個人番号制度は、誕生したばかりでわからないことがいろいろあるが、やはり大きな不安を感じる制度である。
先日、講演依頼を受けたある機関から次のようなシートが送られてきた。
マイナンバー収集シートと題されたシートには、使い方の説明文が添えられているが、要するに僕の個人番号通知カードの表面又は個人番号カードの裏面と、身元確認書類としての運転免許をここに貼り付け、さらに扶養親族(僕の場合は妻だろう)のカードもここに貼り付けて、コピーを取って送れというのである。
その目的は、税務署提出の法定調書の作成事務の為であり、それは社会保障や税の決められた書類にマイナンバーを記載することが、法令で定められた義務とされているためであるからというのである。このルールはおそらく、講師が講演料として収入を得た場合の、申告漏れを防ぐためであると思われる。
しかし研修講師を依頼されたというだけの関係の機関の、まったく知らない担当者より送られた書類に書かれている、「それ以外の目的では使用いたしませんのでご安心ください。」という文章だけを拠り所に、その言葉を鵜呑みにして、ここに自分のナンバーカードや運転免許所、家族のナンバーカードを貼り付けて、そのコピーを送るというリスクを犯してよいものだろうか。
僕はそのことに一抹の不安感を抱いてしまうのだが、そういう僕の感覚の方がおかしいのだろうか。
そもそも僕が講演を行うだけで、なぜ僕の家族の番号まで知らせなければならないのだろうか。
返信用の封筒は普通封筒で、この封筒を開封する人に対しては、無防備に僕や家族のマイナンバーという重要な情報が渡ることになる。講演講師から返信があったということで決裁書類が挙がっていく過程で、この収取カードのコピーが添付されておれば、その機関の様々な人に、僕と僕の家族のマイナンバーが知られることになる。そしてその記録はその機関にずっと書類として残っていく可能性もあり、いつ誰がその書類を見るかわからない状態となる。
大事な個人番号が、このような形で講師として招待したという関係だけの機関に残されてよいのだろうか。これが義務で当然であるとしたら、この制度はなんと緩い、セキュリティーという言葉も存在しない危険な制度なのだろうと思う。
このような重要な情報を、一片の文書連絡だけで、マスキングもせずに普通郵便で送れと指示することが当然と考える機関も、なんと考えの緩い無責任な機関なのだろうと、一言文句を言いたくなる僕の気持ちも理解してほしい。所詮ここだけの愚痴である。
「他の講師の方々にもお願いしておりますのでコピーをご提出いただければと存じます。」というが、他の講師がどう考えているのかは知らないが、僕の個人ナンバーがこういう形で第3者に渡るとして、その後に適切に取り扱われるであろうと思うためには、完全なる性善説に依るしかない。そのことに不安をもってはおかしいのだろうか。
せめて開封者を特定する「親展」ルールや、番号部分のマスキングルールがあってもよいのではないだろうか。
逆に言えば、このような形で簡単に個人ナンバーを、面識もない第3者に平気で渡す人がいるということ自体、それが普通だと思われていること自体が、この制度の大きな落とし穴ではないのだろうか。それは番号を悪用しようとする人が、簡単に誰かのマイナンバーを手に入れことができるという意味だ。簡単に番号を送る講師が、このことに平気でいられるのはなぜだろう?
それとも僕の考え方が、あまりにも神経質すぎると言うのだろうか。
僕が神経質すぎて、一片の依頼文だけで個人番号を貼りつけたシートのコピーを送る人間がまともであるとするなら、個人番号はいとも簡単に他人が手に入れることができる情報ということになる。そんなもので預金や年金に関する情報が管理される社会は怖い社会だ。
だって現実に、「マイナンバー54人分紛失、横浜 市立小の事務職員」なんてことが現実に起こっているのだ。(15:03フェイスブックで繋がっている人からコメントで教えていただいたニュースを追記)
その機関の税理士が何を言っているかは知らないが、税理士のアドバイスに基づいて個人番号という情報を取得するのであれば、完全無欠なセキュリティー体制を確立して、そのことを情報取得先にきちんと説明して欲しいと思うのである。
自らがすべきことをせずして、相手にだけ義務を負わせることは無責任のそしりを免れないのではないだろうか。とは言っても、誹られる機関からすれば、そういう制度なんだから仕方ないだろうと言いたくなるだろう。それはよくわかるのだ。でも不安は消えないのだから、一言だけこの場所で愚痴を書かせてもらっていることを、ご容赦いただきたい。
今後はこのように、研修講師の個人番号の取得ということは当たり前に行われていくことになるのだろう。そしてそのことに不安を持つ僕のような人間の方が、「おかしな奴」とみられて面倒くさがられるのだろう。まったく嫌な世の中になったものである。
いずれにしても、今後は講師業を務める人間の個人番号は、本人以外のたくさんの人が知ることができる番号とならざるを得ない。これは個人番号制の大きな瑕疵(かし)といえるのではないだろうか。
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