masaの介護福祉情報裏板

介護や福祉への思いを中心に日頃の思いを綴ってみました。表の掲示板とは一味違った切り口で、福祉や介護の現状や問題について熱く語っています!!表板は業界屈指の情報掲示板です。

介護ロボット

見守り機器導入効果は高く、自信を持って推奨できますが・・・。


介護の場で利用できる、「見守り機器」は、年々進化の一途を辿り、その性能は大変優れていると思う。

介護施設等の夜勤帯では、「見守り機器」を導入することで、定時巡回をしなくてよくなるので、夜勤者の業務負担は大幅に削減されることは間違いのないところだ。

例えば定時巡回時間が減ることで、その時間に記録業務を行うことができれば、記録すべき書類を家に持ち帰ってプライベートの時間を削る必要もなくなる。

自宅での書類仕事など最初からしなくてよいことだし、すべきでないという正論は、介護職員の業務実態を知らない人の戯言(ざれごと)でしかない。多くの介護事業者で介護職員が支援記録を家に持ち帰って記録しているという実態があるのは事実だ。

そうせざるを得ないほど介護現場の業務は記録に追われているという一面があるのだ。それは国が声高に喧伝する書類削減によって減らされているのは、事務書類だけで、介護職員の書くべき記録は報酬改定のたびに増え、そのことに介護業務が振り回されるという実態も表している。こうした記録業務の時間が別にとれるようになるのも、定時巡回をしなくて済むメリットの一つだ。

それ以外にも、定時巡回をなくすことで可能になる業務は多々ある。それぞれの施設の事情に応じて、一番必要な業務なり、あるいは職員の休憩を組み入れるなどして、サービスの品質もしくは、職員の仕事のパフォーマンスを向上させる方向に繋ぐことができるのが、「見守り機器」の活用だ。

このような「見守り機器」を開発している日本のメーカーは、その技術を大いに誇るべきだし、我々介護関係者は、その技術力の高さを讃えなければならない。それは嘘のない素直な気持ちである。

ところがこのように性能の高い見守り機器の利用を、国は介護現場の配置人員削減とセットにするという方向で舵を切っている。

見守り機器を導入して業務削減が図られた分を、職員の休憩を増やして心身負担を減らそうという方向でもなく、他の業務が出来る可能性を探ることで介護の品質アップにつなげたり、サービス残業を減らしたりする方向ではなく、それをそっくり人員不足の対策に充てて、職員が少なくても仕事ができるように運営基準を緩和しているのである。

それは介護現場の職員が望む方向ではないし、結果的に夜勤に従事する職員の業務負担は増え、仕事のパフォーマンスは低下し、心身の負担は増加し疲弊していくだろう。

それは間違った方向ではないかということを、このブログでは再三指摘し、先日も、「夜間配置の試行期間が終わりますが・・・。」を書いて懸念しているが、勘違いしてほしくないのはその考えは、見守り機器の性能を疑っているという意味ではないということだ。

前述したように、現在日本のメーカーが市販している見守り機器の性能自体は世界一である。それは介護現場で使いこなすに際して、これ以上ないほどニーズに合致した性能と言えるのである。

ただし見守り機器という製品の性格上、人に変わって介護をしてくれないという当然の結果として、見守り機器を導入したからと言って、そこで介護業務を行うべき人の数を減らしてよいということにはならないということでしかない。

この僕の主張は、国の見守り機器活用の目的と方向性からは外れていると言える。厚労省の役人からすれば、見守り機器の導入を図っているのに、配置人員を緩和できないのでは意味がないという理屈になる。

見守り機器メーカーも、国からの推奨を受けるためには、「当社の見守り機器の導入によって、夜勤職員の配置数を減らして、人員不足に対応することができる」と喧伝したいと考えて当然だ。

だから見守り機器メーカーがスポンサーとなる研修会や講演会では、そういう方向で見守り機器を解説して推奨してくれる講師が求められており、「見守り機器は優れているけれど、それをもって介護現場の人員を削るのはまずい」という本音を語る僕は、講師として呼ばれることはない。

講師依頼を受けた研修の事前打ち合わせで、「こうした内容で話をすることになりますけど、それでよいですか」と問いかけるときに、「スポンサーは、見守り機器のメーカーなので、それは少し困ります」という話になって、「それではまたの機会に」ということでお断りさせていただいた研修講師依頼は決して少なくない。

それは事前の講師依頼の照会の中での話し合いだから十分ありだろう。そのことで僕が気分を害することはない。僕が本音で語ることを聴いてくださる研修会や講演会でなければ、僕が語る必要はないのである。

だがそうした研修会ばかりだと、少し心寂しくなるのも事実だ。

さすれば逆説的に言えば僕が今後、「見守り機器」について講演する際に、そのスポンサーの中に、見守り機器メーカーが含まれているとすれば、その見守り機器メーカーは、僕が見守り機器=人員削減ではない、ということを語ることを事前に承知しているメーカーであり、それだけ製品に自信を持っているということだ。

そういうメーカーの見守り機器は、介護現場で安心して導入・利用してよい製品であると言ってよいのではないだろうか。

そういうメーカーのスポンサーが、僕の講演を主催又は講演してくれる日が来ることを願っているところだ。

そんな研修会が実現したら大々的に広報するので、読者の皆さんに数多く参加していただきたいと思う。・・・どっかないかな〜!!
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機械や技術が人に替わることができるという幻想社会が生み出すもの


8日の経済財政諮問会議で、政府は今年の「骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)」の原案を提示した。

そこには、「人手不足に対応するとともに、対面以外の手段をできる限り活用する観点から、サービスの生産性向上に重点的に取り組む」と記されている。さらに見守りセンサーやインカム、ICT、ロボットなどの現場への導入について、「効果検証によるエビデンスを踏まえ、次期介護報酬改定で人員配置の見直しも含め後押しすることを検討する」と明記されてる。

その意味は、介護ロボットや見守りセンサーを導入した場合に人員配置規準を下げて、人手が少なくて済むようにするという意味だが、これで喜ぶ現場職員はいない。

アニメの宇宙戦艦ヤマトに登場するアナライザーのようなロボットが存在して、人に替わってロボットが介護業務をしてくれるのであれば人員を削減できるのだろう。しかし人と同等かそれ以上の仕事をしてくれるロボットやセンサーが存在しない現状でこの方針を強行すれば、介護サービスの場で働く職員は疲弊し、その負の影響はケアサービスの品質の低下となって現れるという結果にしかならない。

そういう意味では、ロボットや通信技術が人に替わることができるという妄想で、配置規準を下げたときに、一番被害を被るのは質の低下したサービスに甘んじねばならない利用者なのだと言えるわけである。

このことはこのブログで再三主張してきたが、ロボットやセンサー・ICTが人にとって代わることで、介護人材不足を補うことができるという幻想的主張が、国の会議で繰り返されているのだから、その反論となる主張も繰り返していかなければならないのだ。

配置規準などいじられる状況にないことは、介護施設の看護・介護職:利用者比が3:1であるにもかかわらず、多くの施設でその配置では職員の負担が多すぎて、2:1に限りなく近い配置をしたり、しようとしている現実を見れば明らかだ。3:1の配置基準自体が形骸化して、それ以上の職員配置が必要とされている中で、実用化されてもいない介護ロボットに頼る配置基準の引き下げができるかどうかという答えは明白なのだ。

要介護3以上の人がほとんどの施設で、自分自身が夜勤をすることを想像してみてほしい。今存在するあらゆる機器を備えた施設があったとして、それを理由にして今より一人少ない夜勤者で対応できるだろうか・・・。

現在介護施設の夜勤配置者基準では、利用者が100人の場合、4名の夜勤者が配置されておればよいことになっている。つまり一人平均25名の利用者の対応を、10時間を超える夜間勤務中にこなさねばならないのだ。

