masaの介護福祉情報裏板

介護や福祉への思いを中心に日頃の思いを綴ってみました。表の掲示板とは一味違った切り口で、福祉や介護の現状や問題について熱く語っています!!表板は業界屈指の情報掲示板です。

事件・ニュース

夜勤専任者が指名手配された特養の評判とその教訓


秋分の日を前にした昨日、特養の職員が利用者を殺害し、逃走している容疑で指名手配されたという驚くべきニュースが飛び込んできた。
指名手配犯
非常に残念で情けないことではあるが、介護施設を舞台にした殺人事件はこれが初めてではない。Sアミーユ川崎幸町事件を筆頭に、恥ずべき犯罪が過去にも起こっているが、仕事中に職場で入所者を殺害した犯人が事件後逃走し、全国に指名手配されたという点では前代未聞の犯行と言える。

介護事業者を舞台にした死亡・傷害事件は、虐待がエスカレートした結果の致死・致傷であることが多かったが、本件はそうした事件とは明らかに性格が異なり、特養という介護施設を舞台にした残虐な殺人事件であるといえる点でも特異性が伺われる。

どちらにしてもこの事件によって、介護業界全体が社会からの信用を失い、すべての介護施設が事件につながる何らかの病根を持っているように疑われ、事件が氷山の一角でしかないというような批判にさらされることは容易に想像がつく。まじめにかつ地道に高品質な介護サービスを提供している事業者や職員からすれば迷惑至極の犯罪でしかなく、怒りしかない感じない事件であるといえよう。

殺人容疑で指名手配されたのは、菊池隆容疑者(50歳)。事件の舞台となったのは、東京都北区浮間の特別養護老人ホーム「浮間こひつじ園」。こひつじに、とんだオオカミが潜んでいたものである・・・。

犯行が起きたのは9/15。菊池容疑者は15日午後10時に出勤し、同時刻〜16日午前1時ごろの間に、施設内で入所者の山野辺陽子さん(92歳)に暴行を加え、殺害した疑いが持たれている。

山野辺さんは16日午前7時25分ごろ、1人部屋のベッドの上で頭から血を流しているのを発見され、病院に運ばれたが死亡した。顔に複数の打撲の痕があったほか腕も脱臼しており、胸などに熱湯を掛けられたとみられる火傷も負っていた。隠しようもなく、隠す気振りもないような残虐な行為である。

菊池容疑者は事件後、宿直の勤務中だった施設を抜け出し、コンビニのATMで現金を引き出した後、都内や千葉県我孫子市・茨木県つくば市などを転々と移動していることがわかっているが、都内に戻った後の足取りはつかめていないとのことだ。現金を引き出した後、上野で悠々と入浴施設を利用しているなど、犯人のふてぶてしさも感じられる・・・。

同容疑者について、「気の短い人だと聞いています」と同僚が証言している報道も見られるが、職場のどういう場面で「短気」と感じたのかが気になるところだ・・・利用者に相対する場面で、そのように感じたのなら大きな問題である。

ところで同容疑者は、1週間に5回夜勤専任者として勤務していたそうである。つまり日中の勤務はなかったということで、業務の多くは特定フロアのワンオペという形だったのだろう。

そこではすべての決定権を一人で握る独裁者になれるかもしれない。しかも日中の勤務がないのだから、他の職員とチームで協力し合ってサービスを提供するという意識に欠ける懸念も生ずる勤務形態である。・・・こうした夜勤専任者を採用する際に、適切な選考と教育訓練はされていたのだろうか?

夜勤専任者を雇用している施設の多くが、人員不足に悩んでいる施設である。人数が足りないから、日中行わねばならない業務のためのシフトを組んだ時に、夜勤者が足りなくなるので、日中必要な業務を行うことができるスキルがない人でも、夜勤時間帯にそこに配置できて、必要最低限の業務をこなしてくれれば良いという形で、安易に採用しているようなことはなかったのか・・・。

そこで事件のあった施設のネット口コミ情報を検索してみた。
浮間こひつじ園のネット口コミ情報
事件が起こる前からの評判も随分悪いと言える。

こうした状態は、職員教育もまともに行われていないことを示しているように思う。サービスマナー教育なんて行われていなかったんだろうなと容易に想像がつく。前代未聞の事件の根は、案外そんなところにあるのではないのか?

どちらにしても本件に触れたすべての介護事業経営者や管理者が肝に銘じてほしいことがある。こうした職員が一人でも混じって事件を起こせば、それは職員個人の問題ではなく、介護事業者全体の社会的責任・道義的責任が問われる問題に発展して、事業経営危機に陥りかねないということだ。

だからこそ職員採用は慎重に、職員教育は十分に行わねばならないし、数合わせの夜勤専任者の雇用は危険いっぱいだということを理解すべきだ。

さらに画像を貼り付けたように、「介護施設や介護サービス事業所の口コミ情報」が簡単にネット検索できるようになっているということを十分自覚すべきだ。

ここに口コミ情報を書き込んでいるのは、施設や事業所を訪れる、他事業所の職員であったり、家族であったり、業者であったり様々だ。来訪者すべての人が、スマホを持ち、動画を撮影でき、映像や意見をネット配信できるのである。

タメ口対応を直すことができない職員を放置しておく事業者は、人生の先輩であり、お客様でもある介護サービス利用者に対して、「なんという無礼な言葉かけをしているんだ」と動画を撮影され、SNSにアップされて批判され、それが口コミ情報として永遠にネット上に残ってしまうのである。

そうならないように介護サービス利用者に対するサービスマナー意識を向上させ、ワンオペ勤務であっても常に適切対応ができる組織風土と職場環境を創っていかねばならない。

それが職場を護り、従業員と利用者を護り、すべての関係者に最良の結果をもたらす唯一の方法であることを改めて認識しなおさねばならないと思う。

事件を対岸の火事として眺めて終わりでは、いつその火の粉が自分の身に降りかかるかしれないと考えてほしい。
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死の短期入所生活介護


昨日、「ひどい」としか言いようのない虐待事件(傷害致死事件)のニュースが全国を駆け巡った。

事件が発生したのは昨年3月。名古屋市緑区の特別養護老人ホーム「緑生苑」の短期入所生活介護(ショートステイ)を利用していた女性が、骨折して医療機関搬送後に死亡したという事案である。

この件について昨日(8/17)愛知県警は、元職員の福島栄行(ひでゆき)容疑者(34)(名古屋市緑区)を、傷害致死の疑いで逮捕した。
介護の闇
報道によると、亡くなったのはショート利用していた角谷三枝子さん(81歳)。両脚を骨折し、頭や首・胸などに内出血があったというのだから、尋常ではない大怪我である。

この件に関して被害者がショート利用していた特養からは、「緑生苑における死亡事故の報道について」という文書がネット配信されている。どうやら被害者が死亡した直後にネット配信した文書のようだ。SNSでも拡散されている文書画像が下記である。
緑生苑における死亡事故の報道について
この文書を最初に読んだときの僕の感想は、「まずい配信文書だな」だった。

ここでは、「職員や第三者が関与した可能性については、警察の方が事故と事件の両面で捜査しているため、全面的に協力をし、結果を待ちたい。」と事件化した後に備えた予防線を張っているものの、通知している趣旨とは、「夜間帯、ご自身で居室からトイレへ何度か往復している中で複数回、転倒をされ、内出血事故、骨折事故につながった可能性が高いと認識しております」である。つまり施設側の責任はないという言い訳文書でしかない。

ということはこの施設では被害者の死亡を、「転倒事故」として処理し終わっているということか?

しかし被害者の怪我の程度を見ると、転倒事故による怪我としてははあまりに不自然である。しかも「複数回の転倒の骨折」と分析しているのはどう考えても納得いかない。なぜならそうである場合、一度骨折した身でさらに独歩を行って転倒を繰り返し、別の部位を骨折したということになるからだ・・・そんなことはあり得ない。

しかも昨日の段階で、「被害者の両脚のすねの骨は、水平方向に折れていた」と報道されている。ということであれば受診後、施設はその状況をすぐ把握できているはずである。さすればそのような骨折は、通常転倒によって生ずることはなく、水平に骨が折れるように外部の圧力がかかったと考えるのが普通だ。

つまり事件当初から、暴力による怪我であると容易に想像できる状態ではないかと思われるのである。

そうであるにもかかわらず、ちょっとあり得ない「複数回、転倒をされ、内出血事故、骨折事故につながった」などという結論にもっていこうとしているのは、事件隠しと言われても仕方がない・・・この件をSNSでつぶやいた際には、「組織ぐるみではないか?」というコメントが付けられたほどである。

本件はその後の取り調べで、容疑者が被害者に対して脚や背中を蹴るなどの暴行を加え、外傷性ショックで死亡させた容疑を認めている。虐待による傷害致死事件であることがほぼ確定したわけである。

福島容疑者は、事件当日夜勤で女性の部屋があるフロアをほぼ一人で担当していたそうであるが、今後は虐待暴行に至った動機などが解明されていくことになるだろう。

同時に、本件を単なる事故として処理しようとし、転倒骨折の可能性が高いなどと言い訳分を公にした施設の責任も問われることになる。

施設長はその地位にとどまっていられないだろう。辞職は当然として、法人として今後の適正運営に向けた体制作りをどうするのかが問われてくる。

それにしても介護施設という、要介護者が護られなければならない場所で、短期入所利用している最中に、複数個所を骨折するほどの暴行を受けてお亡くなりになった方はお気の毒であり、不憫でならない。

人生の最期の終わり方が、このような哀しい終わり方であって良いはずがない。本当に理不尽としか言いようがない。

心よりご冥福をお祈りすることしか僕にはできないが、同時にこうしたことが繰り返されないように、介護サービスの割れ窓理論サービスマナーについて、介護事業にもっともっと浸透するような活動をしなければと強く思っている。

介護事業経営者や管理職の皆様には、こうしたことが起こらないようにサービスマナー教育に努めてもらいたいと思う。講師依頼はいつでも受けるので、「虐待を未然に防ぐサービスマナー研修」をご希望の方は、気軽にメール等で連絡していただきたい。

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発見できる福祉は実現できないのか?


今月13日、札幌に住む81歳の主婦が85歳の夫を刺殺した。犯行動機について主婦は、「夫から一緒に死のうと持ちかけられた。夫は認知機能が低下しており、将来を悲観した」と供述している。容疑者も病気を患っており、夫を殺害後、心中を図って自らの腕などを刺している。

同じく今月9日朝、横浜市の集合住宅で72歳の妻の首を絞めて殺害した75歳の夫が逮捕された。容疑者となった夫は、「認知症の妻の介護に耐えられなくなった」と供述しているという。

先月7月30日には、東京・江戸川区のマンションで75歳の女性が首を絞められ殺害されている。犯行に走った46歳の長男は犯行動機も、「介護に疲れていた」ということのようだ。

同じく先月6日には長崎地裁で、昨年5月に島原市内の自宅で祖母を殴るなどして殺害した37歳の孫が、執行猶予付きの有罪判決を言い渡されたた。殺意事件では異例の執行猶予付き判決は、事件当時、孫の男が精神障害を発症していたことを考慮したものである。

孫の男が精神的に追い詰められていく経緯については、こちらの記事に詳しく書かれているので参照してほしいが、記事に書かれているように孫の男は、介護サービスの利用を勧められながら、それを拒んで精神的に追い込まれていった。

このような、「介護殺人」と呼ばれるケースは決して珍しくない。しかも犯人がすべて悪意を持ったとんでもない人間というわけではなく、多くの場合、自らの義務として介護を担い、介護を必要とする人を支えようと覚悟しているにもかかわらず、長期的な介護が、介護する側の身体や精神が不調に追い込まれて事件に結びついているのである。

その際に、利用できる介護サービスを使っていなかったケースが非常に多い。制度を知らないからではなく、制度を利用することに対する心理的ハードルが高く、利用に踏み切れない人が多いのである。

自分の体が元気なうちは、人様の世話にならずに自分が家族の面倒を見ないと、世間に顔向けできないと考えてしまうのである。

そうしたケースが相次いだ結果が、わずか2月間で全国的に報道された介護事件が4件もあることに繋がっている。僕が気づいていない報道はもっとあるかもしれない。

制度をどんなに整備しようと、制度をどんなに社会に浸透させようと、世の中のすべての人を制度で救うことはできない。そんなことはわかっている。

制度の光が届く場所の影には、常にその光の陰に埋もれてしまう場所や人が存在する・・・。だからといって、「それは仕方がないことだ」とあきらめてしまえば、闇はジワリと広がり続け、光の届かない場所でふるえ続けなければならない人の数を増やしてしまう。

特に介護保険制度は申請主義なので、自ら訴えのない人や訴えることができない人は、その制度から零れ落ちてしまう危険性が高くなる。

そうしないために制度の光をくまなく地域住民に届けるシステムとして、「地域包括ケアシステム」の構築と深化が急がれ、地域包括支援センターがその中心的役割を担うことになっているのだ。
こもれ陽
つまり地域包括支援センターは、制度の光が届かない部分に光を当てる、「こもれ陽」のような機関であらねばならないのだ。

自ら訴えることができない人や場所に存在する介護問題に光を当て発見する役割を持っているのである。

そうした「発見する福祉機関」であるはずの地域包括支援センターが、訴えを待つだけの機関に成り下がっていないのかを検証しなければならない。

福祉制度の対する地域住民の偏見は根強いのである。自分が元気な間は、親の面倒を見なければならず、お上に頼るなんて恥ずかしくて出いないと考えている人も決して少なくない。そういう人たちの、制度を利用する権利を伝える役割を、地域包括支援センターは果たしているのだろうか・・・。

事件が起きる前に、周辺の人たちは何らかの異常を感じ取っている。この記事の冒頭に挙げた4つの介護事件でも、後の取材で周囲の人々が異変を感じ取っていることが明らかになっている。

そういう地域住民の声を拾って、支援に結びつける地域包括支援センターの在り方を考えてほしい。

少なくとも地域包括支援センター職員が、呼ばれた場所だけに足を運んで、そのほかはセンター内のデスクにしがみついて仕事を完結させているようなことになってはならないのである。

事件は地域で起こっているのである・・・。
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あれやこれやの事件やニュースに触れて


今朝の北海道新聞朝刊には、「特養入所者の投票偽造 登別の施設長ら 容疑で書類送検」という記事が大きく報道されている。どうしん電子版(ネットニュース)にも同様の記事が配信されている。

特に朝刊紙面では、3面記事として大きく取り上げられて報道されている。
8/3の道新朝刊3面記事
先の参議院議員選挙の不在者投票で、認知症等で意思表示ができない入所者3人の道選挙区(改選数3)と比例代表の投票用紙を使い、施設長と事務員が不正投票を行ったという内容である。

記事によると、道警は、「事務員は勝手に自らが支持する自民党などと記載し、施設長は白票で投票した。」とみているとのことである。

当該施設は僕が7年前まで総合施設長を務めていた法人施設である。元の職場が世間をお騒がせして申し訳のない思いだ。

書類送検された施設長は僕から2代後の施設長で、僕が総合施設長を務めていた際は、母体医療法人の老健施設に勤めていた人だと思う。仕事を一緒にしたことはないが知り合いではある。

ご存じかと思うが、不在者投票を実施する施設への経費として、投票した有権者1人当たり1.073円が支払われる。これは投票用紙を請求した人数ではなく、実際に投票した人数に対して支払われるために、多くの事務作業を費やして不在者投票を行っているのだから、できるだけ多くの投票用紙を請求し、なおかつ投票行動に結び付けてほしいと思うのは人情である。しかし意思確認できない人の分まで投票用紙を請求し、なおかつ代理投票者の意思で投票するのはやりすぎである。

しかも請求できる経費があるといっても、わずか千円程度・・・。ゴミのような経費を請求するために、自分の経歴に汚点をつけるのは賢い選択とは言えない。

そもそも国政投票で、わずか3票増えたって何の意味もないだろうし、仮に入所者全員分の100票を不正操作したって、結果にはほとんど影響はない。なぜそんなことをしなければならないのか意味が分からない。

施設における不在者投票は、施設利用者の権利を護るためにあるものであるし、投票行動を通じて社会参加していることを実感してもらうためにこそ必要とされているもので、その目的をないがしろにする不正は許されることではない。

道警は2人について、起訴を求める「厳重処分」の意見を付けて書類送検したそうであるが、今後は検察官の判断によって起訴するかどうかが決まる。起訴されてしまうと日本での有罪率は約99%となるので、執行猶予がついても前科がついてしまうことになる。

しかしこのような大それたことが、一施設の施設長判断で行われたのだろうか?どうもそうは思えない。もっと上からの指示や、上に対する忖度が働いたのではないかと疑ってしまう。

どちらにしても最高責任者は社福法人理事長であり、その責任は回避できない。これだけ大きな事件になっているのだから、その任を辞するのが筋だろう。今後の千葉泰二理事長(三愛病院院長)の身の処し方に注目する必要がある。

僕はもう7年間もその法人を離れているので、法人や施設の現状がどうなっているのかを知る身ではないが、投票管理において杜撰な状態になっていたことが今回明らかになったということになる。ケアの品質管理にも齟齬が生じていないかを心配しているところだ。大いに反省して、正常な状態に一日も早く戻してもらいたい。

さて話は変わるが、7/29の経済財政諮問会議は、来年度予算案の編成に向けた基本的な考え方をまとめ、次の2024年度の介護保険制度改正にも言及している。

当日の資料3-1の3頁目・3.歳出改革・ワイズスペンディングの推進(1)社会保障では、「セルフメディケーションの推進、ヘルスリテラシーの向上、インセンティブ付けなどを通じた、予防・重症化予防・健康づくりの推進」が挙げられている。

セルフメディケーションとは、「自分で病気を治すこと」であり、ヘルスリテラシーとは、「健康や医療に関する情報を探したり、活用したりする能力」という意味だから、この部分は介護予防の在り方を指しているのだろう。

軽介護者の生活援助や通所介護の地域支援事業化がこの目指すところに含まれてくる。

「利用者負担見直しを含む介護保険の持続性確保」・「給付と負担のバランスの確保」・「現役世代の負担上昇の抑制」・「後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額の引上げを含む保険料負担の在り方等各種保険制度における能力に応じた負担の在り方等の総合的な検討」などは、2割負担・3割負担の対象者の拡大や、居宅介護支援費の自己負担導入などを視野に入れたものであることは誰もが気づくことだろう。

自己負担割合は将来的に2割がスタンダードになるレールが敷かれている。

そしてこの方針が令和5年度予算の編成の方針として示されている意味は、制度改正部分は、2024年度の報酬改定を待たずに、2023年度途中からの施行もあるということになる。2割負担と3割負担の範囲拡大は令和5年(2023年)10月1日からということもあり得るわけである。

どちらにしてもこれらは対象者だけではなく、介護事業者にも厳しい改正になりそうである。
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性善説では運営できない介護事業


介護施設に勤める人の大多数が、虐待や事件とは無縁の対人援助活動を行っていると思う。

そもそも介護事業者に所属し対人援助という職業に就いている人とは、他者の暮らしを護りために役に立ちたいという動機付けで就業する人たちである。

だからこそ利用者に対する理不尽な暴力や暴言・人の尊厳を傷つける不適切対応を何よりも憎む人が大多数を占めるはずだ。

しかし毎月のように介護施設を舞台にした不適切サービスや虐待・人権侵害に通ずる事件の報道が繰り返されることによって、社会の介護施設に寄せる信頼感はどんどん失われている。

そうした信頼感を欠く行為が繰り返し報道されることによって、介護施設で働く人すべてが何らかの表に出せない不適切行為を隠れて行っているように誤解されてしまう。

挙句の果てに報道される様々な虐待行為が、「氷山の一角でしかない」と言われ、あたかもすべての介護事業者が、利用者虐待という闇を抱えているかのように思われてしまうのだ。

虐待や不適切対応とは無縁で、利用者の傍らに寄り添い、介護を必要とする人の生きる杖になっている人も、そうした虐待者と一色単に思われてしまうのである。

それは違うと声を大にしていたいのであるが、人の所業とは思えない、信じがたい行為が時折表面化して、私たちの世間に向けた訴えの説得力が失われてしまったりする。

例えば今年2月には、横浜市内の介護施設で、認知症の80代女性に性的暴行を繰り返したとして、介護福祉士・北山肇郎(69)が準強制性交の疑いで逮捕されている。
準強制性交で逮捕された北山肇郎 
被害者は、「男が入ってくる」と訴えていたらしいが、認知症による妄想的訴えと無視されていたらしい。これも大きな問題である。認知症の人であっても、何もかもわからなくなるわけではないし、正しい訴えもできることがあるので、妄想的な訴えとして聞き流さず、まずは事実を確かめるという対応が必要だと思う。

逮捕容疑となった準強制性交とは、「心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させもしくは抗拒不能にさせて」わいせつな行為あるいは性交などを行った場合に成立する犯罪である。つまりの意味は準ずるという意味ではなく、たちの悪さは普通の強制性交罪と変わりないといえることに注意が必要だ。

容疑者は自分が夜勤のシフトに入っている日に、繰り返し被害者の認知症女性に性的暴行を行っていたらしい。夜勤中に業務そっちのけで己の欲望を満たす行為にふけっていたにもかかわらず、「抵抗や拒否はなかった」と供述していることにもあきれるしかないが、こういうとんでもない人間が、介護職として普通に勤務していたことが報道されることによって、介護の職業と介護職という職種への信頼感は失われてしまうわけである。

こういう輩がいては、我々がいかに介護の職業を選んでいる人々の動機づけが、「人の役に立ちたい」というものである人が多いと訴えても、それと同じくらい人を蔑み傷つけようとする人が混じっているんでしょうと思われてしまう。

一般市民の中には、「介護施設は怖いところだ」と思ってしまう人も居るかもしれない。そうなってしまっては、介護施設はいつしか大衆から、「必要悪」というレッテルされ張られてしまいかねない。

そうなってしまっては介護施設で働きたいと思う人はますます減り、介護人材不足に拍車がかかってしまう。

だからこそ採用は慎重にしたいものだ。人手が足りないことを理由に、募集に応募してきた人を闇雲に採用してしまうと、必ずこういう輩が混じってしまい、事業経営を危うくすることを肝に銘ずる必要がある。

そして人材育成・人材教育は終わりがないもので、実効性のあるシステムを事業者内で整備しておくという最も基本的な基盤を作り上げておく必要がある。

同時に応募者の人間性は採用時にすべて見抜くことができないことを前提にしなければならないし、教育した人間がすべて期待に応えて成長するという幻想を抱かないことも大事になる。

事業経営は性善説だけで成り立たないので、常に従業員の適正と成長度を評価する機能を、事業者内に整備しておかねばならない。

その際に取り入れたいのは、ケアワークの外部からのチェックと補完機能である。

施設サービスは、ルーチィンワークが確立されて日常性が増すことによって一定の品質が保たれるが、日常性は惰性にもつながるのである。そうした惰性によるサービスの品質劣化を防ぐためには、実践水準を内部的に更新するとともに、外部情報が取り入れられて更新されなければならないということを理解して、外部の専門家による定期的なチェック機能を取り入れておくことが、介護施設の危機管理にもなるのである。

僕の顧問活動やアドバイザー活動もその一環として行っていることである。その役割もきちんとこなしていこうと常日頃心掛けているところだ。
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暴虐の銃弾を許すな


悪逆無道・蛮行・卑劣・・・いかなる言葉を連ねても決して言い過ぎではない非道なる犯罪が行われた。

参議院議員選挙の応援演説のために奈良市を訪れていた安部元首相が、凶弾に倒れ命を奪われたニュースが世界中を駆け巡った昨日・・・私たち日本人は今、何を考え、どのような行動をとるべきなのだろうか。
卑劣な銃撃
現時点で犯行の動機は曖昧さが残されたままだが、いかなる理由があろうと、それは頭のおかしい人間の戯言(たわごと)である。

いや犯人を人間と呼ぶのもはばかられる思いである・・・。

どちらにしても思想や言論を暴力で封ずる行為ほど、卑劣で汚い行為はない。それは最も恥ずべき行為であり、人として許される行為ではない。この暴挙には一片の道理も見出すことはできない。

もしかしたら犯人は、精神的な疾患を患っている可能性も捨てきれない。しかし拳銃や爆弾まで製造していたのだから、犯意や善悪の判断力は失っていないのだろう。

この非常に理不尽な結果を招いた今回の襲撃事件について、銃所持の問題や、警備上の問題も盛んに取り上げられているが、どんなに銃規制を厳しくしても、警備に万全を期したとしても、所詮は人間の行うことであり抜け穴やほころびはなくならない。

そもそも選挙のたびに、すべての要人を完璧に守り抜くことなんて不可能だ。

それより言論を暴力で粉砕しようとすることの野蛮さをもっと世に訴えるべきだと思う。そうした罪を憎む気持ちが浸透せねばならない。

すべての人々が、このような凶行によりた人の命が奪われるという理不尽さを噛みしめ、再びそのような凶行が繰り返されないために、自分自身が何をしたらよいのかを真剣に考える必要があるのではないか。

建設的議論を交わし合い、意見の違う相手にも敬意をもってふるまえる社会にしていかなければ、日本人は民度が低いと、世界中から冷笑を受け続けることになるだろう。

同時に言論であっても、匿名で言葉の暴力が飛び交う社会の危うさを理解しなければならない。その危険性をもっと指摘し合いながら、他者への優しさを失わない社会を目指していくべきではないのだろうか。

どちらにしても今回のような暴挙が繰り返される日本にしてはならない。

だからこそ明日の参議院議員選挙の投票権は放棄せず、今後の日本社会を少しでも良い方向に導いてくれる人に向けてその権利を行使しなければならないとも思う。

亡くなられた安部元首相のご冥福を祈るとともに、元首相が安らかに眠りにつくためにも、私たちは平和を護る民であることを貫く覚悟を示す必要があると思う。・・・合掌。
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介護技術指導に必要な考え方


昨日の更新記事、「そこに春はやってきますか?」に関連して表の掲示板に、「皆さんの周囲の介護施設等の面会制限の情報を教えてください」というスレッドを建てて、情報提供を呼び掛けているので、是非ご協力をお願いしたい。

同時にそこに書き込まれた面会制限の継続もしくは、その解除に向けた取り組みを参考にして、それぞれの居住系施設で対応のあり方を、事業者内で議論していただきたいと思う。

さて話は変わって今日の本題に移ろう。もうすぐ新卒者が介護事業者に入職してくる時期になった。

そこでは介護実務に就く前に、様々な形で職場内研修が行われることになろうと思う。

その際に介護事業者の中で、新入職員等を指導・教育する立場の人に、指導者としての適性がなければ人は育たないし、優れた人材が定着することもなくなってしまう。

そういう意味で経営者や管理職には、従業員の中から指導・教育を行う人物としての適性のある人を見極め、有能な人材にその責を負わせることが重要な役割になってくる。

ではどのような人物が、「教育・指導役」として適性があるのだろうか。

勿論、介護実務に必要な介護技術を教える人には、技術指導ができるだけの介護の基礎知識と基礎技術が備わっていなければならないし、教えなければならないことを、根拠を持って言葉で伝えるコミュニケーションスキルも必要だ。

しかしそれ以前に、「教育とは何ぞや。教えるとはどういうことなのか。」という根本を理解し、その本質を貫くための、理念を持っていなければならないと思う。

例えばできないことを責めることが、「教育・指導」と勘違いしている人がいる。こうした人物は、「教育・指導役」としては不適格である。

往々にしてこうした人は、人を叱ることと、怒ることの違いを理解していない。そのため自分の感情の赴くままに、指導する相手に怒りをぶつけて終わってしまう人が多い。それでは指導・教育とは言えないわけである。

指導を受ける側が、教えたことができない原因は何かということを共に考え、できない原因にアプローチして、できるように導くことが本来の、「教育・指導」ではないかと思う。

当然できないことをできるように導く過程では、「叱る」という行為も必要になる。この部分で「叱ったら、すぐ辞めてしまっても困るし」と躊躇して叱れない人も、「教育・指導役」としては不適格である。

適切に叱ることができることも指導者・教育者のスキルのなのである。

その延長線上には、適性の欠如で「できない」というケースもあって、できない原因がそれであると結論づけた場合は、「対人援助という職業の適正に欠けますね。他の職業を探したほうがあなた自身のためです」という評価と導きがあっても良い。

いやむしろそのような指導が不可欠であるといっても良い。

適性のない人をダラダラと引っ張り続けていることによって、介護事業者の中で信じられない虐待行為が発生したりする。
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一昨年、神奈川県伊勢原市の介護施設で高齢女性が相次いで首を絞められ意識を失った事件は(被害者はその後回復)、今月に入って取り調べを受けていた当時49歳の元介護職員が自殺し、その後、この女を犯人と断定し書類送検されたことで幕が引かれた。

事件の原因は、犯人のストレスであると論評する声がネットにあふれているが、仕事のストレスで寝たきりの人の首を絞めて殺そうとするだろうか?

