厚労省は10/9に開かれた社会保障審議会・介護保険部会で、中山間・人口減少地域を対象に介護事業所・施設の人員配置基準などの特例を新設する提案を行った。
それによるとテクノロジーの活用や関係者間の連携体制を前提に、管理職や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件などを緩和できるようにするというものだ。さらに「中山間・人口減少地域」の範囲も広めて、今後都道府県が特定判断を下すことになる。
しかしこのような人員配置緩和は諸刃の刃だ。

いくらテクノロジーの活用や関係者間の連携体制整備を図っても、人員が削られた中で労働環境は厳しいものにならざるを得ないし、なおかつサービスの質も低下せざるを得ない。
仕事が今よりきつくなり、相談する相手も減る。
その中でサービスの質の低下が綻びを生み、介護事故発生の増加も懸念される。何より十分なケアを受けられない利用者の表情は乏しくなり、場合によってはそれらの利用者に我慢を強いる場面も生まれてくる。
介護の職業を通じて、人の役に立ちたいという動機づけを持つ人にとって、それは耐えがたいことになりかねない。
人員配置の緩和とは、このようにひとり一人の従業員の心身に大きく影響する問題である。
その結果そこで働きたいと思う人が減ることも懸念される。つまり人員準緩和地域は、さらに人材確保が難しくなるという負のループに陥る結果を招くと危惧せざるを得ない。
また、先日書いた地域差が介護価格差に・・・。で示した通り、中山間・人口減少地域の訪問サービスに対しては、今以上に保険収入を上げられるような対策も取ろうとしている。それは財源支出が増えるという意味でもある。
その財源はどこから捻出するのか?
そもそも我が国は人口が減り続けることがわかっている。中山間・人口減少地域は今よりもっと数が増えるのだ。そこに住む住民全てに介護保険サービスを届けるために、巨額の税金と保険料をかけることができるのだろうか。
そうできるに越したことはないが、それは極めて非現実的であるし、少子高齢化で今以上に財源が厳しくなる中で、それは理想論に過ぎないとも云えなくもない。
それよりもっとマシな政策はとれないものか・・・それは人口が減り続けている全市町村がコンパクトシティー化を目指して、病院や福祉・介護施設・居宅サービス事業所などを集約した地域に住民の住み替えを促進する政策だ。
つまり中山間・人口減少地域といった過疎地域にくまなくサービスを届けるのではなく、過疎地域をなくす対策だ。
勿論そのことに抵抗感を持つ人は少なくないだろう。先祖代々の墓所がある場所から離れ、故郷を捨てることは身を切る思いだろう。だがそうしないと解決できない問題があるのだ。
それは介護保険制度改正という範囲で議論できる問題ではなく、社会構造の変革という政治課題であるが、だからと言って社会保障審議会がこの問題に口をつぐんだままで良いわけがない。
制度改正でカバーできない少子高齢社会問題という視点から、厚労省を通じて政府や内閣に提言する姿勢があってしかるべきと思うのは僕だけだろうか・・・。
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