介護関係者の中に、介護保険制度改正はこの制度を進化・成熟させるものだと勘違いしている人がいる。
制度改正はこの制度の持続可能性を高めるために行っているものでしかなく、そこで重視されることは限られた財源をより必要はところに重点的に手当てすることである。
2021年の改正以降は、人材が足りなくなる対策として生産性をいかに向上できるかという視点から、その方法を創り出すために費用をかけている。LIFE(科学的介護情報システム)に関連した加算や、生産性向上寿司新体制加算の新設されたこともその一環だ。
すなわち制度改正は、制度を持続させる目的を第一としており、必ずしも国民や介護関係者が望むものにはならない。むしろそれは国民の痛みを伴うものでもある。
現に介護保険制度が創設された後に、予防給付が新設追加された意味は、介護予防推進力が強化されたわけではなく、介護給付より少ない財源支出サービスを新設したという意味にしか過ぎない。国民にとってそれは給付抑制策と言って過言ではないのだ。

よって介護保険部会で厚労省が新たに提案する方策が、すべて国民や介護事業者にとって、明るい未来につながると考えるのは大きな間違いである。
だがその間違った考え方にどっぷりと浸かって、国の罠にはまっている専門家も少なくない。その為、制度改正策の一環として打ち出された、要介護認定一次判定ソフトの改正案についても、ソフトが更新されれば、より正確な判定につながると無批判に賛同する関係者が多くなるのである。
それがいかに間違った考え方であり、むしろ国民にとって不利益となる可能性が高いことについては、介護認定一次判定の見直しは必要なのか?という記事を書いて警告しているところである。
ケアマネをはじめとして対人援助のプロなら、国が敷いたレールに乗ることばかり考えずに、この国の介護事業というものがどうあるべきかという理念を思い浮かべ、その理念を果たすべき実践論を創り出す気概を持ってほしい。
その為には、時には国が打ち出した政策を打ち砕く覚悟も持っていてほしい。国の政策を喧伝し、その方向に世論を誘導するような提灯記事しか書かないマスゴミをきちんと見分けて、そのプロパガンダに乗るようなことがないようにしてほしい。
対人援助のプロたる者に求められるソーシャルアクションとは、己の利害や所属組織の利害を超えて、援助を受ける人々に真に必要となる光を追求することだ。
それは己(おのれ)の心の目を見開いて、己自身が見つけ出さねばならないものである。
官僚やマスゴミには見えない光を、私たちが見つけ出さねばこの世は闇である。
※CBニュースの連載記事・快筆乱麻masaが読み解く介護の今(114)が6/30更新アップされました。

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