令和4年(2022年)12月20日に発出された、「介護保険制度改正の見直しに関する意見」には、要介護1と2の訪問・通所介護の地域支援事業化と居宅介護支援費の自己負担導入について、「第10期計画期間の開始までの間に、結論を出すことが適当である」と記されている。
第10期計画期間とは2027年度からの3年間を指すのだから、その開始前=2027年3月までに結論を出すという意味になる。
このことに関連して今週月曜日(9/29)に行われた社保審・介護保険部会では、要介護1と2の訪問・通所介護の総合事業化と居宅介護支援費の自己負担導入議論が開始された。両案とも賛否入り乱れ、特に軽度者の訪問・通所介護の地域支援事業化については、「給付はずし」であるとして激しい反発の声が挙がった。
両案とも最終的な判断は、今秋に誕生する新たな政権の枠組みが年内に下すことになるとされており、2027年3月を待たずに結論が示されるようだ。
結論を急ぐ意味は、両案を認めされて財源を確保したうえで、次期報酬改定議論につなげようというものだろう。特に次期介護報酬改定で実現の声が高まっている介護支援専門員の処遇改善については、居宅介護支援費の自己負担導入と紐づけして考えられていることが大きな要素となっている。

だが時はもう10月・・・あと3月足らずで賛否両論が飛び交うこの議論に結論が出るのだろうか。
そのような心配はいらないのだろう。なぜなら介護保険部会はガス抜きの言いっぱなし会議に過ぎず、水面下で担当役人と関係諸団体間で既にこの是非が話し合われ、ある程度の方向付けがされていると思われる。そのため今年の年末までにいきなり結論が示される可能性が高い。
関係者にとっては、歓迎できないクリスマスプレゼントとなるだろう。
このことに関しては、僕が管理する介護福祉情報掲示板でも、「居宅介護支援費自己負担導入議論始まる〜皆さんはどう思われますか?」というスレッドを建て、そこに様々な意見が書き込まれているので参照してほしい。
ところで居宅介護支援費の自己負担導入議論の度に云われることだが、他サービスに自己負担があるのに、居宅介護支援費だけ全額給付なのはおかしいという意見がある。
その経緯を知らない人が多くなったので、居宅介護支援費だけ自己負担がないのかという理由を改めて解説したい。
もともと厚労省は、介護保険サービスについてはここの利用者のニーズに即して計画的に利用することが自立支援につながり、過剰な財源支出も防ぐことにつながると考えた。
その為、居宅介護支援事業というケアマネジメント専門機関を創設し、介護支援専門員(ケアマネジャー)という新たな資格を生み出し、計画的に介護サービスを利用する仕組みを考えた。
ところが居宅介護支援事業所も介護支援専門員も、それまで存在しなかったことから、サービス利用時に居宅サービス計画作成を義務付けすることはエビデンスに欠けるとして見送られた経緯がある。
その為、居宅サービス計画はサービス提供の条件ではなく、償還払いサービスを現物給付化する手段としてしか位置づけられなかったのである。(※施設サービス計画書については、従前も個別処遇計画によってサービス提供していた経緯から、エビデンスがあるとしてサービス提供の要件とされた)
このように本来はサービス利用の要件としたかった居宅サービス計画であるが、それはできなかったものの、多くのサービス利用者が現物給付を望むことが予測され、その条件が居宅介護支援である以上、それは居宅サービスを利用するためには必然に近いサービスと考えられ、利用者に自己負担させるのはそぐわないとされたものである。
実際にサービス利用する居宅サービスと、居宅サービスを利用するために、そのサービスを現物給付化するために利用する居宅介護支援とは全く性格が違うサービスであるとして、居宅介護支援は全額保険給付としたものである。
(※現物給付とはサービス利用時に自己負担分だけ事業者に支払って利用できる方法)
以上のことも踏まえおいて、ケアプラン有料化議論は展開されなければならない。
※メディカルサポネットの連載、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」の第10回連載がアップされました。

今回のテーマは、「病床削減と入院期間短縮施策に向けた介護事業経営」です。是非参照ください。
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