介護保険制度改正の目玉は地域3区分であることは、このブログ記事で何度か指摘してきた。

このうち中山間・人口減少地域については、市町村が「特定地域」と指定して、その地域に対して介護保険サービスを提供する事業者の人員配置基準等を緩和する措置がとられることになっている。

このルール(特定地域サービス)を含めた改正介護保険法が19日、参議院本会議で可決・成立した。
特定地域サービス、特定地域居宅サービス等事業の創設
基準緩和される「特定地域サービス」については、認知症の人と家族の会が反対意見を盛り込んだ緊急要望書を提出していた。(参照認知症の人と家族の会が制度改正案に異議申し立て

この他5/20の衆議院・厚生労働委員会では、NPO法人「暮らしネット・えん」の小島美里代表理事が意見陳述を行い、「社会保険の原則を破壊する」・「労働環境のさらなる悪化を招く」と反対の声を挙げていた。

しかし6/16の参議院・厚生労働委員会では、早稲田大学の菊池馨実教授が、「医療と介護の複合ニーズを抱える高齢者、単身の高齢者らが増加し、多様かつ複雑な福祉ニーズが顕在化している」・「とりわけ中山間・人口減少地域では既に深刻な課題となっており、地域の実情に応じたサービス提供体制の構築や人材の確保が急務」と基準緩和に賛同の意見陳述を行っている。

このように反対・賛成の様々な意見が交差する中、国会ではさして審議もされずに改正案がすんなり成立した。さすれば特定地域サービスに対する反対意見陳述も、ただ単にガス抜きアリバイ作りの場でしかなかったことが明らかで、法案成立は既定路線であったことがわかる。

反対意見を述べた方は、サービスの質の低下や労働環境の悪化懸念の意見をお持ちであるようだが、では人口が減り続け、要介護高齢者が広い地域に点在して移動時間がかかる地域にまで隈なく介護支援の手を届ける手立てをお持ちかというとそうではないようだ。

国に手当てしろと叫ぶだけで、広い地域に少ない住民しかいない場所隅々に支援の手を差し伸べるための人材確保策は持っていない。それで今までのサービスを未来永劫維持しろというのは無茶だ。

現実には今以上に介護人材は確保が難しくなるため、人口減少地域の隅々まで行き届いた介護支援を届ける方策は存在しない。だから介護サービスの質が低下しようとも、人員配置等の基準を下げてサービスを維持しなければならない。

よって今回の特定地域ルールの導入はやむを得ない措置と言っても良いだろう。

だが菊池馨実教授の賛同意見も見込みは甘いと言わねばならない。なぜならこれによって特定地域の介護サービスが護られるかと言えば、そうならないからである。

人員配置を緩和して、包括報酬を選択できるようにしても、介護事業者から見ると特定地域は極めてコスパの悪いサービスエリアということになる。そうした地域から撤退する事業者も増えるだろうし、そうした地域で経営している事業者の廃業も増えるだろう。

よって特定地域サービスに賛成した人々、反対した人々、双方の思惑とは別個に厳しい情勢が日本社会に作られていくことになる。

そしてその解決策は見えておらず、人口減少地域に住み続けようとする要介護高齢者は野垂れ死にを選ばずを得なくなるだろう。(参照:高齢者が特定地域に住み続けるためには覚悟が必要になる仕組み

そういう意味では基準緩和はその結果に何も影響を与えず、特定地域サービスの是非論議は結局意味のない議論に終わることは間違いがない。

このように特定地域では明るい老後という言葉は、すでに死語と化し、暗い厳しい老後を強いられるのである。

それを解決するには、思い切った住み替え政策に舵を切るしかない。
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