2024年3月まで、身体拘束廃止規定が運営基準に明記されていたのは介護保険施設と短期入所系サービス及び多機能系サービスだけであった。

しかし2024年度(2023年4月〜)の基準改正で、訪問系サービス、通所系サービス、福祉用具貸与、特定福祉用具販売及び居宅介護支援の運営基準にも初めて身体拘束廃止規定が明記された。

また2006年度の介護報酬改定で初めて、「身体拘束廃止未実施減算」が設けられたが、その対象は介護保険3施設のみであった。

その後、2024年度の介護報酬改定時に、身体拘束廃止未実施減算は、短期入所系サービス及び多機能系サービスに拡大され、さらに2027年度の介護報酬改定では、その減算を訪問系・通所系のサービスに拡大することが決まっている。

このように身体的拘束等の適正化の推進の名の元、規制が強化されている背景には、未だに不適切な身体拘束実態がゼロになっていないという事実があるからだ。

全ての介護関係者はそのことを恥辱に感じて、身体拘束を限りなくゼロに近づける不断の努力を忘れてはならない。

さて前述したように2024年度の基準改正時に、居宅介護支援事業所の運営基準にも身体拘束廃止規定が設けられたわけであるが、それは以下の条文となっている。

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準・(保険給付の請求のための証明書の交付)
第十一条二の二指定居宅介護支援の提供に当たっては、当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない。
二の三 前号の身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。

確かに過去には、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、認知症のご夫婦を自宅に閉じ込めたという拘束事例はある。しかし居宅介護支援はケアマネジメント業務を主とする事業であって、利用者に対し直接的なサービス提供をするわけではないため、そうしたレアケースを除くと、居宅ケアマネが直接利用者の身体拘束に関わることはほとんどないだろう。

そうであるがゆえに居宅介護支援事業所が利用者の身体を拘束する恐れとは何を想定しているのかという疑問が生ずるのではないだろうか。

するとこの規定は、居宅介護支援事業所の情報ハブとしての役割を意識させようというものではないかと思う。身体拘束廃止は法令を護るために実現させるのではなく、人としての尊厳と権利を護るために実現せねばならないという意識の啓もうといっても良いのかもしれない。

例えば認知症の人で自宅にいるのに、「帰る」といって外に出ようとする人が、家族によって部屋に閉じ込められたりしているケースがある。その際に外に出ようとする理由を探って、落ち着いて外に出なくて済む対策を居宅サービス計画書として提案することで防止できる身体拘束もあるだろう。

また居宅サービス計画書に位置づけた、居宅サービス事業所内で何らかの理由で身体拘束が行われるケースには、ケアプラン上のリスク想定不足やサービス調整の不備が背景にあることが考えられる。

そのような情報連携不足により、本来防げる身体拘束を発生させるケースがないようにするため、居宅における身体拘束の状況やリスクをサービス担当者会議で検討し、通所・訪問サービスで身体拘束廃止に向けてできることがないかを検討することを求めているのではないだろうか。

このことに関連したセミナーを明日、9/10(木)14:00〜15:00に無料オンライン配信する。テーマは身体拘束・虐待防止研修〜在宅の「SOS」を見逃さない!チームで支える権利擁護と家族支援〜としており、居宅介護支援事業所のケアマネジャーとしての身体拘束廃止への取り組み、それを意識した居宅サービス計画書作成の視点を伝える予定だ。
身体拘束・虐待防止研修
在宅介護の現場で起こりうる身体拘束や虐待を早期に見つけ、家族支援と多職種連携で防ぐ実践策を、明日から役立つ形で解説するが、勿論、居宅ケアマネのみならず、居宅サービス事業所や介護保険施設・居住系施設のすべての職種の方々にも参考となる内容としている。

視聴後、即役に立つ多職種連携の実践策を伝えたいと思っている。事前申し込みは不要なのでポスター画像に掲載されているIDとパスコードでZoomに入室いただきたい。

60分という時間でコンパクトに内容をまとめているので、是非気軽に入室していただきたい。
ケアテック札幌看取り介護講演
※9/17(木)午後3時〜4時まで、アクセス札幌で行われているケアテック札幌の特設会場で、「すべての介護職に求められる看取り介護スキルとは〜どのように命と向き合い、どう支えるか〜」を行います。事前登録で無料入場できますので、是非会場までお越しください。
※メディカルサポネットの連載、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」の第21回連載記事が9/3に更新アップされました。
菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営〜Vol.21
今月のテーマは、「住宅型有料老人ホームの登録制という改正の影響〜ケアプラン有料化やみなし指定、生活相談員配置など制度改正の主要論点を解説〜」です。ぜひ参照ください。
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