世は遷ろう。常に一つ処にとどまることなく、状況は刻一刻と変わり続けている。
我が国では国の政治の主導者が替わろうとしている。与党第一党の新総裁は初の女性。そのまま我が国初の女性首相となるのだろう。保守派の復活、アベノミクスへの回帰ということになるのだろうか。
そのことが私たち庶民の暮らしにどう影響するのだろう。だが過去を振り返っても、首相が交代したからと言って私たちの暮らしぶりが劇的に変わったということはなかったように思う・・・良い方にも悪い方にも。
ただ介護業界というくくりでいえば、政治方針の影響は多少及んでくるのだろう。
現首相は国会答弁などで介護現場の窮状に繰り返し理解を示していたし、「骨太の方針2025」には、介護職員の処遇改善を中心とする臨時の介護報酬改定の実施が示唆される内容が盛り込まれていた。
だがそれが形として具体化されたかと言えば首をかしげる。さらに現首相の就任後に福祉施策が充実したかと問われれば、そんな実感もない。
しかも厚労省の来年度予算の概算要求には介護職員の処遇改善の上乗せ以外の予算が計上されていない。さすれば来年度は介護報酬の期中改定(※定時改定以外の時期の臨時の報酬改定)が行われたとしても、物価高に対応するような報酬改定にはならないのではないかという疑念が生じていた。
しかし10/4に自民党新総裁に選出された高市早苗氏は、総裁就任後の即日会見で医療・介護政策について次のように言及している。

「少し急がなければならないのは、病院、それから介護施設が今かなり大変な状況になっている」・「多くの病院が深刻な赤字で、介護事業所の倒産も過去最多となった。診療報酬改定は来年度にあるが、効果が現れるのは少し先になる。介護報酬は改定年がまだ先で、これらは待っていられない。ここは補正予算を使わせていただいて、できる支援を検討していきたい」
介護職員の処遇改善のみならず、介護事業経営にとって厳しい状況であることに対応することを示唆した発言ともいえる。しかも積極財政派である新総裁の政治姿勢を考えると、財務省の財政抑制策とは一線を画した政策実現が図られる可能性もあり、それが物価高対応を含めた介護報酬の期中改定につながる可能性もあるとして、介護事業経営者などにとって希望が持てる内容ではないのか。
ところで少数与党として高市自民党政権が今後連携を図るべき野党を考えた場合、新首相とタッグを組める政党は国民民主党以外には考えられないのではないだろうか?維新の会との連立はハードルが高いと思う。(※公明党との連立を維持するかは不透明。)
ただ国民民主党とは連立を組むのではなく、閣外協力ということになるんではないか。どちらにしても今後の政策には国民民主党の介護政策が大きく影響してくる可能性がある。そこで公にされている国民民主党の介護政策に注目が集まる。
介護保険財源については「国庫負担の引き上げを検討」、介護保険制度については、「地域支援事業に移管された要支援高齢者向けのサービスをもう一度保険給付の対象に戻すことを目指し、要介護1、2の生活援助サービスを削減することがないよう、現行制度を維持」・「全ての介護職員の賃金を全産業平均の水準に引き上げる」とされており、この大部分は介護事業関係者にとって耳障りの良いものではないだろうか。
これらが今後どう影響してくるのか気になるところだ。
とはいっても政権交代等で与党になった途端に、野党時代に掲げていた政権公約の健忘症に陥る政党が多いのも事実だ。
ということで、しばらくは政権構造がどうなって来年度予算にそれがどのように影響するかに目が離せない。
※メディカルサポネットの連載、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」の第10回連載がアップされました。

今回のテーマは、「病床削減と入院期間短縮施策に向けた介護事業経営」です。是非参照ください。
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