masaの介護福祉情報裏板

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介護事故

過去の介護事故事例を振り返って思ったこと(後編)

過去の介護事故事例を振り返って思ったこと(前編)から続く
通所介護の送迎に関する事故では、リフト付き車両の操作・固定ミスが重大事故につながっているケースも目に付く。

2006年5月北海道津別町が運営するデイサービスで、送迎用のマイクロバスのリフトから車椅子ごと転落した男性利用者が頭を強く打ち死亡。リフトについている車止めが操作の途中ではずれて、地面から約30cmのところで男性利用者が車椅子ごと後ろ向きに転落、後頭部をアスファルトに打ちつけた事故である。
リフト付き送迎車の事故多発
それに似た事故は2014年4月、山形県河北町谷地で起きている。通所介護送迎用マイクロバスの昇降リフトから転落した女性(93)が入院先の病院で脳挫傷で亡くなっている。被害者は後ろ向きの状態で車いすごと約90センチ下のアスファルト地面に落下して後頭部を打った。転落防止用の車輪止めが機能していなかったことが原因。

この二つの事故は、リフトに介助者が乗って車椅子に手を添えていれば起きなかった事故である。

2019年10月に北海道内北斗市内の通所リハビリテーション施設の車いす移動車に乗っていた男性(81歳)が、走行中の車内で車いすごと転倒して意識不明の重体。フック付きのバンドで車いす4カ所を固定しなければならなかったが、全てのフックをつけ忘れていたことによる事故であり、あまりにも気が抜けた確認ミスと言える。

送迎車の介護事故としては、「置き去り」という事故も起きている。

2010年7月、千葉県の通所介護送迎車内に置き去りにされた男性利用者が死亡している。本来の利用日ではない日に利用していたため、降車確認が十分行われず、なおかつ臨時利用の確認も不十分だったことが原因とされている。

2022年7月、兵庫県高砂市内の通所介護で夕方から翌朝にかけ90代の女性利用者が送迎車に閉じ込められたまま駐車場に放置される事故が発生。運転手が利用者宅に送る時に降ろし忘れて事業所に戻り、送迎車内を確認しないまま駐車場に一晩放置。救急搬送され脱水症状があったものの命に別状はなかったものの、壽大事故につながりかねない確認ミスであった。

特に今の時期は、置き去りがそのまま熱中症〜死に至ることにつながりかねず、降車確認を十分に行ってもらいたい。

ここまでは通所サービスの送迎における介護事故ケースを挙げてきたが、介護施設でも不幸で悲惨な事故が起きている。

介護施設における介護事故で一番多いのが骨折で、発生場所は居室が多くなっているが、居室の次に多い介護事故発生場所は「浴室」である。そこでは信じられないような悲惨な事故が繰り返し起きている。それは熱湯風呂による熱傷死亡事故である。5ケースを紹介しておこう。

2013年年12月、山梨県南アルプス市田島の医療法人が運営する「グループホーム甲西」で、熱湯がはられていた浴槽に入れられ大やけどを負った87歳の女性が、翌年3月死亡。

2015年2月、静岡県浜松市の特養「第二九重荘」で、にリフトを使って入浴介助を受けていた85歳の女性が大やけどを負って死亡。介助していた男性職員は「女性が『熱い』と言ったが入れた」と供述。

2024年3月、札幌市豊平区の特別養護老人ホームで、入浴した入居者の女性=当時(88)=に全身やけどを負わせて多臓器不全で死亡させたとして、40代の男性介護職員が書類送検された。当時、女性の入浴の介助は男性職員1人で行っており、別の職員が温度などをチェックできる体制になっていなかったという。

2025年9月大阪市の特養「アルカンシエル東成」で、38歳の男性介護職(※短時間つなぎバイト職員)が入浴介助していた70代男性を高温の湯を張った浴槽にいれ、全身の77%にやけどを負わせ敗血症で死亡させた。容疑者は逮捕前の調べに「温度の操作を適当にしてしまい、高温の湯を張ってしまった」「ストッパーを解除して高温の湯を張った」などと説明した。

2025年12月31日午後2時5分ごろ、千葉県市川市大町の特別養護老人ホーム「なごみ」で、入浴介助を受けていた女性(89)が全身にやけどを負い、搬送先の病院で死亡した。施設側は「浴槽の湯が高温だった」と話しており、湯の温度管理が不十分だったことが原因。

いずれの事故も入浴介助担当者が自分の手を湯船に入れて、湯温を確認するだけで防ぐことができた事故である。それができないということは、事故ではなく事件ではないかという疑いを持たれても仕方がないと言える問題・・・。

