僕が大卒の22歳で初めて特養の仕事に就いた。しかしその当時の僕は、対人援助・高齢者介護についてはズブの素人だったといってよい。
勿論大学で社会福祉を専攻し、社会福祉やソーシャルワークについて専門的に学んで知識はそれなりに持っていた。
しかし実務経験もなく人生経験も浅い22歳の若造が、高齢者の方々の相談援助実務に長けているわけがなく、知識があっても技術が伴っていないのが当時の実情だった。
しかも就職した特養は、その年に新設オープンしたばかりの社福特養で、オープニングスタッフは看護職員を除いてほぼ全員実務経験のないスタッフだった。
特に僕はたった一人配置された相談援助職だったために、職場内で相談したり、アドバイスをくれたりする先輩もいなかった。
だから僕の相談援助実務の先生は、そこで暮らしている利用者の方々であった。失敗もたくさんする中で、特養利用者の方々に様々なことを教えていただいた。
そんな経験と実力のない僕に対しても、特養に住んでいた高齢者の方は温かく接してくれた。そしてほとんど実効性の上がらない支援しかできない僕に対して数多くの利用者が、「ありがとう」と声をかけてくださった。
僕にとってその時のありがとうは、お礼・感謝の言葉というより、励ましの言葉のように聞こえた。そしてその言葉が至極僕にとって耳触りがよかった。

利用者の方々が口にするありがとうは、本当に温かい言葉だった。
そんなふうに僕自身は他者の善意の行為に対して、「ありがとう」と素直に言える人間だろうか・・・残念ながらその言葉を口にすることができず、ありがたい気持ちを素直に表現できないことがすくなくない。
そのことを素直に反省したいと思う。そしてこれから先の人生では「ありがとう」という言葉を数多く口にできる人間でいたい。
今、多くの職場では新人職員さんが仕事を覚えている最中だと思う。先輩職員の皆さんは、そうした人たちに仕事を教えながら、時には叱ったり励ましたりしていることだろう。
だがその時、一つでも成果を上げたら温かい声をかけてほしい。「あなたのおかげで○○さんが、とても喜んでおられたよ。ありがとうね」と言ってあげるだけで、仕事に不安を持っていた新人職員さんが笑顔になることができる。温かい気持ちになることができるのだ。
ほとんどの新人さんが今、頑張っている最中だ。だからこそ「頑張ってね」は禁句にしてほしい。そのかわりに、「ありがとう」と言ってあげてほしい。
その温かい言葉によって、新人職員の方は希望が持てるだろう。そしてリタイヤすることなく、あなたの職場に定着し、将来人財として育ってくれるのではないだろうか。
ありがとうは温かい言葉であると同時に、希望の言葉だと信じてほしい。
だからどうぞ、ありがとうと言える人であってください。
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