地域包括ケアシステムは永遠に完成しないそうである。
8/21に行われた医療経済機構のオープンセミナーで、こう発言したのは田中 滋 氏(現・埼玉県立大学理事長)である。
田中氏と言えば厚生労働省社会保障審議会委員などを歴任して、地域包括ケアシステム研究の第一人者と言われているから、その発言は決して軽くない。
そうした人の当日の発言内容は、地域包括ケアシステムとは社会環境の変化を見極めながら継続的に更新し、一段と進化させていくものであり、「地域包括ケアシステムは常に構築中」という意味になるという。そして今後は85歳以上の高齢者や1人暮らしの世帯がさらに増加することに対応して、掃除や洗濯、買い物、移動といった日常生活の支援、地域とのつながりをどう確保するかが課題になるとしている。
なるほど・・・介護保険制度改正のテーマとして常に、地域包括ケアシステムの構築〜深化が掲げられているが、田中氏の言を基にすれば、このテーマはエンドレスということになるだろう。
地域包括支援センターが設立されたのは2006年だから、それから19年を経た今も地域包括ケアシステムは発展途上であることも当然ということなのだろう。
そしてそのことはネガティブな意味ではなく、地域の人々の暮らしぶりにあわせて常に進化と深化を続け、リアルタイムで暮らしにマッチした支援システムが提供され続けるという意味になる。
それはまことに結構なことだ・・・。

だが本当に地域包括ケアシステムは社会環境の変化に応じて深化し続けているのであろうか。そもそも自分の身の回りに地域包括ケアシステムなるものが存在することを実感している人はどれほどいるのだろう・・・。
僕は住む登別市では、社会福祉協議会が「登別市地域福祉実践計画(愛称:きずな計画)」を策定しているそうである・・・しかし介護事業の専門家と云われ、国の介護政策の裏事情にも通じている僕であっても、その内容を全く知っていない。幻のきずな計画が、社協内で関係者だけが共有しているという状態で、それは市民にとって何の意味もないものだ。
登別市の介護保険サービスにしても、横出し給付も上乗せ給付も行っていない。国の方針に沿って介護保険施策を運用しているだけで、地域事情に沿ったサービスも、市民目線からのサービスも存在しないのだ。
地域密着型サービスにしても、権限と責任が国から市に丸投げされただけで、市独自の方策がそこに加わっているという事実もない。
この状態が地域包括ケアシステムが構築されている最中と言ってよいだろうか。それは違うと思う。もっと市民が参加して、市民目線の介護サービス等を創り出す活動をしなければならないと思う。
日本というこの国で、今年1月から6月に自宅で1人で亡くなった65歳以上の高齢者は、3万1525人で、そのうち死後8日以上で発見された高齢者は8353人にのぼったそうである。ひとり暮らしの高齢者が増える我が国では、こうした孤独死を迎える人がさらに増える
地域包括ケアシステムの目的の一つは、こうした孤独死ができるだけ起きないようにするとともに、孤独死した場合も、出来るだけ早くその状態を発見する福祉を実現することである。
隣人の存在を死臭によってはじめて知るような社会にしてはならないのだ。その為には地域包括支援センターの職員が、センターのデスクに張り付いている状態を造らず、地域に足を運んでどんな人々がそこで暮らしているのかを肌で感じる必要がある。
地域包括支援センターの関係者の方々は、是非そうした視点を持っていただきたいと心から願うのである。
※メディカルサポネットの連載・菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営の第9回更新記事は、「介護生産性向上のための人材活用と業務改革」をテーマに9/1更新アップされています。

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