来年度から見直される、介護福祉士国家試験の新ルールが、「介護福祉士国家試験パート合格の導入に関する検討会(第2回)配付資料」に載せられている。

ここで示されているように見直しの中心は、「パート合格」という新ルールの導入である。

パート合格とは、国試の科目を3つに分けたうえで、最初に受ける試験では全てのパートを受験してもらい、次回以降は不合格のパートのみ受験すればよいとしている。合格したパートについて、その後2年間(翌年翌々年)にわたり受験しなくてもよいルールとし、1年ごとに1パートずつ合格していけば、3年で季語福祉士の国家資格を取得できる仕組みが提案されている。
※合格の有効期限が切れたパートは、改めて受験しなければならない。)

これによって介護職員として働きながら勉強して試験合格を目指す人や、外国人がより資格を取りやすくなることを見込んでいるものと思われるが、それによって介護福祉士を目指す人や、介護福祉士の資格を取る人が増えるだろうか・・・。

新ルールは資格取得のハードルを、間違いなく下げているのだから、介護福祉士という国家資格は取りやすくなるだろう。
介護福祉士国家試験
ご存じのように、平成29年(2017年)4月1日から介護福祉士養成施設卒業者も介護福祉士になるためには介護福祉士国家試験に合格しなければならなくなった。(※新法第39条

しかし新法が施行された平成29年(2017年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに介護福祉士養成施設を卒業した者については、介護福祉士試験に合格しない者(不合格又は受験しなかった者)については、卒業年度の翌年度から5年間は介護福祉士となる資格を有する者とする経過措置が設けられている。

この経過措置の適用を受けている人で、5年間の間に何としても試験に合格しなければならないと考えている人にとっては、今回の見直しは朗報だろう。

特に試験を受けた人で、合格を勝ち取れなかった人にとっては大いなるメリットだ・・・だがそれは現行制度では合格が難しかった人が、合格できる可能性が上がるということである。

それって頭の悪い介護福祉士が大量生産される結果にならないのかという懸念が生じてもおかしくはない・・・介護福祉士は国家資格とは言っても、養成校を卒業しただけで試験に合格していない有資格者が多く、そのスキルに首をかけげざるを得なかったことが、資格取得過程の見直しに繋がっていったのに、それと逆行する見直しが行われようとしているのだ。

無試験で介護福祉士と名乗ることができる現在より、それはマシな事なのか・・・国はいったいどの方向を見据えて、改革・改正を行おうとしているのか・・・。

ただしこの見直しは、外国人材の方々の介護福祉士が増え、定着することにはつながるかもしれない。

なぜなら知識や技術があっても、試験問題の読み込みが不得手で、合格に結びつかなかった外国人の方々にとっては、段階的に各パートを合格すればよい制度の導入は、合格のハードルを下げると同時に、段階取得という目標をもって勉強することにもつながるからだ。

外国人の方々が介護福祉士資格を得られれば、実質的に永住も可能になるので、長く日本の介護事業者で働くという人の数も増えるだろう。

ただしこのことが日本の介護人材難の解決に向かう一手になるのかと言えば疑問符がつく。

日本で介護職に就きたいという外国人の数自体は増えていないからだ。東南アジアの若者で、介護職を目指す人は、「中東で働きたい」という人が増え、日本で介護技術を学びたい・日本で介護職として働きたいという人が減っているように思える。

そもそも介護福祉士資格が取りやすくなっても、介護の仕事がしたいという人が増えなければ、介護人材難は一段と深刻なものとなる。

生産年齢人口が減って、全産業で労働力不足に陥っている現状を見ると、介護職員の成り手が増える状況は想像できない・・・よって今回の国家試験見直しは、介護職員に占める介護福祉士の割合が少しだけ増えることにしかつながらないように思う。

この問題を解決するためには、介護職の給与が目に見えて改善していくことが必要だろう。

だが今現在のように、介護職が看護職より下層階層に属する職種であるというヒエラルキー意識が社会全体にまかり通っている限り、それは実現しないし、介護人材不足はこのまま解決手段のない永遠の課題で終わることだろう。

どちらにしてもこの見直しは、介護福祉士という資格の価値を、現在より確実に貶めるものとなり、それは介護福祉士という資格が底辺資格と言われる第一歩となるやもしれない。

そんなふうに介護福祉国家試験の見直しは、必ずしも朗報とは言えないわけである。


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