次期(2027年度〜)介護保険制度改正の最重要テーマは地域3分類である。
地域の実情に応じて、可能な限り住み慣れた地域で高齢者自身が自立して日常生活を営むことができるよう、地域における人口減少・サービス需要の変化に応じ、全国を「中山間・人口減少地域」、「大都市部」、「一般市等」と主に3つの地域に分類して、テクノロジー等も活用し、その地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制を構築していくことを目指すとしている。
その具体策として、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する中間とりまとめ」の7頁には、「中山間・人口減少地域においては、生産年齢人口の減少が全国に比して進んでおり、介護人材や専門職の確保が困難な中、常勤・専従要件や夜勤など、様々な配置基準について弾力化していくことが考えられる。」と書かれている。
弾力化とはすなわち配置基準緩和という意味である。人口が減少して高齢者の数も、労働者の数も減る地域においては、人員配置基準を一般市や大都市部と同じく考えずに、柔軟に配置基準を緩和して、少ない人数で利用者対応を行うということを主張した内容だ。
しかし高齢者数が減る地域において特養やGH等の数が減ったとしても、それぞれの特養やGH等で対応すべき利用者数が減るわけではない。そこで職員配置基準が減った場合に何が起きるだろう。
減らされた配置基準に合わせた最低限の配置で利用者対応を強いられるという状況が起きたとき、当然のことながら介護職員が減った分、利用者に介護職員が直接かかわる時間は減る。それに対応してテクノロジーが十分機能して、利用者対応の質が落ちないほど技術革新は進んでいない。
よって介護の質は当然落ちる。必要不可欠な介護も受けられない人も出てくるかもしれない。志の高い介護職員ほどそうした状態に心を痛め、メンタルを傷つけてバーンアウトする恐れがある。

知識が乏しく知性にかける経営者の中には、緩和された配置基準ぎりぎり従業員が居ればよいと考え、人材確保努力を怠る輩が出てくるかもしれない。そのような事業者で働かせられる介護職員は、配置人員が削られた分、業務負担は増すことになる。身体的負担は蓄積されていくことだろう。
このような精神的・身体的負担増を嫌って、介護職員は基準緩和していない地域の事業所に転職するか、介護以外の仕事を探すことになる。そのようにして介護職員は益々減少の一途をたどり、介護人材難は加速することになる。
このように配置基準緩和は介護人材を疲弊させ、介護人材を益々減少させる結果につながるという負のスパイラルに陥らせる結果しか生まない。
すると介護職員不足によって経営困難となる事業者も増えるわけだから、配置基準緩和は介護事業経営者にとっても歓迎できない改革である。
誰一人として喜ばない政策、最も愚策と言えるのが配置基準緩和策である。これを柔軟配置という言葉でごまかそうとするのが、愚策しか逓減できない厚労省の誤魔化しと言えなくもない。
今週月曜日(4/21)の社保審・介護保険部会では、配置基準緩和によるデメリットを鑑みて、懸念を表明する複数の委員が意見を述べる一方で、配置基準緩和策が人材の有効活用につながると賛意を示す委員も複数存在した・・・。
これが社保審・介護保険部会の実態だ・・・介護サービスの実務を知らない、頭でっかちが議論の場であんぽんたんな意見を述べているのだ。
その結果は目に見えている。厚生官僚に言いくるめられて、その思惑の通りの結果に導かれていくのは明白だ。だから介護保険制度は良くならない。
この制度は国民のためでも、介護事業者のためでもなく、介護保険特別会計という予算権限を握った厚労省のためにある制度である。
※筆者の講演予定はこちらからご覧ください。講演依頼はあかい花公式Web右上の✉をクリックしてお気軽に相談・お申し込みください。
※別ブログ「masaの血と骨と肉」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの看取り介護指南本「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。

新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは」(2021年10月10日発売)をAmazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。