勤務時間が10時間を超えるからと言って、夜勤時間帯には利用者が眠っている時間が大半だから実労時間は少ないし問題ないだろうと考える人は、介護の現状を全く分かっていない人だ。

100人が暮らす施設であれば、夜勤時間帯にすべての人が眠っている時間などわずかであり、何らかの理由で誰かが起きており、その対応もせねばならないし、起きていない人の体位交換やおむつ交換といったルーチンワークも絶え間なく行う必要がある。そのため決められた仮眠時間さえ取れないことがあるのが夜勤の実態だ。その業務に対応する職員が対利用者比25:1なのである。

そこに高性能の見守りセンサーがいくら設置されたとしても、見守りセンサーは実際の介護をしてくれるわけではなく、人間に替わるアナライザーも存在しないのだ。そんな現状で、どこかの時間帯の夜勤職員を4人から3人に減らせるわけがないのである。減らしたとしたら、それは残り3名の夜勤者の業務負担が増えるだけの結果にしかならないのである。夜勤者はそこで体と心壊していくことだろう・・・。

勿論これらの主張は、介護ロボットや見守りセンサー・ICT等を介護サービスの場に導入することを否定するという意味ではない。それはもっと数多く導入すべきだし、導入した機器が人間の手助けになるように技術革新もすべきである。それは生産年齢人口がさらに減少し、介護人材の減少を防ぐ手立てとして決め手が見つからない対策の一つとしては重要だ。

だからこそ機器技術進歩のための研究助成金などにお金をかけることは否定しないし、一番進歩した機器を早急に介護サービスの場で使いこなせるように、導入補助を行うことは否定しない。

しかし同時に、介護職員を減らせるほど機器技術は進んでおらず、介護の場で実用化できるとされている介護ロボット・介護支援ロボットも、限られた場面でしかその機能を発揮できないという現実を知るべきでなのである。

開発した製品を早くたくさん売りたいメーカーの甘言に躍らされて、実際以上にその効果を高く考える政治家や官僚が多すぎるのだ。自分で介護ロボット等を使ったことがない人間が、メーカーの担当者の口車に乗って、ありもしない効果があると信じる有識者によって、介護事業者はバーチャルリアリティの中で仕事を強いられることになる。

そんな現実感に欠ける場所で口にされる、「効果検証によるエビデンス」など幻にしか過ぎず、そこでは空しい悔悟サービスが展開されざるを得ないのである。
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介護のデジタル化を加速させる波は何をもたらすのか


22日の経済財政諮問会議で、安倍首相は医療・介護のデジタル化を加速させるよう関係閣僚に指示した。

これは新型コロナウイルスの感染拡大によって、以前より更にデジタル化の必要性が高まったことによる指示である。

同会議では介護の具体策にも踏み込み、リモート介護予防サービスの展開やペーパーワークの徹底した効率化、ケアプランAIの活用などが注文された。

これを受けて加藤厚労相も、「介護報酬・人員基準を逐次見直す」と言明すると同時に、現場へのセンサーやICTなどの普及に力を入れると説明している。

具体的には、事業所の指定・更新申請や報酬請求などの大部分をWeb入力、電子申請のみで済ませられる仕組みの構築を目指す。事業所に保管すべき書類のぺーパレス化も徹底し、基本的にオンラインで事足りる環境の整備を図るという構想を、早ければ来年度中にも具体化までこぎ着ける計画を打ち出した。

このことは当然のことなら、介護分野の文書に係る負担軽減にリンクしている。しかしこのブログで何度も指摘しているように、国が取り組む文書削減とは、結果的に事務書式の削減だけに終わっており、介護事業者が本当に必要とする書類の削減にはつながっていない。

介護関係者が最も望んでいることは、看護・介護職員等の直接処遇職員の記録にとられる労務負担が減って、利用者対応の時間が十分とれることに他ならない。このことが実現すれば、もしかしたら現状の体制で、利用者に対して必要なケアが、今以上に可能になるかもしれないし、場合によっては、人員不足の対策としても有効に働くかもしれないわけである。

しかし事務書類がいくら減っても、介護サービスの場には何も関係ないことで、人手が足りないことの対策としては全く無効であると言わざるを得ない。

特に介護報酬には改定の度ごとに新しい加算が創られて、報酬構造が複雑化している。加算算定のためには算定要件をクリアしておく必要があり、実地指導ではそのことが重点的に確認される。そのため介護事業者には、加算要件をクリアしているという証拠としての記録の整備が求められているわけだが、この記録は主に看護・介護職員の業務となってのしかかっているのだ。介護人材不足が叫ばれる中では、こうした看護・介護職員が担っている記録業務減らさねば、介護崩壊の恐れさえ現実化するのではないだろうか。

この危機意識を国や国の会議参加メンバーはわかっているのだろうか・・・。

そんな中で、現場へのセンサーやICTなどの普及が進むことは、夜間の定期巡回回数を減らすなどの一定の業務負担の軽減効果が見込まれる可能性があり、介護事業者は積極的に補助金等を活用して、実用できる機器導入に努める必要あるだろう。

だからと言って見守りセンサーやICTが、介護事業者の日常アイテムとして普及した先に、人員配置規準を下げて、人手を掛けなくて済む介護事業が実現するなどという幻想を抱いてはならない。(参照:人員配置基準緩和で喜ぶ職員なんて存在しない

所詮、センサーができることとは、何かあったという『知らせ』だけであり、そこで起きたことに対応すなければならないのは、センサーでもICT機器でもなく人間なのである。

ところで国のこうした方針は、次期報酬改定にも反映される可能性があり、前回の報酬改定で議論となった、「介護ロボット導入加算」も再度議論の俎上に上る可能性が高まった。

コロナウイルス禍で経済が低迷している現状の中で、介護ロボット産業は国にとって一縷の望みの綱である。介護ロボット技術は日本が世界一なのだから、日本の介護現場で介護ロボットが実用化され普及すれば、それは世界に輸出できる有力なベンチャー企業を生み出すことにつながるわけである。それは大きな経済効果をもたらし、景気の上昇につながるであろう。よって国は是非とも介護ロボットの導入を進めたいわけだ。

つまりこれは福祉・介護政策ではなく、経済政策の側面が強いことを理解しなければならない。

人に替わって介護ができるロボットができることに超したことはないので、ぜひその実現を図ってほしいが、現状ではそうなっていない。今実用化が期待されている介護ロボットとは、介護をする人を支援する効果はあっても、介護ロボットだけで介護を受ける人に必要なサービスを提供できるようなものではない。(参照:介護ロボット問題全般の記事

今後10年というスパンを睨んでも、その技術は我々の想像を超えて発達するとは思えない。人間の複雑な関節の動きや、感情表現に追いつくロボットなど想像できないのである。

どちらにしても22日の指示事項は、指示した人の面子を立てるためにも何らかの形で実現が図られていくだろう。介護現場のリモート化は間違いなく進んでいくが、その際に念頭においてほしいのは、電源喪失の際の備えである。

僕は2012年11月に、特養の施設長という身で登別大停電を経験した。【参照:登別大停電の影響と教訓その1)・(その2)】

その6年後の一昨年は、胆振東部地震にともなう北海道全域のブラックアウトも起こっている。

そのことを考えると、地域全体に影響が及ぶような停電は、決して稀なことではないと言えるのだ。当たり前のことであるが、停電の折には電気に頼り切った業務はすべて停まってしまう。事務処理が1日や2日滞ることは、後で十分とり戻すことが可能だろうが、人に対する介護という業務が、電源喪失の途端に滞るようなことがあってはならない。それは決して後に取り戻せるような問題ではなく、人の命にかかわる問題となりかねないのである。