犯人が亡くなったことで、動機の解明が不可能になったが、こうした犯罪は単なるストレスではなく、異常性格などに起因しているように思えてならず、採用後の適正評価は不可欠であるといえる。

だからこそ介護事業経営者や管理職は、「介護という職業は、誰しもが教えさえすればできるようになる職業ではない。」と自覚しておかねばならない。

教育効果に過度な期待を寄せることなく、人材育成とは、人材の見極めを含めた問題であることを正しく理解したうえで、そうした視点を併せ持つ優れた指導・教育担当者を創り出していく努力が欠かせないのである。

そうした観点から、今一度自分が所属する事業者内の人材育成システムを認めなおしてほしいものである。
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断罪された二つの介護事件に思うこと


今週の火曜日(3/8)と水曜日(3/9)に連続して、介護事業者内で起こった事件の判決が出された。

高山市の介護老人保健施設「それいゆ」の元職員、小鳥剛被告(36)が、入所していた女性の首を絞めて骨を折るなどの暴行を加え死亡させたなどとして傷害致死などの罪に問われた裁判は(参照:老健で5人が死傷した事件の初公判)、犯行の直接的な証拠がない中で医師や元同僚など25人の証人尋問が行われた。

検察が「犯行が可能なのは被告人以外考えられない。被害者への行為は弱者へのうっぷん晴らしだと容易に想像でき短期間に連続して行われた悪質な犯行だ」など述べて懲役12年を求刑したのに対し、弁護側は「決定的な証拠もないのに同一犯であることに固執し、消去法的な推論をしている」などと述べ、一貫して無罪を主張していた。

しかし8日の判決公判で、岐阜地方裁判所の出口博章裁判長は、「複数の骨折は故意によるものであることは明らか」・「介護行為などでできた事故によるものではないという解剖医の証言は十分に信用できる」などとして、求刑通り懲役12年の判決を言い渡した。

状況証拠だけで、他にさしたる証拠がない中での難しい判決の結果である。罪状は殺人罪ではなく、傷害致死罪・・・。

今回の裁判では死傷した被害者2人の事件が対象になっているが、小鳥被告の在勤中のわずか半月の間に80代から90代の男女3人が亡くなり、2人が骨折などのけがをしている。事件の闇はまだ深いのではないかという声も聴かれる・・・。

この判決の翌日には、Sアミーユ川崎幸町事件の控訴審判決が示された。

8年前、神奈川県・川崎市の有料老人ホームで、入所者の男女3人が相次いで転落死した事件で、殺人の罪に問われた、元職員・今井隼人被告(29)に対する控訴審の判決公判で東京高裁は、死刑を言い渡した一審判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。

高裁判決は、一審と同様に自白の信用性を認定したもので、動機についても「日々の業務の鬱憤(うっぷん)を、入所者の言動を契機に高じさせた」と指摘した。そして「被害者は3人にものぼり、殺意は強固で、老人ホームの職員である立場を利用した犯行の悪質性は際立っている」と断罪。「極刑をもって臨むことはやむを得ない」として被告側の控訴を退けている。

この裁判も防犯カメラなどの直接証拠がない中、状況証拠を積み上げ、3人が転落した時間帯に勤務していた今井被告の犯行と断定したものである。

それいゆ事件」と「Sアミーユ川崎幸町事件」の唯一の違いは、前者の事件では小鳥被告が一貫して犯行を否認しているのに対し、後者の事件の今井被告は逮捕直後に犯行を認めて、のちに否認に転じている点である。

今井被告の1審裁判では、警察と検察による事情聴取際に、被告が犯行を自供している録音・録画の映像が証拠として採用されている。
心の闇
どちらにしてもこの2つの裁判の判決で注目すべき点とは、密室化している介護施設(※本件では老健と特定施設の指定を受けている有料老人ホーム)の中で、職員が犯行に及んだものと推定される犯罪について、介護現場での状況証拠だけで犯行が断定され、判決に至ったものだということだ。

物的証拠がないからといって、犯人の逃げ得は許さないということを肯定的にとらえる人は多いだろう。物的証拠がないからといって誰も裁かれないのでは、被害者やその家族にとって到底納得できないことであり、それらの人も今回の判決は肯定的にとらえられていると思う。

しかしそれはある意味、怖いことでもある。

状況証拠という、見る人によって結果が違ってくるものによって推論的に断罪されるとすれば、当然のことながら冤罪の心配が生じてくる。

今回断罪を受けた2つの犯行については、同じように被害を受けている人が短期間に複数いることで、間違いなく事故や偶然ではないという推論は成り立つが、仮に裁判の対象となる被害者が一人しかいない場合はどうだろう。

Sアミーユ川崎幸町事件は、3人もの要介護高齢者がベランダの柵を乗り越える形で、3階から転落していることから、そんな偶然はあり得ないと推察できるが、仮に事件の被害者が一人しかいなかった場合、そうした推論は成り立たなくなる。

そもそも我々の人知の及ばないところで、偶然発生する事故がないとも言えない。

そうであるからこそ介護事業者は、利用者の命と暮らしを守る観点と同時に、従業員を冤罪事件に巻き込まれないように護る努力もすべきである。

録画機能のあるカメラ付きの見守りセンサーは、利用者の監視目的ではなく、プライベート空間の安全を保障するために必要な機器であると考え、その設置を積極的に行って、介護施設等で密室化する空間をできるだけ作らない努力も行うべきではないのだろうか。

そうした録画映像は、犯行の決定的証拠となるにとどまらず、間違った行為を行っていないという証拠にもなり得るものである。

そういう意味でも、利用者と従業員の双方を護る環境づくりのために、ICTや介護ロボット等を活用する視点がより以上に求められると思うのである。
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顧客からのクレーム対処方法の確立が急務


今年の北海道は例年以上に気温が低く、かつ雪が多くなっている。3月を目前にした今日も道路わきにはうずたかく雪が積まれ道幅が狭くなっている。雪解けも例年より遅くなるのだろう。

そんな厳しい冬だからこその景色も見られる。
氷瀑(ひょうばく)
僕の家からほど近い場所に登山口がある名峰・鷲別岳(わしべつだけ)の麓にある「スダレの滝」の氷瀑(ひょうばく)が迫力ある姿を現している。沢水や伏流水がつららとなって幾重にも下がり、幻想的な雰囲気を醸し出している。一度見に来て損のない景色を、雪が降らない地域の方にもいつか見に来てほしいと思う。

さて話は変わって本題に移ろう。

埼玉県ふじみ野市で起きた立てこもり殺人事件については、「介護事業者にとって他人ごとではない『たてこもり殺人事件』」という記事を書いて、介護関係者も同じようなトラブルに巻き込まれかねず、十分注意すべきだと警鐘を鳴らした。

ところが本件は、実際に介護事業者がこのトラブルに巻き込まれかねなかった状況であることが明らかになっている。

渡辺宏容疑者(66)=殺人容疑で送検=が事件当日、在宅クリニック関係者のほかに、かつて利用していた介護保険事業者も自宅に呼び出そうとしていたことが分かったのである。

容疑者が、「集金のついでに線香をあげにこい。それが筋だろ」と要求して録音が残っており、朝日新聞デジタルがその録音をダウンロードできるようにネット配信している。(※録音は文字リンクをクリックして視聴いただきたい

この音声を録音しているのは間違いなく介護事業者であろう。

このように顧客からのクレームについて、きちんと録音しておくことがまず大事である。設備も含めてそうしたシステムを構築しておくことは、今後の介護事業には必然となる。

そういう意味では、この介護事業者のリスクマネジメントは優れていると思う。

またこのような理不尽な要求と、聞くに堪えない暴言を投げかける相手に対して、電話を受けている職員は実に冷静で適切な対応を行っていると思う。

毅然とした態度を崩さずに、言うべきことも言っている。さらにムッとする気持ちを抑えて落ち着いて応対しようとする気持ちも伝わってくる。敬服すべき態度だと思う。心より拍手を送りたい対応ぶりである。

こうした電話対応ができる職員がいてくれることは心強い。是非そう言う面での教育もしっかり行っておくべきだ。

当該事業者側は訪問を断っているが、仮に集金に訪問していたら被害にあった可能性もある。そういう意味では、クレーマーへの対策は今後急務になる。

いかなる理由であったも、「線香を上げにこい」と訪問要求を受けた場合、「当事業所は、すべてのお客様に、そのような個別対応はしておりません」などと冷静に応えることができるような対応の統一を図っておく必要があるだろう。

2021年度から介護事業者には、ハラスメント対策の強化が求められている。(※これは労働施策総合推進法において職場におけるセクシュアルハラスメントパワーハラスメントの防止のための雇管理上の措置を講じることが義務づけられていることを踏まえた基準改正として義務化されたものである。)

その中には介護事業者側や従業員側に非がないにもかかわらず、顧客が怒鳴り散らしたり恫喝してきたりするカスタマーハラスメント防止のための方針の明確化等の措置を講ずることも求められている。

よって介護事業者はハラスメント対策のガイドラインを作成して、そこに理不尽なクレームに対しては毅然とした対応を行うことを明記しておくとともに、相手側の要求に応じてはならない事柄(従業員が個別に居宅訪問して謝罪するなど)を具体的に記しておく必要があるだろう。

この点は早急に対策しなくてはならないと思う。なぜならそれは従業員を護るための対策であるのだから、スピード感をもって対策せねばならない問題であることを理解せねばならない。
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預金の引き下ろし代行は訪問介護では原則できません


大阪府門真市で、高齢女性のキャッシュカードを無断で持ち出し現金を盗んだとして、介護福祉士の資格を持つ訪問介護員が2月3日に逮捕された事件は、訪問介護で行ってよい行為と、そうではない行為の境界線を見誤っているのではないかと思える事件でもある。

窃盗の疑いで逮捕された栗栖翔吾容疑者(30)は、2021年6月からの約5ヵ月間、90代の女性のキャッシュカードを15回持ち出し、現金601万円を盗んだとされている。

女性は2021年12月に死亡しているが、警察が口座から不審な高額の出金を見つけ、事件が発覚したものだ。

栗栖容疑者は、7年前から被害女性の訪問介護を担当していたが、足腰が弱り外出が難しくなった女性から、2021年の春以降、現金の引き出しを任されており、カードの暗証番号を知らされていた模様である。

さすればキャッシュカードで預金を引き出すという行為を、訪問介護サービスとして行っていたということではないだろうか。

しかし本来そんなことは認められていない。そういう意味で、本件は訪問介護事業所の管理責任も問われる問題である。

預貯金の引き出しに関連して、訪問介護サービスとして行うことができる行為とは、本人が銀行を利用するために、ヘルパーが同行して銀行に出向くことを支援をする行為である。

預貯金の口座からの引き落としに関連して訪問介護として認められるのは、利用者にとって日常生活上で必要な支援と判断される、「外出介助」として認めらているだけなのである。

つまりヘルパーが行うことのできる支援は、銀行へ行くための支援であり、あくまでも外出時の見守りや介助のみという点である。よって、銀行でお金を引き出したり引き出したお金を管理することは、介護保険上のサービスでは、「することができない行為」なのである。

銀行に付き添った際に、見守りの途中でATMを利用する方法を口頭でアドバイスすることであれば、ぎりぎり認められる行為といえるかもしれない。ただしこの際も、暗証番号などを聞き出して、それをヘルパーが打ち込むなどという行為は避けなければならない。

勘違いしている事業所では、キャッシュカードでの預金引き出しは認められていないが、預金通帳と印鑑を預かり、預金を引き出す行為は、一定金額の範囲で訪問介護としても認められるとしている場合がある。
ヘルパーのATM代行は不可
しかしそれは大きな誤解である。預貯金の引き出しを本人以外が行う場合には、その都度委任状が必要になるが、それもなく他人の通帳と預金を使用して預金を引き出していることは、金融機関に対し本人を装って預金を引き出しているという犯罪とみなされても仕方がない行為である。(※例外として認められる振込行為については、後述するので確認してほしい

そもそも訪問介護員員には代理権はないし、訪問介護は代理申請を行うことができないサービスだ。そんなことをすれば社労士法違反にも問われてしまう。

繰り返しになるが、利用者の金銭に関する内容(引き落とし、振り込み、支払い等)は、トラブルの原因に繋がる可能性が考えられるため、原則は、訪問介護のサービスとして認められていないのである。

ただし例外として、日常生活上において最低限必要な行為にかかる振込みについては対象となるケースもある。しかしそれは、各市区町村の介護保険上の判断により異なるので、あらかじめ確認が必要である。

そしてこの例外規定を拡大解釈してはならないという理解も必要である。

金銭の管理や預金引き出し代行については、成年後見制度や各市町村の社会福祉協議会が日常的な金銭管理の支援を目的として実施している、「日常生活自立支援事業」を利用すべきであり、訪問介護として行うべきサービスではないことを肝に銘じなければならない。

このあたりの理解があいまいだと、訪問介護事業管理者も後ろに手が回りかねないことになるのである。
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介護事業者にとって他人ごとではない『たてこもり殺人事件』


今、すごく怖いなあと感じていることがある。

埼玉県ふじみ野市で起きた、『たてこもり殺人事件』の犯行動機や、実際の犯罪に至る経緯について、ネット記事を読んで感じる恐怖である。

この事件の容疑者の母親は、数年前から被害にあって亡くなられた鈴木医師の訪問診療を受けていたという。そして容疑者は納得がいかないことがあると鈴木医師に対して罵声を浴びせることもあったほか、胃瘻造設して在宅で経管栄養を行うのは『難しい』とされたことに不満を抱き、医師会にたびたび苦情を寄せていたそうだ。

容疑者は母親の診療方針をめぐって過去にほかの医療機関にも不満を訴え、治療や薬に対して自分の方針を貫こうとするなどしたため、病院側も対応に苦慮していたという報道もされていることから、いわゆるクレーマーと呼ばれる人ではなかったかと思われる。

それは母親に寄せる愛情が深かったためなのかもしれないが、利用者本人の状況に関係のないところに存在する家族の『思い』によって、医療や介護の在り方が左右されてはかなわないし、そんなことがあってはならない。

容疑者は、前日に母親の死亡確認を行った鈴木医師に対し、診療を担当していた医師を含む数人を名指ししたうえ翌日の午後9時ごろに自宅に来るよう求め、事件当日に自宅を訪れた鈴木医師などクリニックの関係者合わせて7人に対し、死後1日以上経過した母親に心臓マッサージをするよう求めるという、普通では考えられない要求をしている。
埼玉県ふじみ野市の立てこもり殺人事件
犯行は、鈴木医師から蘇生できないことを説明され、心臓マッサージを拒否された直後に行われたようである。

容疑者はまず最初に、鈴木医師を散弾銃で撃ち、次に理学療法士の男性を撃ったあと、医療相談員に催涙スプレーをかけた際に、持っていた散弾銃を奪い取られたため、もう1丁の散弾銃を発砲したという。そのため鈴木医師を除く6人が外に逃げると、容疑者は玄関にカギをかけて立てこもったようだ。

2丁の散弾銃をあらかじめ準備して行われた用意周到な殺人事件であるといえる。

利用者の家族がクレーマーだからといって、まさか銃を持っているなんて想像外である。何をどう気を付けるべきか、まったくわからなくなってしまう・・・。このような許しがたい犯罪で命を失われた鈴木医師が気の毒でならない。・・・報道によると、同医師は患者の立場に立って診療する評判の高い医師で、地域になくてはならない医療のプロであったとのこと。

大切な人の命が、こんな理不尽な理由と行為で失われたのは、なんとも悔しい限りである。合掌。

それにしても同じような恨みを介護事業者が買わないとも限らない・・・というよりも、実際に理不尽な理由で、利用者の家族から恨みを買ってしまうことがあるのではないだろうか・・・。

高齢者であるから、死に至るケースもたくさんあるだろう。その結果がいちいち気に食わないと言われてしまうのであれば、私たちは病状不安定な高齢者の方々に関りを持てなくなってしまう。

介護関係者は死亡した利用者の葬儀に参列することは普通に行っているし、ましてや家族に呼び出しを受けたら、きちんと説明責任を果たそうとして、その要求に応えるのも当たり前と思って駆けつける人が多いはずだ。

しかしこのような事件が起きると、そうした要求にも応えられなくなる。

僕も過去に、利用者の家族から理不尽なクレームをつけられて、対応に苦慮した覚えは少なからずある。

ショート利用中に体調が急変した責任をとれとか、病状の変化に対し、きちんと救急対応や受診対応を適切に行ったケースまで、文句を何時間も言われ続けられることは決して珍しいことではない。

こちらの説明に耳を貸さないケースについては、「どうぞしかるべき機関に訴えてください」として、市役所などの苦情窓口を紹介して、そこを介して後日改めて説明を行ったケースもある。

そんなふうに、介護事業を長年行っていれば、利用者の家族の中に幾人か含まれてくるおかしな人に対応しなければならないことは必ずあるのだ。それは仕方のないことだとも思っていた。

しかし本件のような事件が起これば話は別だ。

利用者本人の状況を判断して、専門家が最も適切と思われる対応をとっているにも関わらず、その方法が気にくわないとして、暴力に訴えられるとしたら、家族にクレーマーがいるとみなした時点で、対応を中止されてしまうサービス利用者が出てくる恐れもある。

そうなってしまうと、一番不利益を受けるのはクレーマーである家族ではなく、利用者自身になってしまう。そんなことになってはならないのである。

今年度の基準改正では、すべての介護事業者にハラスメント対策の強化が求められ、顧客やその家族からのカスタマーハラスメントへの対策も行わねばならないことになっている。

そのため顧客側の理不尽な要求に対しては、毅然とした対応が求められるわけであるが、それがまた顧客側の予測できない不平や不満につながりかねないことも念頭に置く必要があるだろう。

しかし真摯に対応し、真摯に説明することに努めても、それに対して全く聴く耳を持たない人に、私たちはどう対応したらよいのだろう・・・。

非常に悩ましい問題である。
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介護サービスを利用していても隠されてしまう在宅介護問題


今から約1年前となる2021年1月21日に、「老老介護」殺人事件が仙台市で発生している。

その事件の判決が下されたのは、昨年も押し詰まった12/2のことであった。仙台地裁は被告である妻に懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。判決言い渡しを、被告の妻は車いすに乗ったまま聞いていたそうである。

83歳の妻が、自ら介護していた要介護3の夫(85歳)を、自宅で首と腹を包丁で刺して殺害した事件は、妻が将来を悲観し、「一緒に死ぬつもり」で夫を刺殺したものである。

加害者となった妻自身も要支援1で、事件の3日前に腰の圧迫骨折と診断されていた。

夫婦は仙台市内の市営住宅で2人暮らしだった。夫の介護は2019年12月から始まったが、当初は身の回りのことを手を添えて手伝う程度のいわゆる、「軽介護」であったという。

そんな夫の様子が「天と地ほどに変わってしまった」のは2020年8月のことであったと被告は供述している。

病状が不安定なため、入退院を繰り返していた夫ではあったが、新型コロナのため面会できなかった3週間の入院を終え、2020年8月に退院した際に認知機能が低下し自力歩行も困難になっていた。そのため毎晩2回は起きて、おむつの交換をしなければならなかった。

夫の居宅サービス計画を立案していた担当のケアマネジャーも、その状態は把握しており、訪問介護サービスを利用することを妻に提案したが、「家のことくらい自分でできる」と被告は断っている。

その時の心境について被告は、「家の中のことは他人に話したくなかった。」と供述し、2人の子供に対しても助けを求めなかった。

そのため被害者となった夫が、事件当時利用していたサービスは、デイサービスショートステイのみだった。

事件当日、被告は腰が痛くてトイレにも這っていくほどだった。食事もとれず薬も飲めなかったそうである。

夕方、夫が2泊3日のショートステイから帰宅し、夕ごはんを食べさせなければと思ったが、被告は体を動かせなかったそうである。その時に、「これ以上介護を続けるのは難しい。夫とともに死のう」と思ったという。

判決の際裁判長は、「被告の辛抱強い性格とその置かれた境遇や立場からすると、介護保険制度の内容を十分理解できず、制度に大きく頼ろうとしなかったことはやむを得ず、子供たちが父親の介護のことをあまり気にかけていなかった状況からすると、被告が周囲に協力を求めなかったことを取り立てて非難することはできない」などと述べている。

この事件は、被害者の担当ケアマネジャーにとってもショックであったろう。被告の夫に対する介護負担が増えることを見据えて、サービスの変更(訪問サービスの導入)を視野に入れながらも、被告が拒否したことによって、それを見送ったことに悔いを残しているのではないだろうか。

しかし神ならざる私たちが、利用者や家族の心の奥底まで、すべからく真実を覗き見ることなんか不可能である。被告のサービス拒否の際の心理状態を正しく把握できなかったとしても、それはケアマネジャーの能力の問題ではないのだから、責任感を持ちすぎて、あまり悩まないでほしいと思う。

認知症のない主介護者の拒否は、「大丈夫」・「問題ない」という意思表示だと思ってしまうのは仕方がないことだ。しかし実際にはそこに、家庭内にまで他人が足を踏み入れることへの拒否感とか、そこまでサービスを受けることの抵抗感など、様々な思いがあるということだろう。

私たちは、本件から改めてその教訓を受け止める必要があるだろう。

判決の際裁判長が指摘した、「介護保険制度の内容を十分理解できず、制度に大きく頼ろうとしなかったことはやむを得ず〜」という問題も、真摯に受け止めなければならない。

利用者や家族は、私たちのように制度の深い知識はないのだという前提で、かみ砕いてわかりやすく、難しい制度を説明しなければならない。そうした能力もケアマネジャーには求められるのだと思う。

サービス利用がれっきとした権利であると考えられない人がまだ世の中には数多くいることを、私たちはこの事件から思い知らされた。

被告が寝ていた夫を包丁で2回刺した際には、「誰かに助けを求めることも思い浮かばなかった」と供述している。切羽詰まったときに、思考能力は正常ではなくなるのだろう。

そこまで追い込まれないうちに、どのように切迫した状態を発見したり、表面化させることができるのかが今後の大きな課題だ。地域ケア会議では、ぜひそのことを議論してほしい。

2019年度の国民生活基礎調査(厚労省)によると、要介護者と同居している介護者の年齢の組み合わせでは、65歳以上同士が59.7%に上っており、75歳以上同士の割合も33.1%に達している。
老々介護
そうした世帯の人々が抱える暮らしの問題は、今後もより深刻化の一途をたどるだろう。

介護サービスを利用しているからといって、そこに隠された介護問題など存在しないと思い込まないようにしなければならないというのが、本件の教訓だ。

常に何か問題が生じていないかとアンテナを張りながら、自宅訪問モニタリングなどの際に確認をしたいものである。そのように意識して、身近なケースから、「発見する福祉</span>」を実現していかねばならない。

それより何にも増して、利用者や家族の本音を引き出すラポール関係を形成することの重要性を改めて感じざるを得ない。
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職場にサイコキラーが混じっていたらどうする?


このブログに以前、介護人材確保問題に関連して、「面接で人物の見極めをすることは難しく、採用後の試用期間を有効に活用して適性を含めた人物の見極めが重要である。」と書いたことがある。

その時に、「サイコパス」が応募者に交じっていても見分けることは不可能で、こうした人物は知能が高いために、一見優秀な人物と見紛うことも多く、試用期間での見極めも難しい。そうした人物によって事業者内で犯罪が引き起こされてしまうことを防ぐための確実・有効な手当てがないのが難題だと論評したことがある。

しかしこの評論には少し誤解を生じさせる部分が混じっているようだ。なぜならサイコパスが必ず犯罪を引き起こすわけではないからである。

サイコパスとは境界性人格障害者のことを指し、どこにでもいるちょっと変わった困った人や、一部の芸術家にも多いタイプと言われている。例えば憎めない詐欺犯や、足を洗えない売春婦にも多いタイプである。病的虚言癖もこれに入る。

彼らは精神異常者ではない。その分治療を受けることもないから、社会に氾濫しつつある。

こうしたサイコパスの中から確信的に殺人を犯す人間が出てくる。それがサイコキラーである。

サイコキラーとは、猟奇殺人もしくは快楽殺人を繰り返す殺人犯のことであり、理知的なやり方や独自の理由で殺人を行う犯罪者もそう呼ばれている。

こうした人間が職場に交じっておれば大問題である。特に密室化しやすい場所で、利用者と1対1で対応する介護職員などに、サイコキラーが混じっていればとんでもないことになりかねない。

そのようなサイコキラーによって引き起こされたのではないかと疑われる事件も実際に介護施設で起きている。「3月しか勤務していない老健で何があったのか?〜空気注入殺人事件」という記事で紹介した、茨城県古河市の介護老人保健施設「けやきの舎」で、入所中の高齢男性2人が相次いで殺害された事件がそれであり、この事件で逮捕された容疑者がサイコキラーではないかと思える節がある。

水戸地検は1月12日、殺人容疑で逮捕された施設の元介護職員・赤間恵美容疑者(36)の鑑定留置を開始したそうである。検察当局は鑑定留置の終わる4月22日以降、赤間容疑者を2件の殺人罪で起訴できるか判断するという。

赤間恵美容疑者は中学卒業後、看護学科のある県立の高校に進学し、5年間通って看護師の資格を取得したそうである。

高校の同級生は赤間容疑者について、「成績が優秀なだけでなく、良く冗談を言ってみんなを明るくするムードメーカー。」と評しており、その時期にサイコパスの片りんは覗かせていない。
赤間容疑者のFBのプロフィール画像
※画像は今もネット上にある容疑者本人のFBのプロフィール画像。
高校卒業後、計3年余り埼玉県と栃木県の病院で看護師をしていたそうであるが、その後、2020年に事件を起こした老健施設に就職するまでの経歴はいまだに明らかになっていない。同容疑者がその間の経歴を意図的に隠しているとしか思えない。

警察はそのことをすでに掴んでいるのかもしれないが、事件のあった職場でもその間の経歴を正確につかんでいないという事実は、何を現わしているのだろう・・・。その間に起こった何かが、本件につながりがあるのかもしれない。

前述したように赤間容疑者は看護師の資格を持っている。そのため事件の現場となった「けやきの舎」でも、当初は介護職員ではなく、看護師として勤務していたという。

ところが就職からわずか2カ月後の2020年6月に、なぜか介護職に配置換えになっている。

ちょうど赤間容疑者が看護師から介護士に配置換えになる直前の20年5月に、2度目の逮捕容疑となった入所者の鈴木喜作さん(当時84歳)が死亡していることを考えると、鈴木さんの死に関連して、赤間容疑者に何かしら後ろめたい行動か、疑わしい行為があったのかもしれない。

それによって施設命令で看護師から介護職に配置替えしたとしたら、労務管理としてはいささか問題があるような気がする。利用者の「死」という事象に関連した配置換えの場合であれば、同じように密室化する場所で、直接利用者に接する職種にとどめておくのは問題なしとは言えないからだ。

鈴木さんは亡くなった際に司法解剖がされておらず、県警は搬送先の病院が実施したCT検査の画像を解析し、最初に逮捕した事件の被害者である吉田節次さん(当時76歳)と同じように体内に空気が注入されていたことが突き止められている。

そして二人目の犠牲者となった吉田さんが2020年7月6日に死亡する直前、赤間容疑者は吉田さんのベッド周辺で不審な行動をしているのを同僚に問い詰められ、その日のうちに「けやきの舎」を退職している。(※殺人容疑での最初の逮捕は、本件となっている。

吉田さんはその後、容態が急変し、「けやきの舎」の系列の栃木県内の病院に救急搬送された後に死亡しており、病院側が死因を不審に思い警察に通報し、司法解剖の結果、体内から大量の空気が見つかったものである。

報道では赤間容疑者が「けやきの舎」に就職して以降、退職するまでの間に、そのほかにも複数の人が急死しているそうである。その人たちは病死や自然死とされていたため、鈴木さんの死因が体内に空気を大量に注入されたという証拠となったCT検査の画像のような、不審死を疑う証拠もないために立件することは不可能だろう。

となると赤間容疑者が起こした事件は、2件の殺人容疑として起訴される可能性が高い。

しかし亡くなった吉田さん、鈴木さんと赤間容疑者の間でトラブルは確認されておらず、動機は今も不明のままだ。

その事実は、本件の殺人は恨みによるものではなく、盗みなどを目的とするものでもなく、体内に空気を注入することは命を奪うことだと知る看護師免許を持った容疑者が、それを試してみたかったとか、人を殺す経験をしたかったという動機で行われたのではないかという疑いがぬぐい切れない・・・。

なんとも恐ろしい事件であり、介護事業経営者にとって、このような性質の職員が混じっていたらどうしようもないと思うしかない事件でもある。
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犯罪気質がある職員はどうすれば見抜くことができるのか・・・。


介護保険施設等の居住系施設は、その種別に応じて目的と機能が多少異なるとはいえ、利用者が(限られたある一定時期であるとしても)暮らしを営む場所であることに変わりはない。

要介護者が暮らしを営む場所であるという意味は、心身に何らかの不便を抱えている人の暮らしを支えながら、その尊厳を守り安心して安全に暮らすことができる場所にしなければならないということだ。

これは理想とするような問題ではなく、経営者や従業員がごく当たり前に認識すべき意識であり、ごく普通に実現すべき責任でもある。

しかるにその安心と安全が脅かされる事件が数多く起こっている。

このブログの「事件・ニュース」というカテゴリーに昨年取り上げた事件だけでも、信じがたい卑劣で残虐ともいえる事件が介護施設で複数件引き起こされている。

昨年8月に書いた、「介護ストレス殺人ではなく強姦致死だったという卑劣な事件」という記事では、山梨県南アルプス市の有料老人ホーム「わたぼうし」で起こった強姦致死事件を取り上げているが、ここでは夜勤中の職員が、ご夫婦で入所していた妻をトイレ介助するとして、トイレ内で強姦に及び、抵抗しないように首を絞めて殺害に至るという、人として決して許されない卑劣な行為に及んでいる。

そのほかにも様々な犯罪行為が介護施設で起きている。

昨日(1/11)は、岐阜地裁で昨年12月に、「老健で5人が死傷した事件の初公判」という記事の中で紹介した被告の裁判が開かれた。

この事件は2017年7月末から8月中旬にかけて、岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」にて80〜90代の入所者3人が死亡、2人が負傷した事件だが、昨日の裁判で被告は、当時の状況確認の質問に、「覚えていない」と繰り返している。

被告は入所者に食事を出すときに、「この肉、動物を殺したものなんだよ」と言う場面もあり、その際に注意をしたことなどもあると同僚が語っており、そもそも対人援助に最も適していない人間ではなかったかと疑われるだけでなく、サイコパス気質も疑われている。

しかし被告は、これまでの裁判でも起訴内容を一貫して否認している。この事件では犯行の瞬間を目撃した職員やその様子を捉えた防犯カメラなどの直接証拠がなく、「被告が犯人であるか」が最大の争点となっている。そもそも立件されているのは傷害致死と傷害の2件のみであり、残りの3件の死亡・傷害については立件されていない。

