福祉や介護という言葉からイメージする言葉の一つに、自己犠牲というものがあるとすれば、それは間違ったイメージであると云いたい。
困っている人が居るときに、自分が手を差し伸べることができるのであれば、手助けするのは当たり前のことだ。だからと言って手助けするものが自己犠牲を強いられるわけではない。できる範囲で、できることをすればよいのである。
また福祉援助によって対価を得ることを心苦しく感ずる必要もない。
ずっと昔、福祉が貧困を救うこと(救貧)を中心に考えられていた時代であれば、お金に余裕がある人が、自分の財産をなげうって、貧困者に手を差し伸べればよかっただろう。そこに心身の障害がある人も存在したとすれば、ボランティア精神で、対価を求めず手を差し伸べることが求められたであろう。
しかし現代社会の福祉ニーズは多様化している。特に高齢者が増える社会では、自然現象である「老い」に向かい合って、様々なニーズが生じ、それに対して多様なサービスが求められる。
そこでは義務や責任が伴わない奉仕の精神で行われるボランティア活動ではなく、知識と技術を提供して対価を得ると同時に、義務と責任が伴うプロフェッショナルが求められるのである。
プロは金銭で出力するのだから、より高品質なサービスに対しては、より多くの対価を支払うという考えが生じても何ら不思議はない。
一方で、国家はすべての国民の福祉を考える義務があるのだから、サービスを買う対価を持たない人、支払う対価に乏しい人に、国としてどう手当てするのかを考えなければならない。社会福祉の光は、そのようにして社会の隅々まで届けられるべきであり、その際にきちんと選択肢が広げられれば良いだけの話である。
対人援助の場面では、ひとり一人の人間やその暮らしに向かい合って、その時々で自分自身が判断して行わねばならないことが多々ある。その判断に迷ったときに道しるべにすべきは、「良心」である。
しかし良心といっても、それは自分をないがしろにした思いのことではない。
良心・・・一つにそれは、人のためにいいことをしたいと願う心であり、もう一つには、自分が幸福になりたいと願う心でもある。
そのように書くと疑問を持つ人が居るかもしれない・・・例えば、もし誰もかれもが自分が幸福になることばかり考えていたら、世の中はどんどん悪くなるんじゃないかという風にだ。
もしも自分の幸福だけを考えるなら、そういう事態も起こってくるかもしれない。しかし一方で、自分が不幸にうちひがれているとしたら、他人に何かをしてやろうとは思えないだろう。
自分が幸福だと感じられたときに、人は優しい気持ちになることができて、自分の幸福を他人に分けてやることができるだけのゆとりを持つことができるのではないか。
だから自分自身を幸せにすることはとても大切なことだと思う。自分が不幸な人と比べて、裕福であったり、恵まれた環境にあることに罪悪感を持つ必要はない。
対人援助に携わるプロフェッショナルにとって、それはとても大事な事である。例えば、手を差し伸べるべき人に対し、その置かれた環境に嫉妬を覚えるほど劣悪な状態にいる人が、適切な支援行為を行うことができるだろうか・・・それは至難の業である。
介護事業経営者は、そうした側面からも従業員の生活レベルを考えなければならない。人に支援の手を差し伸べるにふさわしい精神状態を保つことができる生活の糧を渡しているのかということは、常に関心事項に入れておかねばならない問題である。
そもそも労使の関係は、winwinの関係でなければならない。
お互いが調和を図り、双方がハッピーになるために必要とされるのが労務管理であることを忘れてはならない。
そうであるからこそ、必要な対価を渡す方法、その対価の財源となる収益を得る方法を、労使共通意識をもって考えることができる環境づくりに努めていかねばならない。
だからこそ収益・お金の話をすることを避ける必要はないし、自分自身の幸福追求など下世話な問題だと卑下する必要もないのである。
きちんと対価を得て、自分自身が幸福になった状態で、人としてごく当たり前に、困難な状況に置かれている人・おかれる可能性のある人に、自分のでき得る範囲で手を差し伸べれば良いのである。
背伸びも無理強いもすることなく、ごく自然にすべての人々が、そう考える世の中になってほしいものである。
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