介護保険法の理念の一つは「自立支援」であることは今更云うまでもない。

その理念を達成するための具体策が介護報酬改定や基準改正の度に見直されてきた。

そこでは自立支援と栄養状態の維持・改善が密接に関係するとして、適切な栄養補給を続けるために、経口からの食事摂取を続けられる対策がとられてきている。

しかし近年、経口からの食事摂取と栄養管理のためには、口腔状態を健全な状態に保つことが重要であるとする考えが重視されつつあり、高齢者のフレイル(虚弱)予防のために口腔機能向上に関する取り組みが不可欠であるとされている。
オーラルフレイル予防
事実としてオーラルフレイルの人は、身体的フレイル発症リスクが2.41倍に増加し、要介護認定も2.35倍高くなるというデータも発表されており、歯の本数が少なくなるほど認知症リスクが高まるというデータも示されている。

そのため利用者の健康を維持するには経口維持支援が欠かせないことが明らかとなっている。

そして正しい経口維持支援を行うには、介護職員だけでなく、看護師や栄養管理士、歯科医師やケアマネジャーなど多職種で食事場面を観察したり意見交換をしたりすることが重要であるとされている。

2024年度の介護報酬改定のテーマの一つも、「自立支援・重度化防止に向けた対応」が掲げられ、その中で口腔機能の維持・向上に関する加算が強化されている。

訪問系サービス及び短期入所系サービスでは、「口腔連携強化加算」(50単位/回)が新設され、特定施設入居者生活介護では、口腔衛生管理体制加算を廃止し、同加算の算定要件の取組を一定緩和した上で、基本サービスとして行う義務が課せられた。

また報酬改定と同時に行われた基準改正では、介護保険施設において、事業所の職員による適切な口腔管理等の実施と、歯科専門職による適切な口腔管理につなげる観点から、事業者に利用者の入所時及び入所後の定期的(1回/月)な口腔衛生状態・口腔機能の評価の実施が義務付けられた。

さらに通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、介護老
人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院については、リハビリテーション・個別機能訓練、口腔、栄養に係る一体的計画書の見直しが図られた。

このように口腔機能の維持・向上の取り組みは、今後の介護報酬改定等でも強化されていくことになる。そう考えると全ての介護事業者は、口腔機能の維持・向上に関連する加算をとり逃さずに取得していくことが必要になると考えてほしい。

毎月、利用者の口腔状態・口腔機能の評価が義務付けられた介護保険施設や特定施設については、利用者全員の口腔状態を清潔に保つ取り組みがより一層求められていることを理解し、毎日の口腔ケアの方法論を検証・見直しする必要があると思う。

その際には、「身体介護の自動化はどこまで可能か」で紹介した全自動歯ブラシを、口腔ケア支援が必要な人に対して利用することも検討入れてほしい。

介護保険施設では、一人の介護職員で20人程度の利用者の歯磨き支援を行わねばならないことも稀ではない。いずれ介護職は歯磨き支援の後遺症で腱鞘炎にでもなりかねない・・・そうした状況を考えると一般的な歯ブラシでは磨き残しなどが生じやすいことを考えて、口腔ケア・歯磨き支援は、電動歯ブラシを使って行うことを一般化させる必要もあると思う。あんなに便利で使える道具を使いこなしている介護施設があまりにも少ない。

この部分は介護施設の非常に遅れている部分でもある。こうした改革を行うことが、介護業務の省力化・介護生産性向上につながるのではないかと考えるのである。
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