介護保険制度改正の議論は社保審・介護保険会で審議され、介護報酬改定は介護給付費分科会に舞台を移して審議される。
それとは別に財務省が主管する財政制度分科会(財政審)が並行して行われているが、ここでは介護保険制度改正・介護報酬改定に関しての提言が数多く行われていく・・・しかしその提言とは、ほとんど財源支出を増やさないための給付抑制策・国民及びサービス利用者の負担増という方向性を示すものばかりだ。
昨日4/23に行われた財政審でも、財務省は、介護報酬を仮に1%引き下げれば、およそ1420億円の費用を抑制できるという試算を示したうえで、全国一律の介護報酬の引き上げには否定的な提言を行っている。
さらに介護職等の処遇改善についても、「今後の生産年齢人口の減少を踏まえれば、介護分野にばかり人材が集中するのは適切でない」と指摘し、「処遇改善のみで新たな人材を求めるのではなく、既存の人材を大切にしながら、生産性の向上や職場環境の整備などに取り組む事業者が、利用者・職員に選ばれていくことが重要」と難色を示している。

全産業の平均給与と介護職員の平均給与格差が2023年度には月8.3万円と広がっている現状を顧みることなく、介護職員の給与改善は必要なしと決めつけているのだ。(※2022年度の給与格差は月6.9万円であったから、他産業の給与改善でその差はさらに広がっている。)
だからと言って、そうした提言を気にする必要はあまりない。財政審とは財務省の権力を厚労省にちらつかせながら圧力をかけるための審議会だ。横暴な横槍はいつものことである。
そもそも介護保険制度については、財務省は社会保険方式ではなく税方式で施行することを主張していた。当然その際は当時の税率5%を10%以上に引き上げる条件を付けていた。
しかし消費引き上げという高いハードルに当時の内閣や与党がこぞって腰を引いて、政治的思惑が大きく働く形で社会保険方式になったことが面白くないのが財務省である。
なぜなら税方式だと一般財源の中で制度運営するため、財務省の掌で制度を転がすことができるからだ。しかし社会保険方式になったことにより、この制度は介護保険特別会計という新たな会計の中で運営されることになってしまった。そこは厚労省の所管となっており、財務省の権限の及ぶ範囲が縮小されてしまっているという理由がある。
だから厚労省の制度運営にいちゃもんをつけずにいられないのだ・・・そのための権力見せつけ機関が財政審である。
ところで23日の財政審では、担い手の不足や高齢化が顕在化しているケアマネジャーにも言及し、「人材確保が課題」との認識を明示したうえで、「従来ケアマネジャーがシャドウワークで担ってきた業務を保険外サービスに位置付けることで、収入増や負担軽減が可能となる」と指摘した。
ケアマネジャーのシャドウワークの対価を発生させるように提言しているわけだが、これをケアマネ支援と勘違いしてはならない。
財務省が一番恐れていることは、ケアマネのシャドウワークと言われる部分が保険給付対象になることである。シャドウワークが多いことを居宅介護支援費を引き上げる理由にしたり、何らかの加算新設につながることを防ぐために事前に策を打ったというのが、保険外サービスで費用を得られるようにせよという提言の意味だ。
つまり、「人手が不足していようと仕事が大変であろうと、国に財源はないのでケアマネにこれまで以上に財政支出するつもりはない。よって仕事の対価は国費に期待せず自分で稼ぎ出せ」と言っているに過ぎない。決して財務省がケアマネに味方になったということではないのである。
ケアマネ諸氏は、くれぐれもこのところを勘違いしないようにしていただきたい。
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