デジタル化・機械化が進む中では、そのことの備えもより重要になってくる。自家発電機は通常装備品であると考えていかねばならない。

さらに言えば、こうした流れは電気の使用量の大幅な増加をも意味しており、事業経営を考えると、電気料金の削減は、収益上大きな要素となることも改めて意識しておく必要があるのだ。
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医療崩壊を防ぐためには特攻医療や特攻看護をやめなきゃ。


先週ついに僕が住む登別市でも、新型コロナウイルス感染症の初の感染者が出た。感染したのは海外渡航歴のない80代男性で、昨日になってその濃厚接触者である70代女性も感染していることがわかり感染者は合計2名になった。

感染者情報を巡ってはネット上では不確定情報も含めていろいろな情報が広がっているが、そのような情報に振り回されることなく、自分の身の回りの感染予防対策に意識を集中したほうが良いだろう。どちらにしても国内でも有名な観光地である登別温泉がある地域なので、このダメージは大きなものになるだろう。

こうした状況が続く中で全国の医療機関がピンチだ。新型コロナウイルスに対応できる病床が感染者で埋まり、8都府県で空きベッドが20%未満になっているそうだ。この状況で医療機関内でクラスター感染が起きて、医者や看護職員が感染したら医療崩壊は現実になる。

新型コロナウイルス患者を受け入れていない医療機関でも、感染者が出ないとは限らないのだから、この対策はいくら万全にとったとしても完璧ということにはならない。

しかしこんな深刻な状況なのに、なぜ医療・看護関係者は徒手空拳の状態で、ウイルスが漂っているかもしれない空間に突撃していくような行動をとるのか大いに疑問だ。この状態で検温のために、数時間ごとに患者に接触するなんてことも危険すぎるとしか言いようがない。

現在新型コロナウイルスのワクチンは存在していないし、治療法も確立されていない。一旦感染したら命の保証はないにもかかわらず、薄い防護服とマスクに頼って、ゴーグルさえ装着せずに患者との濃厚接触を1日複数回行っている状態は危険を通り越して、特攻精神の強要としか思えない。

せめてゴーグルも必ず装着して患者対応すべきだと思う。そして濃厚接触する機会はできるだけ減らした方が良いと思う。特に今後は、軽症者はホテルで隔離されるケースが増えていくが、換気の悪い狭い空間で隔離される状態は、3密を防ぐ対応とはかけ離れた対応を余儀なくされ、そこで患者と接触する医療関係者の感染リスクは、さらに大きなものになりかねない。

そういう意味でも非接触型の医療・看護対応をあらゆるシーンで取り入れるべきだ。特に検温なんかは今使える機器を利用するだけで、非接触で行えるのに、その対応もしていない医療機関が多いのは何故だろうと思う。

例えば僕が何度か紹介している、「ウォッチコンシェルジュ」という遠隔見守り看護システムは、こういう時期の感染症発症者の隔離空間で大いに利用すべきだ。このシステムは、ワーコンという会社で実用化しているものだ。
ワーコンのみまもり看護システム
この画像はベッドの下部に生体センサーを設置して、画面左側のピンク色の医療用看護ロボットanco(アンコ)を設置している部屋である。

アンコにアプリを入れておけば、アンコが利用者に話しかけそのまま検温や脈を図ることができるのだから、1日複数回の検温のためだけに看護師が病室やホテルの部屋を訪ねる必要もない。ベッド用のセンサー以外に、フロア用の生体センサーを設置することで、隔離室にいる人の生体情報が24時間もれなくモニターでき状態確認できるわけだから、医師の訪室も最低限に抑えることができる。在宅医療用対話ロボット「anco」
こうした機器を利用しながら、危機管理することが今一番求められているのではないかと思う。実際に九州の医療機関では、ワーコンの生体センサーとみまもりロボットを使って、隔離室の患者対応しているとことがある。

前述したように、ホテルで軽症の感染者を隔離する場合には、ぜひこうした機器を設置して、テクノロジーの力を借りながらウイルスと対峙していってほしいものだ。そうしないと感染拡大の期間はさらに長期化してしまう。

どちらにしても医療・看護・介護支援者を護る戦略に欠ける状態で、人海戦術に頼ったウイルス対応を行うことは特攻戦術そのものであり、決して望ましい結果につながるものではないと指摘しておきたい。
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VRを利用した看取り介護


VRとは、バーチャル・リアリティ( virtual reality)の略語で、「仮想現実」と訳されている。

VR体験装置を装着した経験を持っている方も多いだろう。一番普及しているのは、頭部に装着してすっぽりと視界を覆う「ヘッドマウントディスプレイ」(HMD:Head-Mount Display)装置である。でっかい水中メガネのような機械である。

幻視のある認知症の人たちが、どんな日常の中にいるのかを体験するためにVR体験装置を装着した経験のある介護関係者は多いのではないだろうか。そこでは実際にないものが見えたり、空間認知機能の低下した認知症の人には、段差が巨大化して見えたり、平衡感覚を失って立ちくらみするのと同じ体験をすることができ、認知症の人が生きる現実の一部を知ることができる。

その体験は、認知症の人に対するケアを考える上では、相手の立場に立って考えるための助けになるだろう。(※だからと言って、認知症の人の現実のすべてが理解できたと勘違いされては困るのであるが・・・。)

このVRをターミナルケアの場において利用しているところがあることを、神戸新聞のネット配信記事が紹介している。

終末期のがん患者の願いをかなえるため、兵庫県芦屋市朝日ケ丘町の市立芦屋病院の緩和ケア病棟で、仮想現実(VR)の装置が活用されているという記事である(6/7(金) 10:28配信 )。ネット配信記事は一定時間経過後に削除されてしまうので、一部を下記に転載させていただく。
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中皮腫を患い、緩和ケア病棟で過ごす同県尼崎市の男性(66)は5月末〜6月初旬、ベッド上でVRヘッドセットを装着した。「自宅を見たい」という男性の願いを受け、妻(59)と三女(26)が、360度カメラで撮影したリビングや寝室、ヤマモモやモクレンが育つ庭、愛車などの映像が流れた。

妻と三女は「本人目線で、歩いているように撮影した。パパがいつも座っていたソファに座り、好きなゴルフ番組にチャンネルを合わせた。13年間乗った車の運転席では、運転気分を味わえるよう工夫した」と話す。男性は「まさか見られると思ってなかった」と感想を漏らし、特に愛車の場面の再生を繰り返した。
(中略)
ふるさとや結婚式をした思い出の地、旅行先など患者の望みに応じ、関西や九州など各地で映像を撮影。衛星写真による「グーグルアース」も活用した。飛騨高山でバスの運転手をしていた男性は「運行ルートをたどりたい」と要望した。自宅の仏壇の前に座りたいという人もいた。

体験前と体験後にアンケートで感想を尋ねたところ、不安感が減り、楽しみや幸福感が増す傾向が見られたという。(転載ここまで)
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このブログで何度も書いてきたように、看取り介護とは安心と安楽が必要とされるケアであり、同時に人生の最終ステージを過ごす人の、「命のバトンリレー」の場でもある。そのためには逝く人と残される人の間で、様々なエピソードを刻まれて、それが両者の記憶に残されていくことが大事である。

そこでは逝く人が余命宣告を受けている場合もあり、自らの人生の最終ステージを意識したエピソードの刻印も重要となることが多い。そんなときに、思い出の場所や憧れの場所に、VRを利用して行った気分になれたり、したかったけれど、できなかったことを体験した気分になれることはとても素敵なことではないかと思う。

