僕は現在、複数の介護事業者の顧問を務めており、介護事業経営相談を受けたり、従業員教育のお手伝いをしている。
顧問契約の内容は介護事業者ごとに異なっているが、毎月定期的に従業員に向けた講義を行う契約を結んでいるところもある。
今日午前中は、そうした契約に基づいてオンラインセミナー講師を60分勤め終えたところである。
今日の講義は、居宅介護支援事業所の居宅サービス計画作成の要点と、その計画に沿って作成されるべき訪問介護計画と通所介護計画の作成要点である。
云うまでもなく両者とも、ケアプラン作成に際してはアセスメントを適切に実施しなければならない。
居宅サービス計画作成に必要なアセスメント項目は、国が最低限必要だと定めた29項目を網羅して行う必要があるが、訪問介護や通所介護といった居宅サービス事業所の計画作成の際のアセスメント項目は、特段定められたものがない。
その為、居宅サービス事業所は独自のアセスメント項目を、それぞれの事業所判断で決めてよいことになっている。例えば次の画像のような項目をアセスメントとして定めておくことも考えられる。

だがここで頭に置いておかねばならないこととは、「アセスメントツールはケアプラン作成に必要な道具のひとつに過ぎない」ということだ。
そもそも自動的に利用者の生活課題やニーズを的確に抽出できるアセスメントツールなどこの世に存在しない。よってアセスメントツールは、計画担当者がどのように使うのかが問題となる・・・アセスメントツールを使いこなす計画担当者のスキル・考え方によって課題やニーズは異なった結果として抽出されることになるのである。
そう考えるとより重要となるのはモニタリングではないかということに気が付く。なぜならモニタリングとは、前回のアセスメントの結果の読み方が正しかったかを確認するという意味があるからだ。
モニタリングの意味については、居宅介護支援事業所の基準省令13条十三において、「実施状況の把握(利用者についての継続的なアセスメントを含む。)」とされており、繰り返し行うアセスメントの中で前回までのケアプラン実施状況を把握する=結果を検証することを意味するとしている。(※施設サービスも同様)
つまり最初から利用者の生活課題を正しく抽出できるとは限らないし、完璧な計画を作成できるとも限らず、むしろその可能性は低いので、アセスメントを繰り返して結果を検証しながらケアプランを進化させていく過程構築=PDCAサイクルの構築が重要であるとしているのである。
この時に重要となる考え方とは、モニタリングでは利用者の「満足度」を評価する視点が欠かせないということだ。
介護サービスというものが、事前に試して使ったり後から使ったサービスをもとに戻すことが不可能な再現性のない目に見えないサービスであるからだ。
それは常に使ってみないとわからないという特性を持っているため、サービスを利用した結果の満足度や不満、特に利用者の「いやだ」という感情がなかったかということは評価の視点としては重要にならざるを得ない。
どんなに素晴らしい計画であっても、利用者が使った結果が不満であれば、それはサービスとして不適切な何らかの要因(問題)があるということだからである。
このときモニタリングを行う計画担当者が陥りやすい間違いは、課題を解決できない要因をサービス提供方法そのものとしか判断できなかったり、サービス提供者の問題として限定的に考えてしまうことである。
勿論そのことも理由のひとつとしてあり得るが、もともとのサービス提供計画内容が適切なものであったのかを検証することが先であろう。
人とは合う・合わないという感情を持つ存在なのである。それは定型ではなく、人によって異なるものでもある・・・そうであるがゆえに、介護サービスの提供内容や提供方法に関して、利用者が抱く嫌だという感情には理屈がないのである。
そこに根拠を求める必要はなく、感情のあり様そのものが本音であり真実であると考えるべきである。
そして、どんなに素晴らしいプラン内容であっても、利用者に受け入れられないプランは意味がないことを理解しなければならないのである。
※CBニュースの連載記事、「快筆乱麻!!masaが読み解く介護の今」の最新記事、「補正予算での訪問介護支援は愚策」が2/27にアップされました。

今回は訪問介護支援策と介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方に関する通知内容について、両者を絡めて論じています。文字リンクをクリックして参照してください。
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