masaの介護福祉情報裏板

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複合型サービス

お騒がせの複合型サービスはこのままお蔵入りか。



次期介護保険制度改正の目玉とも言われた、「複合型サービス」(訪問介護と通所介護の組合せ)については、結局創設見送りという結論に落ち着いた。

昨日(12/4)行われた介護給付費分科会資料4で、「 訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型サービスの創設については、介護給付費分科会における議論を踏まえ、より効果的かつ効率的なサービスのあり方について、実証的な事業実施とその影響分析を含めて、更に検討を深めることとしてはどうか」とされたことにより、制度に位置づけられないことが確実になっている。

同資料の論点には、「規制緩和でよいのではないか」・「地域密着型サービスとすることにより利用がしにくくなる」・「制度の煩雑化につながる」といった創設反対意見が書かれたうえで、「実際の事業所における実証的な実施調査は行ってきておらず、個別の要件設定や規制緩和の効果等についての具体的な議論が行えていない状況である。」として、創設見送りという結論に結びつけている。
複合型サービス
しかし11/6の同会では、複合型サービスの人員・設備基準が細かく記されており、新サービス創設へ向けて動いていたことは間違いがなく、それからわずか1月にも満たないこの時期にそれが唐突にひっくり返されたという感は否めない。

昨年末に作成された介護保険制度の見直しに関する意見でも、創設の必要性が強調されていることを考えると、厚労省の面子がつぶれることを覚悟で見送りとなったようにも思える・・・その背景には何があったのだろう。

おそらく11/6に示された人員配置基準があまりにも厳しく、人材確保が最大の課題とされている中で現実にそぐわないという反対論が高まったのではないだろうか。(参照:こんな形の複合型サービスは浸透・普及しない ・ 複合型サービスは、やっぱ手を上げにくい事業だ

文字リンクを貼った記事でも解説しているように、示された基準では、せっかく新サービスを創設しても、その事業に手を挙げて参入しようとする事業者がわずかであるということになり、サービス創設の意味がなくなるという点が、一番の懸念事項であり、かつ問題とされたのだろう。

制度を複雑化させるだけで、ほとんど意味がない複合型サービスの創設が見送られたことは悪いことではないと思う。誰も困らないとも思う。

しかし論点で指摘されているように、この複合型サービスは再検討されて2027年度の制度改正に向けた議論の中で、再び創設に向けた動きが出るのだろうか・・・僕はそう思わない。

前述したように、複合型サービスとして創設を目指した事業の人員配置は現実的ではない。

今後我が国の労働力は、社会全体で不足していくのだから、介護事業もより少ない人材で、より増える要介護者への対応策を考えなければならない。

そうであれば単に通所介護と訪問介護の人員配置を足すだけの新事業を創設する意味はない。二つ以上の複数のサービスを組み合わせるなら、そこでもっと合理的に人員を配置して、複合型事業所内で横断的に仕事が可能となるようなルールを作らねば意味がない。

サービス提供責任者や訪問介護員を、絶滅まじかの訪問介護事業と同じように配置しなければならない事業など、創設しても存続が難しくなるだけである。

さらに8/30の介護給付費分科会では、全国老人保健施設協会が、「今でも制度が複雑だと言われているのに、屋上屋を重ねて更に複雑化させるのは反対。新たなサービスがないと現場が成り立たない、というエビデンスもない」と反対意見を述べ、その姿勢を変えていなかったことも大きいと思う。

というのも今回の改定に向けた生産性向上の取り組みとして厚労省は、東会長の施設にモデル事業を依頼して、望み通りの結論を出してもらったという恩義がある。そうした仮りがあるのだから、無下に同会長の意思を無視できなかったのかもしれない。

どちらにしても、「更に検討を深める」としながら、11/6に示された基準の複合型サービスは、そのままお蔵入りする可能性が高い・・・あの基準ならそれも良いのではと思う。






