福祉援助の場は、命の儚(はかな)さを思い知る場でもある。

先天的な障害を持って生まれた子供たちが、いとも簡単にその生を閉じる場面を多々経験する医療保育の場から始まり、枯れ行くように老い衰えて命の灯を消していく高齢者介護の場まで、あらゆる場面を経験してきた身であるがゆえに、命の尊さに思いを馳せることが多い。

命は儚いがゆえに尊い・・・だからこそその命を護り、命あるものを敬うことが、何よりも重要であると思う。

しかし世の現実は、それとは真逆なことが引き起こされることがしばしばある。例えば、幼い子供の命が無残に、そして理不尽な理由で奪われる事件報道に接すると、胸が張り裂けそうになる。

この世の中の一切のものは常に生滅流転 (しょうめつるてん) して、永遠不変のものはないとはいえど、せっかくこの世に生を受け、そこで生きている罪なき幼い命が、大人の身勝手な理由で奪われることに憤ると共に、激しい怒りの感情を覚えざるを得ない。

先月5/22の午後から未明にかけて品川で起こった母子4人殺傷事件も、決して許すことができない事件である。

しかもその加害者は、殺された母親の夫であり、3人の子の父親であるというのだから、何をか言わんやというしかない・・・亡くなられた4人の方々にかけるべき追悼の言葉も見つからない。
灯篭流し
6/19に逮捕された後藤祐介容疑者(46)の実家は品川で代々続く美容室を営んでおり、自身も美容師として働いていたという。その後、同容疑者は介護職に転職し、介護施設で働いくようになったそうだ。

今回の事件で被害者となった元・妻(※事件発覚3日前の5/20に離婚が成立)は、この施設で介護福祉士として勤務していたとのことで、容疑者と職場恋愛を経て結婚に至ったようだ。

同施設では夫婦は同じ職場で働くことはできないという規定があったことから、元妻は別事業所に配置替えとなったそうである。しかし移動先で元妻は、上司と意見が相違し、ぶつかり合うこともあったとのことで、精神的に不安定になり1年ほど前に退職している。

容疑者も、妻の看病や育児分担のために介護施設を退職し、フリーランスの動画編集の仕事を自宅からテレワークで行っていたものの、仕事の受注がほぼなかったようで無給状態であったとのこと。

そのような中でお互いの不安定な精神状態が影響したのか、夫婦仲の悪化〜離婚という過程を経て事件に至ったようだ。

容疑者の供述によると事件は、「(事件当日に)『今すぐ出ていけ!』と言われカッとなって刺しました。怒りを抑えきれませんでした」という衝動的なものだが、幼児たちの目の前で母親を殺害した後、逃げ惑う子供たちを次々に刺し殺したという凄惨なもので、その理由も、「母親が死んだうえに父親が逮捕されたら可哀想だと感じました。親が殺人犯になったら子供たちが不憫。(家に火をつけたのは)子供も自分も燃えてなくなってしまえばいいと思ったからです」という余りにも身勝手なものである。

一体子供の命を何だと思っているのだろう。自分の所有物とでも勘違いしているのではないのか・・・。

介護という職業を通じて、人の暮らしに寄り添っていた容疑者が、そこで『人間尊重』という福祉の価値前提を学ばなかったのかと言いたい。

心身に何らかの障害を抱える人たちに手を差し伸べる仕事を通じて、人間という存在の尊さ・人の命の尊さを知る機会はなかったのだろうかとも思う。

そちらにしても、やるせない事件である。4人の被害者には、ただただお気の毒というしかなく、安らかにと祈るしかない・・・合掌。
CBニュースの連載、快筆乱麻〜masaが読み解く介護の今は今朝5時に更新アップされています。今月のテーマは、介護DXによる生産性向上の光と影です。文字リンク先を参照ください。
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