすることが許される職業があるというのだろう。介護の職業だけそれが許されるとすれば、それはもう世間の常識とは異なる特殊な職業としか言えない。そもそも世間一般的にみても、大の大人同士が親しみを込めるために他人の頬にキスする習慣なんてこの国にはないはずだ。

介護施設の中でそれが許され、それがアットホームな対応だと思い込むことは、利用者をまともな大人だとは見ていないということに他ならない。馬鹿にしているとしか思えないのだ。

例えば自分の親が介護施設に入所したとして、そこで親が職員から頬にキスされたとして喜ぶだろうか。少なくとも僕は喜ばない。自分の親を子ども扱いするなと言いだろう。たとえ自分の親が認知症になったとしても許すことができる行為ではないと思う。

私たちは介護サービスの場では、介護支援のプロに徹する必要がある。そこではどんなに我々が親身になって関わろうとしたとしても、我々は家族そのものにはなれないし、なってはならないのである。プロの介護支援者として適切な距離感を保ったうえで、利用者に親愛の情を伝えるのがプロの仕事だ。(参照:プロ意識を持つという意味。

過去の虐待事例には、高齢者の体を触ったり、抱きついたり、ここで行為内容を書くのもはばかられるような許されざる性的虐待が存在している。それを考えれば、介護事業においてはいつであっても・誰であっても李下に冠を正さずの精神は求められるのだ。キスをするなんてことを許しておくのは、その労務管理がなっていないとしか言えない。当該老健の施設長や管理職はこの一点で批判を浴びてやむを得ないだろう。

感染予防という観点から云っても、頬にチューはいただけない。これからの介護事業はwith感染症の意識が欠かせないが、そんなこと以前に介護支援という場で、生活習慣にない、不要な濃厚接触は戒めるというのが今までだって常識だ。今回この施設にクラスター感染が発生したことの一因に、こうした行為を許していたことが関係ないとは言えないわけである。

そういう意味でも、利用者の頬にチューしてしか家庭的雰囲気を表現できない施設の発想や介護の質は貧弱この上ないとしか言えない。

そのおかしな意識をなくさないと、本当の意味で地域の信頼を得られるプロ集団にはならないし、こんな報道で、その施設が良い施設だと紹介される介護業界の幼稚さをなくさないと、介護の職業は、本当の意味で国民から信頼を得られる職業にならない。

その特番報道では、最後に入院先から帰ってきた利用者に職員が、「良かったね。また戻ってこれて〜。」・「うれしいかい。」的な声を掛けている場面が放映されていた。その職員の言葉遣いはタメ口そのものであり、上から目線の声かけ」にしか僕には聞こえなかった。思わず、「それが死線をさまよって戻ってきた利用者に対して掛ける言葉か。」と言いたくなった。

このような映像を見てこの施設の実像に触れると、当該施設が万全の感染予防対策を取ったにもかかわらず、やむを得ない状況で感染拡大したということも額面通りに受け取れないくなる。その施設にはプロとしてあるまじき、「言葉の割れ窓」があったのだからに、対応にも割れ窓があって、それが原因でウイルスがフロアを横断・縦断して感染が広がったのではないかと疑う人も出て当然だ。

サービスマナー意識を軽視して、プロとしての顧客対応に徹していない施設は、世間から何でもあるだろうなと思われてしまうのである。その恐ろしさを知るならば、職員に対するサービスマナー教育は、さらに徹底されなければならないことに気が付くであろう。
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