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複合型サービスは、やっぱ手を上げにくい事業だ



人材不足が深刻化し、その解決策が見えないことから介護DXの推進による生産性の向上が求められる介護事業では、スケールメリットを働かせて業務効率をよくするという意味で、サービス規模の拡大が必要になる。

その為、通所サービスは大規模区分の減算幅を縮小するというところから始めて、近い将来は規模が大きな通所サービス事業の方が報酬も高く設定されるように変わっていくだろうということは先週論じた通りだ。(参照:小規模区分から大規模区分への人材流出が促される通所サービス

しかし2022/12/20の、「介護保険制度の見直しに関する意見」(社会保障審議会・介護保険部会)の中に、要介護1と2の通所介護の総合事業化について、「第 10 期計画期間の開始までの間に、結論を出すことが適当である」と書かれている意味は、2027年制度改正までに地域支援事業化は結論を先送りするという意味だが、それは同時に、2007年度の制度改正時には、必ず要介護1と2の対象者の通所介護は地域支援事業化するという手形を切ったという意味であろう。

つまり通所介護に限って言えば、大規模化を目標にしてそれを実現できたとしても、2007年以降は利用者対象者そのものが大幅に減るため、その規模を維持できないのではないかという懸念がぬぐえない。

そこで期待を寄せたのが、2004年度から新設される複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)であった。

このサービスが既存の通所介護の中で、同時一体的に指定を受けて実施できるとすれば、設備や職員を新たに増やすことなく実施できて、通所介護の生き残り策につながると考えていた通所介護経営者も多い。

ところが複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)の人員配置基準と設備基準を確認してがっかりした事業経営者が多いことは、「こんな形の複合型サービスは浸透・普及しない」で指摘したところだ。

その人員・設備基準は下記のように示されている。
複合型人員
複合型設備
複合型サービスは地域密着型サービスに位置づけられ、登録定員が29名上限とされてるが、同時に通所介護の利用定員は、「19名以上とする」とされている。

この基準は、29名の登録者の65%以上が通所サービスを利用できるようにしなければならないという意味だろうが、これが既存の通所サービスと一体的にできるようになれば、複合型サービスの普及はかなり進むと思える。

例えば定員60名の通所介護が、その中で29名を複合型サービスの定員とし、通所介護と複合型サービスの職員配置も一体的に行うことができるなら、複合型サービスの指定を受けて、将来通所介護の利用者減の代替サービスとするという考えも生まれるからだ。

しかし職員配置や設備基準を読むと、そのようなことは不可能であると読める。職員配置や設備使用を一体的に行うことができるのは、複合型サービスの中の、訪問介護と通所介護に限っていると読めるからだ。

そうであれば既存の通所介護事業所が、複合型サービスを立ち上げようとすれば、事業所も建て増しして設備を新たに備え、職員も通所介護とは別に雇用する必要があるということになる・・・人材不足が叫ばれる今日、そこまでして複合型サービスの指定を受けようとする経営者はどれだけいるのだろう。

訪問介護員の確保も難しいことから、この複合型サービスに手を挙げようと考えていた多くの介護事業経営者が、配置・整備基準を目にして、その手を下ろしたことだろう。

さすればこの複合型サービスは、人員確保が比較的容易で、かつ多様なサービス利用ニーズが見込まれる都市部の一部で、大規模な法人が新たな顧客確保戦略として立ち上げるという形でしか増えていかないように思う。

地方では決して根付かないサービスだろうと思うし、そもそも地方では創設されないサービスに終わってしまうのではないだろうか。






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こんな形の複合型サービスは浸透・普及しない


2024年度からの介護報酬改定に関連して、新たに創設が予定されている複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)の概要が、11/6の介護給付費分科会で示された。

この複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)については8/30の介護給付費分科会で、「必要性がない」・「制度をますます複雑にする」などという反対論が複数出され、厚労省はその創設について今後慎重に検討するとしていた。