僕とFBでつながっている医療ソーシャルワーカーの島崎友香さんは、自らの体験に基づいて、終末期のVR利用の効果について、次のようにFBにコメントを書いてくださっている。
末期がんの患者さんと話をしている時、どこでもドアやタイムマシンがあったらな〜と毎度思います。
実際に、状態の良い時を見計らってなんとか行きたいところに行けた、会いたい人に会えた患者さんの最期は安らかです。見送るご家族の表情も違います。
また、患者さんが喜んでいる姿という、末期においてなかなか見ることのできない光景を医療職が見る、その感情をご家族含め共有するというのは大きいです。介護でも、このような使い方ができるといいですね。
余談ですが、うちの兄は闘病中吉田類の酒場放浪紀を見て幸福感を得ていました。(笑。


こんな風に人生の終末期に人は、かつての思い出の場所や憧れの場所に思いを馳せたりするのである。その時、仮想現実とは言えVRが「どらえもんのどこでもドア」のように思いを馳せた場所に人を連れていくことができるとすれば、それは終末期の暮らしに潤いを与えることではないだろうか。

そういう意味では、看取り介護の時期の安楽な過ごし方や、残された貴重な時間を有効に使う方法として、VRは様々な可能性を生み出すと言っても良いように思う。

だからこそ看取り介護に取り込む特養などでは、その導入を積極的に検討する価値は十分あるだろう。

僕が今後行う、「看取り介護講演」でも、看取り介護期にVRを利用したケースを紹介していこうと思ったりしている。

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人が行うことで生まれる価値


少子高齢化が進行する中で、人口減少社会に突入した我が国では、生産年齢人口の減少がさらに加速して、日本中の全産業で人手不足感が広がっている。

そんな中で人に替わってロボットをはじめとする機械が仕事をする場面が増えている。

某大手中華料理チェーン店では、人気メニューである炒飯の鍋振りは、人に替わって「鍋振りロボット」という機械が行ってご飯を炒めている。火加減の調整や作業の終了もオートマチックである。その時に人間がすることは、鍋にあらかじめ決められた分量のご飯と調味料を入れてスタートボタンを押すだけである。

このような形がさらに進化していくと、いずれ料理自体も人に替わってすべてロボットが行うようになるのかもしれない。

しかしそうであっても人の手をかける必要性はなくなるわけではないだろうし、機械化が進めば進むほど、人がやることで価値が生まれる場面も増えることになるだろう。

機械化が進んだハイテクノロジー社会の差別化とは、機械に替わって人手をかけるということであるのかもしれない。

介護事業でも、人に替わって介護ロボットが仕事をこなす場面が増えるのかもしれない。今の現状を見ると、人に替わって介護を行うことができるロボットは存在しないし、人の行為を助ける介護支援ロボットも、介護現場で実用化するのには様々な問題が多すぎて使えない。唯一見守りロボットだけが実用化されているのが実態だか、ITやICTの急速な技術進化という現実を見ると、介護ロボットもあながち夢の世界ではないように思える。

介護ロボットが現実化したときに、人は介護ロボットに勝ることができるのだろうか。人に替わることができる介護ロボットができたときに、介護という行為の中で、人が行うことにこそ価値があると思われる行為は存在するのだろうか?

料理の場合は、味覚のないロボットに、味覚のある人が勝る場面は容易に想像がつくが、介護という職業を取り上げたときに、力のいる行為と、巧緻性の必要な行為の両方ができて、その行為をつなげることがAIによって可能になった時、そういうロボットに人間が勝ることができるだろうか。

コミュニケーションは人間の方が勝るだろうという意見があるが、汚らしい言葉で、馴れ馴れしく話しかけることが、「フレンドリー」であると思い込む輩によって、人生の大先輩である高齢者の心が傷つけられている現実を見たときに、そうとも言えないと思ってしまう。

むしろ心のないロボットに、AIによって会話ができる機能を組み込んで、常に丁寧語で受け答えができるようにした方が、言葉遣いで傷つけられる人がいなくなるというメリットははるかにあるだろう。

ましてや生活の疲れを仕事に引きずるような人は、その人の機嫌によって介護の質が変わってしまうし、利用者は常にその人の顔色を窺って介護を受けなければならなくなるので、そんな人に介護を受けるくらいなら、感情もなく機嫌に左右されない介護ロボットに介護を受けたいと考える人が多くなるのは当然の帰結だ。介護ロボットを早く作ってほしいと考えるの人が増えることも至極当たり前ともいえる。

そう考えると、人間ができることで、ロボット以上の価値を生み出すためには、その場にいる利用者の表情を見て、言葉を聴いて、感情を読み取りながら、より適切な対応に終始できる感性を磨くことでしかないような気がする。その際に言葉遣いをはじめとしたサービスマナーを身につけているということは付加価値ではなく、絶対条件であることに気が付かねばならない。

本来、介護ロボットとは、介護に従事する人を助けるもので、人が利用するものである。それらと人間が勝ち負けを争うという考えは間違っているが、そのことを考えなければならないほど、現状の介護事業従事者の態度には目に余るものが多すぎる。目を覆いたくなる人や場面があまりにも多すぎるのである。

将来、介護の現場でロボットをはじめとした機会を使いこなし、それらに支配されないためにも、今から、介護事業におけるサービスマナー意識を高め、介護のスタンダードを変えてほしいと切に願っている。

本当の意味の「介護イノベーション」とは、顧客に対するサービスマナーが確立された介護支援が、全国のどの場所でも、どの介護種別でも、くまなく行われることであると考えている。

そのために介護事業におけるサービスマナーの伝道師になりたいと思っている。「介護サービスの割れ窓理論」に基づいた、サービスマナー研修を行いたいと考えている方は、是非ご相談くださればありがたい。連絡はメールでお気軽にお願いしたい。

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人に替わる介護ロボットは実現するのか


厚労省の公式サイトに、「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」が5/21付でアップされた。

それによると、団塊の世代が全て75歳を超える2025年に必要となる介護職員の人数は244万6562人となり、2016年度実績である189万8760人との差は54万7802人であるとされ、「毎年6万人程度の人材を確保していかなければならない」としている。しかし近年の入職・離職の動向が大きく変わらず続いていった場合、2025年度の時点で210万9956人しか確保することができないために、需給ギャップは33万6606人となる。そのためにより深刻な人手不足を回避するのは難しいとしている。

そのため国は、人材のすそ野を広げる様々な対策をとってきており、その中には外国人を今まで以上に数多く受け入れる施策も含まれてはいるが、人手不足対策としての実効性は薄いと思われる。(参照:留学生の増加は人材難を救うか? ・ 介護技能実習生を配置職員とカウントする方針について ・ 外国人労働者が介護の人手不足対策の決め手になるのか?

