介護報酬の加算は、国が定めた要件に合致した場合に算定できるものだ。

その要件については単なる体制要件から、アウトカム評価へと軸足を移していきたいというのが国の考え方である。

アウトカム(Outcome)とは今更云うまでもなく、『結果・成果』という意味である。介護報酬の場合のアウトカム評価とは、ケアによってお客様がどうなったかということであり、利用者負担を伴う加算を算定する以上、それは利用者にとってメリットのある結果・成果でなければならない。

介護のアウトカムをどのように評価するかということは、かねてからの課題で、国はその客観的評価として数値データによる評価ができないかと考え続けている。

その一つの現われが、2018年度の報酬改定で通所介護に新設された、「ADL維持等加算」である。
ADL評価
この加算は、通所介護における機能訓練の成果を『バーセルインデックス』という数値結果に求めたもので、一定の数値をクリアしないと算定できない加算であり、2021年度報酬改定では、この加算を特定施設と特養にも適用拡大している。

国はこうした数値データによるアウトカム評価をさらに拡大するために、科学的介護情報システム(LIFE) に日本全国の介護事業者のADL値等のデータを収集している最中である。

しかし本当にそれで客観的かつ正確なアウトカム評価ができるだろうか。アウトカム評価ができたとされたときに、その評価から利用者の満足度という視点が欠落してしまわないだろうか・・・。

そんな疑問を抱きながら自分のフェイスブックに、「医学的・治療的リハビリテーションエクササイズは、それを嫌がる利用者に無理やりさせても保険給付対象になり、加算報酬さえ受けられるのに、生きるために行きたがっている趣味の場所への参加支援にお金を給付しないのが介護保険制度である。単なる楽しみを得る機会を持つことは罪なのか・・・。それは何故保険給付対象ではないのか。人はパンのみで生きているにあらずである。趣味や楽しみの機会に参加支援されることで、心が晴れやかになって、生きる喜びが得られるならば、それが自立支援や日常生活活動の向上につながるのだから、公費や保険料を使うのにはそぐわないという論理は破たんしている。人間は機械ではなく、介護は単なる体のメンテナンスではない。」とつぶやいたところ、友達としてつながっている人から次のようなコメントをいただいた。
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オーストラリアの施設を数件見学に行きました。実地指導は3日間。利用者の生活満足度の聞き取りもあり、不満があると減算になるそうです。他にもいわゆるレクリエーション的な余暇活動が一日に複数無いと減算。ダイニングテーブルにテーブルクロスが無いと指導対象になります。
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日本では、「利用者の生活満足度の聞き取り」を加算評価に取り入れようとしても、満足度は極めて主観的なもので、人によって差があるのだから加算評価にはそぐわないとされて、絶対に取り入れられない評価軸である。

しかし感情のある人間が受ける介護支援というサービスに、利用者満足度という視点がないのはおかしと思う。満足度は個人差があると切り捨てるのではなく、個人差があったとしても、その声を拾い上げる方法論を探すべきではないのか・・・。

その点オーストラリアは、利用者の満足度を何よりも有効な評価軸と考えているのである。そこでは利用者の不満の声も、個人の感性で差がある問題だと切り捨てることなく、減算という形で負の評価が与えられるのだ。

だからこそオーストラリアの介護事業者は、一人ひとり感性の異なる利用者のすべての方々に、満足感を持っていただこうと、サービスに個別性を求めて工夫するのではないのだろうか。

こうした評価がされることで、集団的処遇とは無縁の介護サービスが実現するのではないだろうか。

日本の評価は数値一辺倒で、利用者がどう思っているかなど初めから気にかけない方法である。

加算のみならず実地指導もそれは同様だ。部屋から一歩も出ないで、利用者の顔を見たり、声を聴くことなく、利用者の息遣いを感じ取れない場所で完結している。それが科学的評価だと言われる。

人の暮らしを支援する評価軸が、そのような状態のままで良いのだろうか。科学的介護という言葉のみが先行して、そこから人の感情がどんどん無視される介護の成れの果てが、介護という荒野にならなければ良いのだが・・・。

オーストラリアは利用者の息遣いを感じ取れる場所で評価を行い、ダイニングテーブルのテーブルクロスまでも評価基準に加えている。

そんなことに人の温かさを感じるのは僕だけなのだろうか・・・。
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