web会議で行われた第37回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会の中で、厚労省が昨年度の介護従事者の処遇状況等という調査結果を公表した。
それによると従前からの「処遇改善加算」を算定している事業者のうち、昨年10月に新設された、「ベースアップ等支援加算」を算定している事業者は89.0%となっているとのことだ。
この加算は、算定額の3分の2以上を介護職員の基本給、または決まって支払う手当に充てることが要件となっているため、支給形態については、「決まって支払う手当の新設」が65.9%で最多。「既存手当の引き上げ」が17.5%、「給与表の改定」が15.8%、「定期昇給」が14.4%となっているとのことである。
サービス種別ごとの算定率をみると、特養は96.0%である一方で、老健はそれより5ポイント以上低く、介護医療院は7割を切るなど医療職の多いサービスで算定率の低さが目立っている。
それは看護職などの給与改善額より、介護職の改善額が上回るなどの格差を懸念してのことと思うが、それが原因で福祉系サービスに人材が流出したら元も子もない。
医療職の給与ベースは、もともと介護職より高いはずなんだから、引き上げのタイミングや幅に差が生ずるからと言って、全額国が支給する加算を算定できるのに、これを見送るなんてとんでもないことだと思う。介護職の給与改善を図らない事業者に、介護事業で生き残っていく術はなくなることを理解して、速やかに加算算定配分していただきたい。
そもそも処遇改善加算は3種類とも、まともに経営している事業者にとってさほど算定要件のハードルは高くない。従業員の待遇をできるだけ良くするのは経営責任なのだから、きちんと加算算定して、最大限職員に配分すべきだ。
加算分の収入を配分できなくて不公平感の生ずる職種・職員に対しては、収益を挙げる経営努力を行って、そこから配分費用をひねり出すことが求められているのである。それができないから従業員の給与をはじめとした待遇を、低いベースで均そうとするのは、経営者としてはあるまじき恥ずべき姿勢であると考えてほしい。
ところで、「ベースアップ等支援加算」を算定している介護事業者の常勤・月給で働く介護職員の昨年12月の給与額は、平均31万8.230円(基本給、各種手当、ボーナスなどを合計した額)となっているそうである。年収ベースで言えば380万円超ということになる。
しかしそうした給与レベルにないと訴える関係者も多い。そもそも平均給与額は、就業年数によって異なってくるものなので、上記の数字だけを見ても論評不能と言いたくなる。
はたしてこの数字を導き出した調査サンプルは、どのように選ばれているのだろうか・・・どのような事業主体でどの程度の規模の事業者で、経験年数は平均何年の職員給与なのかと言いたくなる。
この件に関しては表の掲示板の「介護職の平均年収380万〜処遇改善・給与アップの実感はありますか?」というスレッドで情報交換がされているので、そちらを参照して意見がある方は書き込んでいただきたい。
平均給与計算のマジックというか、まやかしともいえる仕組みについては当該スレッドで説明されている。
ただし誤解されている部分もある。例えば平均給与額の件について一部の職員から、『自分の給料はそんなに高くないため、処遇改善加算も経営陣に搾取されているのではないか』という声が挙がっているが、「それは違う」と言っておきたい。
処遇改善加算は3種類すべてが、算定した全額を従業員に配分していなければ返還指導を受ける費用なのである。経営者等が搾取したり、運営費に回すことはできないのである。
同じ事業種別の他の事業者に所属する人と比べて、自分が配分を受けている費用が低いと訴える人がいる原因は、この加算は算定費用に対して加算率を乗ずる仕組みであるからだ。
同じ通所介護であれば加算率は同じであるが、月の売上額に加算率を掛けるのだから、利用者が少なく収益が挙がっていない事業所は、加算算定額も少なくなり、その配分による給与引き上げ額も低くなるだけである。
よってより多くの配分を受けて、できるだけ給与をアップしてほしいと思うのであれば、ひとり一人の従業員が、できるだけ事業収益を挙げるような努力(※例えば顧客に選ばれるサービスマナーの確立など)をしなければならないことも理解してほしい。
介護職の平均年収が380万超えという数字が、真実かどうかは別にして、介護職の平均賃金が全職業のそれより未だに下回っていることは事実なのだ。その差をなくしていかねばならない。そのためには介護報酬の引き上げは必要不可欠なのだ。
だからこそサービスの品質向上の努力を忘れてはならない。それなくして次期報酬改定での更なる処遇改善とか報酬の大幅引き上げを訴えても説得力は乏しくなるのである。
介護業界関係者全員がそう考えて、あらゆる方向から運動を行うとともに、日ごろから高品質なサービスを提供するための介護実践に取り組んで、大きな勝利を勝ち取らねばならないと思う。
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