介護事業におけるストレスマネジメント・メンタルヘルスケアに関連する講演を行っている関係で、介護事業者から個別に、「従業員のメンタルヘルスをチェックしてほしい」という依頼を受けることがある。
その際は、対象となる従業員全員と個別の面談機会をもって、職場内で感じるストレスは具体的にどういうものかということを調査する。
ただし初回面談からストレスの原因(ストレッサー)が確定できる人は少ない。多くの場合、本人にも自覚がないストレスがジワジワと心を蝕むのである。
そういう人々に面談を重ねてストレッサーを特定していくわけだが、多くの場合それは「人間関係」であることが多い。しかも介護事業者に勤める従業員のストレッサーも、多くの場合、利用者ではなく他の従業員・・・上司や同僚の存在がストレッサーであるというケースがあぶり出されてくる。
ストレッサーを特定しなければならない理由とは、メンタルヘルス不調の原因となるストレスを解消、あるいは緩和するためには、ストレスを感じた時の問題を正確に捉え、ストレスの要因や自分の感情への働きかけによるストレス対処法(※ストレスコーピング)が必要になるからだ。

例えば、ストレッサーが特定の人間の行為である場合、直接相手に「やめてください」と伝えて、問題となる状況が再発しないように働きかける必要もある。
それが無理なら上司に状況を訴えて配置転換をしてもらうことも必要だし、それも困難である場合は、自分の心と身体を護るために自分自身にとってストレスフルな職場をやめるという判断も必要とされる場合があるのだ。
このようにストレッサーと向き合って初めて解決方法が見いだせることが少なくないために、面談を重ねてストレッサーを特定する過程は必要不可欠と云えるのである。
その結果、人が原因のストレスについては、パワハラ・モラハラ・セクハラ・いわれなき暴言などがあぶり出されてくるが、介護業界で意外と多いのが、「上司や同僚による、利用者に対する不適切な対応」である。
特にストレッサーと感じられやすい不適切対応とは、あからさまな暴力・暴言ではなく、利用者に対する心無い無礼な対応・タメ口対応など、耳をふさぎたくなる口汚い言葉かけである。
本人は悪気はないのだろうが、人生の大先輩であり、顧客でもある利用者に対して、聞く方が不快に思う言い方で対応する上司や同僚の姿を毎日見たり聞いたりしなければならない職場環境そのものが大きなストレスとして積み重なり、知らず知らずのうちにメンタルヘルスを損ねる結果となる介護事業者の従業員は考えられている以上に多いという印象がある。
しかしそうした問題をストレスとしてとらえ、メンタルヘルスを悪化させる人自身は、介護事業にとって得難い資質を持った人財であると云えるのではないだろうか。
そういう人々が、上司や同僚の口汚い利用者対応によって、メンタルを低下させてリタイヤするとしたら大きな損失どころの騒ぎではなく、それは介護事業者としての存在意義を問われる問題と云えるのかもしれない。
だからこそ、「言葉は太陽にも、北風にもなり得る」という自戒の念をもって、「介護サービスの割れ窓理論」を取り入れ、日常的にサービスマネーをもって利用者対応ができる職場づくりに努めることが大事になる。
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感動の完結編。