一審の判決は明後日1/14に出される予定だが、果たしてその結果はどうなるだろう。

昨年12月に逮捕に至った事件としては、もう一つ恐ろしい殺人事件があった。

茨城県古河市の介護老人保健施設「けやきの舎」で、2020年7月に看護師資格元介護職員(36)が、入所者に注射筒(シリンジ)で空気を注入されて死亡したとされる事件は、大きな広がりを見せる様相を呈している。

最初の容疑による逮捕に続いて、昨年12/29にも別の利用者の殺人容疑で再逮捕されているからだ。しかし事件の被害者は、その逮捕による被害者2名にとどまらないかもしれない。

容疑者は2020年4月から「けやきの舎」に勤めていたそうだが、急死したのは殺人容疑で逮捕された2件の被害者だけではないそうであり、他にも不審な死をとげた方がいて、大量殺害の疑いも持たれている。

被害者と容疑者との間に大きなトラブルはなかったとされていることから、この事件もサイコパスによる快楽殺人ではないかという疑いがぬぐい切れない。

サイコパスといえば、Sアミーユ川崎幸町で起きた老人ホーム連続殺人事件も記憶に新しいところだ。

事件の容疑者や被告となった人物は、ある場面では犯行とは別な顔を持ち、中にはその能力や資格に期待を持たれていた人物もいたりする。
善と悪
どちらにしても採用面接で、応募者に犯罪気質があるかどうかなど判断できないし、教育でどうなるという問題でもない。

犯罪気質を持った人間であっても、採用後も目に付く場面で仕事を滞りなく行えているなら、陰で卑劣な行為に及んでいるのではないかなど想像の及ばない範囲である。

そもそもこんな事件が起きるたびに、事件は氷山の一角だといわれ、多くの介護施設が虐待を隠しているように見られてしまうが、介護施設や事業所で働く大多数の職員は事件や虐待とは無縁な健全な精神の持ち主である。

その中には、人に相対する仕事に就くために生まれてきたのではないかと思えるほど、人に対して優しく愛情をもって接する職員も少なくはない。

そういう人たちが、わずか数人のおかしな人間が介護事業者に交じって引き起こした事件によって、十把一絡げ(じっぱひとからげ)に見られてしまうのでは、あまりに可哀そうだ。

だからこそこうした事件をどう防ぐのか、犯罪気質のある職員をどう見抜くのかということを真剣に考える必要があるが、その答えはなかなか見つからない。

そうした犯罪を防ぐためには、利用者一人一人の介護場面をくまなく確認できるように、施設のいたるところにモニターカメラを設置するしかないのだろうか。

どちらにしても、介護施設での殺人事件が毎年複数起きているという事実に、大いなる危機感を感じざるを得ない。・・・こんな状態は、「仕方がない」とあきらめたり、放置したりすべき問題ではないと思うのである。

社会の信用を失わないためにも、健全で安心・安全な介護施設を作る不断の努力が介護事業経営者には求められるのである。

密室化して見えない部分であっても、介護のプロとしての矜持を失わない仕事ができる職場環境と、職員の資質を作り上げるために、経営者や管理職は何をすべきなのだろうか。

まずは自分を律して対人援助という仕事にかかわるにふさわしい姿を、従業員に示すことが重要だろう・・・。それは言うまでもないことだが、それだけで問題解決にはならないことが、この問題の根深さと深刻さを示しているといえる。
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地域崩壊の足音


すでに人口減少社会となっているわ我が国では、生産年齢人口の数が急速に減り続けていますが、それに反比例するように後期高齢者を中心にした高齢者の数は増え続けています。

その上昇曲線は2042年頃まで続く推定されていますが、それは要介護者もその時期まで増え続けるのに、その支え手の数は今以上に少なくなるという意味です。

そうした深刻な問題については、「潜在介護福祉士は、いないのと同じ」などで再三指摘しているところです。

しかしその問題の深刻さにも地域差は歴然と存在します。

例えば総務省が公表した2020年国勢調査の確定値によると、北海道内の総人口に占める65歳以上の割合は初めて30%に達し、歌志内市や夕張市など道内5市町村では50%を超えており、これらは限界自治体と呼ばれています。
道内の高齢化率
一方で道内の生産年齢人口は1955年の調査以来、初めて300万人を割っており、北海道の介護人材確保は全国平均より厳しい状況であることが数字で示されています。

しかも北海道の中でも地域差はあって、郡部はより厳しい状況にあるのです。介護サービスを利用したい人はいても、サービスを提供できる職員が集まらないという現象は、札幌などの一部の市を除いて、さらに加速して起こってくるのです。

介護職員の給料が月額9.000円上がっても、人がいないのだからどうしようもありません。道内の介護事業関係者は、この現実をしっかり見つめなければなりません。

それは介護事業者が経営を続けていくうえで必要不可欠となる人材対策について、国の施策に頼っても意味がないということを現わしているのです。そこで何をすべきか・・・。

私たちに今求められているのは、「どうにかなる」という思考回路ではなく、「どうにかするのだ」という主体的な思考回路での人材対策なのです。各事業所に求められるのは、職員の定着化を向上させたうえで、その介護事業者で働きたいという動機づけを与えることです。それが介護事業経営として最も重要な課題となります。

本来、介護事業経営に勝ち負けがあってはならず、自分の所属事業者だけが勝ち残っても、地域全体から見てそれが福祉の後退を意味すれば問題になるのですが、事業経営を続けるための人材の確保面では、厳然と事業者間格差が生じ、その部分での勝ち負けは存在することになってしまうのです。この部分で負け組は、事業経営ができなくなるという意味になります。

どうぞ介護事業経営を続けるための確かな知恵を得てください。職員が安心して働けるように事業者内で人材教育がきちんと行われていますか?おざなりで機械的な教育に陥っていませんか?その成果として職員が定着していますか?

そんなふうに自分の職場が、安定して人材確保ができる事業体質を創りあげているかということを、今一度検証し直してほしいと思います。

国の政治に訴えることも必要でしょう。しかしその期待に必ず応えてくれるという幻想は持たないでください。まず自分自身でできることを最大限に行っていきましょう。「夜間オンコールのアウトソーシングを考える」・「注目に値する通所サービスの共同送迎」で紹介した業務の一部をアウトソーシングする方法や、ICTやAI搭載ロボットを使った業務の省力化といった工夫も、場合によっては必要になるのです。

そうした工夫や努力を全くしないで、「なんとかなる」という甘えた考え方はやめましょう。

どんな方法が自分の職場に合った方法で、業務の省力化につながり人が集まる方法になるのかを真剣に考えて、積極的に取り得る方法を取り入れていかねばなりません。ここはお金を掛けるべきところなのです。

介護人材が十分集まらないところでは、地域包括ケアシステムが成り立たなくなり、それは即ち地域が崩壊することを意味します。そうしてはならないのです。

この問題については、1/28(金)に日本橋教育会館(東京日本橋人形町)で行う、「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは」の出版記念セミナー、「今こそ介護の行方を問う」でもテーマとして取り上げます。「介護ヘルパーが消える日〜介護サービス崩壊に立ち向かう〜」として小島美里氏が特別講演を行うとともに、僕を交えたトークセッションでも議論します。

当日は是非会場までお越しいただき、生の議論を聴いていただければと思います。読者の皆様と会場でお愛できることを楽しみにしております。
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命の儚さに触れて思うこと


年の瀬という声が聴こえてくるようになった押し詰まったこの時期に、やりきれない悲惨な事件が起こった。

大阪北新地の精神科クリニックの放火殺人事件は、重体となっている犯人が事前に予行演習として自宅にも放火するなどして、念入りに計画して無差別大量殺人を狙った犯行だったと推察されている。

大阪の繁華街で夜遅くまで、働く人の鬱病やパニック障害・発達障害などをサポートし、患者の希望と呼ばれた49歳の院長をはじめ、尊い24人の命が犠牲となった事件は、犯行動機が何であろうと決してあってはならないし、許すことができない事件である。

このような悲劇に遭遇しても、僕たちにできることは犠牲者の方々に深く哀悼の意を示すことくらいしかない。そしてこのような事件が二度と繰り返されないように祈ることしかできない。しかし過去を振り返ると、こうした悲惨な事件が無くなったためしがないことも事実だ。

そうであれば私たちは、ただ空しく自分の無力を知るだけで、あきらめてしまうことしかできないのだろうか。

決してなくならない悲劇・・・許されない事件の繰り返しに対して、私たちができることは何もないのだろうか。

おそらく直接的に世の中を良くしたり、事件を防いだりする力は、僕たち個人にはないのだろう。

しかし人としてこの社会に生き、様々な社会活動をしている責任ある存在としての自分を考えたとき、私たちが自分の身の回りの中でできることはあるのではないかと思う。そう信じたい・・・。

僕たちは自分以外の誰かの暮らしに深く介入して関わる対人援助の仕事に就いている。それは自分以外の誰かの暮らしに直接かかわりを持つという意味である。時にその仕事は、向かい合う誰かの暮らしを支えるだけではなく、命を支えることにもかかわる仕事である。命が燃え尽きる瞬間まで関わりを持ちながら、最期の瞬間まで尊厳ある人としての暮らしを支える役割をも持っているのだ。

そういう自分が、命の儚さを誰よりも理解し、だからこそ命は尊いのだということを意識して、日々の仕事に向き合うことが大事だと思う。

自分が支援者として関わる利用者に対し、その人が置かれた環境や身体機能の違いに関係なく、人として敬う態度を失わないことが必要だと思う。能力の違いで知らず知らずのうちに人を差別視するようなことがなく、向かい合うすべての利用者を人として愛おしく思い、真摯に寄り添うことができてこそ、人の暮らしと命に向かい合う意味が第3者にも伝わるのではないだろうか。

当たり前のことだが、失われた命は二度と戻ってはこない。命を失った人に対して、そのあとにできることはないのである。だから今日できることは明日まで引き延ばさない心がけが必要だ。日々の営み、日々の関わりに悔いが残らないようにしたいと思う。

そのことをたくさんの仲間と伝え合い、同じ思いを持つ人の輪の中で、幸せや笑顔の樹形図を描く方法論をたくさん見つけていきたいと願うのである。

僕たちに今できることは、尊い命が理不尽に奪われたという現実を直視し、あらためて儚い命の尊さをかみしめて、命は護られなければならないものだということを伝えていくことだろうと思う。

だからこそ僕たち自身が、誰よりも命の尊さを想い抱きながら日々の職務に携わっていかねばならない。

そのことで、誰かに伝わるものがあるとしたら、世の中は0.1ミリでしかないかもしれないけれど、良い方向に進められると信じて、今いる場所で誰かのあかい花として咲き続けたいと思う。
儚い命の尊さ
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発見する福祉を実現するために


介護保険制度は2005年以降、地域包括ケアシステムの構築と深化を目的として制度改正等が行われてきた。

地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように、保健・福祉・医療等のサービスが一体的に提供できる仕組みが整えられ、虐待防止や介護予防マネジメントなどが総合的に行われる状態を指しているが、それは決して住民からの通報のみによって専門機関が動くという性格のものではない。
介護問題
介護問題とは見えないところに隠されていて、表面化したときには既に対応しきれないほど深刻化する性格を持つものである。

だからこそ地域包括ケアシステムの肝は、「発見する福祉」なのである。

地域包括支援センターはその機能を十分に持つ必要がある。地域に埋もれ、制度の光が射さない影の部分に光を届ける機関が地域包括支援センターだからである。

そこに所属する職員は地域をくまなく回り、その実態を知悉し、地域の隠された介護問題をあぶり出す必要があるのだ。地域包括支援センターのデスクに腰かけているだけで、できる仕事ではないのである。

このように地域包括支援センターとは、地域包括ケアシステムの要の役割を果たすわけであるが、地域包括支援センターに勤務する職員に、「地域包括ケアシステムって何ですか?」・「地域包括ケアシステムは、この地域ではどんなふうに機能しているんですか?」と質問して、それに対して全員が明確に答えを示すことができるかどうかが問題である。

それに対する答えを明確に示すことができない人たちによって、地域包括ケアシステムが限りなく形骸化する場所では、悲惨な介護問題が今以上に数多く発生するであろう。

介護問題に関連しては、先日下記のような報道があった。
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12/13に兵庫県上郡町の民家で要介護2の88歳女性が、49歳の次男に殺害されるという事件が起きたが、それは介護疲れが原因であることが明らかになった。
歩行に支障がある64歳の次女も含めて3人暮らしのこの家庭で、主介護者であった次男は、最近腰を痛め、『もうくたびれてもうた』と親しい人にこぼしていたそうである。
しかし要介護認定を受けていた母親は、介護サービスを全く使っていなかった。
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本事件のような問題が起きたからと言って、その地域の地域包括支援センターをはじめとした福祉行政に問題があるということにはならない。

誰が悪いわけではないけれど、何らかの事情で利用できるサービスも使わずに、介護問題を自分一人で抱えて煮詰まり、取り返しのつかない状況に陥るケースは存在し続けるわけである。

しかしこうしたケースを、「仕方がない」と放置するだけでは、地域の介護問題は深刻化するだけである。こうしたケースを一件でも多くあぶり出すためにしなければならないことがある。

少なくともこの地域では、本件のような事件が起きたという事実を受け止めて、この事件の起こった家庭のケースを、「地域ケア会議」で検討すべきである。

発見できなかった介護問題を検討することによって、介護問題が地域に埋もれて表面化せずに済むケースが増えるかもしれないのだ。

本件では介護疲れで親を殺めてしまった二男について、なぜ制度の助けを求めることができなかったのかを徹底的に検証すべきである。

地域ケア会議とは、そうした目的のためにあるのだ。現在進行形のケース検討だけが、その対象となるなんて間違った理解をしないでほしい。
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いろいろあった今週の介護業界


今週月曜日にマイナビが運営する、「メディカルサポネット」の「菊地雅洋の激アツ介護経営塾〜選ばれる介護事業者であり続けよ」の連載記事で、介護職員等の給与改善交付金について論評した。

そこでは、「介護職員がいない事業所(居宅介護支援や福祉用具貸与など)は対象外とする方針が示されていることに不満の声も挙がっていますが、この問題の決着も先送りされています。」と書いた。

しかし8日に行われた介護給付費分科会資料では、介護職員の月額平均9.000円の賃上げ交付金については、既存の「処遇改善加算(I)から(III)」のいずれかを取得していることを要件とし、介護職員の配置義務のない訪問看護・訪問リハビリテーション・福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅療養管理指導・居宅介護支援は対象外と明記されている。(※介護予防も含めて対象外

これによって日本介護支援専門員協会等の要望はまったく無視される形で、居宅ケアマネの交付金支給による給与改善は実現不可能となった。

ただし資料では対象となる職種を、「介護職員」としているものの、但し書きとして、「※事業所の判断により、他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める。」としているため、交付金が支給される介護施設等については他職種への配分は可能となった。

このため施設併設の居宅介護支援事業所の場合は、施設のケアマネには配分があって給与が上がるのに、居宅ケアマネは配分がなく給与も据え置きということになり、特定加算の時と同様の不公平が生ずることになる。僕個人としては非常に残念な決定だと思う。

国の論理は、今回の交付金は人材不足に対応するという意味もあり、足りていないのは介護職員なのだし、居宅ケアマネについては介護報酬を給与引き上げができる方向で改定したのだから、それでカバーしてほしいということである。

報酬改定で引き上げられた分と言っても、それは主に担当者を従前より多く抱えて逓減性緩和を適用されたことによる分だから、仕事量が大幅に増えた上での給与増である。それは労働対価として当然のことなのだから、それを理由に今回の交付金から除外されるのは納得いかないと思う人も多いだろう。その考えは正論であると思う。

また今回の交付金から居宅ケアマネが外されたことは、逆に24年の報酬改定には順風で、そこで居宅介護支援費の更なる引き上げが期待できるとする向きもあるが、そんなに先の不確定要素に期待しても始まらないと思う。そうした見方はまったく意味がないと指摘しておく。

交付金の配分ルールは今後示されることになるが、10日の参議院本会議で岸田首相は、事業者が交付金原資を全て賃上げに充てたかどうかを、自治体において確認する仕組みとすることを表明している。

これは自治体の仕事が増えることを意味すると同時に、自治体に実績報告する事務担当者の業務増をも意味している。そういう人たちにも報いる形で、配分をしていただきたいと思う。

介護給付費分科会では交付金の財源について、保険料・利用者負担の増加を牽制する声が相次いで上がったが、このことについては、メディカルサポネットの連載記事で評論しているので、そちらを参照してほしい。

さてそのほか今週介護業界を賑わせたニュースと言えば、「3月しか勤務していない老健で何があったのか?〜空気注入殺人事件」で評論した事件である。

その記事に追記しているが、事件があった老健施設では他に複数の入所者の不審死が確認されているそうだ。それも当該職員が手に掛けたとすれば、今後過去に例のない利用者連続殺人事件に発展するかもしれない。続報に注目する必要がある。

他にも介護事業者の世間の信頼を揺るがすニュースが続いた。

東京都立川市の有料老人ホームで介護職員として働いていた松本昌伸容疑者(42)=東京都東久留米市弥生1丁目=が窃盗容疑で逮捕され、容疑を認めているという。
松本容疑者逮捕
事件は、松本容疑者が8月2日〜9月8日の間、自ら勤務する有料老人ホームの入居男性のキャッシュカードを使い、計23回にわたって現金計850万2千円を引き出したというものだ。

事件が発覚したきっかけは、9月に被害男性が亡くなったことだ。被害者は生前、預金残高は何百万円もあると言っていたにもかかわらず、死亡月の利用料が残高不足になり11月に自動引き落としされなかったため、それを不審に思った別の職員からの通報ということになっている。

しかし死亡者の口座を放置して、2月も後にそこから引き落とされた利用料が支払われるのを待っているということにも問題があるのではないだろうか。

容疑者がキャッシュカードと暗証番号をどう手に入れたのかを明らかにすることも必要であるし、この施設全体の利用者金銭の管理がずさんだったのではないかという検証が必要だと思う。

どちらにしても利用者の暮らしを護り、生活の質を向上させるべき場所で、命や財産が奪われることは大問題だ。そんなことがあっては利用者は安心してサービス利用ができなくなってしまう。

そんな業界に国民の血税を使って、給与改善のための交付金を支給してよいのかという議論にもつながりかねない。

そうならないように、介護事業経営者はより一層の、ガバナンスとコンプライアンスの確立に努めなければならない。

できることは自らの組織を律することであり、そのためには自らが介護事業経営者として職員に範を示すことができるように、己を律することである。

日大前理事長のように、汚れた裸の王様にならないように気を付けたいものだ。

今週はmasaの徒然草も久しぶりに更新した。職場改革につながる示唆も含んでいるので、「街を飾るイルミネーションのように輝くために」も参照いただきたい。
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3月しか勤務していない老健で何があったのか?〜空気注入殺人事件


昨夕、恐ろしい事件のニュースが飛び込んできた。

茨城県警が昨日8日に会見を開き、老健施設入所者の体内に空気を注入して殺害したとして、元介護職員・赤間恵美(旧姓木村)容疑者(35)=同市大和田=を殺人容疑で逮捕したことを明らかにした。

事件は、茨城県古河市の介護老人保健施設「けやきの舎」で、2020年7月に発生したもの。
介護老人保健施設けやきの舎
各メディアの報道をつなぎ合わせると、事件概要は以下の通りとなる。
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事件概要
2020年7月6日午後0時半ごろ赤間容疑者は、勤務していた老健の入所者の吉田節次さん(当時76歳)の脚につながれた点滴用チューブに、空のシリンジ(注射筒)を接続して静脈に多量の空気を注入し死亡させた疑い。

吉田さんは寝たきりの状態ではなかったとのことだが、約1時間後に病院で亡くなった。その後に司法解剖されているが、不審な点が多かったことから捜査本部は医師や施設職員から話を聞くなどして捜査を進めていた。

吉田さんの死因は空気塞栓症による急性循環不全。空気は少量であれば血液内に入っても溶け込み死亡しないことなどから、既に針が刺されている点滴を使い、シリンジから多量の空気が注入されたとみられる。そのため捜査本部は、容疑者に明確な殺意があったとみて取り調べを行っている。
赤間容疑者
赤間容疑者は同施設に昨年4月下旬ごろから介護職員として勤務していたが、吉田さんが亡くなった7月6日の勤務を最後に自主退職していたという。

その後、容疑者は無職の状態であったそうだが、今年11月21日に牛肉など11点を万引したとして窃盗容疑で現行犯逮捕され起訴されていた。

14:00追記
なおこの施設では複数の入所者の不審死が確認されているそうだ。そのため県警は古河署に捜査本部を設置し関連を調べている。過去に例のない利用者連続殺人事件の様相を呈してきた。
事件概要はここまで。
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看護・介護関係者なら周知の事実であるが、看護師の資格を持っていたとしても、看護師としての発令を受けていない状態では、医師の指示があったとしても医療行為は出来ない。看護師資格をもとにして訪問介護事業所でヘルパー業務を行っている人が、医療行為ができないことと同じである。

赤間容疑者は看護師資格を持っていたが、介護職員として働いており、当然のことながらシリンジを扱うことができない立場だった。

施設側は取材に対し、シリンジは「ある程度適切に管理していた」と説明しているそうであるが、「ある程度しか管理されていない」ということが問題であり、介護職員である容疑者が、シリンジを使って点滴に空気注入できたという事実がある限り、その管理責任は当然追及されるだろうし、過失も認めざるを得ないだろう。

それにしても利用者の点滴に死に至らしめるような多量の空気を注入し、殺人行為に及ぶということは尋常な行為ではない。

犯行は容疑者が入職してから、わずか3月後の犯行だったわけである。そんな短い期間に、被害者を死に至らしめようと考えるほどの深い恨みを持ったというのか。その間にいったいどんな出来事があったというのであろうか・・・今後の動機の解明が待たれるところである。

たまたま昨日更新した記事でも、老健の連続死傷事件を取り挙げているが、介護を受ける場所で殺人という事件が起こることの恐ろしさを改めて感じざるを得ない。

本来その場は、要介護高齢者が護られる場所である。そこで事件に巻き込まれるなんて想像する人もいない場所だ。

そこで直接介護を行う職員の中に、狂気がある人間がいるなんて言うことを考える人なんていないのが普通だ。

しかしSアミーユ川崎幸町事件(※1審で死刑判決を受けている今井被告が、3人の入所者を3階のベランダから転落死させたとされる事件)や昨日論評した事件、そしてこの事件などの報道を目にすると、介護施設に安心して入所させられないと思う人が増えることを懸念せざるを得ない。

それは即ち介護事業者への不信感につながる問題であり、介護職の待遇改善を訴える際のバリアになりかねない問題でもある。

介護人材不足の折、職員募集に応募した人を適性判断が甘い状態で採用し、採用後の人物評価と見極めも行わない場所では、こうした事件がいつ起こっても不思議ではなくなってしまっているのではないか。それは最大の経営リスクであるともいえる。

そもそも殺人を犯すような気質を持つ人物が、採用後の教育訓練でどうにかなると思うのは間違いである。だからこそ採用時の人物評定と採用後一定期間での見極めが必要になるのだ。

採用時の完全なる人物評価は困難であるが、スキル・マインドなどの評価項目を定めて採用するとともに、試用期間をきちんと設けて、その間に人材の見極めを行わなければならない。

そうしたシステムを創り上げないと、短期間で利用者に対して害となる行為に及ぶ人材がいてもおかしくない職場環境に陥り、経営上の大きなリスクを抱えざるを得ないのである。

この部分の危機意識を、介護事業経営者や管理職の皆さんは強く持つべきだ。本事件を対岸の火事のように、悠長に眺めているだけであってはならないと思う。
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老健で5人が死傷した事件の初公判


最も安全で、安心できる暮らしの場でなければならない介護施設・・・。

しかし岐阜県高山市の介護老人保健施設「それいゆ」では、2017年7月末〜8月中旬までのわずか半月で5人が死傷するという、安全と安心が脅かされる状況が生じていた。

この状況は後に事故ではなく事件となっていったわけだが、そのことを覚えている関係者は多いのではないだろうか。

事件は同施設の認知症専門棟のある2階で起きたもので、入所者の女性=当時(87)=が折れた肋骨(ろっこつ)が肺に刺さるなどした外傷性血気胸で死亡するなど、80〜93歳の男女3人が死亡。他に当時90代の女性2人が肋骨骨折などで入院したというものだ。

本件については当初、施設を運営する医療法人同仁会の折茂(おりしげ)謙一理事長が記者会見で、死傷した5人について「当時80歳だった男性は病死か自然死、残り4人は事故」との見解を示していた。

しかし死亡状況に不審な点があるとして警察による捜査は継続され、その後2019年2月に捜査本部は、5人に異変が起きた全ての日にただ一人勤務していたとされ、既に退職していた小鳥剛被告(36)を逮捕した。

逮捕までの期間が長かった理由について捜査関係者は、「目撃者などの直接証拠が乏しく、事件か事故かの判断が難しかった」と述べているが、その困難性を裏付けるように事件性が疑われた5人のうち、立件されたのは2人にとどまっている。

しかも被告は逮捕から一貫して事件への関与を否定している。そのため証拠固めなどにも時間がかかたためか、起訴から2年以上という異例の長期に及んだ公判前整理手続きを経て最初の起訴から3年近く経った今月2日に、やっと岐阜地裁での初公判を迎えたのである。
それいゆ事件初公判
しかし今後の裁判も予断を許さないものである。

検察側は、被告が傷害致死の罪に問われている女性(87)の死因について、胸部を前から少なくとも3回、強く圧迫したことで折れたろっ骨が肺に刺さり、右肺には直径約3センチもの穴が開いていたことを詳述。「拳やボールのような鈍体が骨折部位に作用した。損傷は病気では生じない」。何者かが殴った可能性があると指摘した。

そのうえで暴行したのが被告だったとする「犯人性」については、施設の建物構造や立地から第三者が侵入して犯行に及んだ可能性を打ち消し、複数の職員の証言などから犯行可能な時間帯を特定した。さらに防犯カメラの映像解析や職員の勤務シフトから、居室で被害者と二人きりになれた人物を絞り込む中で、犯人を被告と断定する主張を組み立てた。

司法解剖を担当した男性解剖医は、検察側の証人として出廷し、「胸部に相当強い圧迫があった。体重を掛けるくらいの大きな力が必要」とし、事件性があると検察側の主張を裏付ける証言を行っている。

これに対して弁護側は、被害者2人の死傷について「決して暴行によるものではない」と事件性を否定。「2人は骨粗しょう症だった」とすることを根拠に、食堂や浴場への行き来が繰り返されることにより、もろくなった上半身の骨に負荷が掛かり続けて起きた不幸な事故だと主張した。

確かに骨粗しょう症の人の骨はもろく、ちょっとした圧迫で骨折に至ることは多いし、移乗介助の際に利用者の後ろ側から脇の下に手を入れて、肋骨部分を押さえて利用者を持ち上げると骨折に至ることは多い。

だからこそそうした移乗援助方法を取らないように、利用者の脇の下から手をまわした場合は、介助者は自身の腕を組んで、決して利用者の肋骨部分を押さえ付けないように注意をするわけである。

この施設ではそのような基本介護ができていなかったのであろうか・・・。そうであったとしても折れた肋骨が肺に刺さるなどの圧迫は、誤った移乗方法だけでは起きないように思える。そもそもわずか半月の間に、肋骨骨折する人が相次ぐなどは、単なる事故であって、そんな事故が偶然続いたとは考えにくい。

いったい真実はどこになるのだろうか・・・。

被告が全面否認している中で行われる、確たる証拠がない裁判の今後の行方を、介護関係者の多くの方が注目していると思われる。

それにしても・・・本件の状況の中で立件できなかったケースが3件もある。死亡した人ひとりと、けがを負ったふたりについては、いまだにその原因が特定されていないことになる。被害者及びその家族にとって、それは納得しがたいことのように思えてならない。

裁判の対象になっている2人の死亡者を含めて、被害にあった5名の方々は、まさか介護施設という場所で、そのような事件に自分がまきこまれるとは思っていなかっただろうし、被害者の家族の方々にとってもそれは、「青天の霹靂」であったろう。

虐待や暴行事件のない介護施設は良い施設ではなく、当たり前の施設である。少なくとも私たちは、介護の場で虐待や暴行事件が起きることは完全に防いでいかなければならないし、安全な介護の場にしようとするなら、正しい介護方法を貫いて、「もろくなった上半身の骨に負荷が掛かり続けて起きた不幸な事故」さえ起きない安全な介護施設を創っていかねばならない。

本事件の被告については、逮捕前から激昂性があるとか、利用者に不適切な言動が見られていたとの報道もされている。

それが事実かどうかは不明だが、本件のような事件が起こった場合、その場所で利用者に対して、「タメ口」で接している人間は、すべからく、「利用者対応がなってなかった」・「態度の悪さが目についた」と報道されることになる。

その点を踏まえたうえで、あらためて介護事業における職員のサービスマナー教育というものを考え直すべきではないかと思う。そのためには、「街を飾るイルミネーションのように輝くために」も参照いただきたい。

本件の関連報道として以下にユーチューブにアップされている報道動画を貼り付けておく。

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GH虐待が発覚したむかわ町穂別の社会福祉法人の人権軽視


北海道胆振管内むかわ町は、シシャモで有名な町である。町内の寿司屋では他では食べられない、「シシャモ寿司」も旬の時期には食べられる。・・・ただし珍しいだけで、おいしいものではない。

同町は2006年に穂別町・鵡川町が合併し、「むかわ町」となった経緯があり、旧穂別町は新むかわ町穂別地区となっている。

そのむかわ町の役場内で昨日11/22(月)午後4時からむかわ町穂別のGHで起こった虐待の概要などを説明する町長会見が行われた。

虐待行為が確認されたのは、「穂別高齢者グループホームみのり」(定員9人)。町から指定管理を受けていた同町穂別の社会福祉法人・愛誠会が運営している。
虐待のあったGHみのり
虐待発覚のきっかけは今年8月上旬、胆振総合振興局に匿名で通報があったことによるものだ。8/13に同振興局から連絡を受けた町が、グループホーム職員や入居者に聞き取り調査を行ったところ、介護職員の1人が大声で高圧的な態度を取ったり、命令口調で接したりしていたことが分かった。

竹中町長によると、9人のGH利用者のうち5人が当該介護職員から大声で高圧的な態度や命令口調による精神的虐待を複数回受けていた。数人の入居者はこの職員の入浴介助などを嫌がるようになったという。

グループホームには施設長を含む職員9人が勤務。数人が暴言による虐待行為を行う職員を注意していたが、「指摘直後はおさまっても時間がたつと言葉遣いが再び荒くなった」という。

当該職員は精神的虐待をしていたことを認めており、反省しているという。現在は法人内の別の高齢者施設で入居者とかかわらない業務に就いているそうである。

しかしこのような対応で済ませて、本当に良いのだろうか・・・。

GHに入所している方々は認知症の人たちである。それらの人たちが怯えて、当該職員の介護を嫌がるということは、認知症で記憶や見当識に障害がある方が、暴言を繰り返した職員が誰かという認識を持っているということだ。それほど心に深い傷を負っていると追う意味だ。

そうであるにもかかわらず、加害職員に出勤停止などのペナルティを与えず、利用者と関わらないとはいえ、そのまま業務を続けさせているとはどういうことだ。重大な虐待事案であるという意識にかけていないか?