しかし今回の資料によって、厚労省はいよいよ新サービス創設に舵を切ったことがわかる。

創設反対意見等を無視する形で創設に舵を切った理由は、昨年末の介護保険制度の見直しに関する意見で、その必要性を高らかに謳っていた以上、面子にかけてもこの新サービスの創設は見送ることはできなかったからだろう。

ただしこうなることは、僕が行う講演では予言していた。受講された方はその予測が当たったことに気がついているだろう。
紅葉
それはともかく、今回の資料では複合型サービスと呼ばれる新サービスの概要が示されているが、その内容を見て僕は少しがっかりしてしまった。

複合型サービスは、コロナ特例で通所サービスから職員を利用者宅に派遣していたサービスをモデルにし、既存の通所サービスが柔軟に職員を利用者宅に派遣できるスタイルになるのかと思ったら、どうやらそうではないようだ。

資料を読むと複合型サービスは、定員29人以下の地域密着型サービスとして、要介護度別の包括払い(月額定額報酬)とされている。

複合型サービスの利用者の計画担当者については、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が担うこととされ、複合型サービスに内包しないことになった。

これは小規模多機能居宅介護がケアマネジメントを内包することで、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が担当を外れることを嫌うケースが多いために、予想外に普及しないことを鑑み、その轍を踏まないようにしたものである。

指定条件については、複合型サービスとは(訪問介護と通所介護の組合せ)とされているように、まさに訪問介護と通所介護を一体的に同一建物の中で指定するスタイルのようである。

その考え方は、「既存サービスの組み合わせであるため、訪問介護、通所介護で必要とされている人員・設備・運営の基準と基本的に同様とする」というふうに示されており、例えば通所介護事業所が複合型サービスを行おうとすれば、現在の人員配置に加えて、訪問介護に必要な訪問介護員を常勤換算で2.5名以上を配置し、かつサービス提供責任者を利用者40名に対して1名以上配置する必要がある。

管理者は両方併せて一人配置でよいとされており、設備についても既存の訪問介護、通所介護で必要なものを全て共有して使用することはできるが、訪問介護員やサービス提供責任者を新たに雇用するのは大きなバリアになりそうである。

しかも問題は訪問サービスの担い手の資格要件である。資料では、「複合型サービスと訪問介護事業所の指定を併せて受け、一体的に運営している場合、複合型サービスの訪問介護員の基準を満たすこととする。」としていて、その意味が分かりづらい。

しかし厚労省の担当者は会合後、「引き続き議論していくが、初任者研修の修了などホームヘルパーの資格を要件として定める方向で検討していきたい、と現時点では考えている」と明らかにしている。

ということは今後、複合型サービスを経営しようとするの当たって、最大の課題は訪問介護員集めということになる。

何しろ2022年度の訪問介護職の有効求人倍率は15.53倍であり、今年度は既に16倍を超えていると予測されている。雇用する側から見ればこれは壊滅的数字といえるわけである。

募集しても応募がほとんどない訪問介護の有資格者を、今後は複合型サービスと訪問介護で奪い合わねばならなくなるということだ・・・その結果は、どちらかが勝利するのではなく共倒れが落ちだろう。

ということで、新設される複合型サービスは事業経営するにはあまりにもハードルが高く、人材も集まらずにサービス提供が困難であるというリスクの高い事業となる。

近い将来(早ければ2027年度にも)、軽介護者(要介護1と2の対象者)の通所介護が地域支援事業化されることを見越して、その人たちの受け皿として、介護給付として利用し続けることができる複合型サービスを経営したいと考える介護事業経営者も少なくなかったが、今回の資料を見て二の足を踏むことになるだろう。

さすれば複合型サービス事業に参入することができるとすれば、すでに通所介護と訪問介護を行っている法人が、その両者をくっつけて一体的に営業する形が主になるのではないかと思う。

よって僕個人としては、こんな形のサービスが浸透・普及するわけがないと思うのである。






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