介護事業者に所属する従業員の中に、外国人人材(以下、外国人材と略)が混じっていることは、もう珍しくはなくなった。
というより外国人材の採用なしに、事業展開や人員配置を考えられなくなっている地域も少なくない。
外国人材の母国は、フィリピン・インドネシア・ミャンマー・ベトナム・モンゴルなど様々であり、それぞれの送り出し国によって来日する人の特徴や事情にもお国柄が反映してくるようだ。
生活習慣や価値観が違った国からやってくる人々は、日本の常識に戸惑ったり驚いたりする場面も多く、そのことを受け入れられずに介護の仕事から離れる人も居る。しかも外国人材の離職理由は、「介護以外の職種への転職」が最も多く、過去5年間で52.1%を占めていることが分かっており、介護人材の他産業への流出につながっているのだ。
そのことをできるだけ防ぐために受け入れ側の介護事業所は、あらかじめそうした文化の違いに配慮して、来日した外国人材の方々が何に戸惑っているのかを把握し、心理的なフォローをしていく必要がある。
例えば看取り介護に対する意識の差が外国人を戸惑わせることも少なくない。

先日大阪市で看取り介護講演を行ったが、そこでは「白寿祝いを早めた理由」で紹介した看取り介護のケース紹介を行った。
文字リンクを貼ったこの記事には次のような解説をつけている。『看取り介護とは、密室で行われてはならず、どのように施設の中で看取られているのかということが、第3者にも見える形が望ましい。しかし利用者自身が、「看取り介護の対象となっている」ということを認識しているとは限らないし、死の告知そのものである、「看取り介護の告知」をしないケースも多いために、終末期であるということを本人には知らせていないということを共通理解して関わらねばならないことがある。』
つまり記事で紹介した99歳の誕生日を目前に看取り介護となった対象者の方には、ご自身が回復不能の終末期であるという告知を行っていないのである。
ところが同研修を受講していた東南アジア出身の方が、終末期を迎えている当事者に、その告知を行わずに周囲の関係者のみがそのことを知っていることが疑問であり、理解できなかったようであった。
紹介ケースで当事者に告知を行っていない理由は、それが本人の希望だからである。
紹介ケースは、僕が総合施設長を務めていた特養で行った看取り介護であったが、当該施設では、「終活は人生を豊かに生きるために存在する活動」で紹介しているように、全ての入所者の方から、「延命に関する宣言書」という名の書式を用いて、終末期の希望確認をしている。(※意思疎通が困難などの事情で、本人からの意思確認ができない場合は、家族等によって本人の推定意思を記載していただくようにしている)
当該ケースで看取り介護対象となった方は、「自分が終末期になっても、そのことを知らせないでほしい」と希望されていた方である。
がん末期などの終末期に告知を受けることが当たり前という国から来日した外国人の中には、そうした希望を持ったり、口にしたりすること自体が信じられない人も居る。
しかし日本で終末期告知が当たり前に行われるようになったのは、2000年前後からのことである。
それ以前は、「終末期の告知は恐怖や悲嘆感につながるので、本人が可哀想だから行わない」ということが当たり前に考えられていたのである。
そして明治・大正生まれの人のみならず、昭和の前半に生まれた人の中には、「告知は受けたくない」と考えている人が少なくないのだ。そういう日本的事情も、我が国の文化として外国人の方に伝える必要があると思った。
幸い当日の研修で疑問を抱いていた方は懇親会に参加して質問してくれたので、そのことに対して丁寧に説明して理解を得ることができた。
今後の講演でも、そのような疑問を抱く外国人の方が混じっていることを意識して話をするように心がけたいと思う。
外国人材の方々が活躍している職場の経営者や管理職の皆さんにも、是非そうした意識差があることを理解して、日ごろから丁寧なコミュニケーションに心掛け、疑問点を洗い出して説明するということを心掛けてもらいたい。
間違ってはならないことは意識の差は、双方が歩み寄って埋めるのではないということだ。日本という国で、介護事業者という組織の中で意識差を整えるものは、「規範(ルール)」であることを肝に銘じて指導しなければならない。
その為に丁寧な説明が必要不可欠なのである。そうしないと外国人材は介護事業者に定着していかない。
※メディカルサポネットの連載・菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営の第9回更新記事は、「介護生産性向上のための人材活用と業務改革」をテーマに9/1更新アップされています。

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