本来こうした問題は、身体を傷つけていなくとも刑事事件になってもおかしくない事件である。事故ではなく事件であるという認識を当該法人は持っているのだろうか。

加害職員は施設長や他の職員からの注意を受けてもなお、虐待行為をやめずに今回の問題となっているのだから、当然懲戒解雇の対象にならないかと検討されてしかるべきであり、処分が行われるまでの間は自宅待機が当たり前だろう。

そもそもそれ以前に、「指摘直後はおさまっても時間がたつと言葉遣いが再び荒くなった」というのであれば、再三の業務命令・指導を聞き入れていないのだから、その時点で利用者と接する業務から外すのが常識だろう。そんなことも行っていないという事実は、加害職員の責任だけではなく、管理責任が当然問われてくる。

この施設長は何度も注意をしても同じことを繰り返す職員に、口先だけで注意をして終わりにしていたという意味であり、管理能力ゼロである。施設長の地位から外れるべきだろう。

そもそも職員に対してサービスマナー教育を行っているのかと問いたい。それさえ行わずに、「タメ口介護」が家庭的で親しみやすい対応だとしているとしたら、それはもう救いようがない。

「少々お待ちください」・「お待たせいたしました」・「かしこまりました」・「申し訳ございません」という言葉は、コンビニではアルバイトの学生が使いこなしている言葉である。

対人援助の場で、言葉使いにも気を使ってサービスマナーを守るということは、他のサービス業で学生アルバイトができている程度のことはしましょうというレベルにしか過ぎない。そのことの徹底を図らねばならないとされる、保健・医療・介護・福祉業界の民度とレベルの低さと、その異常さに気が付くべきなのである。

そんな常識もないこの社会福祉法人は、いったいどんな法人何だろうと疑問になるが、その歴史は結構古く、昭和50年に設立されている。むかわ町は僕が総合施設長を務めていた社福と同じ地域だから、この法人のことも良く知っている。僕が若かりし頃は、そこの理事長等が、地域のリーダー的存在でもあった記憶がある。

その法人が代を重ねて腐ってしまったのかと思うと情けなくなる。

同法人の公式サイトには、「人間としての尊厳と社会連帯の思想を基本理念とし利用者に愛され誠実を旨とする」という理念が掲げられているが、それが建前となっている。このGHに尊厳を護るという姿勢は全く見えないからである。

介護事業経営者や管理職の方々に改めて考えてほしことがある。それは自分に管理責任のある場の従業員が、利用者に不適切対応をしたことによって、自分が報道関係者の前で、「お詫び」の会見を開き、頭を下げる姿を想像してほしいということだ。

昨日の竹中町長のように、会見場で糾弾されながら、質問に答える自分の姿を想像してほしい。あなたの家族がその会見報道を見て泣くことになるかもしれないことを、危機感をもって感じてほしい。

利用者は顧客であるという意識を徹底させ、顧客に対するサービスマナー教育を軽視してしまえば、今回のような言葉の暴力が必ず起こるのである。そのことに危機感を抱かねばならない。

だからこそ介護事業におけるサービスマナー教育をおざなりにしてはならないのである。今からその教育をやり直したいと思う方はメールで連絡いただきたい。必ずそのお手伝いをします。
言霊
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入所者を凶行に走らせた動機は何か


まず最初にお知らせを一つ。明日(11/19:木)15時〜16時までの予定で、沖縄限定 Livedoオンラインセミナー 「看取り介護実践の視点〜基本から応用まで」(講師:北海道介護福祉道場あかい花 代表・菊地雅洋)が無料配信される。

沖縄にお住まいの方は、文字に張り付いたリンク先から申し込みいただくと、どなたでも無料視聴できるので参照してほしい。なおこのセミナーは、12/3配信の第2回分の前半という内容になっているので、ご了承いただきたい。

さて話は変わって本題に移ろう。

昨日(11/17)昼頃に、飛び込んできた殺人事件のニュース。いったい何が原因でこんなことが起きてしまたんだろう。今日になって犯行の動機めいたものが少し見えてきているが、それは人一人が殺されなければならないほどのトラブルだったのかと疑問を持たざるを得ない・・・。

事件概要は以下の通りである。
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11/17(水) 朝日デジタル11:51配信ネットニュースより転載
17日午前6時35分ごろ、大阪市平野区長吉川辺3の住宅型有料老人ホーム「ヴェルジェ平野南」で、出勤してきた職員から「駐車場で人が倒れている」と119番があった。高齢男性が敷地内の駐車場で倒れていたほか、1階の事務室で60代の職員とみられる女性が血を流して横たわっているのが見つかり、2人とも死亡が確認された。大阪府警平野署は2人が死亡した詳しい経緯を調べている。

平野署によると、男性は70代の入居者とみられ、7階自室から血の付いたハンマーが見つかった。部屋の真下に当たる駐車場内で死亡しており、ベランダには脚立が置かれていた。女性は施錠された事務室であおむけに倒れ、頭付近から血を流していた。2人の間に目立ったトラブルはこれまでに確認されていないが、男性が女性をハンマーで殴った後に自室から飛び降りた可能性もあるとみて調べている。

現場は大阪メトロ八尾南駅の西約600メートルの住宅街。ホームページによると、この施設は7階建てで個室60室を備えている。
転載ここまで
---------------------------------------------------------
報道にあるように、駐車場で亡くなっていた70代の入所者の部屋からは、血がついた鉄製のハンマーが見つかり、ベランダには脚立が置かれていた。その入所者は、ベランダの真下の位置で倒れていたことから大阪府警平野署は、この入所者が1階の事務室で職員をハンマーで殴り殺した後、自室に戻って飛び降り自殺をしたとみている。
住宅型有料老人ホーム「ヴェルジェ平野南」
(画像は事件の起きた住宅型有料老人ホーム)
有料老人ホームで殺人事件が起こったケースは過去にも複数ある。しかしそれらの事件は職員による卑劣な犯行であったり、入所者同士のトラブルで一方が加害者になるなどの事件で、利用者が加害者となって、職員を殺害したという事件の記憶はない。(※高齢者施設以外の成人施設なら、利用者が加害者となって職員が殺害された事件は、いくつか記憶している)

ハンマーで撲殺されたとみられる被害者の女性は、前夜から当直業務に就いていたとのこと。まさか自分が入所者から襲われるなんて想像もしていなかったろう。

事件が起こった有料老人ホームは、「住宅型」であるから、介護の必要がない人も数多く入所されている施設だと思う。

勿論、住宅型であっても外部の介護サービスを利用することは出来るのだから、要介護者も入所していると思うが、犯行はハンマーを手にした入所者が、1階の事務所で職員を撲殺した後に鍵をかけて現場から離れていることや、7階の自室から脚立に乗って窓を飛び越えていることを考えると、その入所者は身体的な自立度は高いと想像できる。

この犯行の凶器はハンマーと報道されているが、普通に考えると有料老人ホームの生活空間にそのようなものは置かれていなし、ホーム内全体を見渡しても、そのようなものが存在する可能性は低い。

とすれば犯人は、わざわざハンマーをどこからか手に入れて凶行に及んだのではないかと想像される。最初から人を殺すことを目的としてハンマーを用意していた可能性が高い。それほど深い恨みを抱いて犯行に及んだということではないのか・・・。

捜査関係者によると、加害者の入所者は騒音などで施設側から注意を受けていたといい、施設内で周囲とトラブルを起こし、退去手続きの途中だったとの情報もある。

騒音の内容や、注意がどのように行われていたのかはまだ分からない。そのほかのトラブルもあったのかもしれない。

加害者とみられる入所者の施設に対する怒りの矛先が、たまたま事務所にいた人に向けられたのか、それとも被害者個人を狙った犯行であるのかも不明である。

それらは今後徐々に明らかになるかもしれないし、その中から今後に向けた教訓めいたものが見えてくる可能性もないとは言えない。

しかしどのようなトラブルがあったとしても、ハンマーで撲殺されるような理由にはならない。それはあまりにも理不尽な犯行である。

入所者はお客様であるが神様ではないので、顧客サービスの域を超える奉仕の必要はなく、共同生活のルールを護るように注意を促すことはあり得るし、契約上の約義を護れないのであれば、退去勧告を行うこともあって当然である。

入所者と施設のトラブル=施設側の問題・落ち度、ではないのだ。ここは間違って捉えてはならない。

被害にあった職員の方は、本当にお気の毒である。心より冥福をお祈りしたい。

このような惨事が二度と起きないことを願ってやまない。そのためにも犯行の動機を含めた、「事件の真相」が明らかにされることを願う。
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対人援助の仕事に就いてはいけない人間の見極めをどうするのか


介護事業者にとって人材育成は最も重要な課題であり、そのための教育訓練は大切な経営基盤であるとさえ言ってよい。

だがこの国における社会全体の働き手の減少は、介護事業者における深刻な人材不足をもたらし、多くの介護事業者が、「介護実務を担う働き手」が足りないとして、人材教育に時間を掛けることができずにいる。

法人内に教育部門を持ちながら、その担当者が現場から、「人手が足りないのだから、募集に応募があり、採用した職員は一日も早く実務に就かせてほしい。」と突き上げられる悩みを聴くことも多い。
介護人材不足
その結果、促成栽培のように時間と手間をかけない作業指導を終えた人間を介護実務の場に放り出して、後は先輩職員の仕事を見よう見まねで仕事を覚えて実務をこなせるようにするというのが、介護事業者のケアの品質を低下させる一因にもなっている。

必要とされる教育が十分行われずに、仕事の手順を一日も早く覚えさせる作業指導に終わっているのだから、それも当然である。

本来、職場内の教育とは、正しい知識を与えたうえで、OJT訓練によって頭の中の知識を実際に試してみて、正しい方法やコツを掴み取らせるものである。基盤となるのは座学で得た知識なのだ。

それが不十分な中で、OJTと称して先輩職員のお尻のあとを金魚の糞のようについて回ったって、正しい技術もコツも掴めるわけがない。しかも指導する先輩職員にも教えるスキルがないどころか、正しい介護技術も身に着けていない場合があるのだから、根拠ある指導も計画的教育もできない。それはOJTとは言えない。

ここを根本的に変える必要があるが、さらにもう一つ重要な問題がある。それは人物の見極めができていないという問題である。

本来OJTでは知識を実務に生かす過程で、人物の適性評価を行うことも必要になる。教えを受けている人間の長所や短所を見極めて、短所をカバーする方法を教えるだけではなく、場合によっては利用者と向かい合う職業に向かない職員を見極めて、排除するということも必要になるのだ。

促成栽培の過程では、そのようなことは言っていられなくなり、一定の基礎作業ができるようになれば、すぐに独り立ちさせて、自分で成長しなさいと現場に放り出される。

育つも八卦・育たぬも八卦という世界が介護の一面として、そこかしこに広がっている。

そうして適正評価が行われることなく、人物の見極めも不十分な状態で現場に放り出された人間の中には、対人援助の適性のない人間も多数含まれることになる。

そうした人間が、密室化されやすい利用者のプライベート空間で勝手気ままにふるまって、利用者の尊厳を奪い、身体さえも傷つける行為を行ってしまうのである。

そのような行為の結果が下記で報道されている事件につながるのだ。
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朝日新聞11/12・14:18ネット配信記事より
愛知県東浦町の知的障害者施設「なないろの家」で入所者が相次いでけがをした事件で、県警は12日、入所者2人に対する傷害罪で実刑判決を受けた元非常勤職員の水野有幸容疑者(46)を、別の入所者に対する傷害致死の疑いで逮捕した。

 逮捕容疑は、2019年3月6日夕から7日朝、入所者の男性(当時49)の腹を蹴り、腸に穴が開くけがを負わせ、同月8日に搬送先の病院で死亡させたというもの。死因はこのけがによる「急性汎発(はんぱつ)性腹膜炎」だったという。

 この施設では、他に50代男性2人と80代男性の計3人が腹にけがをし、うち50代の1人が約3カ月後に死亡した。水野容疑者は80代男性と死亡した男性に対する傷害罪で起訴され、名古屋地裁は9月30日、懲役2年4カ月の実刑判決を言い渡し、確定。水野容疑者は3月、起訴分に含まれなかった、もう1人の50代男性への傷害容疑で逮捕され、名古屋地検が捜査している。

 地裁判決などによると、水野容疑者は空手の有段者で、知的障害のある入所者の生活支援をしていた。

 愛知県は10月、施設の運営法人に対して新規利用者の受け入れを3カ月間停止する行政処分を出した。法人側は第三者検証委員会を設置して、運営体制や、事故や苦情への対応のあり方について検証している。
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果たしてこのような人物が、「教育」によって虐待とは無縁な人になって、利用者に対して不適切対応をしない人間になることができるだろうか。

子供に対する教育課程であれば、人間性が大きく変わるような成長も期待できるかもしれない。しかし49歳にもなって、無抵抗でなんの悪意もない障害者を蹴り殺すような人間の、その根底となる性質を変えるなんて不可能だ。

さすればこうした職員はOJTの最中に、「この人物は、人の尊厳を傷つけても何とも思わない資質を持つ人で、対人援助に向かないのではないか」ということを察知して排除するしかないのである。

介護事業経営者は、採用した職員が全員、その事業者内で戦力になるという幻想を抱かずに、育成と見極めの教育課程をしっかり構築して、機能させていくという強い意志が必要だ。

それがない事業経営者が、テレビカメラの前で頭を下げて、なおかつ刑事責任さえ問われ、経営危機に見舞われている現実に気づくべきである。

コロナ禍で、他産業からの転職組が多くなっている今だからこそ、今一度そのことを肝に銘じなければならない。自分自身の首を絞めないためにも・・・。
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車椅子固定車両の誤った使い方が死を招いている


北海道は日中の気温が10度に達する日が少なくなって、終日暖房が必要な日が多くなった。

先週は中山峠や旭川などで初雪が見られ、全道各地でいつ雪が降り積もってもおかしくない季節になってきた。

この時期になると、通所サービスやショートスティ事業の送迎に一層の注意が必要になる。

路面が凍って滑りやすいのでスリップ事故に注意が必要になるのは勿論だが、気を付けるべきは事故が起きないようにすることだけではなく、事故が起きた際に事故車内の利用者ができるだけ怪我を負わないようにすることである。

特に安全に配慮した正しい車椅子の固定やシートベルトの装着などは、決して忘れてはならないことである。

ところがこの車椅子の固定方法とシートベルトの装着方法が誤って伝えられているケースで、負わなくても良いけがを負った事故ケースが数多く伝えられている。

勿論、車椅子を車内に固定できる車両を購入した際には、メーカーや販売店などの職員が出向いて、車いすの固定方法や、シートベルトの装着方法を説明するのであるが、その説明を受けた職員はともかく、説明を受けた職員からその方法を伝えられる職員が、伝言ゲームのように増えていく過程で、正しい固定と装着方法が誤って伝えられることが多い。

そもそもメーカーや販売店から正しい方法の説明を受けた職員自身が、誤ってその方法を受け止めてしまう場合もある。

そうであっても一般席のシートベルトの装着方法を間違えることはまずないが、車椅子に乗ったまま乗車できるリフトワゴン等で、車内の車椅子シートベルトの装着方法が間違っているケースは非常に多いのである。
誤った車椅子のシートベルト固定方法
一番多い間違ったシートベルトの装着方法とは、上記画像のようにベルトを体に直接巻き付けずに、車いすのサイドガードやアームガード(アームレスト)越しに装着してしまうやり方である。

これではシートベルトの効果は発揮できなくなる。事故のショックで、身体が前に倒れそうになった際に、シートベルトがその体重と推進力を支える効果は発揮されずに、シートベルトを着けていない状態と同様に、身体は前に投げ出されてしまうのである。

先月、岩手県奥州市水沢真城で起こった事故も同様である。

9月29日午後3時45分ごろ奥州市水沢真城の国道4号で、介護施設の送迎用ワゴン車が急ブレーキをかけ、乗車していた94歳の女性利用者が車椅子から車内に投げ出され右太ももの骨を折る重傷を負い、10月1日に容体が急変し死亡するという事故があった。

この事故の一報を僕のFBで情報提供したところ、そこに次のようなコメントが記された。

福祉車両のシートベルトは装着しても効果が低く、グレーゾーンになってるみたいですね。

↑しかしこの認識は少し違っていると思う。リフト付きワゴン車等の福祉車両であっても、車いす固定を正しく行えば、一般シートと同じ効果があることは実証されている。

奥州市の事故ケースにしても、正しい車椅子の固定方法が職員に伝わっておらず、間違った方法でシートベルトを装着していたことが原因である可能性が高いのである。

ただし法令上の問題が皆無ではないことは事実だ。車の一般席についてはシートベルトの装備・装着・強度まで法律により定められているが、車椅子にはそのような法的義務付けはない。「車いすは利用者の身体機能等により形状が多種多様で、一律の基準や義務適用ができない」というのがその理由である。

このように法整備の不備が、車いすを車両に固定して移動することが特別ではなくなっている社会情勢に追いついていないという問題があるものの、車椅子をしっかり固定して正しくシートベルトを装着することによって防ぐことができる致傷・死亡は数多いのだから、法整備の不備を訴える前に、個々の特殊車両で定められている正しい車椅子の固定方法と、シートベルトの装着方法を確実に守ることを励行すべきである。

そのことができずに死亡事故が起きている現状を憂いて、「福祉車両安全研究会」(東京都杉並区荻窪5-11-17 03-3220-3030)という団体が全国各地で、「車両安全講習会」を開催している。

各地に出向いて開催する講習会は、座学や実技を含めるとフルメニュー3時間半ということだ。

そうした講習会を、講師として出向く職員の交通費実費分のみで開催してくれているとのことなので、通所サービスなどの複数事業所が協力して開催してみてはいかがだろうか。

詳しくば文字リンク先の同団体HPを参照願いた抱いたうえで、問い合わせていただきたい。

安全送迎は、送迎業務を伴う介護事業にとっては最大の課題である。それは運転技術だけでは担保できない問題であるという認識を持ってほしい。

送迎サービスが伴う介護事業者では、送迎車両の運行に係るすべての職員が、安全に最大限配慮した車両運行知識と車いすの安全固定・シートベルトの正しい装着のための知識を、完璧に身に着けておく必要があることを再認識してほしい。
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教育指導の意味を勘違いするな


北海道で人材育成に携わっている僕としては、とても残念に思えることが道内の看護専門学校で起こっていた。

北海道南部の江差町にある道立江差高等看護学院と紋別市の紋別高等看護学院で、学生が複数の教師から「ペンでぶっ刺すぞ」などの暴言を浴びせられ、適切な指導を受けられず留年や退学に追い込まれた。

この件に関して10月12日、第三者調査委員会は52件のパワーハラスメントがあったと認定した。

認定内容の発表の場で委員会座長は、「教師が個人個人の教育観に基づき教育をしていてハラスメントが発生した」と述べている。

これを受けて鈴木北海道知事は、13日に会見を開き謝罪するとともに、道はパワハラで留年や退学となった生徒らの救済策を検討している。同時にパワハラ行為が認定された職員については処分の検討を行っている。

留年と退学の救済は1日も早く行ってもらいたいが、仮に救済策が実施されたとしても、学生の心の傷が癒されているかどうかが心配なところだ。トラウマとして心に傷を負ったまま、看護の場で仕事をするようになった時に、ふとしてきっかけでその傷口に何かが触れて、その人物を破壊しかねないのがパワハラ被害者の特徴だ。

そうした被害をもたらしているのが、看護教育に携わる教育者であることが哀しすぎる。

果たしてこれらの教員は、人材育成や教育とはどういうことかということを理解しているのだろうか。

確かに教育指導の一面には、スクリーニングという意味を持たせる必要もある。看護という人の命に深く係る仕事であるからこそ、向き不向きを見極めてふるい落とすことは、将来患者になる人たちのためだけではなく、自分の適性に気が付かずに、自分に向かない看護という仕事に就いて苦行を続けることになりかねない学生自身のためでもある。

しかしそれは教育指導の本道ではない。人材育成のための教育の本道とは、人の成長を期待し、能力を発揮できるように知識と気づきを与えることだ。

そうした教育課程では、時として生徒を叱る必要もある。

人材不足が叫ばれる介護業界では、叱ると辞めることを恐れて、介護実務の場で後輩を叱れないことが後進が育たない一つの要因でもある。だからこそ叱る勇気を失わない指導者の態度が時として必要になることは確かだ。

しかし叱る目的は、教える人に自らの欠点を自覚させ、併せて長所を気づかせることにあることを忘れてはならないのである。

そのためには叱った後で、事後的なフォローをすることが必要になる。そうすることで叱責前の状況よりもスキルを引き上げることができるからだ。そうしたフォローや努力をする義務と責任が教員にはあるのだ。

教育者は叱責や指導の必要性を明確にして、教える者にそのことをしっかり伝える責任があることを忘れてはならない。

そもそも叱ることとは、怒りを生徒にぶつけることではないのである。

ましてや人をからかったり、できない奴と烙印づけたりすることは教育にならないし、そうした態度をとる教員は、教育者としては失格である。というより今回報道されている暴言が本当だとしたら、それはすなわち人間として失格といってもいかもしれない。

感情的に怒りをぶつけて行動を修正させようとする人は指導者には向かない。そうした態度を改められない人は教育者という立場から身を引かねばならない。

本件の加害教員の責任は厳しく追及される必要があるし、そういう人はもう2度と教壇に立たせないことが必要になると思う。

本件によって志半ばで看護職の道を閉ざされた人たちは、本当にお気の毒だと思う。救済策は早く広く適用して、閉ざされた道を開くようにしていただきたいと切に願うのみである。
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失礼だという恨みの深さとネット法廷の怖さ


先週起きた二つの事件から、深く考えされられた問題があった。

まず一つは、「プライド」の問題である。

東京都港区の東京メトロ白金高輪駅で男性会社員(22)に硫酸とみられる液体をかけたとして、傷害容疑で静岡市の大学生・花森弘卓容疑者(25)が逮捕された事件では、被害にあった男性が、事件のきっかけになったと思われるトラブルについて事情聴取の中で、「タメ口が原因」と供述しているというのである。

報道によると、花森容疑者はかつて琉球大農学部に在籍し、映画サークルで被害者である男性と一緒だったそうであるが、男性は「数人でいた時に花森容疑者にタメ口を使ったら『自分が年上なのに、タメ口はおかしい』と怒られた」と説明している。花森容疑者は男性より1年早く入学したが、2年生になって入ったサークルでは同期だった。

サークルで同期と言っても、学年では容疑者が1年上なのだから、タメ口で話しかけられて気分を害すること自体はわからない感情ではない。しかしそれがずっと何年も尾を引いて恨みとして残り、犯行に結び付くというのは常人には理解できないことだ。

本当にこのことが事件の動機になったのかは疑問が残るが、被害者が唯一トラブル原因として記憶している事柄が、「タメ口」によるトラブルなのだから、容疑者は我々の想像以上に、そのことに根深い恨みを抱いて、その恨みを一方的に募らせた末の犯行であったのかもしれない。

現代っ子と言ってよい、22歳と25歳の間のトラブルにおいても、年齢差・人生の先輩後輩・礼儀ということが問題になっていることを考えると、戦後生まれの方が多くなったとはいえ、介護サービス利用者の多くは、儒教道徳の影響を色濃く受けており、長幼の序を重んずることを考えなければならない。

若い介護職員が親しみやすさのつもりで日常的に、「タメ口」で接することは苦々しく思っている高齢者はたくさんいるし、そのことに傷ついて悔しがっている人も多いことを、介護関係者は心に刻むべきである。・・・そのことがまず一つ。

もう一つは、相変わらずなくならない介護事業者の虐待に開いた口がふさがらないのと同時に、世間がそのことに思った以上に憤慨し、糾弾の狼煙をあげていることの怖さについてである。

先週金曜日に報道された事件は、山口県周南市の高齢者入所施設で起きたもので、施設長である片岡加寿子容疑者(60)が、入所者の目や口に粘着テープを貼ったとして、暴行の疑いで逮捕されるという施設長として、介護関係者としてあるまじき恥ずべき行為が行われていたというものだ。

行為そのものが驚くほど常軌を逸したものであるが、おそらくこうした暴行は、日常的に何らかの、「罰則・行動制限」として行われていたのではないだろうか。

容疑者は犯行を認めているとのことで、その行為はいかなる誹りを受けても仕方のないものであるが、この報道がネット上に流されてから2時間も経たないうちに、容疑者の顔写真や自宅を探し当てようとする情報サイトが立ち上がっているという恐ろしいことが行われているのだ。
容疑者をさらすサイト
※報道数時間後にネット上に立ち上がったサイト。

容疑者の顔写真やSNSアカウントを探すサイトが立ち上がったことをきっかけに、それとは別に容疑者を徹底的にたたく掲示板が立ち上げられ、そこでは当該事業所のサイトに容疑者画像は掲載されていないか等々、憶測も交えて様々な情報がたれ流されている状態である。

そこに参加している匿名のネット住民は、みんな清廉潔白な人ではないと思うのだが、事件の糾弾の論調については全員が正義は我にありという論調で、犯人を厳しく糾弾している。

それは繰り返される介護事業者の虐待報道にいら立っての論調だけとは言えないように思え、そこには事件を糾弾する意見を煽って、個人攻撃の炎を燃え盛らせて愉しむことを目的化したような書き込みも多くみられる。

そこはまるでネットの世界が法廷と化し、弁護人のいない被告に対して参加者全員でその罪を糾弾し、罵詈雑言を浴びせて人格攻撃を行い、その状態が果てることがないかのような状態だ。

その罵詈雑言は容疑者のみならず、容疑者が所属していた介護事業者のありとあらゆるものに向けられてゆく。そのことにも限りがない・・・。容疑者が行った行為は恥ずべき蛮行とはいえ、このようにして、容疑者をさらしものにして攻撃し続ける状態は恐ろしいことであると思えてくる。

だがこうした風潮を嘆いても始まらない。ネット社会とは、こうしたことが普通に行われるものなのだということをしっかり認識しなければならない。そして介護事業者のリスクマネジメントも、そうした風潮をも含めて考えていかねばならない。

二つの事件を考え併せると、職員が日常的にタメ口で人生の先輩に接している介護事業者のリスクマネジメントは、なっていないことを改めて認識しなければならない。顧客にタメ口対応しかできないことがネット社会で糾弾されたときに、その事業者の経営者や管理職・リーダー職などは、糾弾される対象になることを自覚して改革に努めていかねばならない。

そういう意味で介護事業経営者や管理職の皆さんに、改めて考えてもらいたいことがある。

従業員がマナーのない顧客対応を行っていることが即ち不適切とされるという問題意識を持っているだろうか。

あなたの所属する介護事業者は、世間から誤解を受けるような対応が全くないと自信を持って言えるだろうか。

それとともに、自分に管理責任のある場の従業員が、利用者に不適切対応をしたことによって、自分が報道関係者の前で、「お詫び」の会見を開き、頭を下げる姿を想像してみてほしい。そうなるとしたら、あなたが会見場で糾弾されながら質問に答える姿を見て、あなたの家族が泣くことになるかもしれないのだ。

そんなことが決してないと言い切れる職場を今のうちに創っておく必要があるということだ。

そのためにはまずあなた自身が、顧客である介護サービス利用者に対し、マナーのある接し方を行うことができる人になる必要がある。
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介護ストレス殺人ではなく強姦致死だったという卑劣な事件


まず最初にお知らせを・・・。介護施設をはじめとした高齢者福祉施設・居住系施設のクラスター感染が増加傾向に転じ、前週から倍に増えていることから、某機関より注意を促すよう依頼されました。手洗い・うがいのほか、安全な方法による空間除菌は不可欠です。「使用後95.5%の医師が継続使用を希望する空間除菌法」を参照して、感染予防対策を練り直してください。

さて話題を変えて本題に入ります。

先週22日の日に僕は、自分フェイスブックに次のような意見を投稿した。
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8/6に南アルプス市の有料老人ホーム「わたぼうし」に勤めていた丹沢一貴容疑者(42歳)が、ご夫婦で入居していた利用者の妻(80歳)の首を絞めて殺した事件で、容疑者は「夫婦の介護にストレスを感じていた」と供述しているそうです。