そうであるがゆえに、人に替わることができる介護ロボット等の導入が必要不可欠と考える人も増えている。しかし今現在、人と同じように介護ができるロボットは存在していない。近い将来、この問題が克服され、人に替わる介護ロボットが介護サービスの場で使われるようになるだろうか。

僕自身は、人に替わる介護ロボットを一日も早く開発してほしいと思っている。なぜなら日本の人口動態や経済状況から考えると、どのような施策をとろうとも、介護業界の人手不足の解消は不可能で、このままなら人員を確保できないことが理由で事業を続けられない介護事業者がたくさん出てくるし、そのために必要な介護を受けることできない、「介護難民」が大量に生まれることは確実だからだ。

しかしそのことが実現するのかどうかは疑わしい。人と同じ働きができる介護ロボットは、おそらく車の自動運転よりも開発が困難と思われる。

例えば先般の介護報酬改定では当初、「介護ロボット導入加算」が議論された。(参照:加算の考え方がおかしくないか?)しかし実際に単純労働を人に替わって担える介護ロボットが存在しないことがわかり、この加算は見送りとなった。

移乗介助に有効であるとされる、「装着ロボット」は、物を持ち上げるときの筋力を最大25キロ分補助するそうである。このため介護業界以外では、装着ロボットが日常的につかわれている場面がある。例えば羽田空港のバスターミナルでは、外国人客が大きなスーツケースを持って、リムジンバスに乗り込んでいるが、そこでバス会社の職員は、普通に腰に装着ロボットをつけてバスの荷物入れに荷物を出し入れする仕事をしている。重いものを持つ仕事には普通に装着ロボットが役立っているわけだ。

しかしその装着ロボットが、介護の現場に普及していないのには理由がある。

脱着に数十秒かかることや、重量があって装着者に負担がかかること、使用には空気を入れる必要があるなどの手間がかかり、急な呼び出し時に対応しづらいなどの制約があることも指摘されている。そもそも力が必要な行為と力より巧緻性が求められる複数の行為を並行してこなさなければならない介護とのミスマッチがあるのが最大のネックである。特に腰に装着するタイプの場合、腰を横にひねるという動作に支障を来すことが問題だ。上下の動きはできても、ひねりが困難になることで、人の移乗行為支援動作が難しくなるのだ。これは荷物を持ち上げて運ぶ動作との一番の違いとなる。ここが人相手の行為の難しさである。

この問題を克服する術はあるのだろうか。

しかしロボットをうまく介護の現場に導入して、人手をかけなくてよい部分を増やさないと、この国の介護は限界点に達してつぶれざるを得ない。そんな心配が現実になりつつある。

本来、「介護ロボット導入加算」という考えは外道であり、導入費用は補助金として支給されるべきではあるが、その外道の加算さえも導入できなかった現実は、介護の未来を暗いものにしかねない。

人に替わる介護ロボットはできないのかもしれないが、せめて介護サービスの場の省力化が実現できる介護ロボットの開発を急いでもらいたい。 

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介護ロボットの実情


人材不足が深刻な介護現場で、職員の負担軽減につながると注目される「介護ロボット」。

今年4月からの報酬改定議論でも、当初から話題になったのは、この介護ロボットの導入に向けた報酬誘導策であった。そこでは介護ロボットを導入して省力化を図る施設等に「介護ロボット導入加算」のような加算を新設しようという議論が行われた。

この背景には、日本の介護ロボットは世界一の水準にあるものの、介護現場での実用化が今一つ進んでいないということがあり、介護ロボットを世界に輸出することで、その分野のベンチャー企業を育てたいという国の意向を達成するためには、まず足元である日本の介護現場での導入を進める必要があるという、経済政策との絡みで議論されたものである。

しかしその結果は、改定報酬の中で唯一介護ロボットに関連するものとしては、特養の夜勤職員配置加算において、人の替わりに見守り機器の一定割合以上の導入で加算を認めるというものでしかなかった。

現在の特養の夜勤職員配置加算の算定要件は、規定された時間帯における介護職員又は看護職員の数の合計が、基準に規定する夜勤を行う介護職員又は看護職員の数に一を加えた数以上であることである。

4月以降は加配される介護職員又は看護職員の数が一を下回っている場合でも、その数が0.9以上であれば、入所者の動向を検知できる見守り機器を入所者数の15%以上に設置していること及び、見守り機器を安全かつ有効に活用するための委員会を設置し、必要な検討等が行われていることという2条件をクリアすることで、この加算が算定できることになっている。

夜勤職員の加配数が(※夜勤時間帯(午後10 時から翌日の午前5時までを含む連続した16 時間)における1 月の看護・介護職員の延夜勤時間数をその月の日数×16 時間で割った人数(1日平均夜勤職員数)を元に判断する。)1未満0.9以上の施設が全国にどれだけの数があるか知らないが、それに該当する施設は随分少ないだろうと思えるし、なおかつそこで入所者の動向を検知できる見守り機器を入所者数の 15%以上に設置している特養となれば、数えるほどしかないように思え、この加算が果たして意味があるのかと疑問になるが、どちらにしても実用化されて、職員の省力化を図ることができる介護ロボットは、見守り機器くらいしか見当たらなかったということではないだろうか。

見守りロボットの導入で、夜間帯の巡回回数が少なくなり、なおかつ巡回しないで済むエリアでは、職員の巡回の音や気配で目を覚ます利用者も減り、安眠できる人が増え、そのことも省力化につながっているという報告もあるが、見守り機器が利用者の変化を知らせる優れた機能を発揮する機器であっても、対応するのは人間である。見守り機器で介護支援が全て完結することはない。

介護ロボットの実用化に向けて、国の補助金も活用でき導入が進められた結果、移乗介助に有効であるとされる、装着ロボットを導入する施設も増えたが、それらの装着ロボットが持ち腐れとなって、倉庫の隅でほこりをかぶっている例が数多く見受けられる。それらのロボットは、物を持ち上げるときの筋力を最大25キロ分補助するそうであるが、単一作業場面にしか力を発揮しないロボットと、力が必要な行為と、力より巧緻性が求められる複数の行為を並行してこなさなければならない介護とのミスマッチがあることが要因だ。

これらの装着ロボットのデメリットについて、脱着に数十秒かかることや、重量があって装着者に負担がかかること、使用には空気を入れる必要があったり手間がかかり、急な呼び出し時に動きづらいなどの制約があることが指摘されている。

そのため開発会社は、装着時間を短くするなどの改良を行い完成度を高めるとしているが、果たして力作業と巧緻作業を状況に合わせて使い分けて、それらの作業をつなげることができる介護ロボットができるのだろうか。この点を克服しないと介護ロボットの実用化はあり得ない。

だからといって僕は、介護ロボットに期待しないわけでもないし、感情のない、血の通わない介護ロボットに介護を受けることも否定しない。

これだけ少子化が深刻になると、給料をいくら高くしても介護現場の人員は足りない。介護ロボットで人手不足を補うことは緊急の課題ともいえる。

感情の赴くままに利用者に接して、荒々しい態度や汚らしい言葉で利用者の心や体を傷つける人間が後を絶たない現状を考えると、感情がなく気を使わなくて済む介護ロボットに、自分の身を委ねることの方がよっぽど気楽で安心できる人がいるかもしれない。

だから可能であるなら、できるだけ早く人に替わることができる介護ロボットをつくってほしい。そうした介護ロボットができたうえで、僕達人間がなしうる介護の実態を見てもらって、比べたうえで、どちらかを選択できるという世の中になれば、それに勝るものはない。

勿論僕は、その時であっても、ロボットに負けない選ばれる介護の方法論を追求し続けるつもりである。
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介護ロボット導入加算はどうなったのか。


来年4月からの介護報酬改定論議では、早い段階で介護ロボット・介護支援ロボットの導入加算が議論の俎上にのぼった。

介護の業務負担の軽減や、事務の効率化のエビデンスが得られたものは、平成30年度の介護報酬で評価するという考え方である。

しかし議論の中では、介護ロボットは、介護職員の負担軽減には有効と考えられるがものもあるが、もともと少ない配置人員の削減は困難という意見も出された。そして介護ロボット導入については、必ずしも加算だけではなく、例えば今後、人員配置とか設備基準の見直しも含めて中長期的に考えていく必要があるという意見も示された。

その結果次期報酬改定では、例えば<移乗介助機器について> は、『移乗介助機器を活用した職員に対する聞き取り調査では、「介護者の身体的負担が軽 くなる」との回答が8割を占め、一定の負担軽減効果が見えたものの、移乗介助に要す る複数介助時間の比率の減少が認められなかったこと等を踏まえ、活用方策のあり方に ついて検討することとしてはどうか。』というふうに、今後の可能性の検討にとどめ置くこととした。

