介護人材不足が叫ばれて久しい介護業界。それでも介護保険制度が始まった2000年から2022年までは、毎年介護職員の数は前年より増加し続けていた。
ところが2023年10月10日現在の介護事業者に所属する介護職員数が約212.6万人となり、前年比で2.9万人減少したと、昨年12/25に厚労省が発表した・・・介護関係者にとっては、なんともショックで哀しいクリスマスプレゼントとなったわけである。
全産業で労働力不足が叫ばれている我が国の現状から考えると、介護職員数減という状況が劇的に改善される見込みはない。そのような中で要介護者数は2042年頃まで増え続けるのである。
その為、介護DXの推進により生産性向上が急がれる介護事業である。
(※介護DXとは、介護の仕事もICTやAIロボットを活用した新しい形を模索するという意味)
だが人の手に替わることができない部分が多い介護の仕事では、テクノロジーを導入するだけだと生産性向上の効果はあまり期待できない。
その為、仕事の流れを見直して、どの部分にムリ・ムダ・ムラがあるかを洗い出す5S運動が介護生産性向上の肝になる。
5S運動とは、今さら言うまでもなく整理・整頓・清潔・掃除・躾のことである。
介護業務を気持ちよく行うためには、介護支援の場を清潔に保つために掃除を習慣づける躾は重要である。それだけではなく介護職の仕事もきちんと整理整頓して、介護職には専門職でなければできない仕事に注力させるために、バックオフィスでできる仕事は、そちらに回していくという考え方が必要だ。
しかし生産性向上を優先するあまりに、従業員の働く環境が悪化すれば従業員は定着しない。介護生産性向上の最たるものは、介護スキルの高い職員が定着し、後進を育てながら質の高いサービスを利用者に提供することなのだから、働きやすい職場環境の向上は欠かすことができない要素である。
そうした視点から5S活動を考えたとき、例えば会議室に集まって行う話し合いはやめるということも必要になる。特に広域型の介護施設など、職場面積が広ければ広いほど、介護のために集まる時間がかかってしまうことになる。それは非常に無駄な時間だ。だからこそリモート会議のための環境・設備を整え、どうしても必要な会議・話し合いは、介護実務の場から離れずに行うという意識改革も必要だ。
そのような会議が習慣化すると、従業員専用の会議室が要らなくなる。

そこを従業員専用のラウンジに改装して、無料のフリードリンクサーバなどを設置し、休み時間に従業員がゆっくりとくつろぐことのできる空間を創ることが重要だ。
かつての介護施設等は、従業員が昼食をとる場所もなく、休み時間に慌ただしく利用者の生活空間で食事を摂るということが当たり前であり、その際には利用者対応も同時に行わねばならないことが多々あった。そのため十分な休息時間を取ることが難しかったり、はばかられたりした。
今後の介護事業者では、そのような環境で人材が張り付くことも定着することもないと云える。
休み時間は従業員専用ラウンジでゆっくりとくつろぎ十分な休息をとって、休み時間を終えたらパフォーマンスの高い仕事をするというスタイルが望ましい。
そういう空間があることで従業員の心に余裕も生まれ、休み時間に従業員同士で話が弾んだ結果、介護サービスの質の向上につながるアイディアも生まれるという可能性だって考えられる。
介護事業経営者は、こうした空間づくりは将来的に必要不可欠になると考えて、ここに投資すべきだ。それが人材確保と定着の近道となり得るのである。
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