次期介護報酬改定議論のテーマの一つとして、「介護の人材紹介会社の規制強化」が挙げられている。

税金と保険料などを原資とする介護事業者の収入(介護報酬)が、直接的な事業運営資金や職員給与として支出されるのではなく、人材紹介会社への手数料として支出されていることを問題視する関係者は少なくなく、「介護事業者向けの人材紹介会社には、一般の人材紹介会社よりも厳しい対応が必要」と指摘されていた。

介護事業者にとってもそれは深刻な問題で、年を追うごとに介護人材不足が深刻化するのに比例して、人材紹介会社に支払う手数料も高騰し事業経営に大きな影響を与えている。そのため介護の人材紹介会社の規制強化を求める声は、介護事業者の切実な声であるともいえる。

このことに関して7/10に開催された第107回社会保障審議会介護保険部会では、介護施設・事業所に対する人材紹介会社に適正運営を促す新ルールを課すことが明らかにされた。

それによると優良な人材紹介会社として認定する既存の制度(適正事業者認定制度)について、認定基準を厳格化するとして、「紹介した人材が6ヵ月以内に離職したら手数料を返戻すること」を新たに加える方針を明示した。

この結果が今回の、「介護の人材紹介会社の規制強化」の結論なのだろうか・・・そうだとしたら非常にがっかりである・・・というか滑稽である。
落陽
このような対策で人材派遣会社への支出増加問題が解決するわけがないからだ。なぜなら新たに設けられるルールは、「適正な有料職業紹介事業者」の認定を受けるための要件でしかなく、その認定を受けない人材紹介会社には何の意味がないからだ。

しかもこの認定を受けなくとも派遣業として十分成り立つのが現状なのである。

現に介護事業者に対する人材紹介会社における、「適正な有料職業紹介事業者」の人材紹介実績カバー率は約4割でしかない。実に過半数を超える紹介実績が、適性認定を受けていない人材紹介会社なのである。

人材確保が難しく人出が常に足りない介護事業者は、とにもかくにも働き手を紹介してくれて、一日も早く人員配置できさえすればよいと考える傾向が強いのである。その際に人材紹介会社が国の適性認定を受けているかどうかなど、あまり重要な要素ではなくなるのだ。

そうした現状を考えると、来年度から手数料返戻規定が強化された場合、それによって派遣職員の勤務期間が長くなるということもないと思う。

なぜならそんな規定があるなら、適性認定を受けないで紹介業を続けようと考える人材紹介会社が増えるからだ。そうであっても派遣先を探すことに苦労はしないからだ。

しかも派遣職として人材紹介会社に登録する人は、派遣先が気に入らなければ一日でも居たくない人たちなので、原則6ヵ月以上派遣先で働き続ける条件がある紹介会社より、そのような縛りのない紹介会社に派遣登録する人が増えるだろう。

その結果、適正な有料職業紹介事業者の人材紹介実績カバー率は、現行の4割から下がるのが落ちである。

いわゆる「就職お祝い金」の禁止規定の強化や派遣料の上限設定にしても、それが適性認定の要件でしかなければ同じことだろう。

しかし法的に認められている民業である限り、何らかの指定条件以外で手数料等の金額の限度を定めることはできない。資本主義社会では、それは自由価格であるからだ。

さすれば介護報酬は本来、職員の処遇改善などに充てられるべきものであり、人材紹介手数料に支出されるのは問題であるとするなら、派遣制度そのものにメスを入れなければならないのではないのか・・・。

そもそも人の命や個人の暮らしに深くかかわる医療や介護に、派遣という形態の使命感や責任感が低下しがちな就業形態はそぐわない。

医療・介護に対する派遣禁止規定を設けることによって、派遣手数料の問題はたちまち解決する。しかも人材スキルとサービスの質の問題も、現状より良い方向に変わっていくと思うのである。

なぜそれができないのだろうか・・・。利権という言葉が、ここでもちらつくのである。
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