その中で今回は、特養で<見守り機器> を導入している場合の評価を導入することとしている。「見守り機器」がまず取り上げられたのは、介護ロボット等導入支援特別事業(2015年度補正予算)の活用対象機器で6割を占めていたことが背景としてあることは言うまでもないが、今回の評価は次のような方法として示されている。

特養の夜勤職員配置加算について、下記の2要件を満たしている場合に、夜勤を 行う介護職員又は看護職員の数が最低基準を0.9人以上上回って配置した場合にも算定できることとした。これは短期入所生活介護も同様とされる。
・ ベッド上の入所者の動向を検知できる見守り機器を入所者数の15%以上に設置し ていること
・ 施設内に見守り機器を安全かつ有効に活用するための委員会を設置し、必要な検討 等が行われること


現在の夜勤職員配置加算は、1名以上夜勤職員を加配していることが要件になっているが、見守り機器を入所者数の15%以上に設置している場合は、この加配が0.9でよくなるわけである。・・・それがどれほど特養にとってメリットになるかは疑問だが、機器導入が加算の要件の一つになることは、今後の介護ロボット導入についての、一つの道筋を示すものとも言え、注目すべきことのように思える。

ところで見守り機器は、本当に介護の業務負担の軽減につながるだろうか。

介護給付費分科会資料では、『夜間の入所者に対する訪室回数及びそのきっかけの調査では、見守り機器導入後、「定期巡回」や 「ナースコール」による訪室回数が減少し、全体の訪室回数も減少。 』としている。

実際にこの機器を導入している施設の職員に尋ねると、夜間全室巡回の必要がなくなり、同時に巡回しないことで、巡回者の気配で熟睡ができなかった利用者が熟睡できるようになって、日中の活動性が高まるなどの副次的ともいえる効果も見られるそうである。

そういう意味で今回の改定で、見守り機器の導入施設が増えて、その課題を浮き彫りにするとともに、さらに性能の向上と使い方の習熟がみられることにより、特養の夜勤者の働き方が少し変わる可能性もあり、そのことに期待を寄せることはあって良いだろう。そういう意味で、仮に僕が現在も特養の施設長であれば、現在の見守りロボットの性能も考えて、この導入は積極的に進める立場をとるだろうと思う。

さて、ここで一つだけ疑問が生ずる。それは夜勤職員配置加算は、特養だけではなく、老健施設と短期入所療養介護にもあるのに、今回は特養と短期入所生活介護の介護報酬のみに、見守り機器導入の評価が行われている。これはいったいなぜだろう?どうして老健と短期入所療養介護は対象外なのだろう。

これについて明確な答えはないが、想像できることは、見守り機器が介護の労力軽減につながるという明確なエビデンスがない状態で、全サービスにこの評価を導入することはできず、まず特養と短期入所生活介護に、『実験的意味合い』を込めて評価を行い、その結果を見て、今後の方針を考えるということではないのだろうか。

というのも、同じようなことが介護給付費分科会の通所介護の新加算議論において行われているからである。

昨日の記事『通所介護の管理者が今しなければならないこと』でも紹介しているが、通所介護の新加算では、、Barthel Index(バーセルインデックス:ADL評価法)による一定期間内の利用者の機能回復や維持に対する評価加算が新設されるが、この新設議論において、委員から次のような指摘と疑問の声が挙がっている。

「訪問介護など他のサービスの影響をどうみるのか?」
「ADLだけでなく活動や参加の視点も十分に勘案すべきではないか?」
「デイサービスの機能は孤立感の解消や家族の負担軽減なども含めて評価すべきではないか?」


これに対して厚労省の担当者は、「今回は試行的な意味合いもある。まずは介護報酬にアウトカム評価を組み込むことを優先させた。」と説明している。

つまり自立支援介護のエビデンスがない状態であるために、全サービスで評価する以前に、通所介護で試行的に自立支援新加算を導入し、顕在化する課題を解消しながらアップデートを重ねていこうというのである。

そうであれば、このような試行的加算を新設しながら、本体報酬を下げられる特養などの福祉系サービスは、国から医療系サービスより低い位置に見られているという意味かも知れない。

どちらにしても厚労省の担当者も馬鹿ではないので、「最新機器を導入すれば効率化が図れる」という単純思考で、この評価が組み入れられているわけではないということの理解も必要で、この評価が今後の橋頭保とされ、さらに本体報酬は上がりづらくなり、介護の費用が国の経済政策の中で考えられ、新たなベンチャー企業を育成するためにも利用されるという、いびつな報酬体系に向かっていく危険性をも含んだものであることに、注意と監視が求められるという意味である。

そういう意味で、この新評価は介護施設や事業者にとって、危険満載の新評価基準といえよう。
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経済対策からの介護報酬改定議論は制度をゆがめる


10月21日に開催された「経済財政諮問会議」で、学習院大学の伊藤元重教授ら4人の民間議員が、最新のテクノロジーを活かした見守り機器やロボットを介護の現場に普及させるため、介護報酬に新たな加算を創設して導入を促すべきだと政府に提言した。

そして提言を受けた安倍首相は、具体化に向けた検討を進めるよう塩崎厚生労働相に指示したと報道されている。

この狙いはサービスの効率化や職員の負担軽減であり、今後の高齢化や人手不足に対応するために欠かせないとされているが、その見方は眉唾である。

介護ロボットの導入で、職員の負担軽減・業務省力化が図れるというエビデンスなど存在しない。何度か指摘しているように、実際の介護現場で、「使える」介護ロボットは驚くほど少ない。
(※参照:現状の介護ロボットに過度の期待を寄せてはならない ・ 介護ロボットとITは人材不足を補う手立てになるか ・ 介護ロボットによる業務省力化=人手不足の解消の図式は成立しない

一番使える介護ロボットは、下肢筋力等が衰えた人自らが装着して歩行支援するロボットだろうと思うが、これとて使いこなせる人と、そうではない人に分かれてしまう。使いこなせない人にとっては、それは粗大ごみに過ぎない。

ましてや介護者が装着して、介護行為を手伝うロボットなど、ある特定場面の、ある特定個人に対して有効な場合があっても、そのマッチングを探すことのほうが難しいことが多く、機器使用に習熟する手間、それに伴うリスクマネージメントや機械の保管管理・メンテナンスなど、総合的に考えると、業務は省力化されるどころか増える可能性が高い。しかも使いこなせない場面が多々生まれるのは明白である。

少なくともロボット導入前に必要なかった業務が、ロボット導入後に増えることは確実なので、引き算だけではなく、足し算とセットで業務を考えないと、省力化できたかどうかは測定できない。

介護ロボットの分野では、日本が世界一のテクノロジーを持っているそうだが、それは世界中が様々な介護ロボットを製作して、性能技術を競っての結果ではない。単に日本が先行して介護ロボットの開発に取り組んでいるに過ぎず、介護現場でロボットが、人に替わって戦力になるというエビデンスを、この国が世界に先駆けて示しているという事実もない。

いうなれば周りの技術レベルが低いから、世界一という称号を得ているようなもので、人に替わるロボットを開発した結果ではないのである。

介護報酬の加算というのは、ある意味アウトカム評価であって、算定要件をクリアすることで、より品質の高いサービスが実現するという意味であるが、現状から言えば、介護ロボット導入による介護が、人手をかけて提供するサービスより優れているともいえない。

そんな不確かなものに加算を算定してよいのだろうか。しかもそうした加算が導入される財源は、ロボットを導入していない施設のサービス費から費用を差し引く可能性が高い。場合によってそれは、離職率が低い、人が集まる良いサービスを実現している職場かもしれないのだ。そういう施設が評価されず、ロボットを購入したという事実だけを評価する加算など本来あってはならない。

経済財政諮問会議委員も、自分が実際に介護現場でロボットを使って、利用者への支援ができるかどうか試してから提言しろといいたい。

反応が早い安倍首相に関して言えば、アベノミクスを成功に結び付ける経済対策として効果があると考えての対応だろう。もっと純粋に日本の介護の現況を鑑みる視点からの、介護報酬改定を考えてもらいたい。

現時点で必要なことは、介護ロボット導入に関する加算ではない。

今求められることは、介護ロボットが本当に、業務省力化に繋がるのか、繋がるとしたらどのような介護ロボットを、どのような場面で使用することが有効なのかという検証作業である。

そうであれば、そうした検証作業を介護現場で進めるために、この部分に補助制度を設けて、多くの介護現場で、実際にロボットを導入した介護サービスを展開することである。

それが行われてはじめて、介護ロボット導入による介護サービスというエビデンスが生まれる可能性がでてくるのだ。

それをせずした介護ロボット導入加算は、時期尚早であるし、介護サービスの品質に結び付かず、制度をいびつな形にするものでしかないといいたい。
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加算の考え方がおかしくないか?


