介護保険制度改正が3年ごとに行われているが、それは制度の持続性を担保するためのものである。

よって制度改正は必ずしも豊かな国民生活に結びつくものではない。

2027年4月〜の介護保険制度改正は今まで以上の大改正となり、どこに住んでいようと全国一律で等しく介護サービスを受けられるという今までの制度の根幹を覆して、地域によってサービスの質や価格に差ができて当然であると公言する改正でもある。

具体的には、中山間地域などの人口減少が著しい地域を、「特定地域」として、特例的な介護サービスを認める対象エリアと指定するのである。

結果的にそれらの特定地域に住む要介護高齢者等には、その地域で暮らし続けるために覚悟を求めることになる。
特定地域に要介護高齢者が住み続けるには覚悟が必要
なぜなら特定地域では、介護サービスを提供する職員の人員配置基準を緩めるからだ。そこではICT等を活用してサービスの質を保つように努力するというが、人に替わる介護ロボットが存在しない以上、介護サービスの質は低下せざるを得ないことは明らかだ。

それらの特定地域では、市町村が直接訪問介護や通所介護などの居宅サービスを提供できる「特定地域居宅サービス等事業」も実施可能となるが、それは従来の全国一律の保険給付から外れ、地域の実情に応じた柔軟な運営が可能となるとはいっても、介護保険サービスに似て非なる品質の低い介護サービスにならざるを得ない。

しかも特定地域に限って訪問介護の報酬算定構造を変更し、現行の出来高払いに加えて月額定額報酬を加え、事業者判断による選択制を導入する。これは人口が少なく事業効率の悪い地域を巡回する訪問介護の収益を少しでも高くして、事業継続を促す対策であるが、事業者が収益の高い報酬を選ぶ以上、これによって利用者負担は現在より重くなることは確実だ。

このように特定施設に住む要介護高齢者にとって、次期改正は豊かな暮らしどころか、暮らしを支える介護の質が低下するにも関わらず、利用料金は上がるというデメリットしか感じられない結果となるだろう。

そのことを懸念して、「暮らしている地域によって受けるサービスが違ってくるというのは、全国標準の保険としてあり得ない」とか、「必要な人材を確保するための施策に一段と力を注ぐことで、全国の高齢者への公平・平等な給付を維持すべきだ」という批判・反対の声が挙がっている。

それらの声を無視して改正法案を成立させる理由は、全国一律の人員配置が不可能なほど、労働力が不足するのが確実だからである。必要な人材を確保するための施策など実際には存在しないのである。

今月3日厚労省が公表した人口動態統計(概数)によると、昨年の日本人の出生数は過去最少を10年連続で更新し、合計特殊出生率も1.14(前年比0.01ポイント低下)となって過去最低を記録した。これによって少子化は国の想定より15年ほど早いペースで進んでいることもわかり、我が国の社会保障は、財源・人材面でさらに厳しい状況を迎えることになるのだ。

公費を主な収入源としてる介護事業は、社会保障の一翼を担う責任があるが、だからと言って収益を無視した経営は不可能だ。物価高や人件費高騰という状況の中で経営を続けるためには、相当な工夫をして収益を確保せねばならない。

それを考えると人口減少が進む特定地域に、くまなくサービスを届けようとしても、少ない要介護者が分散して移動距離も長くなり、介護事業者にとって収益が挙げられない状態に陥る。そうした地域から事業撤退しなければ経営が続けられなくなる恐れがあるために、それらの地域にサービス提供するメリットを与えねばならないとして特定地域特例は設けられたのである。

だからと言ってそれらの地域に対して介護サービスが十分供給されるかは不透明だ。特定地域特例でも収益がさほど挙がらないから、特定地域の介護サービスは先細りすると思われる。

だからこそ特定地域で暮らし続けるためには、介護サービスが十分届かず、届いたサービスも必ずしも質が高くないということを想定したうえで、それでもなおかつそこで暮らし続けようという覚悟が求められるのだ。

滞りなく必要な介護サービスを受けたいとか、利用するサービスの質を求めたいと考えるならば、介護サービスが十分に供給されて、選択肢が豊富な地域への住み替えを決断する必要があるのが、2027年度以降の日本社会であることを理解せねばならない。
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