仕事のストレスなど、介護以外の職業でも必ずあるし、介護の仕事をしている人でストレスのない人もいません。それを利用者の殺害という形に向けると言うのは普通ではありません。本当の殺害理由は、もっと別の深い闇の部分にあります。人材採用の問題ももっと検証されるべきです。こうした報道で、介護が特段他の職業に比べてストレスが多くて、それが利用者への暴言や暴力という形になってしまうのだなと思われることが一番問題です。
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僕がここで、「本当の殺害理由は、もっと別の深い闇の部分にある」と述べていたことが当たってしまった。

昨日報道機関が一斉に報道しているが、この事件の真相はストレスによる虐待致死事件ではなくではなく、性暴力による致死事件であることが明らかになった。
tanzawakazuki
甲府地検が昨日26日、逮捕された丹沢一貴容疑者(42)=同県市川三郷町=を、強制性交等致死の罪で起訴したが、起訴内容は、8月5日午後9時50分ごろから午後11時半ごろの間、同市の有料老人ホームのトイレで、入所する女性(80)の首を腕で絞め付けるなどして強制的に性交し、窒息死させたとしているのである。

強制性交等致死」・「強制性交等罪」とは、聴きなれない罪名であると感じる人も多いと思うが、これはいわゆるレイプそのものを指す強姦罪である。2017年7月13日に施行された改正刑法から強姦罪の名称および内容が変更となったものである。旧強姦罪では3年以上の有期懲役刑だったところ、強制性交等罪では5年以上の有期懲役刑に引き上げられ、原則的には執行猶予のつかない罪となり、厳罰化されていると言える。

本件はトイレ介助するために利用者をトイレの個室に誘導した後、容疑者は性欲を満たすために性行為を行い、その最中被害者が暴れないように首を絞めていたが、それによって被害者は死に至ったということで、「強制性交等致死罪」が適用されるものだ。

事件があったのは、山梨県南アルプス市の老人ホーム「わたぼうし」。

被害女性は一人で歩くことができず、殺害当日丹沢容疑者は一人で夜勤を行っており、殺害理由について容疑者は当初、「排泄介助の際に言うことを聞いてもらえずかっとなりトイレで首を絞めた。日頃からストレスがたまっていた」と供述していたことが報道されていた。

そんな理由で人を殺めることも許せないが、それは真っ赤な嘘で、自分の性衝動を抵抗できない高齢要介護者に向けるという卑劣極まりない事件だった。しかも勤務中の犯行である・・・。

被害者は加害者に恥ずかしい部分を含めて、身を委ねて日常支援を受けなければならない立場の人である。そこでは、「信頼」という絆が何より必要とされるのに、その絆を断ち切って、介護のプロとして個人空間に深く介入するという立場を利用しての犯行は許しがたい罪である。

それはまさに鬼畜の所業でしかない。

こんな犯罪が起きると、施設職員が利用者から信用されなくて、特に異性介助を拒否するケースが続出しかねない。困った問題である。

当初、介護ストレスを理由にしていた容疑者を擁護するかのような発言が、ネット上では飛び交っていた。殺人は許せないが、ストレスから暴力に及んでしまうことは仕方がないという意見も少なくなかった。しかしストレスを利用者に対する暴力という方向に向ける人間は、介護を職業とすべきスキルのない人間である。

そもそも介護のストレス=利用者虐待というのはあまりに短絡的動機で、介護ストレスを理由にした虐待事件の多くに、人に言えない恥ずかしい犯行動機が隠されていることが多いのだ。今回はその闇の部分が明らかになったに過ぎない。

FBに書いたように、殺害された80歳の女性は、ご夫婦でこのホームに入居していたとのこと。遺されたご主人は犯行現場となったホームで、今どんなお気持ちで過ごされているのだろうか。その方自身の心身の状態にも影響を与えていると考えられ、非常に心配である。

それにしても、40代の男性が80代の高齢者に性欲を感じることも、自分が仕事として介護支援に係るべき利用者に、職場の仕事の最中に性欲を感じることも、僕には全く理解不能だ。

こうした性癖の犯罪者を、教育で何とかしようということは難しいだろう。こうした性癖を持つ人間であるということを、採用面接で見抜くことは不可能だし、試用期間で見極めることも極めて困難だ。

介護事業者では多かれ少なかれ密室化する介護の場で、自らの危機的状況を訴えることができない認知症の人も含めて1対1で長時間係るのだから、そうした性癖の人間が一人でも混じっていれば、そこで犯罪が行われることはあり得ることになってしまう。

介護事業経営者にとってそれは恐ろしいことで、対岸の火事とばかり言っていられないと言っても、有効な対策を取ることが難しい問題でもある。とにもかくにも職員採用と、教育の専門部署を整備して、就業後も職員個人の介護という職業への適性を見極める働きかけを、常時怠らないことくらいしか問題解決にはつながらないだろう。

どちらにしても採用段階から慎重な人物の見極めが必要なことを、改めて自覚しておきたい。
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アンガーマネジメントの前に適正評価と自己覚知を


今日は僕の○○回目の誕生日。だからと言って、誕生日を迎えてもうれしい年ではないが、FBでつながっている人がお祝いメッセージを届けてくださると頬が緩む。やはり人間にとって一番の財産は、人とのつながりだと思う。ありがたいことである。

ところで今年の誕生日を僕は大阪で迎えている。

昨日北海道を経ったが、飛行機内は予想以上に混雑していた。最近は空席が目立つ便が多いのだが、昨日はほぼ満席便。なぜかというと今日甲子園に登場する北海高校の生徒さんが搭乗していたようだ。一般客は観戦できないが、学校関係者の応援は許可されているのだろう。選手も応援団も頑張ってほしいものだ。

大阪に来ている理由は、当然のことながら仕事である。昨日の夕方、豊中市の施設で職員研修のための講演を行い、今日は午後から大阪市老連で、「介護事業所の高齢者虐待最多から考える〜高齢者虐待の要因と虐待防止の視点〜」という講演を行う予定が入っている。

そもそも虐待を行わないサービス事業者が良い事業者という訳ではないし、利用者を虐待しないサービス事業というのは極めて当たり前のことである。

そうであるにもかかわらず高齢者介護事業者の研修として、虐待防止が研修テーマとなる意味の一つは、当事者が虐待とは思っていない行為で、利用者を傷つけているという事実が存在するからである。

人に関わり個人のプライバシーに深く介入する職業についている人にとって、そのような鈍感さは許されない。そうしたことをなくするためには何が必要かをきちんと示してくる予定だ。

一方では、資質に問題がある人物による、あり得ない虐待が繰り返し報道されるという事実もある。そうした虐待は、なんとしてもなくしていかねばならない。

例えば8/6にネット配信された報道によると、岐阜県多治見市にある介護施設(施設種別は明らかにされていない)で、入所する90歳の女性に顔の骨を折る大けがを負わせたとして、この施設に勤務する介護職員(41)が傷害の疑いで逮捕されたそうである。

事件の発生は2021年6月22日。容疑者は入所している90歳の女性の顔を殴り、ほお骨や上あごの骨を折る大けがを負わせたとして傷害の疑いが持たれている。

被害者の90歳女性は、一部介助が必要な状態(ほぼ自立に近い状態と報道されている)であったが、血圧が高目で短時間入浴とされていたとのこと。事件当日は容疑者が一人で入浴対応していたが、なかなか浴室(脱衣室か?)から出てこないので、別の職員が確認に行ったところ怪我が発覚したものである。

当初、容疑者は自分の手が当たった事故であると暴行を否認。しかしその後、故意にたたいたことを認め逮捕に至ったとのことである。

被害者は容疑者から衣類を手渡され、自分で着衣を行っていたが時間がかかり、そのことに容疑者がイラついた可能性が取りざたされている。しかし90歳の利用者に対して、「ほお骨や上あごの骨を折る」ほど殴るという怒りはどこから来るのだろう・・・。かッとして一度殴ったくらいでは、そのような傷は負わないだろうから、強い力で複数回殴りつけたとしか考えられない。

よく言われることとして、介護という仕事のストレスが虐待の原因だとされたりする。しかしストレスは誰もが抱える可能性があるが、そのはけ口を利用者虐待という形に求めることは、「当然」でもなければ、「よくあること」でもない。

ストレスを抱える多くの対人援助のプロは、ストレスのはけ口を利用者に向けることはないのである。ここを勘違いしてはならない。

着衣が遅いことにイラついただけで、ほお骨や上あごの骨を折るほどの暴行に及ぶ人物は、いかなる教育を行っても対人援助の仕事には向かないだろう。こういう人物は、その資質を見抜いて排除するよりほかに方法はないように思えてならない。

昨日(8月11日)も、北海道函館市の医療法人が経営するGH秋桜で、利用者の飲み物に下剤を複数回混入させる身体虐待が明らかになり、利用者の新規受け入れが3月禁止される行政処分が下されている。

一番の問題は誰が考えても人として許されざる行為を平気で行う人間が、密室化しやすい居住系サービスにおいて、介護職員として利用者対応しているという事実だ。そのような行為に走った職員(5月に依願退職)は、人を傷つける目的で介護の職業を選んだとしか思えない。

教育訓練の手が届かない人物による虐待行為が少なからず存在することを関係者はよく理解し、人物の見極めと、適切な処分という視点も同時に持っておかねばならない。人員不足がその視点を曇らせているとしたら、それは最大の経営リスクである。

その一方で教育の視点として、介護の場で虐待を防ぐために、「アンガーマネジメント(怒りの管理)」を学ぶべきだという主張がある。しかしアンガーマネジメントを学んでも、利用者のちょっとした言動にイラついたり、怒りを覚えたりすること自体が、どのような感情や考え方から生じているのかを理解しない限り、アンガーマネジメントで怒りを鎮め虐待を完全に防ぐことはできない。

まずはその感情のありようを理解する、「自己覚知」を学び、そのうえでアンガーマネジメントを活用する必要があると思う。

そのため今日の講演でも、「自己覚知」・「快適な職場環境」という面にもスポットを当てて話を展開したいと思う。

なお僕の著書、『人を語らずして介護を語るな THE FINAL 誰かの赤い花になるために』の第5章 介護力を豊かにする方法(154頁)では、「自己覚知を促す方法を模索して―masa式演習授業」という方法を紹介しているので、興味のある方は是非一読していただきたい。

今日はオンラインを通じた講演となるが、心を込めて伝えたいと思う。それでは受講者の皆様、どうぞよろしくお願します。

蛇足になるが、我が北海道日本ハムファイターズも暴力事件で揺れている。4人も子供がいる30代男にも今更アンガーマネジメントを教えなければならないのだろうかと考えたとき、なんともむなしい思いを感じるのは僕だけではないだろう。・・・我がファイターズの今シーズンは、もう終了したと同じである。
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郡山遺体遺棄事件は個人的介護請負契約の結末?


6月11日に、福島県郡山市の通所介護事業所管理者が逮捕された、「80代女性の遺体遺棄事件」は、なんとも不可思議な事件である。

様々なメディアではこの事件を、「郡山市の介護施設死体遺棄事件」と報道しているが、事件の舞台となったのは介護施設ではなく、郡山市内の地域密着型通所介護事業所である。

そして死体が遺棄されていたの、通所介護事業所のすぐ隣のアパートで、職員休憩所という名目で通所介護事業所が借り上げていたものだという。

この事件が、「介護施設死体遺棄事件」と称されているのは、報道する記者の浅薄さに起因していることに加え、被害者及びその関係者が、被害者は施設入所しているつもりであったことによるものと推察する。そこがこの事件の根にもなっている。(※実際に被害者は通所介護事業所に隣接するアパートで一人暮らしをさせられていたと思われる。)

アパートの所有者によると、通所介護事業所が開所したばかりの2017年秋ごろ、通所介護事業所関係者から「従業員の休憩用に」と言われて1部屋を貸したが、実際にどのような使い方をしているかは把握していなかったという。

事件に関連する通所介護事業所は職員が9人の地域密着型通所介護事業所で、この事件の容疑者として逮捕されたのは、その通所介護事業所の管理者であっ石田兼也容疑者(39歳)である。FBで検索すると、この人物と思しき人のタイムラインに行き着くことができる。

事業所は郡山市の大通りの内環状線に近い閑静な住宅街にあり、周辺には大学もある場所に立地している。

事件の発覚は6月10日に遡る。この日の夕方、死亡した女性(80代)の関係者が女性に面会しようとしてこの通所介護事業所を訪れたことがきっかけになった。

その関係者が石田容疑者に女性との面会を求めると、石田容疑者は、「いなくなった」と言ったため、面会しようとした関係者が、「警察に届けた方がいい」と促したそうである。これを受けて石田容疑者は警察に連絡したという。
郡山遺体遺棄事件発覚の時系列
関係者なる人物が、被害女性とどういう関係だったのか不明であるが、その人は被害女性は通所介護事業所にずっと宿泊してサービス利用していたと思っていたのか、あるいはお泊りデイサービスという認識はなく、通所介護事業所も介護施設と同じようなものと思い、そこに入所していると思っていたのかもしれないし、単純にそこが長期入所できる介護施設だと勘違いしていたのかもしれない。

実際に被害者の女性は、今年になってから自宅から離れていたらしいが、お泊りデイサービスを利用しながら通所介護に滞在していたのではなく、お泊りデイサービスを行っている事業所の隣のアパートの1室に置かれていただけという状態であったようだ。しかも通所介護の管理者以外の職員は、被害女性の存在に気が付いていない。

ということは被害女性が通所介護に隣接するアパートに住み替えて、石田容疑者から何らかの介護を受けていたということのようだが、それは通所介護事業所と被害女性の契約ではなく、逮捕された石田容疑者が、個人的に女性の介護を請け負い、事業所に隣接するアパートで最低限の介護支援を行っていた可能性が高い。職員の休憩所とされていたアパートの一室が、実際には誰も利用せず、使われていなかったことを利用したのだろう。

ところが女性は4月下旬に死亡したという。女性に目立った外傷はなく、司法解剖した結果、死因は不詳だったということで、病死の可能性が高い。女性はビニール袋に入れられていたという。

石田容疑者は、「(女性が)アパートで4月下旬ごろに亡くなったことは分かっていたが、放置していた」と供述しているが、その理由については、「(亡くなったことが)ばれたくなかった。一人で抱え込んでしまった」との趣旨の供述もしているという。

つまり通所介護事業所とは関係のない個人の請負契約で、通所介護が借り受けているアパートを使用して、勝手に介護契約を結んでお金を受け取っていたため、そこで死亡した人がいることがわかると、通所介護事業の経営母体にもそのことが知れてしまい、責任を取らねばならなくなるので、遺体を1月以上も放置した事件ということであろうか・・・。

本件の遺族は、女性を介護施設に預けていると思い込んでおり、しかし実際には被害者は、通所介護事業所が借り入れたアパートの一室に置かれて、容疑者から個人的に介護を受けていたに過ぎず、しかも容疑者の所属する介護事業者側はそのことを把握していなかったという特殊な事件である。

それは自分の小遣い稼ぎのために、考え付いた個人請負契約だったのかもしれない。一人暮らしが可能な軽介護者だということで、所属事業者には内緒で、普段利用されていない休憩所(アパートの一室)を利用して、自分の空き時間でできる支援で何とかなると軽い気持ちで引き受けたものの、思いもよらず利用者が病死してしまい、処理に困ったケースではないかと思われる。

しかしそれは、人暮らしを軽んじていると言われても仕方ない状態で、結果的には利用者が一人寂しく死を迎え、さらにその状態を1月以上放置するとう重大な結果につながっている。

取り返しのつかない結果と言えよう。被害者のご冥福を心よりお祈りするとともに、このような悲劇が繰り返されないように願いたい。

関係者には今一度、法令ギリギリのブラックあるいはグレーな、個人請負契約がないよう周囲を見回してほしいと思う。
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自立支援という言葉で装飾された「冷血」


生活保護受給者などから合計8.000万円以上をだまし取ったなどとされて起訴された、元埼玉県和光市幹部職員・東内京一被告(57)―懲戒免職―の公判が6月4日、さいたま地裁で行われた。

そこで検察側は懲役10年を求刑したが、そのニュースに触れて、「予想より重い求刑で驚かされた」という人も多いと思う。

この事件のニュースは、当初生活保護受給者から預かった現金200万円をだまし取ったという詐欺と業務上横領事件として報道されたが、その後事件の被害総額は8.000万円以上に及ぶ累犯行為であることが明らかになり、罪名には窃盗罪も加えられた。

4日の公判で検察側は、「市の福祉に携わる者として高い立場にあるにもかかわらず、高齢者など要保護者の財産を剥奪するなど犯行は極めて悪質。被害者からだまし取ったキャッシュカードから、合計152回にわたり現金を引き出すなど犯行は常習化していた」と非難。動機などについて、「高級車やブランド品の購入、借金の返済などに充て、詐欺罪に問われて支払った750万円の弁償金についても、そのうちの250万円は別の被害者から搾取したものである」と指摘した。

このように犯行の悪質性が重い求刑につながっているようだ。

東内被告と言えば、自立支援型マネジメントの先進地区と言われ、「介護保険からの卒業証書」が話題となった和光市の、その事業を引っ張っていた人物であり、地域包括ケアシステムにおける自立支援に関する講演も全国で行っていた。彼の話を聴いて感銘を受けた人も多かったはずである。

過去に彼を招いて講演を主催した人の中には、裏切られたと嘆いている人もいるが、彼は講演を行っている当時から、それらの方々をだまし裏切っていたのである。声高らかに地域包括ケアシステムの推進と、自立支援マネジメントを唱える傍らで、被保護者の方々などの虎の子の財産を奪っていたのである。

彼が和光市で旗振りしていた事業の功績は、この犯罪とは別にみるべきだという人もいるが、それは少し違うだろうと思う。

東内被告が被保護者の財産を再三にわたって騙し盗っているのに、そのことに担当部署の誰もが長期間気が付かなかったという意味は、彼が和光市の福祉事務所の中で、「アンタッチャブル」な存在になっていたという意味である。

彼がそのような存在になり得た理由も、和光市方式というネームバリューを広げた功績に基づいたもので、予防マネジメントのあり方を提唱する陰で、醜い悪質な犯罪を繰り返していたことを考えれば、その実態とは犯行の餌に和光市方式を喧伝していたに過ぎないと言っても良く、功績などあってなきがごときである。

そもそも和光市方式に、どんな功績があるというのだろうか。

なるほどその方式は、介護保険サービスを使わない人を増やし、財政支出を減らしたのかもしれない。さすればその功績とは市の財政面での功績に過ぎず、市民が何かの恩恵を受けたという功績とは言えないのではないのか?

和光市方式とは要介護者の尻を叩き、介護保険サービスを使わなくなることが最大の価値であるかの如く市民を洗脳し、要介護認定結果が非該当になることを最高の価値とするもので、「介護保険からの卒業」として、そのことを褒めたたえるという、どっかの宗教に見紛う運動にしか見えない。

しかし和光市方式で、「介護保険から卒業させられた人」の1割が、卒業前と同じサービスを利用しているというデータが存在するように、それは体の良い給付抑制でしかないことは明白である。しかも和光市は、介護保険から卒業させられた人が保険外サービスを利用して、以前と同じサービスを10割自己負担利用していることに、いかなる見解も公表していない。それはまるで臭いものに蓋という態度に終始しているかの如くである。
和光市
それが市民貢献と言えるのか大いに疑問である。ましてやこの国や、この国に住まう人に何か恩恵が与えられたことではない。

つまりは東内被告が声高らかに提唱していた、「和光市方式」そのものにうさん臭さが感じ取れるのである。そこで唱えられれている自立支援マネジメントも、地域包括ケアシステムも、人に対する愛情や優しさを徹底的に排除した、「冷血の顔」を裏に隠した方式ではなかったのだろうか。

人の暮らし奪う行為を、装飾した文字やキャッチコピーで飾っただけの方式だったのではないのだろうか。

和光市方式を礼賛する人にとって、愛情や優しさという目に見えないものを振りかざす概念は、制度という枠組みの中では無駄でしかないのかもしれない。

しかし人に相対する職業において、愛情や優しさを徹底的に排除した先に何が起きるのだろうか。制度やサービスは、最低限の生存保障に終始すればよいというのだろうか。

介護という行為やその職業が、生き永らえていくだけの最低限の支援行為を指すとしたら、人はこの世に生まれ生きていく意味を失っていくだろう。
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Q&Aの発出が遅れた情けない理由


昨日やっと、令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)が発出された。

問5では最大の疑問とも言えた問題の答えが示されている。ADL維持等加算の検査を行う職員に求められていた、「一定の研修」については、バーセルインデックスに関して学ぶ研修であれば、内部のビデオ研修でもよいもので、理学療法士等のリハ専門職ならば、今までに必ず受けているであろうと想定されている研修といえるようである。

それ以外に目についたのは問4で、LIFEに提出すべき情報に関連した各加算の様式例については、同一のものを用いることを求めるものではないとしている一方で、「それぞれの加算で求められる項目(様式で定められた項目)についての評価等が必要である」と釘を刺していることだ。そうであれば間違いのないように提示された様式例を使うのが無難である。できるだけ早く新様式に切り替えたいものだ。

それにしても今回のQ&Aは、(Vol.4)との発出間隔が長くなっている割には疑義解釈は問7までしかなく、解けた疑問も少なく感じた。

入浴介助加算兇陵畫紊亮鑪爐大浴槽でもよいのかなどの疑問は解けないままである。疑問が残されたまま新加算を算定できない事業所は、とりあえず4月中は従前の入浴介助加算気蚤弍するしかなくなるかもしれない。

ところで今回のQ&Aは、当初予定では週初めの月曜日に発出されると言われていた。それが遅れたのは老健局職員のコロナ感染の影響であると思われる。その感染の背景には夜遅くまでの集団飲食という事実があって、それも感染拡大の一員と疑われているのだから、立場上その見識が問われると非難されても仕方ないと思われる。

今日までに報道されている経緯は以下である。
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政府の緊急事態宣言解除から3日後の3/24に、厚生労働省老健局の当時の老人保健課長が、4月からの異動を前にして職員の送別会を主催し、職員23人が銀座の飲食店で深夜11:50まで宴会を行なった。その後4/7までに6名の職員が新型コロナウイルスに感染したことが明らかとなり、その中には宴会に出席した3人も含まれていた。

4月1日付で省外に転出した1人を除く5人は、3〜6日に発熱などの症状を訴え、6〜7日に感染が確認された。このほかにも検査を受けて結果待ちの職員がいる。
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政府は歓送迎会や5人以上の会食を自粛するよう呼び掛けており、その呼びかけを無視した宴会を行い、その参加者から感染者を出しているのだから言い訳はできない。しかもそれが感染対策の担当省であるのだから、これは悲劇を通り越した喜劇である。

この件に関して厚労省側は当初、店側も時短要請に従っていなかったかのような説明をしていたが、それは全くの虚偽で、当日の予約時間は午後7〜9時だったが、コースの締めのラーメンが出る時間になっても、「まだ待った、待った、待った」とムチャを言ってダラダラ居座り、職員全員が店を後にしたのは、日付が変わる直前だったそうである。

このことについて一部の報道では、『監督官庁の役人が飲食店に「時短要請破り」の片棒を担がせ、おまけに「濡れ衣」まで着せたのだから、タチが悪い。』と論評されている。

宴会に参加しなかった職員は数人しかいなかったようで、職員の多くは自宅待機を余儀なくされ、今後も事務が滞ることになるのだろう。しかしそのことが前面に出て更なる批判を受けないようにQ&A vol5は出勤している職員だけで、何とか今週中の発出を実現させたものだろう。

だからホームページにアップされた時間も昨夜遅くになってからであったし、疑義解釈の件数も少なくなったのだろうと思う。

今の時期介護事業者では、毎日新報酬の解釈やLIFEへの情報提出に向けた対応に追われ残業が続いている職員も多いことだろう。歓送迎会も自粛して頑張っている介護事業者の職員から見ると、こうした厚労省職員の駄々洩れ対応は憤懣やり方ないものだろう。

だが、「人のふり見て我がふり直せ」という言葉もあるのだから、こうした姿を反面教師にして、「他人の失敗を生かす」・「人の経験から学ぶ」という謙虚な気持ちが求められるのだろうと考えよう。

そう思わないとやってられないしな・・・。

それにしても老健局職員ともなると送別会も銀座なんだな。さすがに高級官僚は違うと思ったりする。ちょっと羨ましかったりして・・・。
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真実は闇の中・・・にしないために。


昨日の夜TBSで放映された、「爆報THEフライデー」の、「カリスマ監察医事件簿・1枚の写真で完全犯罪を見破れ」を見た方がいると思う。

そこで取り上げられた事件の一つに、老人ホームの暴行死事件があった。その老人ホームで複数の利用者が病死とされていた事件は、実は一人の介護職員の暴行による殺人事件であったというものだ。

その事件は6年前に起き、次の記事に取り挙げた、「フラワーヒル入居者死亡事件」ではないかと思う。【参照:「もっと褒められたかった」と利用者を殴り殺した事件の背後に潜むもの】(※確信はないので、間違っているかもしれない。)

その事件は、犯人が被害者の胸をこぶしで数回にわたって殴打し、胸骨骨折などの傷害を負わせ、心不全または出血性ショックにより死亡させたとされるものだ。

検察側が地裁裁判の冒頭で陳述した犯行動機は、事件の数日前に別の入居者の容態が急変して死亡したのを発見したところ、犯人が当時の施設長に大いに誉められ、この経験からさらに異変が起きてまた発見者となれば、犯人の介護職員としての評価がさらに上がるものと考えて入居者を殴ったというものである。

一方で弁護側は、暴行の原因は犯人の適応障害によるものとして情状酌量を求めたが、1審では求刑10年に対して懲役8年の刑が言い渡されている。

その際の判決で裁判長は、「事件の前、入居者の容体の異変にいち早く気がついて褒められた経験があり、職場での自分の評価を上げるため、異変の発見者となろうと無抵抗の被害者に一方的な暴力を加えた。本来介護士として被害者を守る立場にありながら動機は身勝手で強い非難に値する」と指摘した。検察側の動機説明を是認した形になっている。

しかしこの事件の本当の恐ろしさとは、裁かれた罪以外の罪悪がまだ闇に潜んでいるのではないかという疑いがぬぐえないことだ。

事件が起きた特養では、犯人が勤務を始めた直後の2010年2月15〜18日の4日間で、入居者3人が相次いで亡くなり、そのほか別の1人がけがをしている。埼玉県警は判決が言い渡された事件のほか、84歳の女性への傷害容疑と、78歳の女性への傷害致死容疑でも立件したが、さいたま地検はいずれも不起訴処分(嫌疑不十分)とした。また死亡したもう1人については事件化されていない。証拠が不十分だったからであろう。

このことについて、遺族として法廷に立てなかった死亡利用者の家族が無念の思いを訴えたりしているが、その思いはどこにも届かない・・・。

この事件は感覚麻痺とかいうレベルではなく、自己顕示欲のためだけに人として許されない行為を行うという悪行でしかない。その事件に更なる被害者が隠されているとしたら、それはとても恐ろしいことであるし、決して許されることではない。

もし犯人が裁かれた容疑以外にも犯行及んでいるとしたら、その罪は一生自分が背負って、その贖罪のために生きていかねばならないということを知るときが来るだろう。それもとても悲惨な人生と言えるのではないだろうか。

昨日番組を観ながらこの事件のことを思い出したときに、昨今の介護事業者における職員採用の状況と、職員教育の問題点が改めて頭に浮かんできた。

本件のように、本来対人援助の仕事に就いてはならない人が、人材不足の中でますます低くなっている採用のハードルを潜り抜けて、介護の仕事に就いてしまうケースは多い。だからこそ採用時の人物評価は最も重要になるし、採用基準のハードルは下げてはならないのである。そして採用時に見抜けない適性の無さについては、試用期間中にしっかり見抜くようにOJTを活用すべきである。

さらにこうした人物に影響を受ける輩を創り出さないように、介護事業経営者や管理職の方々には、採用後の計画的で定期的な教育システムは最重要であることを自覚してほしい。そしてその教育とは、「人間性の向上」につながるものでなければならず、単に知識や技術を教えるだけのものであってはならないことも忘れないでほしい。

そうした人間教育を介護事業者内のシステムとして組み込む不断の努力が求められるのである。

そしてそれは実効性があるものではないと意味がないので、常に研修・教育システムが形骸化していないか、アリバイ作りの無意味な研修になっていないかという検証作業をし続けなければならない。

それは経営者や管理職に求められる最も重要な役割である。

昨日の番組で取り上げられた事件が本件であるか否かは別にして、その番組を観ながら改めて、人材選びと人材教育をおざなりにしてしまうと、大変な社会悪を生んでしまいかねないのが介護事業であると考えたりした。

そうしないためにも、介護の使命は何かということを伝えること、誇りを持って介護の仕事を続けられる実践論を伝え続けることは、今後も求められるのだと思った。

そうした学びの場を求めている方は、是非一度メール等で連絡していただければと思う。全国どこでも駆けつけるし、オンラインでの講演も受け付けている。まず気軽に相談の連絡をいただきたい。
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脱ハンコは賛成?反対?


