大変ショックを受けるニュースが飛び込んできた。
4/18大阪市西淀川区の駐車場で男性(57)が倒れているのが発見され(自室のベランダから飛び降りたとみられる)、自室では母親(91)がベッドで布団をかぶった状態で亡くなっており、顔にはタオルがかけられていたという。亡くなった男性のポケットからは遺書が発見されており、その内容から本件は男性が母親を殺害後、自殺した無理心中であるとされた。・・・この情報だけでも十分ショックであるが、その背景がよりショックである。
母親は数年前に市内の特別養護老人ホームに入所しており、男性は孝行息子として知られ、毎日のように見舞いに訪れ、朝から晩まで母親に付き添っていたそうである。
しかし4/3〜その施設では新型コロナウイルス感染予防対策を取り、面会制限が行われ、男性も母親に面会ができなくなったそうである。
母親に会えない日が続いた男性は、施設に対して、「一時的に家に連れて帰りたい」と外泊の希望を出したそうであるが、感染予防対策中であり外泊も禁止されているとして断られたとのことである。
そのため男性は、母親を施設から退所させることを決断し、4/17の夕方自宅に母親を連れ帰り、翌18日朝には息子が大量の紙おむつを購入して家に運んでいる姿が近所の住民に目撃されていた。しかしその夜に無理心中という悲劇が起こっている。
大阪府警によると、遺書には「母に『死にたい』と言われ、糸が切れた」と書かれており、男性の死後の葬儀や部屋の片付けについても記されていたという。
何とも痛ましい事件である。だからと言って面会を制限していた施設が悪いわけではない。施設としてはこの時期に面会を制限したり、外泊を禁止するのはやむを得ざる措置である。大阪の感染拡大状況を考えれば、この部分はより厳格に行わねばならないだろう。そのことに対して非難を受ける謂れはない。この部分については声を大にして言っておきたい。
第3者からすれば、退所を申し出たときに翻意を促す働きかけがあっても良かったのではないかと言いたくなるのかもしれないが、たぶんそういう働きかけは行われていると思う。施設側からすれば、母親の状態をよく知っているし、男性一人でずっと在宅介護することの困難性も理解していたであろうから、そうならないように説得をしたはずである。少なくとも、「ああそうですか」・「それなら勝手に退所してください」なんていう状態で、利用者を放り出すようなことはなかったと信じている。
おそらく面会できないことに対する、男性のストレスが予想以上に高く、退所させるという意思も、周囲の説得で翻意できる状態でないほど固かったのだろう。だからと言って施設側は面会制限を解除するわけにもいかない。そういう意味では施設・男性双方が思い悩んだ末の退所の決断だったのではないだろうか。
そしてその時点では、当事者本人も含めて誰もこんな悲劇の結末につながるとは思っていなかったはずである。そんな恐れや予測は不可能だ。
おそらく被害女性が退所したとされる施設の関係者もショックを受けていることだろう。担当者は特に悔しい思いをしているだろうが、過度な責任感を追わないようにしてほしいと願わざるを得ない。
ひとつだけ検証してほしいことは、面会制限に対するストレス対応がきちんと行われていたかどうかということである。(参照:施設を強制収容所に化す工夫のない面会制限)
参照記事にも書いているように、面会制限と非接触型の顔の見えるコミュニケーション対策はセットで行われるのが当然であると考えてほしい。これだけ長期間の制限にもかかわらず、その出口さえも見えないのだから、そうした対策を全くとっていない制限の継続は、虐待と同じレベルの人権軽視であるとさえいえるのである。
そして本件のような事件の教訓として、私たちは精神的なケアの対象とは、利用者のみならずその家族も含まれると考えるべきだ。面会を制限される家族にも、施設側が主体的かつ積極的にアプローチするべきである。
特に面会できない家族のうち、キーパーソンに対する定期的な施設からの情報発信・情報提供は必要不可欠である。それは個別情報として、広報誌などではなく、個別の非接触型コミュニケーションとして行われるべきであると考える。
どちらにしてもこんな悲劇が繰り返されてはいけない。しかし悲劇が繰り返されない決定的な処方箋などあろうはずがないのも事実だ。だからこそ私たちはできることを確実にしていく以外ない。
現時点で言えば、面会制限にともなうストレスチェックを早急に行うことだ。そのうえでその緩和策を考え得る限りとることだ。特に面会できない家族とのコミュニケーション機会を失わないように、不平や不満を施設側が積極的に受け入れる機会を創るように対策すべきではないだろうか。
それを行っていない施設の関係者は、この記事を読んだ後できるだけ早くその対策を講じていただきたい。
末尾になるが、亡くなられたお二人のご冥福を心より祈る。合掌。
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