基本型老健の関係者の皆さんは、いま議論されている制度改正の内容を見て、暢気に構えていられないと思うのだが、いかがだろうか。
それだけ基本型老健の存続の危機につながる制度改正になるような気がするし、そういう危機感をもって対策に乗り出す必要があるのではないのか・・・。
というのも次期改正では、特養の入所基準見直しが検討されている。これが基本型以下の老健経営に大きく影響してくる。(参照:特養の入所基準の再見直しは他サービスにも広く影響します)
今この時期に厚労省の提案としてこの見直し案が議論の俎上に挙げられたということは、何らかの変更が行われるのは確実で、元通り要介護1以上が入所対象になるか、そうならなくとも特例入所のハードルを下げて、実質要介護1以上の要介護者は、特養に入所することが可能になることはほぼ間違いがない。
文字リンクを貼りつけた記事にも書いた通り、そうなると「その他型」と「基本型」の老健に入所している、長期入所の軽介護者(要介護1と2の利用者)が特養に入所できることになる。
問題はそれだけではない。
今現在の段階で、次期改正で変更可能性が一番高い改正案は、サービス利用時の自己負担割合の2割負担者と3割負担者の拡大案である。
このことについては18日の国会における首相答弁でも、「負担できる方には、確実に負担していただくように制度を改正する」という趣旨が語られており、なおかつ後期高齢者医療制度の2割負担者が10月から拡大している流れもあって、2割負担者が拡大することは確実視されている。
それと同時に、老健と介護医療院の多床室の室料自己負担も確実に実施されることが予測されている。
既に特養の多床室室料自己負担は実施されており、介護保険施設の類型が介護医療院の新設で、新たな3類型と再編されたことによって、多床室室料負担の均等化を図ることの障壁がなくなっている。よって老健と介護医療院の多床室利用者の室料負担という形の自己負担増も確実視されている。
老健の利用料金は基本サービス費の自己負担は特養より高くなっているものの、多床室の室料負担がない分、特養より全体の利用料金がかからないか、ほとんど変わらないかという金額であるために、特養に入所できない軽介護者が老健に長期入所しているケースも多い。
そこに2割負担する利用者が増え、かつ室料負担が上乗せされてくる。
この2重の負担増に耐えきれずに、特養への転入所を希望する老健利用者が増えることは容易に想像できる。それに加えて要介護2以下でも特養に入所できる改正が実現すれば、その他型老健や基本型老健から退所して、特養に入所する軽介護者が増えることは確実だ。
さらに特養の入所要件が元に戻されて、要介護2以下も入所対象となれば、老健の新規利用者の数も減ってくるだろう。その時、全国に数多くある基本型老健は、ベッドを埋めて稼働率を下げることなく収益を挙げ続けることができるだろうか・・・。
僕が1年間だけ勤めていた千歳市の「クリアコート千歳」という老健は、加算型になるには程遠い在宅復帰率の低い基本型老健であるが、そこでは介護職員のトップが、「職員の数が足りず手が回らないので、新規利用者は食事摂取が自立してい人ではないと受け入れてはならない」と、勝手なルールを入所担当者に押し付けていた。そのような老健は今回の厳しい改正の波の中に吞み込まれ沈没の危険性がある。こういう施設には決して就職しないことが大事だ。
食事摂取が自立していない人の入所を拒むような老健は、無くなってしまっても問題ないが、行き場のない軽介護者を受け入れるために、あえて基本型老健としていた施設は、加算型への転換などの事業戦略の見直しが早急に迫られることになるだろう。
どちらにしても、その他型と基本型老健に厳しい改正になることは確実で、しかしそれは、老健は加算型以上(加算型・在宅強化型・超強化型)が残ればよいという、厚労省の思惑とも合致する改正なのかもしれない。
※登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。
※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの看取り介護指南本「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは」(2021年10月10日発売)をAmazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。