平成30年度の介護報酬改定は、診療報酬とのダブル改定という状況で行われる。

過去のダブル改定では、厳しい財源事情を理由に、社会保障費の伸びを抑制しようとする中で、少ないパイを介護と医療が奪い合う結果に終わっている。

その中でほとんど介護が医療に負け続けているという状況に思われるが、ミクロ部分では両者痛み分けに終わるということもあったわけで、マクロな視点から、両者が手を携えて国民のセーフティネットを護るという観点から、協力関係を築いて、足並みをそろえて物申すことが出来ないのだろうかと考えたりする。

そもそも介護事業者は、医療機関が母体になっている事業者も多いのだから、介護だけ、医療だけという観点で結果が出されて良いはずがないのであるが・・・。

ところで介護報酬改定議論では、居宅サービスの部分が先行議論され、施設サービス費についてはほとんど議論が進んでいないが、10日に政府は、介護ロボットを導入することで介護職員の負担軽減やサービスの質向上を実現する介護施設に対し、介護報酬を加算する方針を明らかにした。

もともと加算とは、サービス事業のサービスの品質向上を目的に、現行のスタンダードよりハードルが高い条件をクリアした際に算定できる費用という意味で、いわばアウトカム評価に結びつくものであるはずだ。

しかし、この加算は機器の導入費用の補助という意味合いが強く、しかもそれは国の新産業育成対策であり、経済政策としての意味合いが強い。

そうであれば、こうした費用は、介護保険を財源とした介護報酬の加算ではなく、国の補助金で7対策すべきではないのだろうか。

そもそも介護ロボットが、人手不足を補うほどの性能なのかということは大いに疑問で、少なくともそのようなエビデンスは存在していない。(参照:現状の介護ロボットに過度の期待を寄せてはならない

介護現場にロボットを導入して得られる改善効果の検証・データ化作業は、厚生労働省と経済産業省が連携し、29年度までの実施を計画しているというが、政府として介護ロボットの導入推進策がまずありきの中での、身内による検証作業のどこに客観性なり、信頼性があると言うのだろうか。それは、お手盛りシャンシャンのアリバイ作りでしかない。

経産省は今後、ロボットの価格が下がり、介護報酬の加算などの政策でロボットの施設への導入が進めば、「単純労働をロボットが、複雑な仕事を人間が行う分業化が始まる」と分析しているが、介護労働のどこに、人が介入しなくて良い単純作業が存在するというのだろうか。介護者職員もずいぶん馬鹿にされたものだ。

もちろん、介護ロボットの性能が向上し、もっと安価に介護現場にそれを導入できて、使いこなす職員が増えて、人手がかからなくなるに越したことはないが、開発企業や国が考えるほど、介護業務を減らす効果は期待できないし、使えない、使いこなせないというのが現状理解である。

どちらにしても、このロボットを必要としない介護サービスの場の、基本報酬が減らされて、介護ロボットに頼らざるを得ない施設に、その分の費用が、加算として回されるのは、少しおかしくないだろうか。

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介護ロボットによる業務省力化=人手不足の解消の図式は成立しない


今朝のNHKニュースでは、夜間に介護施設での夜勤業務負担軽減につながる、見守り巡回ロボットが取り上げられていた。

施設内の決められたルートを巡回する見回りロボットは、居室の中も確認し、センサーでベッドに寝ている人の状態を確認して、寝ているべき人がそこにいないとかを知らせるだけではなく、発熱して様子がおかしいとか、健康状態の変化も察知して、モニターを監視する人に伝え、対応につながるというものだ。それはたいへん便利な機械であると感じた。

科学技術の進歩が、実用的な介護ロボットを安価に製造することにつながって、介護業界の業務省力化につながるのであれば、これは歓迎すべきもので、いちゃもんをつける何ものもない。

しかし今朝のニュースでは、このことを、「人手不足が深刻化する介護業界の、対策の決め手」のごとく紹介されていたことには違和感を覚えた。

人手不足対策が、介護ロボットの品質向上で解消されるほど、介護サービスという業務は単純ではない。むしろそちらの方面に偏って予算がつけられて、政策の方向性も偏ることによって、本当に必要な、「介護業界に人が張りつく」ための対策がなくなってしまうのではないかと危惧する。

よく考えていただきたい。夜間業務を行う介護職員は、グループホームで利用者9人に一人、介護保険施設ならば利用者25人に一人といったところだろう。

ここに介護ロボットを導入したからといって、夜勤者の数は減ることはない。せいぜい夜間の巡回業務の負担が軽減されるに過ぎない。

その業務軽減自体は、当事者にとっては大きなことなのかもしれないが、そのためにどれだけのコストが必要になるのかということとともに、ロボット導入で減った業務があるとともに、それによって増える業務はないのかという検証作業も欠かせなくなる。

見守りロボットが導入されるということは、ロボットが見守った結果をモニターする人が必要になるということだ。ではその監視のために、できなくなる仕事はないのだろうか。監視できない時間帯の、モニター結果はどうするのだろうか。

今朝の報道では、巡回ロボットは、あらかじめ設置されたレールの上を動くのであるが、そのルート上に車いすなどの障害物がおかれているとロボットが動かなくなるために、モニター画面の横に、操作盤があって、レールから外れて障害物をよけることができるという。しかしよけるためには、モニターを見て操作しなければならない。それは増える作業の一つである。

ニュースでは、異常があった場合の報知システムについて、モニター画面の色が変わったり、音で知らせたりするシステムになっていることが報じられていた。しかし夜間という特殊性を考えると、音での報知は好ましくないだろう。安眠を妨害する要素をなるべく設けないように想定するならば、携帯電話のマナーモードのようなシステムが必要になるだろうが、それはそれで、持ち歩いて安全に介護業務ができるのかという問題も生ずる。

認知症の人がいる場所なら、ロボットの動きそのものが混乱要素になる可能性もある。動き回るロボットに興味を惹かれて、それを触ろうとして事故や機械の故障が起きないかも危惧される。

どちらにしても、「介護ロボットの進歩と、介護現場へ導入すること」で、人手が少なくて済むという論理ではなく、「介護ロボットの進歩と、介護現場へ導入すること」で、業務が省力されて、働きやすくなることで、人手が増える、という方向を目指すのが筋である。

