昨日(6/29)、東京・台東区のグループホームで入居する認知症の女性に性的暴行を加え、その様子をスマートフォンで撮影したとして、介護福祉士・鳥居高広容疑者(50歳)が逮捕された。
容疑者のスマホからこの女性を撮影した20本の動画が見つかり、逮捕に至ったそうだ。なんとも変態趣味である。
女性とはいえ、自分よりはるか年上の高齢者に・・・しかも職業として関わる介護サービス利用者に対して、性的欲求を向けること自体が理解できることではないが、人としてあるまじき行為であることは間違いがない。
介護支援の場で、しかも密室ともなり得る居住系施設で1対1で対応する介護職員が、このような暗い欲望を持ち、その欲望を行動に現すような下劣な人間であるとしたら、利用者やその家族は何を信じたらよいかわからなくなる。
大多数のまじめに仕事をしている介護職員にとっても迷惑極まりない事件であり、容疑者に対し許せないという感情を持つ人も少なくないだろう。
昨日からインターネット等に、同容疑者が手錠をはめられて移送される動画が出回り、その動画には顔もアップで写されているが、その容姿を見て50歳だとはとても思えないという声も多い。

悪行を重ねた結果が、悪相となり実年齢より年取った姿に変えているのだろうか・・・。
取り調べに対して鳥居容疑者は「ストレス解消のため性的嫌がらせをしたが一部違う部分がある」と供述しているそうである。一部否認と言っても、性的暴行自体は認めているわけである。
それにしてもストレスを犯行動機とするのは、あまりにも卑怯な言い訳だと思う。ストレスは誰もが抱える可能性があるが、そのはけ口を利用者虐待という形に求めることは、当然でもなければ、よくあることでもない。
ストレスを抱える多くの対人援助のプロは、ストレスのはけ口を利用者に向けることはないのである。
介護事業経営者や管理職の方々は、本件を対岸の火事として見ることなく、自分の経営・管理母体にこのような人物が混じっていたらどうなるだろうかと考えてほしい。こうした事件は犯人が逮捕されて終わりではなく、事業主体の管理責任も問われて、多額な賠償金支払いにもつながりかねなくなる。
だからこそ、対人援助のプロとして利用者に接する心得を徹底的に教え込む、実効性のあるサービスマナー教育が不可欠なのだ。
特に人材が不足している中で、要介護高齢者の数は増え続けている現在、介護事業はまだまだ成長産業だとして規模拡大を図っている介護事業者が少なくない。それは良いとして、そこにきちんと利用者の福祉を向上させる教育が伴っているかということが問題だ。
それがおなざりにされておれば、メッセージの轍を踏んで、この業界から退場しなければならなくなる恐れもあるのだ。
今、介護業界は物価高や人件費高騰に対応した介護報酬の期中改定を求めて盛んに運動している。そして骨太の改革2025にその方針が示されたことで、期中改定の期待が高まっている。(参照:期中改定について)
しかし介護事業者における虐待事件や不適切ケアが起こることによって、国民から介護事業に国費と保険料財源を支出することの反対意見が挙がり、それが期中改定の足枷にもなりかねないことを懸念して、先日CBニュースの連載記事・快筆乱麻masaが読み解く介護の今に、「信頼を失いかねない介護事業での人権侵害」という原稿を書いて入稿した。

その記事が今朝6/30にアップされている。
台東区のGHでの性的暴行事件が起きる前に書いた記事であるが、僕の懸念が現実化しないことを祈るばかりである。
ところで本件が起きたGHでは今月上旬、別の入居者が死亡していて、警視庁が捜査の過程で職員らにスマホの任意提出を求めているそうであるが、そちらも事件化されるのかどうか注目されることである・・・だがそんなことばかりが注目される介護事業であってはならないのである。
人を護り、暮らしの質を豊かにする介護の基盤は、対人援助のプロとして、顧客に対するサービスマナー意識をもって接する態度であることを忘れてはならない。
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