政府が旗を振っている行政手続きのIT・デジタル化の推進と、「脱ハンコ」や「ハンコ廃止」は論理的につながらないという主張がある。

IT・デジタル化の推進に必要なのは、「押印の省略」なのだそうで、判子・印鑑という日本文化は残していかねばならないのだそうである。しかし判子が存在すれば、押印という行為はなくならないだろう。どこにそのような必要性があるのかは大いに疑問だ。

押印が必要なくなれば、ハンコは使い道がないのだから、「ハンコ廃止」で何が悪いのかと言いたい気持ちもある。
《※ちなみにハンコとは、個人や組織がその当事者であることを証明する印のことを意味し、印鑑は捺印をした時に紙や書類などに残る文字や絵(印影)を表すので、意味するものは違うのだそうだ。》

そもそもハンコを押した書類が、個人の同意等の証明になるという信頼性は徹底的に揺らいでいる。現に介護サービスにおいても、ハンコが不正に使われていた事件が明らかになっている。

京都府八幡市の社会福祉協議会のケアマネジャーが、利用者に無断で印鑑を不正使用した問題が発覚したのは2019年5月のことであった。ネット上ではこのケアマネの机の中に、たくさんの印鑑が入れられている下記画像が拡散されている。
ケアマネによる印鑑不正使用事件
このケアマネが自分の机の引き出しに保管していた印鑑は145本。このうち利用者の許可を得ていたのは24本のみだった。

印鑑の保管は10年ほど前から慣例となっていたそうである。印鑑は、このケアマネが自費購入していたもので、その判断もケアマネ個人によるものだったそうである。そしてこれらの印鑑を使って、居宅サービス計画書とサービス利用票の同意欄に勝手に押印していたそうだ。さらに毎月一度以上義務付けられている利用者宅へのモニタリング訪問を行うことなく、訪問したように装う証明として印鑑を使用していたとのことだ。

つまり判子を使って押印するという行為は、何の意味もなしていないということだ。証明の証拠として押印が必要であるという考え方は通用しないのである。むしろ判子さえ押されておれば、それだけで何かの証拠として有効だと考えることで、奪われているものがあるということも本件のような事件は示しているのだ。そして判子が存在しなければ、このような不正は起きなかったとも言えなくもない。

だから判子なんかなくても、別な方法で有効性が証明される方が正しいという考え方があってよい。判子がない方が、本当の証明となる知恵に結び付く早道が生まれるのではないかという考え方も当然あってよい。自署した文字を電子媒体で送るデジタル署名なんかは、印鑑よりずっと個人の証明として有効な方法と言えるかもしれない。

ケアマネのモニタリング訪問や、居宅サービス計画等の同意にしても、印鑑を押す問う行為がなくなっても、例えば現在はほぼすべての人がデジカメ内蔵のスマホもしくは携帯を持っているのだから、それを利用すればよい。説明に対する口頭同意の場面を動画撮影し、利用者個人別にファイル保存しておけば良いだけの話だ。その方が説明に同意していることの明らかな証拠となるだろう。

そっちの方がよほど信頼性が高い証明と言えるのではないのだろうか。

ハンコがなくなっても仕事に支障を来さないどころか、業務の省力化にもつながると思う。事実僕はそれを実感している。

僕は仕事上、請求書や領収書を発行しなければならないことも多い立場であるが、最近の脱ハンコは、その仕事に大いに良い影響を与えてくれている。

つい最近までは、請求書や領収書に必ず印鑑を押して郵送せねばならなかった。これが脱ハンコの流れの中で、押印は必要ないというふうなってきたので、郵送する必要はなく、請求書や領収書をメールに添付するだけで良くなっている取引が多くなった。

それによってアナログ作業が減って、デジタル作業ですべての取引業務が完結するので、タイムラグもなくなるし、何より作業が楽になる。印鑑を使わないことによるデメリットは全くないので、今のところ脱ハンコは、いいことずくめである。

こうした形での業務省力化は、介護業界全体の業務を考えても必要になると思う。そのためにはハンコ文化・印鑑絶対主義から脱することが何よりも求められるのではないだろうか。
※昨日masaの徒然草に、「(新情報)介護・医療事業に実績のある新電力でコスト削減を」という記事を書いて情報提供しているので、そちらも是非参照願いたい。
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人を絶望の淵に追い込む介護をなくしていくために


ALSの女性が嘱託殺人で亡くなった事件について、ネット上でも様々な意見が飛び交っている。

この事件は安楽死や尊厳死とは全く言えない単なる殺人事件だとか、被害者の状態は決して終末期とは言えないとか、たとえ治療法がない難病を患ったとしても生きる希望を失ってはいけないとか、論じられている問題の方向性も様々である。

一つの事件や事案から様々な問題が論じられることは、決して悪いことではないと思う。ただしそのことは興味本位の揶揄に終わるのではなく、悲劇や喜劇を繰り返さない教訓に結び付く議論であってほしい。

僕個人に限って言えば、この事件に関しては被害者となった女性がなぜ絶望してしまったのかを一番に考えたいと思った。彼女を絶望させないためにできる何かがなかったのかということが何より検証されるべきではないかと考えたのである。

なぜならこの事件において、確実に言えることは彼女が死ぬことを何より望んだという事実があるからだ。それは良いとか悪いとか論評できるような問題ではなく、そこに厳然と存在する事実である。そういう気持ちに至ることを誰も止められなかったのである。それはやむを得ないことだったのか、そうではなかったのか・・・。

彼女は病気が発症した当初から絶望していたわけではない。最初から死を望んでいたわけではないのである。そのことは病気が発症した後にも、仲間と連れ立って手を借りながら、旅行を楽しんでいたというエピソードでも垣間見える。その彼女が、「屈辱的で惨めな毎日がずっと続く。ひとときも耐えられない。安楽死させてください」とツイートするに至った過程で、何が彼女の心境をそうさせたのかを考えなければ、同じような過ちで心と命を奪われてしまう人がいないとも限らないのだ。

だからこそ、彼女の体が徐々に動かなくなっていき、寝たきりで生活を送らざるを得ない状態から脱せなくなってきた際に、その恐怖と闘いの過程で、生きる希望を失うまでに気持ちが折れていく過程で何があったのかを考えなければならない。

そのため、「全身まひの人がツイートした看護・介護職への本音」という記事を書いて、周囲の心無い対応が彼女の絶望を助長していった可能性に言及してみたりした。

この記事は特定の個人を誹謗中傷することを目的としたものではない。だが私たちの仕事とは、そこで支援を受ける人に勇気と希望を与えるものでなければならないはずで、そこに少しであっても絶望させる要素が存在してはならないのであるから、こうした事実に向かい合って、同じ過ちを繰り返すことがないように、そこから教訓を導き出さねばならないと思う。

対人援助の場で、自分が何気なく発した一言によって、人を傷つけるだけではなく、誰かを絶望の淵に追い込むことがあることを意識して、そのような要素を徹底的に排除するという姿勢を持ち続けるプロフェッショナルとして私たちが存在しない限り、悲劇はなくならないだろう。

自分の暮らしのすべてを委ねなければならない全身麻痺の人に対して、サービス提供中に愚痴をこぼす姿はプロとは言えないことを、すべての介護支援者が自覚しなければならない。ましてやその愚痴につながる問題の所在が、利用者にあるかのような言葉の暴力を決して許してはならないのである。

仕事中に利用者に対して愚痴や文句を言ってはならないというのは、教育しなくても理解できるレベルの問題である。そうした常識が護られていないという意味は、対人援助として接する個人にプロ意識が欠落しているという意味だ。それは利用者の暮らしを支える身体介護をはじめとする支援行為が、職業として提供されているという意識より先に、施し意識がそこにあるという意味だ。

人の尊厳に対する配慮は、そうした施し意識が欠落させていくのである。そういう状態ではプライベートと仕事の区分が付きにくくなり、顧客に対するサービスであるという意識も欠落する。特に利用者の自宅が密室化し、そこで1対1の関係で接するサービスでは、支援する方が上であるという意識が生まれやすい。

その意識をなくすためには、一つ一つのケースごとに徹底的に人権を護る意識を植え付けるしかない。人の希望はあっという間に失われるが、絶望の淵に立つ人をそこから救うのは、いかに難しいかということを、支援チーム全員で意識する話し合いが持たれなければならない。そのように人の尊厳とは何かということを、徹底的に論じあうメンバーによって支援チームは構成されなければならないのである。

さすればサービス担当者会議とは、単にケアプランンの内容確認に終わることなく、支援対象者の尊厳を護る方法の具体策を論ずる場にしなければならないのではないだろうか。ここを是非意識して会議を進行してほしいと思う。

希望というものは、他人が与えようとしても簡単にそうはいかないものだ。自分の中でゆっくりと養い育てるのが希望である。その希望は支援者一人一人が、真綿にくるむように大切にし、壊れないようにする必要がある。

介護支援チームに求められているのは結果責任である。良かれと思って行った行為が、結果的に支援する人を絶望の淵に追い込むことがあってはならないのだ。そうしないための最大限の努力は、常に続けられなければならない。

そのことを忘れない支援チームであってほしいし、本事件を振り返る過程が、そのための教訓を残すものであってほしいと思う。
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全身まひの人がツイートした看護・介護職への本音


介護サービスに従事する人の中には、利用者の家族に対しては丁寧語で接しているのに、利用者に対してはタメ口でしか会話できない人がいる。

認知症でない人には丁寧語を使っているのに、認知症の人に対応するときのみタメ口を使う人もいたりする。

そういう人たちは無意識に相手を見て言葉遣いを変えているという意味になる。それは人を差別していることにほかならず、対人援助職としては最も恥ずべき行為であると言える。

そうした無意識の差別意識を持つ人たちは、相手の状態が変化すると、途端に態度を変えてしまうかもしれない。それは人として許される態度とは言えないが、そうした態度に心を殺されてしまう人が数多く存在するというのが、この国の現実でもある。そうした国が先進国と言えるのだろうか・・・。

先日書いた、「ALSの女性に対する嘱託殺人容疑で医師逮捕の報を受けて」という記事の中で、被害女性について紹介しているが、彼女がツイッターに書いていた内容が続報として報道されている。

リンクを貼った記事に書いているように、被害女性となった林さん(51歳)は、ALSを発症する前はバリバリのキャリアウーマンとして活躍されていた方である。そんな彼女がツイッターでの投稿を開始したのは、病気が発症して思うように体が動かなくなってからである。

そこには、「ツイートも視線入力のパソコンを使ってるのですごく時間がかかる。もっと言いたいこといっぱいあるのに」(2018年5月3日)という嘆きの言葉も記されている。

そして大人の重度障害者が子どものように扱われているというツイートに対して、「看護婦さんにも多いんだよね。幼児に話しかけてるの?と思う」と反応し、「難病があろうが障害があろうが、一人の人間として尊重され、尊厳をもって扱われなくてはならないはずだ」・「介助者や医療従事者が、障害者や高齢者や患者に対して、上から目線のパターナリズムを発揮するのは暴力」(2018年5月31日)というメッセージを発している。

云うまでもなくパターナリズムとは、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう。林さんは自分の身に置き換えて、そのことに強く憤りを感じていたわけである。

自分の担当ケアマネジャーに対する憤りもツイートしている。

林さんは訪問看護を利用していたが、担当の訪問看護師が、独居で介護を受けていた林さんの慰めになるのではないかと、猫を飼うことを提案したことがあったそうである。そのため訪問看護師の元に温和な保護猫の子猫を引き取り、トイレなど最低限のしつけをした後、林さんと同居を開始する段取りをとって、その実現を図ることを看護師が提案し、林さんもそのことを望んだそうだ。

ところがこの計画に、猫アレルギーのケアマネジャーが「ヘルパーの中にもネコアレルギーがいたらどうする」とか「毛が残る」とかいう理由で「ケチをつけた」ために、その提案は実現しなかったそうである。

そのことについて林さんはツイッターに、「なんでこんなことまで指図されなきゃいけないんだ!とみじめになり無性に腹が立って気付くと号泣してた」と記している。

担当ケアマネジャーは、今このツイッターを改めて読んで、どう考えるのだろうか・・・。そもそも本人が希望し、周囲に協力者がいるのに、ケアマネという立場でしかないものが、その希望をつぶすような働きかけをすることが許されるのだろうか・・・。ケアマネジャーという立場を誤解しているのではないかと問いたい。

林さんは担当の訪問介護員に関する思いも次のようにツイートしている。「65歳ヘルパー 体ボロボロなのは私のトイレ介助のせいなんだと責める 施設行きになる あそこに入ったら殺されると脅される むかついてもやめろと言えない 代わりがいないから 惨めだ。

介護を行うことを職業にしている人間が、その仕事で生活の糧を得ているにもかかわらず、顧客であるサービス利用者に対してなんという暴言を吐いていたのだろうと唖然とする。自分の体の不調の不満を、全身まひで動けない人に対しぶつけ、あたかも林さんの存在自体が問題であるとするかのような発言は、人として決して許されない発言であると言ってよい。

このような周囲の差別的な態度に、林さんの心は日増しに傷ついていったのではないだろうか。キャリアウーマンとして活躍していた頃には決して受けたことがない失礼で配慮のない対応を受け続けることによって、林さんの気持ちは、「死」に向かってまっしぐらに向かっていったのではないだろうか。一刻も早くそこに至りたいという思いにつながっていった結果が、「安楽死へのあこがれ」・「自分の殺人を嘱託する」という行為につながったことは想像に難くない。。

死ぬ希望が実現する社会より、生きる希望に胸を膨らますことができる社会の実現が大事だと言うが、自分より力の弱いもの、立場の弱いものに、上から目線での、「施し」のような介護の実態が存在し続ける限り、そんな社会は実現不可能だろう。

そして介護サービスのサービスマナー式が欠如し、タメ口が親しみのある態度だと勘違いする人が存在する限り、この差別と偏見は消滅することはないだろう。

まったく保健・医療・福祉・介護業界の民度の低さにはあきれるばかりである。
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あずみの里裁判・逆転無罪の高裁判決が示したもの


昨日表の掲示板で速報を流したが、特別養護老人ホーム「あずみの里」(長野県安曇野市)で利用者の女性がドーナツを詰まらせ死亡した事故を巡る刑事裁判の控訴審判決が二十八日、東京高裁で言い渡され、罰金20万円とした一審判決を破棄、無罪を言い渡した。
判決骨子
この裁判については、「誤嚥死亡事故?で特養の准看護師に有罪判決の問題点」 ・ 「特養あずみの里裁判の控訴審について」という二つの記事を過去に書いており、有罪という判決は、介護の場で仕事をする人間に、あまりに過酷な注意義務と過度な責任を負わせるものではないかと批判してきた。

昨日の高裁判決はそれを覆すもので、この結果によって介護サービスの提供方法が個人の刑事責任を恐れて、過度の管理に傾くことの防波堤になるものと評価できるのではないだろうか。

それが証拠に、判決を受けて幾人かのか介護関係者から声を拾っているが、判決に安どしたという声ばかりである。

准看護師に20万円の罰金の支払いを命じる有罪判決が出された一審・長野地裁松本支部は、女性の死因はドーナツを詰まらせたことによる窒息と認定していた。この際に注視義務違反は認めなかったが、約1週間前に窒息防止などのため女性の間食をゼリー状のものに変更していたことなどから、間食の形態を確認して事故を防止すべき義務があったとして、求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡したのである。

しかし間食をゼリーに変更した理由は、嚥下状態を問題にしたのではなく、おなかの具合から消化がよいゼリーにしただけであった。しかも死因は、窒息死ではなかったのではないかという疑いあり、控訴審では窒息死という病死認定がそもそも違っているのではないかと新証拠が提出されていた。

その新証拠はいずれも「脳梗塞説」を補強するものだったが、東京高裁は証拠採用をしなかった。これによって東京高裁の裁判官は、原審での鑑定に基づいて被害者の気道からドーナツが出てきた以上、窒息死説をひっくり返す気は全くなく、高裁判決も再度有罪が言い渡されるのではないかという憶測が飛び交っていたが、控訴審判決はその憶測をも覆す内容となった。

控訴審の争点は、「女性の死因は、ドーナツによる窒息か」、「ゼリーではなくドーナツを配ったことが過失と言える」という2点に絞られた。

このうち死因については判決理由の説明において、「起訴から5年以上経過しており、その検討に時間を費やすのは相当ではない」として判断を示さなかった。そのうえでドーナッツを配ったことに過失はないとしたのである。

つまり過失責任がそもそもなかったために、逆転無罪判決のために死因を特定する必要もなかったというのである。そのため死因が窒息死ではないという新証拠を採用する必要はなかったということで、先の憶測が取り越し苦労の結果ともなった。

判決文には今後の介護サービスの在り方に大きな影響を与える示唆が多々ある。

例えば食事やおやつについて判決では、「人の健康や身体活動を維持するためだけではなく、精神的な満足感や安らぎを得るために重要だ」と言及している。

これは食事提供について、身体への危険性が常に懸念される医療行為ほどの注意義務が求められるものではないとの見方を判示した考え方である。そのうえで被告がおやつの内容変更を確認せずドーナツを提供したことに刑事責任は問えないと結論づけたものであり、その意義は大きく、窒息の危険性を否定しきれないからといって食事の提供が禁じられるものではないとも言及したものである。

このように事故が起きずに生命を維持するためだけの、味気ない満足度に配慮のない食事提供であってはならないことに言及している意味は大きい。すべての介護の場が、すべての介護関係者が、この判決文を読んでその意味を理解してほしい。

またおやつの形態を変更した申し送りについて、被告となった准看護師が確認していなかった点については、「介護職員間の情報共有であり、日勤の看護業務を続ける中では容易に知り得なかった」として、過度な注意義務を准看護師に負わせなかった点も評価できる。

一審の有罪判決後に、おやつの提供を中止したり、固形物ではなくおやつはすべてゼリー状のものを提供するようにした施設が相次いだが、今回の判決により、そうした管理重視のおやつや食事の提供の在り方を見直す必要が生じたと言えるだろう。

この高裁判決をきっかけとして今一度、委縮した精神で考えられた介護サービスの在り方を見直して、本当に必要な介護サービスの在り方を考え直す必要があるのではないだろうか。

同時に食事だけではなく、移動・移乗介護中の転倒骨折事故などについても、過度な責任と注意義務を問うような判決を見直してほしい。例えば移乗介助を拒否した認知症のない人が、トイレの中で骨折した責任を、介助を拒否されトイレ内を見守ることができなかった介護職員に負わせるなんてことは過剰な責任追及だ。そのような責任の押し付けをなくしていかねばならない。

本来は必要不可欠なサービスが、事故を恐れる委縮した精神によて失われてしまうということがないようにしなければならないのである。

今望みたいのは、検察側が上告をあきらめることと、仮に上告審が行われることになっても、今回の判決が覆られないことである。それが世のため人のためである。
※8/7東京高検は本件の上告を断念したことを公表しました。これによって上告期限の8/11に被告の無罪が確定することになりました。:8月7日追記
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ALSの女性に対する嘱託殺人容疑で医師逮捕の報を受けて


ALSの女性の依頼を受け、京都市の自宅に出向いて薬物を投与し、殺害した疑いがあるとして、医師2人が嘱託殺人の疑いで逮捕されたというニュースが、昨日日本中を駆け巡り、大きな騒ぎとなっている。

被害者の遺体からは、鎮静作用がある「バルビツール酸系」の薬物が検出されている。この鎮静剤は、脳の興奮を抑える作用があり、睡眠薬や抗てんかん薬などとして通常の医療現場で用いられているが、ALSの患者に用いられることは通常あり得ない。

二人の医師が訪問した際、ヘルパーがサービス提供中であったとのことで、女性の自宅に在室していたヘルパーが、訪問者の氏名を記入するよう促した訪問記録に、二人の容疑者は偽名を書き込んでいたことが捜査関係者への取材で分かっている。そして10分ほどで二人が退出した直後に、被害者が意識不明になっていることに気が付いたヘルパーが通報しており、終末期ではなく普通にヘルプサービスを受けていた状態の人を、10分未満で死に至らしめていることから、投与量は致死量であったと推察される。

逮捕された医師が法律を犯したことは間違いなく、法の下で裁きを受けることは当然である。また安楽死を認めている外国の基準に照らしても、今回の行為はそれに該当しないという批判もあり、倫理上の批判等も受けて当然だろう。

しかしそれだけで終わってよい問題ではないと思う。亡くなられた女性が容疑者に明確な形で安楽死させてほしいと依頼している事実も報道されているのだから、ALS等の治療法がなく死を待つだけの難病の人にどの様な支援が必要なのか、安楽死を望む人にどう対応すべきかなど、本事件をきっかけにして、尊厳死や安楽死も含めて命と死について真剣に議論されることを願う。そしてその議論は、タブーのない多様な建設的議論であってほしいと思う。

ただし僕自身は尊厳死や安楽死について深い理解はなく、現時点でそのことを論評する知識はない。そのため自分自身が尊厳死や安楽死を含めて、人の命と死について今以上に深く考察でき、語ることができるようになるために、本件の事実関係をここに整理して書き留めておきたいと思う。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)について
ALSは運動神経系に障害が起き、手足やのど、呼吸に必要な筋肉が徐々に動かなくなる進行性の病気。やがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸の筋肉(呼吸筋)も働かなくなって大多数の方は呼吸不全で死亡する。発症の原因は不明で根本的な治療法はなく、難病に指定されている。詳しくは病名に張り付いたリンク先(難病情報センターのサイト)で確認していただきたい。

ALSの人の4割程度が30分に1度程度の痰吸引を必要としており、介護者は睡眠も外出もままならなくなって負担も重い。そのため各痰吸引という行為を、医療職と家族以外の介護の一部を担っているホームヘルパーらに認めてほしいという運動が起き、厚生労働省は2003年7月、「在宅ALS患者に限り、医師及び看護師の指導下、患者の同意書により、家族以外のものによる痰吸引を認める」という通知を出し、このことが各痰吸引と経管栄養について、「特定行為」として一定条件下で介護職員にも認められるという現行ルールに繋がっていったことから、この病名は介護職にとっても馴染みのあるものだ。

尊厳死と安楽死について
尊厳死とは、明確な概念付け・定義付けはされていないが、一般的には、「過剰な医療を避け尊厳をもって迎える自然な死。」とされている。最後は自然の死であることが前提とされている。

安楽死は、「医師が回復の見込みがない患者に死期を早める措置を行う結果、もたらされる死。」とされ、「積極的安楽死:苦痛から免れさせるため意図的且つ積極的に死を招く措置をとる場合」と「消極的安楽死:患者の苦痛をながびかせないという目的のため、行われていた延命治療を中止して死期を早める場合」に分けられる。ただし人によってはこれに加えて、「間接的安楽死:苦痛の除去・緩和するための措置をとるが、同時に死期を早める可能性が存在する場合※終末期鎮静」という区分を用いることもある。

尊厳死は消極的安楽死に該当するとされることが多いが、それはそもそも延命治療を中止する場合に限らず、延命治療を開始しない場合も含むために、安楽死より広い概念であると捉えている人が多い。

嘱託殺人により亡くなられた女性について
51歳女性。京都市生まれで、大学を卒業したあと東京のデパートで勤務した後、アメリカに渡航して大学で建築を学び、帰国してからは東京の設計会社で働いていた。40代になった10年ほど前、道路を駆け足で渡ろうとしたときに、突然、足に違和感を感じ、病院を受診したところ、ALSと診断された。その後仕事を辞めて京都に戻り、マンションでヘルパーの支援を受けながら1人で暮らしていた。

亡くなる直前は常時臥床状態で、視線を使ってパソコンに文字入力したり、文字盤の文字を示したりして意思疎通を図っており、昨年9月、ツイッターに「屈辱的で惨めな毎日がずっと続く。ひとときも耐えられない。安楽死させてください」・「自らの生と死の在り方を自らで選択する権利を求める」などと書き込んでおり、死亡するひと月前には、「賃貸マンションで病死したらどんな費用がかかるか心配」「少なくとも腐敗はしなくて良さそうだからそんなにかからないかな?」などと自宅で死亡することを覚悟した書き込みも行っていた。

犯行を行なった二人の医師について
大久保愉一容疑者:42歳)
宮城県名取市で呼吸器内科や心療内科などの診察を行っていて、クリニックにはホスピスがあり、終末期の患者の緩和ケアも行っている。厚生労働省で医系技官として7年余り働いていた経験もある。

自身のブログには、「高齢者を『枯らす』技術」というタイトルをつけ、「一服盛るなり楽になってもらったらいい」などと、積極的安楽死を肯定する死生観を綴っていた。

被害者とはツイッターを通じて知り合っている。
大久保容疑者のツイッターのつぶやき
画像は大久保容疑者のツイッターのつぶやき。ドクター・キリコとは手塚治虫の医療漫画「ブラック・ジャック」に登場し、報酬を得て安楽死を請け負う医師。漫画では患者の命を救う主人公とは対照的な人物として描かれている。

山本直樹容疑者:43歳)
東京・品川区にクリニックの事務所を置き、全国に出張して泌尿器科の治療などを行っている。過去にはED(勃起不全)治療専門病院の院長を務めていた。

人生を『太く』『短く』生きたいというあなたにささげる」というタイトルのブログを開設しており、ALS患者の主治医を受け持った経験から、「彼らが『生き地獄』というのも少しはわかる」と投稿し、「神経難病などで『日々生きることすら苦痛だ』という方には、一服盛るなり、注射一発してあげて、楽になってもらったらいいと思っています」と書き込んでいた。

山本容疑者の口座には、被害者から130万円の現金が振り込まれていた。ブログには、「バレると医師免許がなくなる」「リスクを背負うのにボランティアではやってられない」とも書き込んでいた。

二人の医師はともに弘前大卒。両者のつながりは捜査中。

被害者と容疑者のつながり
被害者は18年4月にツイッターアカウントを開設。19年1月3日午後5時45分「作業は簡単だろうからカリスマ意志じゃなくてもいいです」と安楽死を希望する書き込みをした。それを受けて大久保容疑者は、「訴追されないならお手伝いをしたいのですが」と返信。「お手伝いしたいのですがという言葉が嬉しくて泣けてきました」と被害者が返信している。以下次のようなやりとりが行われた。

(1月5日)「完全安楽死マニュアルみたいな本は海外で売られている。アレンジして俺なりの毒を加えて販売したい:大久保容疑者」→「今から予約します:被害者」
(8月25日)「やはりスイスか?キツイな:被害者」→「定期的に訪問介護や看護が来てしまう。強制的に助けられてしまうという悪条件と理解しています。コナンや金田一どころではない計画が必要です:大久保容疑者」

大久保容疑者は、自宅マンションを訪れる日時や現金の支払いなどを巡るやりとりを終えた後、内容を消去するよう指示。自身の関与が発覚するのを恐れた大久保容疑者が証拠隠滅を図ろうとしたとみられている。被害者はその指示に従っている。

また被害者は昨年10月(事件の約1カ月前)、主治医に「山本医師のもとへ転院したいので、紹介状を書いてほしい」と依頼したが、主治医は「知らない医師には任せられない」と拒否。その後も同様のやりとりは複数回あったという。

被害者の父親の声(NHK7/23のニュースから抜粋)
「娘はどうして自分が病気になるのかとずいぶんと落ち込み、ショックを受けていました。私も初めて聞く病気で何をしてあげればいいか分からず、暗中模索でした。頭はしっかりしているだけにつらかったと思います」

「知っていたらもちろん、止めています。娘の気持ちは尊重したいですが、これでよかったのかとも思われますし、本当に複雑な気持ちで葛藤しています」

「複雑な気持ちです。娘も殺害を委託しているし、犯人を一方的に責めることはありません。娘にとって苦渋の決断だったと思います」

「亡くなる寸前の時に、ひと言話したかった。目を合わせたかった。手を握りたかった。急にこんなことが起きるなんて夢にも思いませんでした。それがいちばん残念です」

大久保容疑者の妻(元衆議院議員)の声:NHK7/23のニュースから抜粋)
「患者からは話をよく聞いてくれるという評判だった。終末期の患者の診療を行った際、『食べることだけが楽しみになるので、好きなものを食べられるようにサポートしたい』と言っていた」

「自分のやったことなので、説明して責任をとってほしい。患者に不安な思いをさせてしまったことを申し訳なく思う」

ALSの当事者である「れいわ新選組」の舩後靖彦参院議員のコメント
「『死ぬ権利』よりも『生きる権利』を守る社会にしていくことが何よりも大切だ」

「インターネット上に『安楽死を法的に認めてほしい』というような反応が出ているが、人工呼吸器を付け、ALSという進行性難病とともに生きている立場から強い懸念を抱いている」

「こうした考え方が難病患者や重度障害者に『生きたい』と言いにくくさせ、生きづらくさせる社会的圧力が形成していくことを危惧する」

本事件の問題点として指摘されていること
(横浜市立大・有馬斉准教授:「死ぬ権利はあるか」の著者)
日本では積極的安楽死は認められていない。合法化されている海外の例と比較しても、今回の事件は患者を良く知らない人間が本人の意向だけで行ったとみられ不適切。

(鳥取大学医学部の安藤泰至准教授:生命倫理が専門)
患者に死期が迫っていないうえ、SNSで依頼を受けた医師が苦痛の緩和を尽くしたともみられず、海外の一部の国が厳しい条件を設けたうえで認めている『安楽死』とも大きくかけ離れた行為だ。

横浜地方裁判所が平成7年3月28日判決で示した医師による積極的安楽死として許容されるための4要件
1.患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること
2.患者は死が避けられず、その死期が迫っていること
3.患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに代替手段がないこと
4.生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること

参考:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(平成30年3月改訂)
安楽死や延命中止を巡る主な事件と処分
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入所者の耳たぶを引きちぎった介護職員


道内の特養において、夜勤中に信じ難い虐待事件が起こった。

北海道恵庭市の特別養護老人ホーム「恵庭ふくろうの園」で勤務する吉光翔平容疑者(28歳)が、男性入所者(78歳)の耳たぶを引きちぎったとして傷害の疑いで逮捕された。

事件が発覚したのは7月13日。午後9時ごろ施設から、「入所者が転んで、右の耳たぶが取れていた」と119番通報があった。当時、同園では5人の介護職員が夜勤業務に就いており、駆けつけた警察署員が聞き取り調査を行ったところ、同容疑者が被害者の耳を引っ張るなどの暴行を告白したものである。その際容疑者は、「介助中にトラブルがあってやった。仕事でストレスがあった」と供述している。