介護ロボットは、あくまでも補完。まずはマンパワーが十分確保されることを第一に考えないと、何の対策にもならない。

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人にしかできないことが多いことは悪いことではない


熊本地震の被災地では、いまだに停電が続いている地域がある。

そうした地域では、暗い夜を過ごす中で、さまざまな不安が頭をよぎるだろう。その主たる
原因は、暗い中でものを考えることであることが多い。

暗闇の中で物事を考えると、どうしても悪いほう悪いほうに思考が向かってしまうからだ。だから心配事があるときほど、夜は努めてものを考えずに、陽が昇ってから考え事をするようにしていただきたい。特に災害を受けた直後の、停電時の暗闇の中では、どんなことを考えても悪い方向に向かうだろうから、いったん考えることをやめるということを、意識的にしてほしい。明けない夜はないのだから・・・。

思い起こせば約3年前、登別を襲った季節はずれの大雪で、北電の鉄塔が倒れ、丸2日間市内全域が停電に見舞われたことがある。
※参照:登別大停電の影響と教訓その1)~(その2

そのとき僕は、当時勤めていた施設に2日間泊まったが、街路灯がすべて消えた外の暗さに恐怖さえ感じた。漆黒の闇に自分の体が溶け込んでしまいそうで、本当に怖かった。あの時も、この先いつまで停電が続くのだろうと、不安しか感じなかった。

ところがそのとき、吹雪で曇っていた空が、真夜中に晴れてきて月の光が地上に届いた。

すると、月の光が白い雪に反射して、それは闇を振り払い、地上を照らす輝きのように見えた。きっと明日は、よいことがあるとその時に思った。

送電の鉄塔を倒して、漆黒の闇を生んだのが雪ならば、その闇を振り払って輝いていたのも、またその雪である。絶望をもたらした雪が、希望の光を反射していた。自然とはなんと不思議で偉大なものなのだろうか。

あの時は、冬の時期であったから、暖房が不可欠であり、電気を使わないアナログのストーブのありがたさを、あらためて感じたりした。

そういえばあの時、電気が止まって仕事が停まったのは、PCですべての処理を行う事務系統であった。

そのような中、介護業務は、人が中心となってサービス提供するがゆえに、主要な業務は滞りなく行うことができた。アナログな業務ゆえに、電気が止まって機械が動かなくとも、介護サービス自体に滞りはなく、いつも通りの利用者の日常を守ることができた。

経済産業省が3月24日付で発出した、「将来の介護需要に即した介護サービスに対する研究会 報告書」には、「施設サービスに、見守りセンサー・ケア記録等の電子化・排泄支援機器を導入した際の効果を試算すると、2035年時点で35万人の介護人材需要が抑制される見込み」などとして、人材確保策を、機器を有効活用した人材需要の減少策で補う方向性が示されているが、本当にそうなったとしたら、自然災害には非常にもろいサービスとなるだろう。

ただしこの報告書が現実となるような、人の業務を軽減できる介護ロボット等は存在していないのが本当のところだ。自動排尿装置によって、おむつ交換が必要なくなったとしても、それを装着した人に対する体位交換は不可活で、機器をつけた人の体交は、機器をつけていない人より手間がかかるだろう。

機器の活用で夜勤の業務負担が減ったり、配置人員を少なくすることなどできるわけがない。

それを無理に実現しようとすれば、どこかに大きなひずみが生じて、介護サービスは人の暮らしを護ることができない、いびつでゆがんだものになるだろう。

そもそも人間は、おむつの不快感をなくすために、陰部に機器を装着して身体の動きに制限を受け、臥床状態のまま長時間、誰からも対応されないことに耐えられるものだろうか。

血の通うわない人間が作る報告書の、血の通わない方針によって、この国の介護の近い将来は、生きながらえることだけを目的としたサービスに陥るのではないだろうか。

そんな心配が杞憂に終わることを祈りたい。

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介護ロボットとITは人材不足を補う手立てになるか



経済産業省が3月24日付で発出した、「将来の介護需要に即した介護サービスに対する研究会 報告書」によると、IT活用や介護ロボットの導入によって、人材難への対策が可能であることが示されている。

そこには、次のような人材対策が示されている。

・施設サービスに、見守りセンサー・ケア記録等の電子化・排泄支援機器を導入した際の効果を試算すると、2035年時点で35万人の介護人材需要が抑制される見込み。
・居宅サービスに、ケア記録などの電子化をはじめとした機器を導入した際の効果と、介護(予防)サービス受給者の集住による効果を足し合わせると、2035年時点で16万人の介護人材需要が抑制される見込み。

つまり、2035年時点で68万人不足するといわれていた介護人材が、IT機器活用や介護ロボット導入で、その不足数が17万人に圧縮できるというのである。

さらに機器導入、処遇改善等による離職率低下と、高齢者雇用の拡大により、その不足分17万人の確保も可能となり、結果的に機器・ITの導入による労働時間、労働負荷の軽減、高齢者等の潜在的なソースの活用、集住の促進などによる介護需要密度の向上によって、68万人の介護人材不足は解消することができるとしている。

これが現実のものとなるに越したことはないのだから、その実現を目指して一層のテクノロジーの向上を進めてもらいたい。

ただ、このことが現実感を持って、関係者に受け取られるかということになると話は別である。

IT機器導入部分については、例えばタブレットの活用による記録の電子化はぜひ進めてほしいが、その前に法令で求める記録の簡略化が先だろうと思う。

そもそも記録の電子化についていけないスキルの人員が、介護の現場にはたくさん存在しているという現実も理解する必要があるだろう。それだけ安かろう、悪かろうというサービスになってしまいつつある現実は、介護政策の根本的な失政ではないのだろうか。

また介護ロボットの過度な期待は禁物である。現在のテクノロジーは、介護サービスの現場で、劇的な省力化が図れるほど高くはない。

例えば介護者のパワーアシストを目的とした、装着型解除ロボットも、ある場面や、特定の個人を取り上げれば、高い効果が見込むことはできるが、すべての場面でそれが有効になるということはなく、巧緻性が必要な場面では、逆にデメリットが大きいという面が見られる。

施設の夜間業務を大幅に短縮させると理論展開されている、「排泄支援機器」については、介護者の視点からしか論じられていないが、装着される利用者は、おむつが群れる不快感はなくなるといっても、機器をつけられたまま、動きが不自由にされて臥床状態で、長時間誰からも対応がないことに不快感は生じないのか?実際に自動排尿装置を装着されている人の表情からは、快適な状態は見て取れない。

しかもオムと交換が必要な利用者は、多くの場合、体位交換も必要で、おむつ交換と体位交換はセットで実施されているはずである。おむつ交換はしなくてよいといっても、体位交換はしなくてよいことにならず、むしろ「排泄支援機器」を装着していることで、体位交換はより手間とコツが求められ、この部分の業務量は増えさえすれ、減ることにはならないのではないのか?

報告書の業務省力される時間は、この部分を見込んでいないように思える。

さらに、「現状の介護ロボットに過度の期待を寄せてはならない」で指摘した、機器導入に関するリスクマネジメント、習熟・活用訓練時間が増える点は、ここでは無視されているといってよく、現実的な介護人材不足対策とは言えないのではないかと感じた。

機器開発と技術革新が、さらに進んで、この報告書に書いていることに近づいてくれることを願ってはいるが、そういう意味で現実感は持てないのである。

また「高齢者雇用の拡大」というが、現実にそれはすでに拡大していて、介護事業者の雇用者の平均年齢は上がっている。しかも夜勤を伴う体力が必要という仕事の人員不足が深刻化している現状を考えるならば、これ以上高齢者を活用できるかということについては大いに疑問が生ずる。

集住は必要な政策であるが、それは地域包括ケアシステムを推進するだけでは実現しない。政策として、「住み替え促進」をもっと具体化して、先祖代々のお墓がある土地からの移住も必要であることを、もっと国民に説明すべき責任が政府にはあると思う。

実現すればうれしい報告書ではあるが、あまりにも羅漢的すぎるようぃ根拠に立って論じているように思えてならない。

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