どちらにしても介護事故を防ぐために一番重要なのは、「ヒヤリハットや軽微な事故を、組織ぐるみで拾い上げて必ず対策と共有につなげる文化をつくること」である。

その為には、ヒヤリハットをその場でメモして、「取りこぼし」をなくすことが重要となる。

その際には、「原因探求」は「犯人探し」ではないということにくれぐれも注意してほしい。

ヒヤリハットを分析する目的は、介護事故につながりかねない仕組み(マニュアル・導線・人員配置・伝達方法等)を改善することなのだから・・・。
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過去の介護事故事例を振り返って思ったこと(前編)

介護サービスの提供中に、利用者が身体的・精神的被害(骨折・外傷・誤飲・誤嚥等)を受けることを、「介護事故」と呼んでいる。

介護事故が起きた場合、事業者は必ず行政官庁に報告を行う義務が課せられている。

そのほか介護保険施設と居住系サービスでは、介護事故対応について運営基準上、次のような規定がされている。
指針の整備(事故発生時の対応・報告方法等を含む)
報告、分析、周知の体制整備(事故・ヒヤリハットの報告体制)
事故発生防止委員会の開催 + 従業者研修の定期実施
安全対策担当者の配置

居宅サービスにおいては指針や委員会の規定はない。その代わりに厚生労働省の「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」や各サービスの運営基準に基づき、事業所ごとに事故防止体制やマニュアル整備が求められている。

そのことに関連して、顧問先からの依頼を受けて、「介護事故予防と介護事故発生時の対応リスクの予知・迅速な情報共有・組織的対応と再発防止の徹底」というテーマの従業員研修を実施することとし、昨日オンライン配信した。

その為、先週末はその講演スライド作成を行っていたが、そこでは過去の介護事故事例を数多く紹介している。

そのようなスライドを作成中に考えたことがある。それは似たような事故が数多く起きており、それによって介護サービス利用者が死亡したケースも少なくないが、それらはちょっとした注意で防ぐことができた事故であるということだ。

人命が失われた原因が、サービス事業者や担当者の不注意であり、それは十分防ぐことができた介護事故であったということを非常に残念に思うのである。

例えば通所介護では、送迎中の交通事故が多発している。それらはいちいちケース紹介できないほどの数に昇ってはいるが、高齢ドライバーの認知機能の低下若しくは体調不良によるものであり、事前にその兆候も表れており、そこで対応すれば事故防止できたものだったケースがある。
送迎車両による交通事故が多発
2023年9月、さいたま市の通所介護事業所の駐車場で、送迎車が3人をはね、利用者2人が死亡するという事故が起きた。事故車両を運転していたのはアルバイトの75歳の運転手。当該ドライバーは、これまで敷地内で他の車にぶつけるなどの物損事故を2、3回起こしていたが、当該事故も「玄関付近で送迎車両を(利用者が)待っていたところノンストップでスロープに突っ込んできた」という状況。

この事故を起こす前から、運転手は認知機能の低下が原因が疑われる小さな事故を起こしていた。それを重大な問題と考えずに、送迎運転を続けさせていたという意味で、事業者の責任は大きいだろう。

ハインリッヒの法則(1件の重大事故(死亡・重傷)の裏には、29件の軽微な事故があり、さらにその下には300件のひやりはっとが隠れているという法則)を学びなおしてほしい。

また2024年4月、茨城県八千代町平塚の県道で、同町の社会福祉法人の通所介護送迎車が道路脇の住宅の塀と電柱に衝突し、同乗していた利用者の女性(92歳)が下大静脈損傷で死亡したほか、70〜92歳の利用者5人が両足を骨折するなどの重傷を負い、介護職員の女性(23)と運転手の男性(69)が打撲などの軽傷を負った。運転中に運転手の意識がもうろうとなり、同乗していた介護士が「止まりましょう」と声をかけたが、その直後に事故を起こした。出発前に運転手は「調子が悪い」などと話していたが、同会は「健康診断でも問題がなく重大な疾病はなかった」としている。複数の目撃者によると、運転手は事故後、路上に倒れ込んで嘔吐(おうと)していた。

過去の健康診断の結果がどうあろうとも、当日運転前に体の不調を訴えていたにも関わらず、それを重大な問題と考えずに送迎業務に就かせていることが大問題。通所介護利用である要介護高齢者を送迎するという安全第一の業務であることを鑑みて、少しでも体調不良のある者を送迎業務に就かせないという意識が必要である。

その他、送迎に関する重大事故や、介護施設で繰り返し起こっている悲惨な死亡事故なども例示しようと思うが、長くなるのでそれについては明日更新の記事に書こうと思う。(後編に続く。)
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