介護事業は介護サービスを利用する方々の福祉の向上を目指す仕事であり、福祉の向上とは自立支援・生活の質(QOL)の向上という形で具現化されるとしている。
その目的を達するための必要最低条件は、介護サービスは安全かつ適切に提供されなければならないということだ。目的達成のために利用者が不安を抱いたり、危険に向き合うようなサービスのあり様は完全に否定されなければならない。
介護という職業は人と人とが相対して成立する仕事であり、支援者の感情と利用者の感情が交差する職業である。だからこそ支援者は利用者の感情に配慮する必要があり、利用者が発する言葉を聴くだけではなく、表情を見つめ・読み取り、心の声を聴きながら配慮するという心構えが必要だ。
それができない介護は、求められる介護ではない。
そんなふうにして利用者の心身の安全を護りながら、必要な支援に結びつける職業が介護なのである。

当然そうなるとリスクマネジメントも重要になる。事故なく安心して介護事業が展開できる環境整備は、最大限の努力を傾けて実現せねばならない。
そのためには正しい専門知識を身に着け、その知識を根拠にした対応も必要となる。例えば、「疾病の正しい理解が不可欠になるケアサービス」で指摘したように、糖尿病の方に関して言えば、血糖値管理は必須であり、そのための食事制限も不可欠になる。他の人と提供されるおやつが異なることを可哀想と感じて、その感情のままに食事制限をやめてしまった人が、悲惨な死に方でこの世を去るとしたら、その罪は重大かつ取り返しのつかないものとなる。
このようなやむを得ない制限は、リスクマネジメント上必要不可欠だ。だからといってなにもかもリスクと捉え、排除の論理を適用すればよいというものでもない。
コロナ禍で許された様々な制限・・・介護保険施設や居住系施設における長期間にわたる外出・面会制限は、コロナ禍という特殊な状態でこそ許されたものだ。
未だに新型コロナウイルス感染症はなくなっておらず、クラスター感染は未だに脅威ではあるが、だからといってそれを理由に長期的な外出・面会制限を未だに解かずに続けていることが許されるわけがない。それは利用者の外出する権利や面会する権利の侵害行為以外の何ものでもない。
主介護者のレスパイトケアのために短期入所生活介護を利用した方が、歩行時にふらつきがあるという理由で、転倒予防と称してショート利用中に歩行機会が極端に減らされ、その結果下肢筋力がさらに低下し歩けなくなり、ショート利用後の在宅生活では、ショート利用以前より主介護者の介護負担が増加したという笑えない話も実話として存在する。
そもそも身の安全だけを考えれば、それはきりがなくなるもので、世の中のすべてのリスクから身を避けて暮らすことができる日常など存在しないのである。
日常の暮らしを護りながら、その暮らしぶりを過度に制限しないでリスクマネジメントを行うという対人援助のプロとしての思考が求められるのだ。
先日も僕が管理する介護福祉情報掲示板に、「高齢者施設での小さな子供の面会のリスクについて」というスレッドが建てられた。
質問者は決して行き過ぎたリスクマネジメントを行なおうという意図はなかったとコメントしているが、小さな子供が走り回って認知症の人などとぶつかってしまうリスクをどう管理しようなどという質問をネット上に投げかけること自体が煮詰まってしまっている考え方としか思えない。
介護施設には杖歩行の人もいて、走り回ってぶつかれば事故につながるのは明白なのだから、そのことは事前に注意事項として規則を護るように促せばよいだけの話だ。ネット掲示板で侃々諤々の議論となるような問題ではない。小さな子供の面会制限もやむ無しなんていう議論になるわけがないのである。そういう意味では、当たり前のことを当たり前に考えられなくなっているとしか思えない。
どちらにしても安全の影に、利用者の暮らしが隠されてしまうような施設経営は、施設を密室化し、ブラックボックス化するだけの不適切経営でしかない。
リスクマネジメントも重要だが、それにも増して人権をどのように護るのかが問われ、そのことが論じられる必要があると思う。
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感動の完結編。
