先週木曜日に配信したオンライン講演、「身体拘束廃止マネジメント」は、お盆の真っ最中にも関わらず300人を超える皆様が視聴してくださり大盛況だった。
スマートホンから繋げていた方が多いので、もしかしたらお盆休みに合間に、休養中の場所で配信講演を視聴くださってくれた方も居られるのかもしれない。ありがたいことである。
ご覧になった方は、どのような感想を持っただろうか・・・。(※その講演のアーカイブ配信動画を下に張り付けているので、興味のある方はご覧いただきたい。)
そこでも解説したが、原則禁止されている身体拘束には、「例外規定」が設けられている。
身体拘束は、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」に、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たしたうえで、なおかつ、下記で図解しているような手順を踏んで例外的に拘束を行うことができるとしている。
つまり例外とは、要件と手順の両方をクリアして初めて適用されるのである。
しかしこうした例外であるはずの身体拘束が、あまりにも安易に行われていると思われるケースがある。
その中には要件に該当しているのか首を傾げるケースや、要件に該当していても例外適応の手順を踏んでいないとみられるケースがある。
それらが運営指導で不適切とみなされれば、身体拘束廃止未実施減算の対象となるので注意が必要だ。
例えば胃婁チューブ(カテーテル)を抜去してしまうケースはどうだろう・・・チューブを抜いてしまうからと言って、そのことが直接生命の危険性に結びつくことは考えにくい。ただし抜き方によっては胃壁などを傷つける恐れはあるので身体を保護するため緊急やむを得ない場合に該当するケースはあるだろう。
その場合でも拘束はあくまで一時的でなければならない。
しかし一時性を拡大解釈して、「胃婁増設している最中だけ拘束する」というのは問題だ。そのような状態は一時性には該当しない・・・なぜならば、その人が胃瘻造設のまま死を迎えるとしたら、死ぬまで拘束し続けられるという意味だからである。
よって一時性要件をクリアしようとするなら、胃瘻造設中も拘束しない時間帯を設ける必要もあろうし、身体拘束に代わって取り得るほかの方法を考えなければならないということになる。
漫然と胃瘻造設中に身体拘束をし続けておれば、当然減算を適用しなければならないのである。
だからと言って減算しておれば良いという考えも間違っている。減算は罰則であり、罰せられる状態をなくしていこうと考えなければ介護のプロとは言えない。
そもそも拘束される人の身になって考えなければならない。行動を制限されることは、どのような理由があろうと非常に大きなストレスでしかない。その状態をなくそうとしないのは、介護のプロ云々という前に、人の道を外れているとしか言いようがない。
例えば胃婁を増設されたアルツハイマー型認知症の人で、チューブを引きぬこうとしない人の方が少ない。それだけ胃婁チューブは違和感のあるものなのだ。
それを引き抜かないように何らかの拘束を受ける認知症の方々の困った表情・嫌だという訴え・助けてくれという声なき声を無視して良いのだろうか・・・。
この場合はチューブ抜去をどうするかという観点ではなく、そもそも身体拘束をしなければならなくなった根本原因である胃婁からの栄養補給は必要なのかということも考慮に入れる必要がある。
アルツハイマー型認知症は、脳細胞が減り続け、その過程で口や喉の筋肉の動きをコントロールできなくなるためむせやすくなるのである。
この状態になった当初は、食事形態をソフト食などに変更するなどの工夫で、しばらくの間はむせないで食べることができる。しかし口や喉の筋肉の動きは低下し続け、やがてソフト食もむせるようになる。
さらにこの状態は進行し続け、口を開けなくなったり、咀嚼せず、いつまでも口の中に食べ物をためたりするようになる・・・この状態の人にまで、胃婁を増設する必要性・必然性はあるのだろうか。
こうした状態は、体が食べ物を必要としなくなっている状態といえるのではないのだろうか・・・それは終末期ケアを受けるという選択肢のひとつといえないのだろうか?
さすればこうした状態になった時には、胃婁なんか造らずに拘束も受けることがないように、安楽に最期の時を過ごして、この世で縁を結んだ方々とのエピソード作りに重点を置くという考え方があっても良いのではないだろうか。
本当の意味での身体拘束廃止とは、拘束という行動制限を行わざるを得ない理由にまでアプローチして、その原因を創り出す行為をなくしたり、変えたりする必要があるのだろうと思う。
人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)の過程では、こうした部分の話し合いも必要になると思う。
※8月15日にオンライン配信した、「身体拘束廃止マネジメント〜2024年改定対応」ですが、下記からアーカイブ配信動画を視聴できます。興味がある方は下記YouTubeを参照願いします。
※別ブログ「masaの血と骨と肉」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。
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