石破首相が17日の参院予算委員会で、介護や成長産業へ「特定最低賃金」の適用を検討する考えを示した。
これを受けて翌18日に自民党の森山幹事長と公明党の西田幹事長が都内で会談し、介護分野の待遇改善に向けて「特定最低賃金」の適用を検討することで一致したそうである。その後の記者会見で森山幹事長は、「介護の現場は職業意識だけでやれる話ではない。給料体系の中で特別に考えていくのは大事なことだ」と述べた。

特定最低賃金は、都道府県ごとに設定する最低賃金よりも高くすることが必要と認められた産業に適用されるものだ。その金額は労働者側と経営者側の申し出に基づき、都道府県の地方審議会が必要性を判断し決定する。
この適用を受けると、介護事業者の従業員の最低賃金は引き上げられるわけだが、だからと言って介護職員をはじめとした従業員の待遇が改善されるとは限らない。
そもそも正職員の介護職員が最低賃金ぎりぎりで働いているわけではない。最低賃金の底上げによって、最低賃金以上の給与所得を得ている人も自動的に賃金が上がるならともかく、そうではない状況で待遇改善が行われると考える方がどうかしている。
そもそも介護分野に「特定最低賃金」が適用された際の、賃金引き上げ財源はどうなるのかという問題がある。
現在、「特定最低賃金」の対象となっている分野は、鉄鋼業や自動車小売業などであるが、だからと言って公費補助がされているわけではなく、それらの産業の収益を最低賃金の引き上げに回しているというだけだろう。
しかし介護事業の収益は、ほぼ公費運営の介護保険事業収入である。介護給付費の引き上げがない状態で「特定最低賃金」が適用されるとしたら、介護事業者は現在の収益の中から、その引き上げ財源を捻出する必要がある・・・物価高と人件費高騰のあおりを受けて収支差率が低下し、単年度赤字から抜け出すことのできない介護事業者が多い中で、そのような財源捻出が可能だろうか。
それは無理だろうし、あまりにも乱暴な介護待遇改善施策と思える。
介護分野に「特定最低賃金」を適用するのであれば、その適用に合わせて給与改善する財源を介護給付費に上乗せ支給する必要がある。それがない状態での特定最低賃金適用は、介護事業経営を圧迫するものでしかない。
介護関係者や職能団体は、そのことを強く訴えるべきであるし、介護給付費の引き上げがない中での「特定最低賃金」の適用には反対すべきである。
その主張が通らないのであれば、今夏の参議院選挙で審判を下さねばならない。
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