なお被害男性は、耳たぶがちぎれた状態で手当を受けているが、命に別条はない。

こうした事件が起きると、明らかになる虐待は氷山の一角だとか、介護施設はどこも似たり寄ったりで見えないところで悪が潜んでいるかのように思われてしまうが、多くの介護施設は、虐待とは無縁の人を護るサービスを提供しており、私たちは海を漂う氷山ではないと言っておきたい。

容疑者の、「仕事でストレスがあった」という発言も安易に受け取ってほしくない。時として介護という仕事が、他の職業にもましてストレスがあり、だからこそ虐待が横行しがちの職業なんだと評価されたりするが、それも大間違いだ。

仕事のストレスなんて、どんな職業にもつきものだ。人間が相手となる介護という職業は、その中でもストレスが大きいと考える向きがあるが、人の役に立つ仕事だから介護の仕事に就きたいと希望してきた人たちは、そこでストレス以上に大きな喜びを感じ取ることができる仕事でもある。自分が大した仕事もできない状態でも、「ありがとう」と声を掛けてくれる高齢者の方々に、僕自身がいくら救われてきたかを思い返しても、それは事実であって理想でも幻想でもないと言い切れるのである。

少なくとも介護職員についていえば、数字のストレスはない。売り上げ目標の達成に汲汲として、上司からパワハラまがいの指導を受けるなんてことは一切ないわけだ。

精神科病棟に務めた経験がある人なら理解できると思うが、「うつ病」に罹患している人の中には、営業売り上げ目標という数字のストレスで病気が発症した人が実に多いという事実がある。そうしたストレスとは無縁の介護職が、他の職業に比して特別ストレスが大きいという論理は成り立たない。

そもそも介護という仕事にストレスを感じたとしても、そのうっぷん解消の手段として、利用者への虐待行為に及ぶということ自体が異常なことだ。ましてやこの容疑者は、人の耳が引きちぎられるほど強く引っ張っているのだから、それはどれだけの力かと言いたくなる。それほどの力で人の耳を引きちぎらねばならないほどのうっぷんとはいったい何なのだろうか。異常な行為としか言いようがない。

それはそもそもこの容疑者が、介護という職業に向いていなかったのではないかという疑いを持たざるを得ないことにつながり、果たして虐待の場となった特養の運営法人は、きちんと適性を判断して職員を雇用し、適切な形で教育を行っていたのかという疑問につなげざるを得ない。

この特養の経営母体は、社会福祉法人いちはつの会というところだが、ここは事件現場となった恵庭市の特養のほか、千歳市でも地域密着型特養を経営している。僕は千歳市の老健に務めている際に、両方の施設ともに仕事で訪問したことがある。その時感じたことを今、改めて思い出している。

どちらの施設も新しい立派な新しい建物であるが、そこで働く職員はお世辞にも接遇マナーが良いとは思えなかった。若い職員が高齢者に向かって、「タメ口」で接している態度を見て、僕にはその姿が無礼な馴れ馴れしい態度にしか思えなかった。それは一部の職員だけの姿なのかもしれないが、そうした職員の姿に目をつぶって放置して起きた結果が、今回の事件の根幹に存在する問題ではなかったのだろうか。闇を創り出していたのは、容疑者自陣のみならず、嫌なものを見ようとしない法人の曇った眼ではなかったのかを、法人自身が検証しなければ駄目だと思う。

このように接遇意識・サービスマナー意識のない場所であれば、いつこの事件の加害者のような職員が現れても不思議ではないのである。それは法人への信頼を著しく損ねる事態へと発展し、場合によっては取り返しのつかない事業経営上の汚点になりかねない。

だからこそ常日頃からの職員に対する、「サービスマナー教育」は不可欠である。

今週は月曜日に、「クラスター感染発生施設の実像に触れて思うこと」という記事を書いて、親しみやすさと、無礼で馴れ馴れしい態度を勘違いしている実例を示しているが、こうした勘違いを介護業界全体からなくしていかないと、介護という職業や介護事業が、闇と一体の仕事だと思われかねない。

そうしてはいけないし、志を持っている介護職の方々には、自分の職場をそのような無法で無礼な職場のままにしておかないようにくれぐれもお願いしたい。職場がマナーのない態度を直そうとしない場所であるならば、そうした場所には一日も早く見切りをつけて、もっと人の暮らしを護る場所を探してもらいたい。

闇のある場所にいては、自分が闇に眼をつぶってしまい、真実が見えなくなってしまうのだから・・・。
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闇


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命について考えさせられる様々な死の風景


死は誰の身にも訪れる。それは誰しも知っていることであるが、自分や自分の身近な人が、今日突然死の瞬間を迎えることを予測している人は少ない。

健康な人であればなおさら、その人が今日急に命を失うとは思わない。しかし実際には突然の死はたくさんある。日本では一日平均3.279人が死んでいるのだ。その中には、健康に何の問題もなく、死と遠い場所にいると思われていた人が、予測できない理由で死という現象に見舞われることもある。その中には理不尽と思えるような、「死に方」も存在する。

普段そのようなことをあまり深く考えることはないが、「悼む人」という小説を読んだり、それを原作にした映画を観た影響もあってか(参照:悼む人は愛と憎しみ、罪と許しのドラマです。誰に愛され誰を愛し誰に感謝されたことがあるかを思い出してください。)、介護関連の仕事をしている最中に、そこに関連した様々な死のニュースが気になった週である。

5/18、京都府長岡京市内の民家で、76歳の夫が72歳の妻の首を絞めて殺害した後、自らも首をつって死亡しているのが発見された。夫は直前に、「介護に疲れた。2人で楽な道を選ぶことにした」という遺書を長男に送り、長男から通報を受けた向日町署員が、二人の遺体を発見している。

先週の11日には埼玉県入間市でも53歳の息子が、疾患を負った83歳の母親の介護に絡み、「母親を切り、自分も死のうと思ったができなかった」と通報し殺人未遂で逮捕されている。母親は手首を切ったものの命を失わなくて済んだが、これは殺人未遂というより、介護疲れを理由にした心中未遂である。

介護疲れを理由にした心中事件は、介護保険制度が創設され、介護の社会化が叫ばれてもなくならない。数が少なくなったかどうかは不明であるが、人の死の問題は、数の比較をしてもどうしようもないだろう。5/18の心中の遺書のあて先となった長男の方にとって唯一無二のご両親を、このような形で亡くした哀しみは計り知れない。

この世の中は、こうした悲劇から逃れられないのだろうか・・・。

20日午前に奈良県五條市で一家五人が亡くなった火災事故は、寝室に油をまいて放火した無理心中とみられている。遺書があると一部で報道されたが、それは誤報でメモ書きが残されているものの、遺書ではないとのことである。

この一家の主は社会福祉法人の高齢者介護施設で、施設長に就任したばかりという報道もされている。心中の原因が何かはわかっていないが、8歳と6歳と2歳の幼い子供3人を何故道連れにしなければならなかったのか・・・。この一家の主のFacebookには、今も幸せそうにしか見えない5人の家族写真がアップされたままである。それを見るとやっぱりどんな理由があろうとも、家族を巻き込んで死を選択してはならないと思ってしまう。

コロナウイルス関連では、5/20に厚生労働省が介護施設で新型コロナウイルスに感染して亡くなった高齢者の人数について公表している。その数は19日時点で少なくとも61人で、介護施設内で亡くなった高齢者は23人ということだ。

61人−23人=38人は、介護施設内で発症したが、亡くなった場所は入院先の医療機関という意味なのだろう。クラスター感染が発生している札幌の老健内では15人が亡くなっていることがわかっているのだから、その数は公表された23人の65%以上に上っている。ということはやはりこれは異常な数字としか言いようがない。

陽性となった利用者が発生したとの報告を受けた札幌市が、医療機関への転院をせずに施設内での継続介護を求めたことによって感染が拡大し、施設内死者数が増えたと思われるわけであるが、そのことは結果的に同施設の感染者を見捨て、「命の選択」が行われた結果ではなかったのかという検証・議論は、後々必ず必要となるのではないだろうか。

蛇足として書くが、道内のクラスター感染発生施設では、退職者もかなりの数に上っている。そして退職者の状況をみると、看護職員の退職比率が介護職員のそれよりかなり高くなっている。

このように看護職員の方が介護職より感染拡大の場から離脱割合が高い理由は、感染症の恐ろしさを介護職員が十分知っていない結果であるとしたら、それはある意味恐ろしいことであるように思った。
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感染対策として命の選択が行われる社会であってはならない


新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言解除が見送られた北海道では、昨日新たに6人の感染が確認され、2人が亡くなっている。

新規感染者のうち4名と死亡者のうち1名については、クラスター感染が発生している、札幌市の老健、「茨戸アカシアハイツ」の利用者である。

その数字を含めると昨日時点で同施設の感染者は合計81名(入所者の感染は62人)・死亡者は合計9名となった。

同施設の入所定員は100名だから、入所者の感染者はすでに6割を超えているわけである。しかも最初に感染者が報告された4/26〜昨日までのわずか20日に満たない間に、死亡者は1割に達しようとしている。また同施設の職員17名の感染も報告されている。これらはいずれもすごい数字である。
※5/16追記:15日にさらに死者が1人増えて、死亡者割合は20日間で1割となった。

しかしこの感染拡大について、札幌市の対応に大いに疑問を感じてしまう。

前述したように札幌市に同施設から最初の感染者が報告されたのは4月26日であった。その際に市は、「入所者は適切な介護を必要としている。入所者が感染しても無症状や軽症であれば、可能な限り施設内で生活環境を整えてほしい」と文書で伝え、感染した入所者を原則、病院には移さずに施設内にとどめて療養するよう求めている。

このため5/12までに病院に移されたのは、12日に入院した1人のみで、8名が同施設内で新型コロナウイルス感染症により死亡している。(※うち1名は最初の検査で陰性で、容体が急変して死亡後に感染が確認された。)

施設では感染者を2階に集めて隔離していたが、1階にいた入所者や職員からも感染が確認されるようになっていた。その状況が12日にNHKの道内ニュースで、『入所者の家族からは、感染した人を病院に移すことが治療や感染拡大を抑える上でも必要ではという声が複数寄せられていて、この対応のままでよいのか疑問の声が上がっています。』と大きく報道された。

これを受け札幌市保健所の山口亮感染症担当部長は12日の記者会見で、「重症の感染者を受け入れられる病床の確保に努めているのは事実だ。ただ入所者については、それぞれの事情に応じて入院の時期を待ってもらっている」と説明したが、批判的なニュースの論調が影響したのか、昨日は同施設から5名が医療機関に入院できたそうである。

つまるところ老健という介護施設に感染者をとどめたままの対応が間違いだったのではないだろうかという疑問が生ずる。

適切な医療対応が行われない状況で、感染が拡大することはクルーズ船の例で示されれていたところであり、なぜ札幌市は感染者を介護施設である老健にとどめたままにしたのだろう。

老健は医師が常勤配置されていると言ってもたった1名である。しかもそこは医療機関ではなく介護施設であるために、老健が診療報酬を算定することは出来ない。しかも老健の医療サービスについては介護報酬の包括報酬(いわゆるマルメ報酬)とされており、例外はあるものの治療にかかった費用は老健の持ち出しとされてる。つまり治療で薬剤等を使えば使うほどその持ち出しは多くなるため、提供できる医療にはおのずと限界が生ずるのである。

そもそも新型コロナウイルス感染症については、高齢者は重篤化しやすいのがわかっており、症状がなくとも、軽症であっても油断できない。急激な症状悪化は常に予測しなければならないが、老健という介護施設が医療機関と同様に即座に対応できるわけがない。

それにしてもこれだけ多くの感染者がとどまっている状態で、対応する職員の備えはあったのだろうか。マスクで鼻と口を護るだけではなく、ゴーグルで目を護る対応がきちんと行われているだろうか。少なくとも感染者を老健で引き続き対応しなければならないことが決まった後は、ゴーグルは通常装備とされなければならない。

感染が2階から1階へとフロアを超えて広がっている状態を考えると、飛沫感染だけではなく、エアロゾル感染が起こっている可能性が高いが、その対策としてきちんと空間除菌も行っていただろうか。

それらが行われない状態で職員を対応させていたのなら、それはなりふり構わない特攻介護と批判されても仕方ないし、職員が可哀そうだ。

もし感染予防の対策に少しでも不備があるとすれば、そこから職員が逃げ出そうとするのは当然で、そうした状況で退職者が出たとしても、敵前逃亡などという批判はできないと思う。果たしてこの施設では退職者は出ていないのだろうか。

放送されたNHKのニュースの中で、取材に応えている医療大学の塚本容子教授は、「高齢者にとっては住み慣れた施設から病院に行くということはかなりのストレスになり、認知症などの持病が悪化するケースもある」と呑気な解説をしているが、そんな場合ではないだろう。

そもそも老健は生活施設ではなく、リハビリを行って在宅復帰を支援する中間施設である。もともと別の場所に移ることを前提にしている施設の利用者について、こうした論評が通用するのかは甚だ疑問である。

結果的にこの老健では昨日までに9名もの人が、コロナウイルス感染症が原因で亡くなっている。この状況では、ターミナルケアも十分受けられない状態で亡くなっていることが予測される。

しかも症状に対応した十分な医療が提供されているとも思えない。つまるところ感染が明らかになりながら、医療機関に入院することなく、そのまま症状が悪化して亡くなった人についていえば、それはある意味、「見捨てられて死んだ人」と同じではないのか。

医療崩壊を招かないように、介護施設の高齢者は入院の優先順位を低くするということになれば、それはまさに、「命の選択」でしかなくなる。それが許される社会は恐ろしい社会であることを、私たちは今一度肝に銘じなければならない。
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虐待施設への行政処分内容を見て感じたこと


職員が入所者に対し、繰り返し暴言や暴力などの虐待を行っていたことが明らかになった島根県松江市にある地域密着型特養「わこう荘」に対し、市が4/8に行政処分を行ったことが公表された。

虐待の具体的内容とは、2019年夏頃から同年12月末にかけて、介護福祉士の資格を持つ男性職員(30代)が入所者の女性(70代)に対し「くせえ」・「ばか」・「殺すぞ」などと暴言を浴びせ、顔に肘うちするなどの暴力を行ったというもの。この職員は他の入所男性(70代)にも同様の対応をしていたことが分かっている。

事件が発覚したきっかけは、虐待を行っていた職員の同僚が施設に対し「部屋から叩く音がする」と報告したこと。それを受けた施設は昨年12月21日に入所女性の部屋にICレコーダーを設置し、画像で動かぬ証拠をつかんだ。

虐待を認めた職員は施設側の聞き取りに対して、「夜勤が続いてイライラしていた」と虐待理由を述べていたとの報道もある。

施設側から市に連絡があったのは12月26日で、市は虐待の内容や速やかに連絡しなかった責任は重いとして施設の指定取り消しも検討したが、ほかの入所者がいることに配慮し、5月1日から3ヶ月間、新規利用者の受け入れ停止に加え介護報酬の請求上限を7割までとする行政処分を行った。

虐待の当事者となった男性職員は2020年2月6日付で懲戒解雇されている。

こうした報道に接すると、職員採用は本当に難しいとあらためて思う。面接段階で虐待をしそうな人物を完璧に見分けることはなかなか困難である。誰しも、「利用者のために良い介護をしたい」と応募動機を述べる中で、介護職の経験がなくても素質がありそうに見える人は決して少なくない。そしてその期待を裏切る人も少なくはないのが現状だ。

だからこそ採用段階での選別とともに、試用期間をきちんと定めて、その期間で適性判断を行うという2段階の選別システムを厳正に確立することを、このブログでは何度も指摘している。

本ケースの施設は地域密着型特養という、定員が29人以下の小規模事業所なのだから、上司や同僚が、日常介護業務の中で当該職員の仕事ぶりを確認するのはそう難しいことではなかったと思える。そうであるにもかかわらず、本件発覚の経緯である、「人をたたく音」に気づく前に、加害者が日常的に利用者を罵倒する声などを何故もっと早く感じ取ることは出来なかったかなどの検証作業が必要だろうと思う。

ところで市の処分に関連して感じたことがある。「速やかに連絡しなかった責任は重い」とされているが、施設がICレコーダーを設置したのが12/21。その時すぐに行為が発覚したとしても、施設側が本人に事情聴取をして、市への報告内容をまとめるのに相応の時間は要して当然だと思う。しかるにその報告がレコーダ設置から5日後の12/26にされたことを、「速やかではあらず」と糾弾されているのは、とても厳しい姿勢だなと思った。

処分内容についてであるが、新規利用者の受け入れはこの時期、コロナウイルスの感染予防対応で、処分を受けなくとも難しいと思うのであまり影響はないと思う。しかし減算処分はかなり厳しい。地域密着型特養はもともと運営費用がかなり厳しいサービス種別であり、常に満床で給付費上限を算定し、併設事業も稼働率が高くなって初めて経営が成り立つような事業だ。

母体に広域型特養などがあって、その施設のサテライト施設として運営され、母体と一体でないと、なかなか人件費がひねり出せないようなサービス種別なのである。

それが3月の間、給付費が7割算定しかできない状態はかなり厳しく辛いものになる。この間の運営費用は間違いなく赤字である。経営母体には広域型施設はなく、大きな規模の法人ではないと読み取れ、法人全体としてかなり厳しい経営を強いられるのではないだろうか。

しかしこうした処分を恐れて事実を隠蔽しても、この情報社会において虐待事実を隠し通すことは困難である。むしろ隠蔽が発覚した場合の、より重い処分を考えると、事実の自主的報告は当然と言ってよいだろう。そういう意味で本件の厳しい処分を知って、今後事実を隠そうとする事業者があってはならないことを改めて訴えておきたい。

それにしても本件の加害者のような、とんでもない職員がたった一人でも存在すれば、このように事業経営自体を揺るがすことになりかねないということは、介護事業経営者にとって大きな危機感を与える問題ではないだろうか。

新型コロナウイルスの影響で職を失った人が、今、介護事業者に就職を求めて募集に応募するケースが増えているそうである。しかしそのことに舞い上がって、闇雲に職員採用しないように心せねばならない。今のような状況だからこそ、人材をきちんと選んで育てるという意識がより強く求められるのではないかと思う。

そうであるからこそ介護事業者における、選び・見極め・育てるという三位一体システムの確立を急いでほしいのである。
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面会制限している施設から退所させた母親と無理心中というニュースに触れて


大変ショックを受けるニュースが飛び込んできた。

4/18大阪市西淀川区の駐車場で男性(57)が倒れているのが発見され(自室のベランダから飛び降りたとみられる)、自室では母親(91)がベッドで布団をかぶった状態で亡くなっており、顔にはタオルがかけられていたという。亡くなった男性のポケットからは遺書が発見されており、その内容から本件は男性が母親を殺害後、自殺した無理心中であるとされた。・・・この情報だけでも十分ショックであるが、その背景がよりショックである。

母親は数年前に市内の特別養護老人ホームに入所しており、男性は孝行息子として知られ、毎日のように見舞いに訪れ、朝から晩まで母親に付き添っていたそうである。

しかし4/3〜その施設では新型コロナウイルス感染予防対策を取り、面会制限が行われ、男性も母親に面会ができなくなったそうである。

母親に会えない日が続いた男性は、施設に対して、「一時的に家に連れて帰りたい」と外泊の希望を出したそうであるが、感染予防対策中であり外泊も禁止されているとして断られたとのことである。

そのため男性は、母親を施設から退所させることを決断し、4/17の夕方自宅に母親を連れ帰り、翌18日朝には息子が大量の紙おむつを購入して家に運んでいる姿が近所の住民に目撃されていた。しかしその夜に無理心中という悲劇が起こっている。

大阪府警によると、遺書には「母に『死にたい』と言われ、糸が切れた」と書かれており、男性の死後の葬儀や部屋の片付けについても記されていたという。

何とも痛ましい事件である。だからと言って面会を制限していた施設が悪いわけではない。施設としてはこの時期に面会を制限したり、外泊を禁止するのはやむを得ざる措置である。大阪の感染拡大状況を考えれば、この部分はより厳格に行わねばならないだろう。そのことに対して非難を受ける謂れはない。この部分については声を大にして言っておきたい。

第3者からすれば、退所を申し出たときに翻意を促す働きかけがあっても良かったのではないかと言いたくなるのかもしれないが、たぶんそういう働きかけは行われていると思う。施設側からすれば、母親の状態をよく知っているし、男性一人でずっと在宅介護することの困難性も理解していたであろうから、そうならないように説得をしたはずである。少なくとも、「ああそうですか」・「それなら勝手に退所してください」なんていう状態で、利用者を放り出すようなことはなかったと信じている。

おそらく面会できないことに対する、男性のストレスが予想以上に高く、退所させるという意思も、周囲の説得で翻意できる状態でないほど固かったのだろう。だからと言って施設側は面会制限を解除するわけにもいかない。そういう意味では施設・男性双方が思い悩んだ末の退所の決断だったのではないだろうか。

そしてその時点では、当事者本人も含めて誰もこんな悲劇の結末につながるとは思っていなかったはずである。そんな恐れや予測は不可能だ。

おそらく被害女性が退所したとされる施設の関係者もショックを受けていることだろう。担当者は特に悔しい思いをしているだろうが、過度な責任感を追わないようにしてほしいと願わざるを得ない。

ひとつだけ検証してほしいことは、面会制限に対するストレス対応がきちんと行われていたかどうかということである。(参照:施設を強制収容所に化す工夫のない面会制限

参照記事にも書いているように、面会制限と非接触型の顔の見えるコミュニケーション対策はセットで行われるのが当然であると考えてほしい。これだけ長期間の制限にもかかわらず、その出口さえも見えないのだから、そうした対策を全くとっていない制限の継続は、虐待と同じレベルの人権軽視であるとさえいえるのである。

そして本件のような事件の教訓として、私たちは精神的なケアの対象とは、利用者のみならずその家族も含まれると考えるべきだ。面会を制限される家族にも、施設側が主体的かつ積極的にアプローチするべきである。

特に面会できない家族のうち、キーパーソンに対する定期的な施設からの情報発信・情報提供は必要不可欠である。それは個別情報として、広報誌などではなく、個別の非接触型コミュニケーションとして行われるべきであると考える。

どちらにしてもこんな悲劇が繰り返されてはいけない。しかし悲劇が繰り返されない決定的な処方箋などあろうはずがないのも事実だ。だからこそ私たちはできることを確実にしていく以外ない。

現時点で言えば、面会制限にともなうストレスチェックを早急に行うことだ。そのうえでその緩和策を考え得る限りとることだ。特に面会できない家族とのコミュニケーション機会を失わないように、不平や不満を施設側が積極的に受け入れる機会を創るように対策すべきではないだろうか。

それを行っていない施設の関係者は、この記事を読んだ後できるだけ早くその対策を講じていただきたい。

末尾になるが、亡くなられたお二人のご冥福を心より祈る。合掌。
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道内北斗市での通所送迎中の事故原因が理解できない


一昨日、道内に駆け巡った介護関連ニュースとして、医療法人が経営するデイケア事業所の送迎中の事故に関するものがある。

その内容とは、昨年10月に北海道内北斗市内の通所リハビリテーション施設の車いす移動車に乗っていた男性(81歳)が、走行中の車内で車いすごと転倒して意識不明の重体となったというものだ。

報道のきっかけになったのは行政指導の内容が明らかになったことである。北斗市はこの施設に対して「職員の安全対策が不十分だった」として今年1月から3カ月間、利用者の新規受け入れを停止する処分を行ったというのである。

通所サービスの送迎中の事故は決して少なくなくて、過去にはリフト付き車両のリフト操作中に、車いすの固定が不十分で、リフトから道路に転落して利用者が亡くなるという痛ましい事故もあった。

しかしワゴン車内で、車いすに座っていた利用者が、車いすごと転倒し重篤な結果につながったという事故というのは、今まで一度も聞いたことがない事故である。

報道によると事故は昨年10/3に発生したもので、檜山管内の男性を乗せて送迎中のリフト付きワゴン車が、交差点で右折した直後に、男性が車いすごと後ろ向きに転倒し、頭を強く打つなどして意識不明の重体となったというものである。送迎車両には職員二人が同乗していたとのこと。

転倒の原因は、車いすの男性をリフトで車に乗せる際、本来は職員がフック付きのバンドで車いす4カ所を固定しなければならなかったが、全てのフックをつけ忘れていたという・・・。

しかしこの事故原因(転倒の理由)はとても納得できるものではない。少なくとも僕の過去の経験から言えばこんなミスはあり得ない。最大の疑問は、車いすの固定を忘れるだろうか?ということだ。

僕の経験で言えば、それを忘れてしまうことなど考えられず、車いすに乗っている人をリフトに乗せ固定したあとリフトを上げ、そこから固定を外してワゴン車内に車椅子を押し入れた場合、その流れでかならず車内でフックに固定するのは一連作業である。送迎担当者ならその作業は体で覚えていることで、普通フックをかけることを忘れることは考えにくいように思う。

運転手以外の同乗職員が、フックで車いすが固定されていないことに気が付かないのもどうかしている。そもそもその際にフックに固定する器具はどこにどのような状態で置かれていたんだという疑問も生ずる。かけていないフックが同乗している職員の眼に入らないことなどあり得ないと思う。

そう考えると、この事業者の送迎担当者は日常的に送迎の際に、「車いすのブレーキをかけてさえいれば問題ないだろう」という根拠のない安心感で、日常的にフック固定を怠っていたのではないかという疑問が生ずる。それは僕の偏見による妄想だろうか?

さすれば本件以外にもそうしたケースがなかったか、詳しく検証される必要があるように思うが、それがされないまま、この事故はケアレスミスにして幕引きがされそうである。

本件は道警が1月、自動車運転処罰法違反(過失致傷)の疑いで、運転していた男性職員を書類送検し、北斗市が行政処分を行い、同事業所の本体施設の事務長が「事故を受け、職員同士で声を掛け合いフックの装着を確認させるなど、教育を徹底している」と語つことで終止符が打たれようとする感がある。

北斗市といえば、僕が今まさに今、新幹線に乗って向かっている、「新函館北斗駅」のある田園地帯である。10月といえば雪の季節だが、この冬の小雪の影響で、おそらく事故現場もあまり雪のない広いなだらかな道路であったのではないか。その好条件に対する甘えがなかったのかなどを今一度検討する必要があるのではないか。

何度もいうが、通所送迎を一度でも経験した者にとっては、リフト車両を利用する車いす使用者の、「フックのかけ忘れ」など、普通は考えられないことなのだ。ここは一般の方に理解できないことかもしれない。

どちらにしても、ちょっとした油断が利用者の命に係わる事故を引き起こしているという事実がある。このようなヒューマンエラーは絶対になくしていかねばならない。

意識不明の重体になった利用者の方が、今どうなっているのか、回復したのか否かの報道はない。

しかしもしこんな事故によって、命を失うことになるとしたら、最も利用者が信頼を寄せて、暮らしの質を護ってくれると信じていた事業関係者によって命を奪われるという結果にしかならない。

それはあまりに哀しい残念な最期である。このようなことを繰り返さないためには、「事故原因には、隠された真実がある」なんてことがあってはならないわけだが、本件にくれぐれもそれがないことを願うのみである。

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虐待防止研修をいくら開いても虐待は防止できない


大阪東住吉区の特養で昨年11月から12月にかけて、寝たきりの女性3人が相次いで肋骨骨折し、今年1月にも90代の寝たきり女性の体に、打撲による「あざ」が発見され問題となっている。

もともと肋骨は骨折しやすい箇所ではある。寝たきりの人は骨がもろくなっているので、肋骨骨折の危険性はさらに高くなる。例えば移乗介助の際に、介護を行う職員が利用者の背中側から脇に手を入れて、肋骨箇所に掌を添えて力を入れただけで骨折する人もいる。そのため移乗介助の際に利用者の肋骨部分に負荷をかけない介護方法を学ぶのは基本中の基本ではある。

本件はそのような基本的介護ができていなかった結果による、「介護事故」と考えることもできるだろうか?

