コロナ感染第8波は、北海道ではピークダウンを迎えたが、そのほかの地域は以前と厳しい状況にある。
感染の波といっても、若年層や壮年層で健康な人にとっては、現在の状況は致死率がゼロという、「ただの風邪」というレベルの問題かもしれない。
しかし高齢者や持病のある方にとっては、依然としてコロナは重篤な状態になりかねない危険な病である。
そういう意味では、高齢者施設におけるクラスター感染は深刻な問題といってよいが、12/26時点でのクラスター発生状況は、過去最多だった前週より更に69件多くなったと報告されている。
そのような中、昨日僕が管理する表の掲示板に、「コロナクラスターにおける特養での食事回数」というスレッドが建てられた。
感染者等が休まずを得ず職員不足が生じたため、業務が回らないという理由で食事の提供回数を3回/日から、2回/日に減らすことは問題ないのかという質問である。
リンクを貼りつけたスレッドにも書いた通り、介護保険施設の運営基準を定めた省令には、食事の提供回数の定めはない。
しかしそれは食事提供回数は勝手に介護保険施設が決めてよという意味ではなく、食事は朝・昼・夕と日に3回摂ることが社会常識であり、法令に定めるまでもないという意味でしかない。
現にQ&A等では、食事を朝・昼・夕に分けて提供することを前提とした疑義解釈が示されているし、さらに「老企第43号 介護老人福祉施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」の12食事の提供(基準省令第14条)では、(3)適時の食事の提供についてとして、『食事時間は適切なものとし、夕食時間は午後6時以降とすることが望ましいが、早くても午後5時以降とすること。』という定めもある。(※この規定は、夕食をなしにすることは得あり得ないという規定であり、朝・昼食もなしにすることはあり得ないことを示している。)
よって入浴支援を最低限2回/週しなければならないのと同様に、食事も日に3食、朝・昼・夕に分けて提供していなければ、「適切な時間に提供していない」として運営基準違反で指導対象となる。
これはコロナ禍という特殊な状況でも同じなのだろうか・・・。それを確認するため、厚労省サイトのコロナ特例通知を確認してみよう。
コロナ特例としての人員基準等の臨時的な取扱いを読んでみても、配置基準を満たさなくても良い特例や、定員超過を認める特例は示されているが、介護施設等で介護支援に関する運営基準を満たさなくてよい特例は示されていない。(※文字リンク先を参照してほし)
よって介護や食事の最低基準は遵守する必要があると言ってよい・・・。しかし実際に介護職員等が感染によって出勤できない場合に、この基準をすべて遵守して仕事を回すことは不可能であることは、誰が考えても当たり前のことである。
その場合は緊急避難として、運営基準に沿わない対応もやむを得ないとされるのは当然だ。現に北海道で最初にクラスター感染を起こした札幌市の老健施設は、入浴や食事の基準を満たさない期間が生じたが、それに対して運営指導が行われたという事実はない。
よって厚労省通知がない特例も、緊急やむを得ない場合は認められると考えてよいのだ。
しかし後々、利用者や家族、はたまた外野からいわれのない非難やクレームを受けないために、この緊急避難にも根拠を与えておきたい。
その根拠を行政担当課との事前協議に求めたとしても、行政担当課が明確に許可を与えてくれるとは限らないし、スピード感が求められる緊急対応に即応した判断が示される可能性は低いだろう。
よって他の根拠を求めなければならない。それが業務継続計画(BCP)である。

BCPは2021年の基準改正で全介護事業者に策定義務が課せられている。(※ただし2024年3月いっぱいまでに策定すればよいという経過措置期間がある)
BCPは災害や感染症が発生するなどの有事に、事業継続ができなくならないように策定すべきものであり、緊急事態を乗り切り事業廃止にならないようにする方策を盛り込むものだ。
よってBCPの中に、緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)をきちんと盛り込んで、いつ・いかなる時に、緊急避難対策を取るかということを明確にしておく必要がある。
そのうえで職員が欠勤せざるを得なくなった際の、職員出勤率毎の介護の優先順位を決めておくことが重要だ。
出勤率によっては、3大介護と呼ばれる、「食事」「入浴」「排泄」もすべて基準通りに支援できなくなる恐れがあり、その際にどの介護を優先的に行うべきかを決めておく必要がある。
当然、食事は最優先して提供しなければならないものであるが、それも1日に3食という基準が護れなくなる想定もしておく必要がある問題だ。
BCPで最も重要なことは、『人命を護るために優先しなければならないことは何か』ということであり、運営基準に沿わない対応も必要になる場合があるという想定の中で、人命を護る最低限の介護の在り方を盛り込んでおく必要があるのだ。
それを拠り所として運営基準に沿わない対応が行われたとしても、根拠があっての緊急避難だとして、誰もそのことに文句はつけられないだろう。
だからこそ緊急避難の対応発令の時期や内容がBCPにきちんと盛り込まれていることが重要になるのだ。
今後BCPを策定する介護事業者は、このことをきちんと盛り込んで策定をしなければならないし、既にBCPを策定し終得ているという介護事業者も、今一度、このような内容が盛り込まれているかを確認してもらいたいと思う。
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