9/28に行われた、「全世代型社会保障構築会議」で、政府は介護分野について、事業所の行政手続きの「原則デジタル化」を打ち出した。
事業所の指定申請、報酬請求、実地指導(運営指導)に関する書類について、国が定めた全国統一的な標準様式を用いることを、一定の拘束力を持たせた形で自治体などに要請していく。あわせて、今年度下期から段階的に運用を始める「電子申請・届出システム」を書類提出の手段とすることを原則化する。
書類の様式、提出方法などが自治体ごとにバラバラな状況を改め、介護現場の事務の効率化、生産性向上につなげる狙いがあるという。
このため9/29には厚労省から自治体あてに、「電子申請・届出システム」を実際に使っていくことを速やかに導入を要請する通知を発出した。
それに関連して、介護の書類に押印・署名はいらないので、一部の自治体で残っている事業所の指定申請、報酬請求などの押印欄も削除するように求めてもいる。
厚労省は遅くとも2025年度までには、この原則化に実効性を持たせる法令上の措置も講じる方針だそうである。(※ここまでは新聞報道の受け売り・・・。)
このことは介護事務の観点から言えば、介護事業者も歓迎すべきことだと思う。介護事務業務のデジタル化の当初は、慣れないシステム運用に戸惑うことがあったとしても、そのシステムが軌道に乗れば、アナログ業務よりずっと時間と労力を掛けずに、業務が流れていくと思う。
それは間違いなく介護事務業務の省力化・業務負担軽減にはつながると考えるし、大いに歓迎されることだとも思う。
介護事業者における事務担当者は、科学的介護情報システム(LIFE)への情報提出のための業務が増え、さらに3種類に増えた処遇改善加算の事務などの業務が加わり、大幅な業務負担増となっている。
にもかかわらず、介護職員ほど待遇は改善されていないという状況もある。そうした事務担当者の方々の負担が少しでも減ることは良いことだ。大いに推進してもらいたいと思う。
・・・がしかし、このことを、「介護職員の負担軽減、勤務環境の改善、人材の確保につなげたい考え。」としている点については異議を唱えたい。

なぜ介護事務負担の軽減が、介護職員の業務軽減や環境改善につながるんだ?そんなことはあり得ない。
国は介護事務の負担と、介護職員の業務負担をもっと明確に分けて考えてほしいと思う。
特に介護業務そのものではない、介護職員が担わねばならない事務負担というものにスポットを当てて考えてほしい。
例えば利用者同意の捺印や署名を廃止できたとしても、それを廃止する条件として、支援記録に同意した記録があればよいとするならば、その支援記録は誰が書くのかを考えなければならない。多くの介護事業者では、支援記録は介護職員が担当する記録とされているのだ。
LIFEへの情報提出にしても、入力作業は事務職が行うので、その作業のデジタル化や省力化を進めることは事務職員にとってありがたいことだが、そもそも入力事務担当者に、入力情報を手渡すのは、主に介護職員だ。
ADL情報はBIを測定する機能訓練指導員が事務担当者にデータをまとめて渡すとしても、認知症の状態は、関心・意欲の低下や意思疎通面の状態を情報提出することが求められているので、その情報はリアルタイムに利用者に接する介護職員がまとめて事務担当者に渡すことになる。つまりデータ提出作業がデジタル化されて、その作業が省力化されても、介護職員の負担は減ることにはならないのである。
さらに制度改正・報酬改定の度に新しい加算が増えて、その加算の算定要件をクリアしている証明として、ケアの実施記録が増えている。介護職員の事務作業負担は、書類削減・事務作業省力化の流れの中で、ちっとも減っていないのだ。
厚労省はこの現実をしっかりとらえてほしい。しかし事務作業の削減を、あたかも介護職員の事務作業削減と混同するかのような分析に終始している感がある。
それはまるで事務作業削減で、介護職の業務負担が減っていると自ら思い込んで、自己陶酔しているかのようだ。勘違いも甚だしい。
介護職員の業務を削減し、介護職員が働く環境をよりよくして、介護職を目指す人が増えるためには、今国が行っている事務作業削減方針は、何の意味もないことを理解したうえで、本気で介護職員の間接業務である、「記録」の削減に取り組んでいただきたい。
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