5/28にオンライン配信した認知症基礎講座のアンケート結果を読むと、「カンフォータブルケア」に興味を持たれた方が多いことがわかる。(※文字リンク先を参照願いたい。)
同時にその言葉を初めて聞いたという人も多いことが分かった。
そこで改めてカンフォータブルケアとは何かということを説明しよう。
そもそも辞書を引いても、カンフォータブルケアなどという言葉は出てこない。これは和製英語の造語だからである。
この言葉を造った人は、カンフォータブルケアの生みの親ともいえる、札幌市の精神科医療機関・認知症専門棟の男性看護師長である。
その方が認知症専門棟の担当になった際に、認知症の人に良かれと思い一生懸命に対応しても、なかなか思った通りの良い反応や結果につながらなかったという。
薬物療法も効果が出ず、逆に副作用からふらついて転倒・骨折に至り、徘徊という症状が、寝たきりという結果によって消失するという、決して問題解決とは言えない状態で終息したことも多かったそうである。・・・それは当たり前と言えば、当たり前ではある。
こんなふうに専門的に医療や看護対応を行えば行うほど、認知症の人にとって負の影響を与える結果になることが多かったそうだ。
そのことに気づいて、いろいろ試した結果、たどり着いた方法がカンフォータブルケアだったのである。
それは看護の専門家が、認知症の方々に接する方法がベストであると選択した方法論とは、介護の方法論であったという意味でもある。
カンフォータブルケアとは、心地良い快刺激を与えるケアという意味であり、認知症の方々に対応する際に、看護・介護職員が良かれと思って、「善意」で行った方法であっても、対応される側の認知症の方がそれを、「いやだ」と言ったり、動作で拒否感を示した場合、それはすべて間違った方法だとして、決して行わないことが前提になる。
そのうえで、行うことはたった3つ。「目を見て話しかける」・「笑顔で話しかける」・「丁寧な言葉で話しかける」
これだけである。対応すべき認知症の方が主役であり、私たちはその方々をしっかり見つめて護りますという意思を示す際に、厳しい表情で相手を見つめては、認知症の人が恐れを抱く。だから笑顔で丁寧な言葉で話しかけることで、認知症の人たちの行動・心理症状(BPSD)が鎮静化されるのである。そしてそのことによって看護者・介護者にとっても、ストレスフルな感情の払拭や患者への陽性感情をもたらし、技術を高めるプロ意識の発生とモチベーション向上により燃え尽き防止にもつながっていくのである。
3つの基本対応に徹するというたったそれだけのことで、「本当にそんな効果なんてあるの?」と疑う人がいても当然だ。あまりにもその方法は非専門的であるように思えるからだ。
しかし今、その看護師長が働く病棟には、全国の精神科医療機関から見学者や実習希望者が訪れ、それらの人々が自分が所属する医療機関にその方法を持ち帰って実践している。
看護師が中心となって、「カンフォータブルケア学会」という全国組織も創られ、各地域に支部も誕生している。
北海道の一医療機関の実践方法がこれだけ全国に広がりを見せているという意味は、その方法に効果が認められるからに他ならない。
目を見て・笑顔で・丁寧な言葉遣いで認知症の人たちに対応するだけで、認知症の人の混乱が消え、豊かな暮らしに結びつくのである。
もともと認知症の人は、情報を記憶に変換する回路である、「海馬」の機能不全が原因で、記憶障害が生じ、信頼できるケアを提供する人の顔も記憶できない。
そのためそれらの方は、「知らない人が、なぜ自分に話しかけてくるのだろう。」・「年下の人間がなぜ自分に横柄な言葉や態度で接してくるのだろう。」という気持ちを抱き、それが不安となり、混乱していく。
対応する職員がすべて、そうした不安や混乱を生じないように、目を見て・笑顔で・丁寧な言葉遣いで対応してくれるとしたら、それで混乱が生じなくなることは極めて合理的な説明ができるというものだ。
だからこそ認知症の人であっても、そうでない人であっても分け隔てなく、年上の利用者の方々を意識した、「サービスマナー教育」が重要となるのだと思う。
認知症の理解や、サービスマナーをすべて含めた研修講師も務めているので、それらに関する講演を希望する方は、是非お気軽に相談願いたい。
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