2024年度の介護報酬改定と同時に行われた基準改正では、管理者の果たすべき役割を明確化したうえで、管理者がその責務を果たせる場合には、同一敷地内の事業所に限らず、他事業所の職務との兼務も可能とされた。

兼務する職種の数も特段制限はなく、管理業務に支障がないと判断すれば事業者裁量で兼務職種数も決定可能だ。

兼務が可能という意味は、兼務するすべての職種で常勤者とみなせるという意味であり、人材不足が加速する介護事業においては、配置基準を満たすことができなくなって経営を続けられなくなるリスクを回避できることにもつながる。

だがそれによって兼務を命じられた人々はどのような状態で働いているのだろう。

このことに関連して日本介護クラフトユニオン(NCCU)が今年4月に実施した「管理者の兼務に関する実態把握アンケート」を公開している。

それによると管理者以外の職種を兼務している管理者のうち、管理業務に「支障がある」とした割合は78.8%にも上っており、なおかつ所定労働時間内に業務が「収まらない」とした割合は77.6%にのぼっている。
兼務過多で疲弊する管理者
つまり、「管理者がその責務を果たせる場合」という兼務状況に疑問符がつく状態で他職種との兼務を行っている管理者が多いという実態が明らかにされているのだ。

主業務である管理業務がそのような状態だから、兼務した他事業所の職務等はもっと悲惨な状態ではないのか。兼務を強いられた管理者は、管理業務と兼務業務の両方で心身を削るように働き続けているとしたら、これはもう現代版強制労働そのものとしか言えない。

その状態はメンタルヘルスに大きな影響を与えかねず、一時的に一人の労働者を複数業務に兼務させることで業務を回しても、それによって当該労働者がメンタルヘルス不調に陥った場合、職場復帰はかなり困難になる。結果的にはそうした兼務は、労働力をさらに減らしかねないのである。

介護事業経営者は、そのことを十分に理解して、本当の意味で、「管理者がその責務を果たせる場合」・「管理業務に支障が出ない範囲」であることを確認したうえで兼務発令していただきたい。

そう考えると来年度の介護保険制度改正後の過重勤務状態が益々心配となる。「高齢者が特定地域に住み続けるためには覚悟が必要になる仕組み」でも指摘したが、来年度からは都道府県が定める「特定地域」では、事業所・施設の管理者や専門職らの人員配置基準、常勤・専従要件、夜勤要件などの緩和が認められる。

基準・要件緩和ということは、兼務がさらに広く認められるほか、今までより少ない従業員配置で今までと同じ仕事をし、今までと同じレベルの仕事の結果を求められるということだ。

それに耐えられ従業員は果たしてどれだけいるのだろうか。それは事実上無理ではないのか。

そう考えたとき、やはり特定地域特例は人材不足対策の切り札とは言えないように思う。人口減少する特定地域までくまなく介護サービスを提供することは、事実上不可能に思える。

要介護高齢者に対する医療・介護・福祉・住まいの供給資源が豊富な地域への住み替え政策が必要不可欠と考えるのである。
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