介護人材不足が深刻化する昨今、介護事業経営の視点として従業員が安心して働き続けることができる職場環境を創り上げていくことがより重要なってきている。
その為の様々な工夫や取り組みが必要とされるが、従業員のメンタルヘルスケアもそこでは重点項目となっている。
メンタルヘルスとは人が自身の能力を発揮し、日常生活におけるストレスに対処でき、生産的に働くことができ、かつ地域に貢献できるような満たされた状態を指す。
その状態が悪化することをメンタルヘルス不調というが、それは様々なストレスに対処できなくなることにより生ずる状態である。よってストレスとなる要因(ストレッサー)を探り、そうしたストレスが従業員の健康を害しないように管理することは職場の責任であると自覚することが、経営者や管理職に求められ、ストレス管理のシステムを職場内に設けておく必要がある。
だがストレス=悪者という考え方は間違っている。メンタルヘルスを害する良くないストレス(ディストレス)は悪者だが、仕事のパフォーマンスを高める良いストレス(ユーストレス)もあることを理解せねばならない。

ディストレスは、生体反応として自律神経やホルモンバランスが乱れ、免疫の働きが落ちて、肉体的にも元気がなくなる状態(うつ、不安など)につながる。さらにパフォーマンスの低下であったり、イライラなどの精神不安、体調不良などを引き起こすので防ぐ必要がある。
しかしストレスが適度にある時(※ユーストレスが働いているとき)にパフォーマンスは最も高くなることも事実だ。
例えば学生時代を思い出してほしい。試験勉強をしなければならないのに、試験が1月も先にあるとなかなか机に向かう気持ちにならない。しかし試験が近づくというストレスが高まると、勉強しなければという動機づけとなり、一夜漬けであっても知識を頭に叩き込むというパフォーマンスを高める働きが生まれる。
仕事も同様で、ユーストレスが働いている職場では生産性が向上するのである。
よって人材不足が常態化し、生産性の向上が不可欠となる介護事業者のストレス管理とは、ユーストレスが働く状態を創り出しながら、それを超えたディストレスを防ぐという考え方でなければならない。
では介護事業におけるユーストレスとは、どのような結果を求めるものだろう。
それは介護職員になりたいと思う多くの人たちが、「人の役に仕事だから」という動機づけを持つことと結びつけるべきであり、利用者の豊かな暮らしを創造するというストレスであるべきだ。
自分が相対する利用者の暮らしぶりをよくすること、自分が対応するときに利用者が幸せそうな笑顔になることができること・・・そんな目標を達成するという動機づけがユーストレスとなり、介護の生産性向上に結びつくのではないのだろうか。
そうではなく介護職員に対して、利用者対応を無視した形で売り上げ目標だけを目標にさせたときディストレスによってパフォーマンスは低下し、メンタルヘルス不調に陥る授業員も増え、生産性は著しく低下するだろう。
そうならない労務管理が求められるのである。
※株式会社マイナビさんが運営するポータルサイト、「メディカルサポネット」の連載、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」の第6回配信記事が6/9にアップされました。

今回のテーマは、「2027年度介護保険制度改正の展望と課題」です。下記目次を参照してください。

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