今月2日の社会保障審議会介護保険部会で、厚労省が介護認定の一次判定内容の見直しを検討するための調査を行うと決めたことが明らかにされた。

このことについてあるアンケート調査では、現役ケアマネの7割近くが一次判定見直しに賛同したとの報道がある。

しかし本当にそんな必要があるだろうか・・・。

15年以上同じ基準で判断している状態をおかしいという人がいる。しかしさして問題のない基準なら、その継続期間は決して長くない。むしろ介護状態区分という介護サービスの提供量に影響する基準が、数年ごとに変わる方が問題だ。

暮らしの変化と基準がマッチしなくなっているという明確な理由があるなら変更は必要だろう。確かに人の暮らしぶりはここ数年で大きく変わっているが、心身の状態判断とその変化はどの程度連動しているというのだろう。

2023年10月〜ケアマネジャーが行う課題分析標準項目変更が行われたが、ここではコミュニケーションツールが進化し、要介護高齢者でもPCやタブレットが使いこなせる点や、病識の有無などが追加されている。しかし要介護状態に大きく影響する変更にはなっていないように感じる。

現行の一次判定ソフトが、認知症の方の介護の手間が反映しにくいという意見もあるが、現行ソフトに改正前の旧ソフトでも同じ点が指摘され、現行ソフトはそれに対応したものであると云われている。それも不十分だとしても、新ソフトでそれが改善されるとは限らない。むしろその部分は2次判定でしっかり審査することを徹底すべきではないのか。

さらに現行ソフトは、独居について手間が反映されていないという。独居で頑張ってできていることは介護の手間ではないから、この部分は新ソフトになっても変更ないと思われる。

心疾患、肺疾患が軽度判定になりやすいという意見もあるが、そもそも介護認定に疾患は関係しない。心疾患や肺疾患で運動機能が落ちているというなら、特記事項にしっかりそのことを書いておけば2次判定で拾うことができる・・・それは20年以上介護認定審査委員を務めている僕自身が言い切れることだ。

そもそも一次判定ソフトの見直しを検討すると厚労省が表明した6/2以前に、現行一次判定ソフトの問題がどこかで取り上げられていたというのだろうか・・・いいや、そのような声はほとんど聞こえてこなかった。
天下り役人の権力
にもかかわらず、いきなり6/2の介護保険部会で厚労省が一次判定ソフト見直しを議題として取り上げ、それに連動するかのように厚労省の提灯記事を垂れ流している某サイトがアンケートを行って、賛同の声が多いと喧伝している・・・。

そこに裏はないのか・・・あるに決まっている。

一次判定ソフトの見直しというのは、莫大な予算が必要だということはご存じだろう。そして見直しを行うのは厚労省ではなく、厚労省の委託を受ける民間シンクタンクである。そしてその予算は厚労省の裁量が大きく及び、国会審議も必要とされずに、ある程度自由に使える介護保険特別会計から支出されるのではないのか・・・。

そこでは莫大な利権が発生するという意味だ。委託を受ける民間シンクタンクに、厚労省の天下りが居たりするのも良くある話だ。

ところで一次判定ソフト見直しに賛同しているケアマネの多くは、要介護度が正しく判定される今まで軽度判定だった人が、より重度に判定されると思っていないだろうか・・・。

それは大きな間違いだ。介護報酬の期中改定が現実味を帯びてきたこの時期に、介護認定一次判定ソフトを改正するという意味は、そこが財源支出に関係しているからだということも深読みする必要がある。

財源支出を抑えるために、重度判定しにくい一次判定ソフトに変えられる可能性の方が高いのだ。そのことを見越したうえでの賛同なのかどうなのか・・・。

そもそも予算措置を伴う改革ということで言えば、最優先事項ケアマネの処遇改善ではないのか。そこを差し置いてさして問題となっていない介護認定一次判定ソフトに手を入れ、大きな財政支出を行なおうするのは何故なのか・・・それを理由にして委託補助金を差し出さねばならない事情でもあるのかと、うがった見方もしたくなるというものだ。

ケアマネ諸氏には、そうした事情を含めた裏の意図をきちんと読んだうえで、厚労省の介護認定の一次判定内容の見直し方針に安易に乗らないようにしてほしいと思う。
株式会社マイナビさんが運営するポータルサイト、メディカルサポネットの連載、菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営の第7回配信記事が6/20にアップされました。
菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営〜Vol.7
今回のテーマは、「骨太の方針2025に明記された介護報酬引き上げ方針を読み解く」です。下記目次を参照してください。
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