間もなく暦は4月に変わろうとしている。全国の介護事業者が新卒の新人従業員を迎え入れる日が間近に迫っているが、迎え入れられる側の人々の心境はいかがなものだろう。

その日を控えて、この春に高校や専門学校・短大や大学を卒業した人は今、社会人として新たに旅立つ瞬間に向けて希望に胸を膨らませているのではないだろうか。勿論、不安な思いを抱えている人も少なくはないだろう。新しい環境に慣れて、自分が社会人としてのスキルを発揮できるかどうかと考えてしまうのは至極当たり前のことである。

しかしそれ以上に新たな旅立ちに向けて希望と期待を胸に抱いているのではないだろうか。かつての自分を思い出すと、そんなふうに思えてならない。

そんな新人職員にとって、指導担当者がどのよう人物で、どんなふうに指導・教育を行うのかということが重要となる。それは新人の将来を左右する問題にもなりかねない。

右も左もわからない新人に色を付けていくのが指導者であり、その色が美しい花のような色になるのか、どす黒い闇の色になるのかも指導職員の人格と指導法にかかってくるのである。

介護という職業はキラキラ物語で語れるほど甘くはないし重労働であり、汚いものや臭いものにも触れて処理しなければならない仕事でもある。

何より手を差し伸べる全てのサービス利用者が、差し伸べた手に対してポジティブな反応を返してくれるとは限らない。嫌だ・やめて・触るな・来るなと拒否的にしか反応できない利用者も少なくない。

良かれと思った行為に対し、感謝という報いがあるとは限らないのだ。

そのため介護という職業に対し抱いている自分の熱い思いや、誇りといったものが報われないことも多々あることだろう。そんなふうに身体的にも精神的にも辛く苦しい思いを抱きやすいのが介護という職業の一面でもある。
新卒者の教育指導
だからと言って、そうしたネガティブな一面を強調するだけで、介護という職業の使命も誇りも否定し、人を救い人の役に立つ仕事であるという思いを、「理想と現実は異なる」という言葉でつぶしていく指導者であってはならない。

辛く苦しい一面を乗り越えながら、真摯に利用者に向かい合った時、無表情だった認知症の人の穏やかな笑顔に出会うことができる。他者に対し攻撃的な言動に終始していた暴力的な高齢者が、ふとしたはずみで、「ありがとう」と口にする瞬間に出会うこともできる。

表面上見えなかった利用者の様々な心情に出会うことができるのが介護という職業である。だがそれはそうした心情を引き出すために真摯に対応した人だけしか出会うことができないものでもある。

だからこそ我々は、介護サービス利用者が顧客であるという意識を失わず、お客様に失礼のない態度で接することに終始し、お客様のニーズに沿うことに努めて、笑顔や幸福感を引き出すプロであらねばならないと思う。

明後日入職する新人に先輩職員が伝えなければならないのは、そういう介護の本質である。

その見本となるのが先輩職員・指導職員であらねばならない・・・そういう姿を見せられる自分であるかどうか、4/1を前に今一度振り返ってほしい。

残念なことではあるが、毎年短期間で元気を失って介護の場を去っていく新人職員が少なくない。介護の仕事が人の役に立つ仕事だと思っていたのに、そうではなかったと言って去っていく人たちは、短期間にどんな介護のあり様に幻滅を抱いたのだろうか・・・。

その一端に触れるのが言葉遣いの乱れである。新規で採用した職員が当初は丁寧語を使っていたのが、慣れてきて数カ月後には入居者の皆様に対してタメ口になっている姿があるとしたら、その原因は指導する側の先輩職員の言葉が乱れているからに他ならない。

そうした言葉の乱れはやがて、乱れた言葉を使う人自身の心の乱れに直結していく問題である。人の役に立つことがない介護を創り出しているのが乱れた言葉、乱れた態度である。

逆に、きちんと丁寧な接遇を行い、職員に日常的に接遇指導をしている場所では、サービスマナーが浸透している。そういう職場では、特段新人に対してサービスマナー教育を行わなくとも、OJTの中で丁寧な言葉遣いの指導がされて、接客から接遇への昇華が自然と行われていくことになる。

そういう事業者に就職した新人職員は、丁寧語で顧客である利用者に接することが、ごく当たり前の態度に思えるようになっているだけではなく、介護という職業が人にとって役に立っているという実感を得、仕事の使命を感じ取り、その仕事に誇りを持つ結果を得ている。

そうした介護事業者に運よく就職した新人は、短期間で介護の仕事を辞めるようなことはなく、定着し立派な指導者として成長していく人が少なくない。

どうかそういう職場を作ってほしい。自らの仕事ぶりが、介護という職業の使命と誇りを伝えられるものであるように自分を律してスキルアップしてほしい。
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