ケアマネジメントはソーシャルケースワークの1技法であり、介護支援専門員はケアマネジメントに長けた援助技術を持つと国が認めたソーシャルワーカーと云っても良い。

そのようなケアマネジャーの資格試験を受けるのに必要な実務経験の年数を、現行の5年から3年に短縮し、対象となる基礎資格を拡大し、診療放射線技師臨床検査技師臨床工学技士救急救命士公認心理師を新たに加えることが10/27の社保審・介護保険部会で大筋合意された。

新たに追加される基礎資格はすべて医療系資格。介護系資格より医療系資格が圧倒的に多いのだから、それは仕方のないところだと思うが、そこで懸念されるのはケアマネジメントという援助技術が、先祖返りして医学モデルへと後退してしまうことだ。

ご存じかとは思うがソーシャルワークは、医学モデルから生活モデルへと発達・発展してきたものである。
生活モデルのケアマネジメント
医学モデルとは、医学の診断・治療手順を土台として、利用者をパーソナリティに病理的問題を持つ治療の対象として捉えることに特徴をおいた手法だ。そのため利用者の過去から現在に至る生活歴等を診断評価することによって、自我の強化と人格の社会的適応を図ることが期待されていた。

つまり医学モデルの考え方では、障害によって生み出された障壁は個人の責任であり、治療によって社会に適応していかなければならなくなる。この考え方には自ずと無理と限界が生ずるのである。

こうした治療的側面のみを強調する医学モデルに対して、生活モデルは個人そのものに焦点をあて、個人を取り巻く環境にも関心を強めるという必要性を提唱し、個人だけでなく集団に対する援助についても総合的に考えるという立場に立つ考え方だ。それは人と環境の交互作用についてにも着目することに特徴がある。

例えば医学モデルでは、脳血管疾患による片麻痺を身体的欠損としての機能障害として捉え、それによる歩行障害を能力障害であるとして、それに対するニーズは何かという観点から、治療的方法(リハビリ等)をとる立場にあった。

しかしケアマネジメントの手法は生活モデルであり、高齢者のニーズを単なる機能障害とADLに関わるニーズとして捉えるのではなく、利用者がもつ社会的不利ハンデキャップ)という観点からもアプローチすることによって、生活障害としてその問題を捉えることに特徴がある。

つまり生活モデルは、要介護者がどのような家族環境や地域環境の中で生活し、障害が不利な状況になっていないのかという部分も生活課題の一つとして捉え、機能障害や環境によって障害が取り除かれるという改善がなくとも、家族や地域の環境を調整することで生活課題が改善できる可能性があるという視点を加えたものだ。

このように要介護高齢者の課題や障害はあくまで生活課題であり、生活障害であるという視点が重要なのだ。

特に加齢による廃用という自然摂理を起因とした生活課題の解決のためには、身体の自立を促すだけではなく、QOL(生活の質)を維持・向上させるための支援を適切に結びつけることも大事になる。

足腰の衰え、視覚や聴覚・味覚の減退は、ADLよりIADLの障害になって現れてくることが多いのだから、軽介護者に必要な家事支援を適切に結びつけることも生活維持・QOL向上には重要な視点である。医学モデルに偏ると、こうした生活援助を不必要かつ悪であるとみなしてしまう恐れさえある。

新たに基礎資格として加えられた専門家の方々が、こうした間違いを起こさないようにしてほしい。

というのも最近様々な福祉機器展で紹介されている、AI搭載のケアプラン作成支援ソフトのロジックが医学モデルに偏っているように思えてならないからである。

そのようなロジックでは、介護実践の場で使えるツールにはならないと懸念している。そしてそのロジックは、ここ数年まったく進化していない。それは医学モデルの限界の見本を示しているがごとくである。

最後になるが実務経験年数の見直し・・・5年を3年に短縮したが、なぜ実務経験が必要だという考え方から脱却できないのか。

実務が皆無ではスキル担保ができないとか、生活相談に応えるには人生経験が必要だとか屁理屈を唱えて実務経験をなくせないようだが、人の命を預かる看護師だって実務経験なしで患者対応し、専門学校を卒業したばかりの若い新人看護師が、患者の命の相談にのっているのである。

大学でソーシャルワークを専攻した若者が、ケアマネジメントを実践できないなて云うことはないのだ。そういう人々が社会人として旅立つ際に、ケアマネジメントの専門家としてスタートするチャンスを奪っているのが実務経験の縛りである。

このブログでは過去にも、「硬直脳では未来を語れず創れない」などを書いて論評しているが、そこから一歩も足を踏み出せない人々が、くだらない審議をしているのが介護保険部会であるとしか言いようがない。

制度がちっともよくならないのは、そういう審議会及び委員のせいであると言って過言ではないだろう。
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