僕が9年前まで総合施設長を務めていた社会福祉法人は、母体が精神科医療機関であった。

大学を卒業して特養の生活指導員として採用された僕は、母体の医療相談室で相談援助職としての訓練を受けて、特養での利用者対応に臨んだ。

辞令を受けた後は、たった一人で特養の相談援助業務を担ったわけだが、新卒の時点で利用者対応がすべて完璧にこなせるわけがないので、折に触れ、機を見ながら医療相談室に足を運んで、先輩のPSWから指導を受けていた。(母体の医療法人相談室には当時、なぜかMSWがおらずPSWのみの配置だった。

当然そうなると医療機関での相談援助実務の場にも臨場することが多くなる。そこではアルコール中毒の方や、統合失調症の方などが多く入院していたわけであるが、うつ病患者の方とも数多く相対した。

それらの方々が、うつになった原因は仕事上の様々な問題であることが見てとれ、必然的に仕事盛りの壮年期の人が多かった。

40年以上前のことだからセクハラという言葉は存在していたが、今のようにパワハラとかモラハラという言葉は一般的ではなかった。それもあって職場で上司からパワハラを受けて、うつ病になる人は非常に多かった印象がある。

よく介護の仕事はストレスが多いと云われるが、精神科病棟でうつ病の人を見ると、介護関連の職種だった人は意外に少ない。むしろ売り上げノルマのあるセールスマン・・・特に中間管理職として、上からも下からもプレッシャーを受ける人が、うつ病の発症リスクが高かったように記憶している。
メンタルヘルス不調
うつ病は、真面目な人や責任感強い人が発症しやすいとか、メンタルが異常に強い人はうつ病とは無縁だとか言われることがある・・・しかしそれはすべて大間違いである。

うつ病はどのような性格の人でも発症するし、メンタルが強いと思われていた人でも、何かのきっかけでうつ病になるのである。うつ病にならない鉄板メンタルは存在しないのである。

うつ病の恐ろしさは、治う率の低さと再発率の高さである。うつ病をいったん発症した場合、2/3の患者が寛解完治はしていないが症状がなくなった状態)までもっていくことができる。しかしそのうち半分以上が再発するという怖い病気だ。

だからこそ、うつ病にならないようにメンタルヘルスケアを心掛ける必要がある。我が国では法改正されて、その責任は職場・経営者にあるとされているのだから、管理職はしっかりと部下のメンタルヘルス管理をしなければならない。

メンタルヘルス不調につながるストレスに対しては、自分の気持ちや感情を誰かに聞いてもらったり相談することで、気持ちの整理をすることが有効に作用する。

しかし日本人はどちらかというと、ネガティブな感情を誰にも言わず自分の中に溜め込んでしまう感情抑圧型の人が多いように思う。

だからこそ管理職・上司は、部下と日ごろから良好なコミュニケーションを交わせる関係性を築き、部下の表情が乏しくなる・ため息が多くなる・遅刻が増えるなどの状態変化に気づき、相談を受けるように積極的に話しかけてほしい。

業務上のミスが続いたときは既に入院が必要な赤信号だ。そうなる前に対処することで、深刻な状態に陥らずに済むかもしれないのだ。

うつ病の発症前には、本人は自分が少しおかしな状態である事に気が付いている。だからこそ、「大丈夫。問題ない」が口癖になる人が多い。そういう言葉を頻繁に口に出すようになった部下は、一旦休ませるなどの対応が必要であることを、管理職の方々は日ごろから理解しておいてほしい。

くれぐれも、うつ病は本人の気持ち次第だとか、性格上の問題だとか言う勘違いをしないでいただきたい。

メンタルヘルス不調に陥る要因は様々であり、それは本人ではどうしようもない問題であり、避けようとしても避けられないうちに深い沼にはまっているのが特徴なのだ。

それを救うのは、周囲の理解と深い愛情しかないのである。


※別ブログ「masaの血と骨と肉」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。


masaの看取り介護指南本看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)Amazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。