しかし自分で動くことができない複数の高齢者が、このような短期間に同じ個所に怪我を負うということは常識的には考えられないので単純な介護事故とは思えない。本件のような状態は、意図的で人為的な力が作用しないとあり得ないことであり、利用者にとって身近な職員から虐待行為を受けた、「事件」であることが疑われる。

そのため大阪市や施設から通報を受けた大阪府警は、事件性の疑いもあるとみて捜査を始めたそうである。

被害者はいずれも多床室に入所していた方であるという。しかし被害を受けた日時が特定できないのだから、この間複数の職員の直接介護を受けており、仮に虐待暴行事件だったとしても、加害者を特定するのは非常に難しいと思われる。

特に被害者はいずれも認知症の方であり、誰が自分に対して、どのような行為に及んだかを訴えることができないので、加害者特定は余計に困難であるが、だからこそその行為は悪質で許せない行為であるとも言えよう。

このような報が流れると、施設入所している自分の親は大丈夫かと心配する家族はたくさんいるだろう。介護施設における虐待はどこでも行われていることで、表面化する虐待行為は、その氷山の一角にしか過ぎないのではないかと考える人もいて当然である。

そのような考え方は間違っており、多くの介護事業者や介護関係者が虐待とは無縁であると言っても、そのことに説得力を感じない人が増えてしまうのも当然だ。そんな中で僕たちはいったい何をしたら良いのだろうか。

こうした報道を受けて改めて、『虐待防止研修』を企画する動きもみられる。しかし虐待防止研修をいくら開いて、それを多くの職員に受講させたとしても、そのことにほとんど意味はないと思う。

なぜなら、「虐待しない」ということが良いサービスではないからだ。虐待しない職員が良い職員だとも言えない。「虐待行為のない施設」や「虐待しない職員」は、当たり前のことであり、特別なスキルではないからだ。むしろ虐待防止研修を声高らかに唱えなければならない介護業界のモラルレベルが疑われようというものだ。

自ら選んだ対人援助という職業の中で、利用者を虐待するということ自体が、「異常」であり、「普通ではない」ことなのである。その異常な状態に気が付かない感覚麻痺をどうにかしないと介護業界から虐待は永遠になくならない。

そんなことに気が付かない職員に、改めて虐待を防止しましょうとレクチャーして何の意味があるというのだろうか。

そもそも虐待が悪いことであるということくらい誰でもわかっている。虐待は良くないことです、なんていうレクチャーは小学生低学年以下に向けて行うべきことで、それ以上の年齢の人に対して行うような教育ではないのだ。

またストレスが虐待の原因だとされることがあるが、それは間違っている。職業にストレスはつきものであり、介護という職業だけが特別なストレスのある職業だということはない。少なくとも介護施設内の業務には、営業ノルマのようなストレスは存在していないわけである。

そもそも対人援助の中で、ストレスのはけ口を直接利用者に向ける人間は、対人援助にはじめから向いていないのであり、むしろ人を傷つけることを何とも思っていなかったり、サイコパスのように人を傷つけること自体を目的に介護という仕事を選んでいるのである。そんな人間に、虐待は悪いことで、防止しなければいけないことだという教育をしたところで何にもならない。

そんな低いレベルの所で何かしたってどうしようもないのである。

そこでまず初めに考えなければならないことは、人材不足だからと言って、職員募集に応募してきた人間を闇雲に採用してはならず、一度採用した人についても、試用期間に適性をきちんと見極めて、対人援助に向いていない人には別な職業を勧めることである。

教育レベルで言えば、虐待防止研修ではなく、対人援助のプロフェッショナルとしての矜持を植え付けることを主眼に置かねばならない。介護を職業とする人々の、「民度」が問われていることを自覚しなければならない。

そのためには虐待を起こしてはならないという小学生レベルの「お話し」を聴かせるのではなく、対人援助のプロフェッショナルとして行わねばならないことを根本から教育しなおさねばならない。

感覚麻痺に陥らずに、介護サービス利用者に対して正常の顧客マナーを失わないように、徹底した節接客・接遇意識を植え付けるための、サービスマナー教育をし直さねばならないということだ。

そうすることでしか職員に植え付けられない意識があるのだ。それを基盤として私たちは自らの実践で、介護サービスを高品質化して、社会から認めてもらわねばならないのである。

サービスの品質を常に意識する職員を育て、そのためには顧客に対するサービスマナー意識があって当然だと考える職場環境を創る中で、顧客に対するホスピタリティ精神が生まれるのだ。サービスの品質に対する興味がなく、サービスマナー意識が浸透しない職場で、ホスピタリティ精神など生まれないのだ。

しかしホスピタリティ精神が根付いた職場は、虐待とも無縁になるし、幼稚な、「虐待防止研修」なんて必要なくなるのだ。このことを理解しなければならない。虐待防止研修が必要な土壌を改善しなければ、いつまでも虐待はなくならないのである。

そのための職員研修のお手伝いは、いつでも受け付けている。気軽に連絡していただければと思う。

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廃止される通所介護事業経営者がしていたこと


僕が住む登別市は、室蘭市と生活圏域がほぼ同じといってよい。

僕の家はその室蘭市との境界線の近くにあるので、僕が日常的に利用する駅やお店は、ほぼ室蘭市に属している。そして僕のウオーキングコースも室蘭市が中心になっているが、ウオーキングの最中にいつも近くを通る、「地域密着型通所介護事業所」で事件が起きた。

それも事業経営者の従業員に対する卑劣で破廉恥な犯罪行為である。

2020年1月15日、デイサービスセンター「かなで」(合同会社マーベラス)の経営者・下村進 容疑者(52)が迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕された。容疑は事業所内の更衣室に盗撮目的で小型カメラを設置した疑いとされている。

逮捕に至る経緯は、1月14日に同事業所の女性職員が着替えようとした際、更衣室内の置時計型のデジタル時計に内蔵されている小型カメラを発見したことによるもの。スマートフォンほどの大きさのデジタル時計が棚に不自然に置かれていたことを不審に思った女性従業員が見つけて、別の従業員が「盗撮機を設置した者がいるかもしれない」と警察に通報して事件が発覚した。

下村容疑者は警察の調べに対して、「自分が設置した」・「スリルを味わいたかった」・「女性の着替えにドキドキした」と容疑を認めているという。・・・自分が雇用している人間に、そんな感情を抱くこと自体が経営者失格といえる。・・・というか、よい大人がいったい何やってんだという低俗な犯罪である。

もっとも従業員の信頼を得なければならない経営者であり、分別のある年齢をとうに超えた大人が、従業員をターゲットにして、こんな卑劣な行為をしていたとはまったく驚かされる。従業員もたまったものではないだろう。その憤りは想像して余りある。

事件発覚後、この会社のホームページはネット上から削除され、事業も停止されていたが、3月末にて事業廃止となることが室蘭市より公表された。当然だろう。そんな事業所を利用したいと思う人もいなくなるだろうし、何より従業員募集に応募する人などいるわけがない。

こんな犯罪を犯す介護事業経営者は、極めて特殊な人間である。そんな犯罪行為とは無縁な介護事業経営者の方が圧倒的に多いのに、こういう事件が報道されると、悪いのは犯罪者個人ではなく、介護事業経営者だという論調が存在することが残念である。

介護事業経営者のキャラクターもいろいろだが、マジョリティーは真面目に介護を考えて、経営を真剣に行っている人だということを理解してほしい。そしてこういう犯罪が、「介護事業」と関係して発生したなどという誤解をしないでいただきたい。

数多くいる介護事業経営者の中に、たまたま大馬鹿者が混じっていたというだけの話である。

さて話は変わるが、昨日東京北区王子の「北とぴあ」で講演を行った僕は、今王寺駅近くのホテルで、この記事を更新している。昨日は北区のみならず、新宿の事業者の方も、僕の講演を聴くために会場に集まってくださった。平日の18:30〜20:45という遅い時間にも関わらず、たくさんの介護事業関係者の皆様にお集まりいただき、あらためてこの場で感謝申し上げたい。

僕は今日これから福岡に飛んで、顧問先に顔を出した後、博多駅から北九州小倉駅に移動し、北九州市内の介護事業者さんにお邪魔して、職員向けのサービスマナー研修を行う予定だ。

その事業者はすでに高いマナー意識をもって事業展開されているそうだが、さらなるサービスの高品質化・顧客対応スキルの向上を目指して、今回の講演企画となっているそうである。こういう事業者が徐々にではあるが増えている。そうした事業者の人材が集まり定着していくのだろうと思う。その結果、顧客からも選ばれて勝ち残っていくのだろうと思う。是非そういう事業者を見習ってほしい。

僕は26日(水)まで博多に滞在し、顧問先で仕事をしているので、見守り看護師の24時間対応の実態(参照:施設サービスの一部もアウトソーシングできる時代)を知りたい方は、是非ワーコンまで見学に来ていただきたい。すでに明日の夕方と、25日(火)の夕方に見学予定が入っているが、僕がいる間はいつでも見学対応可能である。勿論明日からの3連休の間も、いつでも対応可能だ。

加えてこの間、福岡市内で研修講師もお受けすることが出来る。急な依頼にも対応化のなので、職員のマナー研修などを希望される方は、公式サイトの連絡先まで、お気軽に連絡いただきたい。

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特養あずみの里裁判の控訴審について


火曜日から福岡に滞在しながら、顧問先で仕事をしていたが、明日・明後日と函館で3つの講演予定が入っている。

そのため今日は午前の便で一旦、北海道に帰ることにしており、これから飛行機に搭乗予定である。

僕が住む登別は、札幌〜函館までのちょうど中間地点に位置しているので、今日は自宅に戻り、明日朝の列車で午前中のうちに函館入りする予定である。

再来福は函館講演を終えた後、月曜日の午後からの予定であるが、その期間中の13日(火)18:30〜20:30まで、スターフィールド株式会社 1階セミナールーム(福岡県福岡市早良区)で、「介護の誇り〜生き残りをかけた事業戦略としての介護実践・サービスマナー」をテーマにした講演を行う予定なので、張り付けた文字リンク先を参照にして是非ご来場いただきたい。

その講演には、かねてより親交のある、弁護士法人翼・篠木法律事務所の篠木弁護士や、在宅ターミナル専門医である松尾クリニックの松尾院長なども来てくださるとのことで、講演後のオフ会も含めて楽しみにしている。

ところで現在は搭乗待ちであるが、その時間を前にして慌ただしくこの記事を更新しているために、今日は少し短めの文章になる。

しかし今日ここで提起する問題で一番重要な情報は、記事の中に張り付けたリンク先の広報誌に書かれている内容になる。それは結構ボリュームがあるので、すべて読むためにはいつもの僕のブログ記事より読む時間いり長い時間がかあるかもしれない。しかしそれはとても大事な問題提起なので、是非そのリンク先も含めて読んでいただきたい。

去年の3月に、「誤嚥死亡事故?で特養の准看護師に有罪判決の問題点」という記事を書いて、その罪判決については、全く容認・納得できるものではないように思えると論評した。

その控訴審は1月30日の裁判初日で、事実上証拠調べなどを一切行わずに結審するというものであった。

このことについて、「長野県民医連のホームページ」では、「問答無用!初日で裁判打ち切りの暴挙 」として、その不当性を糾弾する情報提供をしている。

介護業界関係者の中にも、「身が震えるほどの大変な怒りを感じております。このまま判決となると、介護サービス利用者や介護従事者にとって、ますます暗い業界になってしまうことを危惧しておりす。」などとして憤っている方がおられる。

リンク先の記事を読んで、是非多くの関係者にこの問題について考えていただきたい。

真実はいったいどこにあるのかということも大事だが、人の罪を裁く場所にいる裁判官が、このような形で判決を下すことが許されるのかも含めて、大いに議論されるべきではないのかと思う。

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高齢者からお金を騙し盗る人が推進した介護保険からの卒業


今年もいよいよ押し詰まり、後1日1半で新しい年に変わろうとしている。このブログの読書の皆さんは、今どこで何をしながらこの記事を読んでくれているだろうか。

今年もずいぶん勝手でわがままなことを書きなぐってきた僕のブログであるが、1日何千人もの皆さんが懲りずにここを訪れてくださっている。それだけではなく僕の講演会場ではいつも何人もの方が、「ブログ読んでます。」と声を掛けてくださった。本当にありがたいことである。

しかし何度も書いているが、ここは僕の身勝手な意見を書く場所にしており、読者に媚を売る記事は決して書かないので、そのスタンスがお気に召さない方は素通りするか、つながずにいただきたいと思う。そのことを広い心でお許しいただける人のみ、この場所で来年以降もつながっていければと思う。

今年を振り返ると、相変わらず災害の多かった印象のある2019年であるが、事件や事故もショッキングなものが多かったように思う。

介護業界に関連しても様々な出来事があった。相も変わらず利用者虐待をはじめとした不適切サービスに関連する報道はなくならず、不正請求で指定取り消しというニュースも何件も流された。

その中でも介護関係者がショックを受けた最大の事件は、自立支援介護に関連して、「和光式方式」を確立させた、東内京一(とうない きょういち)容疑者が逮捕されたというものではないだろうか。

東内容疑者の当初の逮捕容疑は、生活保護受給者の自宅から回収し、福祉事務所で預かっていた現金200万円を、「詐欺グループの金らしい。検察に持っていく」とだまし取ったというものである。

しかしその後、新たな犯罪行為が次々と明らかになり、生活保護受給者の女性から預かっていた現金や預金計548万円と通帳などを搾取した容疑や、成年後見制度を口実に高齢者夫婦から300万円を騙し取る業務上横領・その他の窃盗などの疑いで、9月までに計5回の逮捕状が執行されている。その被害総額は3千万円を超えるという大事件である。

東内容疑者の逮捕時の役職は企画部審議官で、介護保険関連部門の部署であった。そのため和光市方式をさらに推進・確立されるために介護部門の部署に長く腰を下ろし続けたことが事件の背景要因であると批評される向きもあるが、それを言ったら僕などのように同じ社会福祉法人の同じ介護部門に30年以上働き続け、トップの位置を占めた人間なら何でもありと思われそうで、それは少し違うだろうと言いたい。

一つの行政システムの中に長くいて、そのシステムが腐敗していくというならともかく、今回の逮捕容疑は、高齢者の財産を狙って、それをだまし取ったという明らかな犯罪行為だ。

僕は相談員時代には、入所利用者の年金や預金の管理を担当していたが、それに手を付けようなんてことは全く考えられなかった。それは年金や預金が、高齢者にとっていかに命綱となり得るのかということを、様々な家族関係や生活環境から伺い知る立場にいたからではなく、そもそも人様の虎の子である財産に手を付けるなんて言う反社会的行為をすることはできないという、当たり前の社会常識を持っているからに過ぎない。

普通に社会生活を送っている人で、対人援助に関って生活の糧を得ている身であれば、自分の支援担当者に信頼を寄せてもらうことが一番に考えることで、その人をターゲットにして窃盗や横領を行うなんて考えられない。それは専門職というより、人としての品性の問題であり、一つの部署に長くいるかいないかと関係のない問題だろうと思う。

東内容疑者の犯罪は、「出来心」の範疇をはるかに超えた犯罪で、自分が業務で関わりを持った高齢者をターゲットにして、何度も多額のお金を搾取し続けている点で悪質すぎると思う。自分が関わった高齢者の老後の資産を奪うような人が、地域の高齢者の福祉の向上なんて本当に考えていたとは思えない。

彼の犯罪内容を知るにつけ、そもそもこの人物が高齢者の福祉を語り、地域福祉のシステムを設計するにふさわしい人物であったのかという疑いを持たざるを得ない。むしろ介護という部署を隠れ蓑にして、高齢者から搾取することを目的に、自立支援介護という看板を掲げていたのではないかとさえ疑いたくなる。

この人を神様のようにあがめている信者が全国にたくさん居たのも事実だ。それらの人たちは東内容疑者から、地域福祉とは何たるか、高齢者の自立支援とは何かというレクチャーを受け、その影響を受けながら、全国各地で東内容疑者の唱える自立支援を信奉していた。それを今も続けている人もいる。

和光市の自立支援介護とは、毎年要支援認定者の4割以上が介護保険を、「卒業」するとして、非該当認定を受けることを目指して取り組みがされていたものである。それを真似て大分県や桑名市等で同じような、介護保険からの卒業を目指したケアプラン介入等が行われている。

しかしそれらの地域では、要介護認定で非該当とされた利用者から少なくない不満の声が挙がっていることも事実で、その何割かの人たちは、全額自己負担で介護保険のサービスの自費利用をしている。要するに和光市方式とは、自立支援介護という名を使った給付抑制策に過ぎず、それを唱えた中心人物が、地域の高齢者から金をだまし取っていた姿にかぶって見えるのである。

介護保険サービスを使えなくすることを、「自立支援」だと考える洗脳された人が、いまだに高齢者の尻たたきをしている姿は醜いだけではなく、空恐ろしくさえある。本来の自立とは、自分で何でもできることではなく、自分の希望通りに何かをしてもらうことを含んだ概念であることを理解していない行政職員や介護支援専門員がなんと多いことか・・・。

和光式方式で介護保険から強制卒業させられた人の中には、そのような行政対応を、「血も涙もない」と泣いて批判する人も多いが、まさにそのシステムとは、高齢者の命の綱である財産を平気で奪い取る、「血も涙もない行政職員」によって構築・推進されていたシステムなのである。

自立支援介護という名の欺瞞が、そこには存在していないかを問い直す必要があるのではないだろうか。

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運転技能検査の導入だけでは高齢ドライバー対策は不十分


去年まで天皇誕生日の祝日であった今日(12/23)は、今年から今上天皇の誕生日ではなくなったために平日となっている。

令和天皇の誕生月は即位前の2月だったのだから、今年は天皇誕生日の祝日がない年ということになる。その代わり5/1が即位日の祝日だったためため年間祝日数は前年と変わっていない。

今後12/23が祝日化される可能性はあるものの、今日は平日で普通の月曜日である。そのため多くの人が平常業務に就いているはずだ。うっかり今日も祝日と勘違いして、遅刻した人はいないだろうか。それどころか、まだ夢の中で仕事に行くのを忘れてしまっているという悠長な人もいるのだろうか・・・。

さて今年も押し詰まり、令和元年も残すところ僅かになっているが、振り返ってみると今年は一段と高齢ドライバーによる悲惨な死亡事故が多かった一年ではなかったかと思う。

その中でも特に記憶に残っているのは、4月に東京・池袋で母親と3歳の娘が犠牲となった事故である。一人残された夫が、死亡した妻と子供への思いを記者会見を通じて語る姿に涙した人は多いだろう。しかし加害者にはその思いが全く届いていないことに憤りを感じざるを得ない。

この事故の加害者も当時87歳の高齢ドライバーであった。加害者は事故当時は無職であったが、元々は東大を卒業し、1953年に通産省(当時)に入省したエリート官僚でもあった元院長である。重大事故を起こしても逮捕されない加害者を巡って、「上級国民」という言葉が一時流行した。(※不逮捕の理由は、実際にはそうした理由ではないそうである。)

元院長は認知症ではなく日常的に運転もしていたが、自宅マンションの駐車場でもうまく車を止められず、妻が外に出て、「もっとハンドル切って!」などと声を掛けることが常態化していたとのことであり、明らかに運転能力には低下がみられていたのである。

事故の際に乗用車が暴走した時も、助手席には元院長の妻が同乗していたが、事故現場に至る左カーブの辺りで妻は、「危ないよ、どうしたの!?」と声を上げる様子がドライブレコーダーに記録されていた。

事故からしばらくたって、被害者の夫があの哀しい会見を開いたあとで、元院長はJNNの取材に答えている。しかしそこで発言した内容とは、『安全な車を開発するようメーカーに心がけて欲しい、高齢者が安心して運転できるような、外出できるような世の中になってほしい』という他人事のような発言に終始しており、自らの責任には全く触れていない。

それはまったくのKY発言で、そのコメントに憤りを感じた人は多いだろう。しかしこの発言が、元院長のパーソナリティから発せられたのだと考えるのも短絡的だと思う。むしろこうした発言しかできないほどに、認知機能が低下していたのではないかと考える方が、状況把握としては正しいのではないだろうか。

この発言に触れて思うに、この加害者は日常生活は普通に送っていたとはいっても、明らかに認知機能は低下していると言わざるを得ない。そうであっても運転という、「手続き記憶」だけで操作できる行為はできてしまうのだ。(参照:手続き記憶だけでは運転できない車を作ってください

しかしそうした人の運転する車は、すでに走る凶器であり、操作する人間も走る狂気である。

こうした問題をどう解決するのかが、来年以降ますます問われてくるだろう。何も対策しなければ、こうした事故は繰り返されるし、その数はもっと増えるだろう。そしてそこで尊い命が奪われる人とは、何の罪もない幼い子供であったり、将来ある若い人たちであるとしたら、それほどの社会損失はないとさえいえる。

しかもこうした認知機能低下のある人の運転行為を野放しにしておれば、自分がいつ加害者にも、被害者にもなりかねないとさえ言えるわけである。だからこそ一人一人の国民が、高齢者の運転からの勇退ということや、高齢になってさえも運転せざるを得ない地域社会というものをどう考えるのかということを、身近な問題として議論すべきではないかと考えるのだ。

自分自身だって、いつまでも元気で運転行為に支障なく暮らせるわけがないという観点から、対策を考えていかねばならない。

こうした死亡事故などを受けて、国は違反歴のある高齢ドライバーの免許更新時に、「運転技能検査の導入」を検討しているそうである。しかし免許更新時に事故歴のある人だけを検査しても事故を防ぐことはできない。現に池袋の元院長だって、それまで事故歴があるわけではなく、直前の免許更新時にその制度があったとしても、検査対象外とされたわけである。

そうであれば、こうした悲惨な死亡事故を本当に防ごうと対策するならば、一定年齢を超えた人はすべて、年単位の運転技能検査を受けるようにして、その検査に合格できない人は運転免許の取り消しという措置をとれるようにすべきではないだろうか。

同時に免許を取り消された人に制度の手を差しのべる仕組みが、地域包括ケアシステムとして求められる。例えば「介護予防・日常生活支援総合事業」には、「送迎サービス」があるが、このサービスは、買い物に困る高齢者や運転免許を返納した人を対象できるのだから、こうしたサービスを普及させる対策をとるべきだ。

すべての市町村が、市町村事業として、ガソリン実費相当分を負担するだけで利用できる、「送迎サービス」を実施することで、免許返納を促進できる可能性があるし、強制的に免許取り消しを受けた人が暮らしに困らなくできるわけである。

運転免許を取り上げられたことがきっかけで、認知機能が低下する人もいるが、それを防ぐ手立ては、運転以外のやりがいを持ってもらうことが一番である。そうであればこの、「送迎サービス」は、喫茶店や集会所も巡回するなど、自治体が趣味活動を含めたニーズに柔軟に対応できることになっているのだから、地域社会の中で、高齢者が参加して認知機能の低下を防ぐ趣味・やりがい活動を同時に造る工夫をすることで、事故なく安全な地域社会で、高齢者が生きがいを持って暮らすことにつながるのではないだろうか。

来年以降の地域課題には、そうした視点を入れてほしい。そんなふうに地域包括ケアシステムの課題として、高齢ドライバー問題に取り組む自治体が増えることを期待したい。

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福井県敦賀市の一家三人殺人事件は介護殺人の様相か


先週15日に行われた社保審・介護給付費分科会では、居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置についての延長議論が行われた。(資料

居宅介護支援事業所の管理者は、主任ケアマネジャーでなければならないとされたが、その経過措置は令和3年3月31日とされている。しかしそれまでに実務5年の要件が満たせないなどで、主任ケアマネの資格を取得できない事業所が多数にのぼることが明らかになり、その見直しが必要とされた。

そのため経過措置を令和9年3月31日まで延長するとともに(ただし令和3年4月1日以降に新たに管理者となる者は、いずれの事業所で あっても主任ケアマネジャーであることが求められることとなる。)、次の2点を新たなルールとして加える案が示されている。

・特別地域居宅介護支援加算又は中山間地域等における小規模事業所加算を取得している事業所については、管理者を主任ケアマネジャーとしない取扱いも可能とし てはどうか。

・令和3年4月1日以降、不測の事態により、主任ケアマネジャーを管理者とできなくなってしまった事業所については、当該事業所がその理由と「改善計画書」(仮称)を保険者に届出た場合は、管理者が主任ケアマネジャーとする要件の適用を1年間猶予することとしてはどうか。

以上の案については、当日の分科会で賛同を得たため、そのまますんなりとその通りになる予定だ。

このことを巡っては、日本介護支援専門員協会の迷走が目立ったが(参照:管理者要件厳格化の経過措置延長を要望した協会の今更)、本来このような管理者要件の厳格化など不必要なことであり、いっそのこと主任ケアマネに管理者を限定する要件自体を失くしてほしいものだが、これについては一旦決まったということで引っ込めることはできないのだろう。

しかしこのことによって居宅介護支援の質が上がるなんて言うのは幻想だ。主任ケアマネジャーの資格を得る必要がある人が増えることによって、その資格を与える一連の過程における、「利権」が増えるだけである。本当に意味のない要件だと思う。このことに加担した秋田あけぼの会の小原クンの罪は決して消えない。

さて話題は変わるが、週末起きた事件で気になるニュースが飛び込んできた。

17日の午後、福井県敦賀市の住宅で住人の親子3人の遺体が見つかった事件では、95歳と93歳の夫婦と、その息子である70歳の会社役員が殺害されたが、70歳の被害者の妻71歳が殺人容疑で逮捕された。

容疑者の夫は、脳梗塞の後遺症で足が不自由であったのに加え、95歳の母親は要介護1の認定を受けていたそうである。さらに93歳の父親も介護が必要で、容疑者が3人の介護を担っていたと報道されている。

容疑者は3人の首を絞めて殺害したと供述しているそうであるが、動機については、「介護疲れ」の可能性が指摘されている。

本当にこの事件が介護疲れによる殺人だったのかという検証が求められるし、こうした悲劇を繰り返さないためには、この一家に対する介護サービスの提供状況等はどうなっていたのか検証が急がれる。

それは誰かの責任を追及するためではなく、何がどう足りなかったのか、何をどうすればこの一家を救えたのかという視点から、今後の介護支援の方向性を考える一つの教訓とすべきことがあるのではないだろうか。

地域ケア会議は、本来このようなケースを取り上げて検討され、個々のこうしたケースの検討から地域課題をあぶり出すために行われるものだが、当該地域でそうした地域ケア会議が機能していたのかも検証しなければならない。

この事件を単なる刑事事件として捉えて終わらずに、地域の介護問題という側面はなかったのかという検証が不可欠だと思うのである。

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鹿児島県日置市の住宅型有料老人ホームでの虐待事件報道に触れて


昨日、鹿児島県日置市の住宅型有料老人ホームで、入所中の77歳の女性を殴るなどしてけがをさせたとして元介護職員の男が傷害の疑いで逮捕されたというニュースが報じられた。(※元職となっているのは、容疑者が事件発覚後の10/31付で解雇されているからである。)

逮捕された有馬洋一(38)は、1人で夜勤を行っている最中に入所中の77歳の女性に対し、左あごをひじ打ちするなどの暴行を加え打撲などのけがをさせた容疑で取り調べを受けている。肘打ちしている場面は防犯カメラで撮影され、ネット配信もされており動かぬ証拠となっている。
 
ところでこの容疑者は、事件のあった有料老人ホームに勤める以前に、介護関連の職業を10度も変えているそうだ。人間関係のトラブルなどが理由であると報じられているが、これほど多くの職場を転々と渡り歩いている人間を安易に雇ってしまう介護事業者の姿勢そのものが問われてくると思う。

僕は特養の施設長として採用も含めた人事権を握っていたが、複数の介護事業者を渡り歩いている人物については、面接時に好印象を持ったとしても採用することはなかった。短期間しか就業できないというのはその人物に何らかの問題があり、それが職場を変えることで解決するとは思えなかったからである。

勿論、ブラック介護事業者に愛想をつかして辞めて、新たな募集に応募したという人物はいるだろうし、その場合は健全な職場で能力を発揮してよい仕事をしてくれる人材となるケースもあるだろう。しかしその場合は、転職したとしても短期間に3つも4つもの事業者を渡り歩いているということにはならないはずだ。そこはきちんと見分ける必要がある

いくら人手が足りないからといっても、当座をしのぐことができる「人員」を集めればよいという考え方で、募集に応募してくる人をすべて採用するのは危険である。能力のない人員は、「人在」にしか過ぎず、その中には人罪(いることが即ち迷惑な人)となる人物であるかもしれないという危険性も併せ持つのである。

そういう人物が一人でも職場に交じってしまえば、今回のような事件を引き起こして、社会から糾弾されるだけではなく、莫大な損害賠償責任も生ずる可能性があるし、何より職場の雰囲気が悪くなり、良い人材の流出につながりかねないのである。そうなると人材不足はさらに深刻化する。

介護労働における、良い人材のモチベーションとは、人の幸せに関わることが出来るモチベーションであり、介護サービスを使う人々の不満や犠牲の上に成り立つ労働意欲はあり得ない。そのことをきちんと意識した職員採用に努めないと、良い人材が流出するだけではなく、その事業者に良い人材は張り付いてこなくなる。

介護労働に不向きな人を採用すると、結果的には他の職員に負担がかかるだけではなく、経営リスクに直結する問題となることを、介護事業経営者はもっと真剣に考えるべきである。

それにしてもこのような事件が起きると、夜勤中に密室の中で、自分の親がきちんと介護支援を受けているのかと心配する家族は増えるはずだ。特に今回の事件の被害者のように認知症で、自らの身に起こった危機的状況を訴えることが出来ない人の家族は心配だろう。
(※本件は、有馬容疑者の後に勤務に入った職員が、女性の顔にあざがあるのを発見したが、被害者はそのあざが、どうしてできたのかを訴えることが出来ず、有馬容疑者は翌朝の引継ぎで「女性が自分で転んだ」と報告していた。防犯カメラに同容疑者が肘打ちする様子が映っていなかったら、うやむやのまま終わったかもしれない。)

そうすると介護施設等の入所者の家族が、自分の家族を守るために、隠し撮りをしようとするケースも増えるだろう。スマホで簡単にタイマー録画ができる今日、それを防ぐことはできないし、防ぐ必要もないと思う。なぜなら本来の対人援助とは、いつどんな場面を切り取って見られたとしても、決して人に後ろ指をさされる行為ではないはずだからである。(参照:心の中に自らを写すカメラを持っていよう

だからこそ介護事業者におけるサービスマナー教育は重要なのだ。これをおざなりにしては大きなしっぺ返しを食うかもしれないのである。

特に新人職員が入職する前に、その教育係となる現在働いている職員のマナー意識を向上させないととんでもないことになる。新人にいくらマナー教育を施しても、マナー意識のない先輩職員によって、その意識そのものがつぶされてしまうからだ。そういう意味では新年度が始まる4月という、多くの新入職員が入職する前に、現役職員の意識を変えるマナー研修を行う必要があるといえるのだ。

僕は昨日夕方から世田谷の社会福祉法人さんの職員研修で、サービスマナー研修講師を務めてきた。その講義は全3回の研修の2回目として行ったものである。来月が最終回である。

マナーを持って日々の仕事ができるリーダーを育て、そうした職員が部下のマナー意識を植え付けない限り、職場にサービスマナー意識は浸透しない。それは虐待・不適切対応がスマホで撮影され、ネット配信されて事業継続が困難となるリスクを、常に抱えているという意味でもある。

だからこそこうした研修を定期的に実施する法人は、そうしたリスクを回避できるし、厳しい時代に生き残っていける体力をつけることにつながっていくと思う。

そうしたお手伝いも出来るので、是非声をかけていただきたい。連絡は僕の公式サイトから、メールでいただけるとありがたい。(※ページ画面上部の、グレーの帯状になっている部分に、メールアドレスなど連絡方法を掲載しています。

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