地域包括ケアシステムとは、住み慣れた地域で暮らし続けられるように、その地域事情に応じた様々なサービスを弾力的に提供するシステムである。

そこで自宅から施設に移り住む人も居り、その人たちにどう手を差し伸べるかについては、「住み慣れた自宅から住み替える人の気持ち」という記事を書いて考え方を示した。

しかし実際には住み慣れた地域で暮らし続けることができない人も少なからず存在する。その人たちは、地域包括ケアシステムの網の目からこぼれた不運な人なのだろうか・・・そんなことはない。

加齢に伴い心身の状態が衰えて、何らかの支援が必要になっても住み慣れた地域で暮らし続けることができれば幸福だという考え方は価値観の一つに過ぎない。

先祖伝来のお墓がある場所で暮らし続けられることに価値観を見出す人もいる反面、心身の衰えで暮らしに不自由を感じたら、暮らしぶりが便利になる場所で暮らしたいと思う人もいる。
地域包括ケアシステム
自分で車を運転できなくなった時に備え、公共の交通機関が充実した都会に住み替え準備を行う人もいる。住み慣れた地域から離れた場所に住む、自分の子供の近くへの住み替えを望む人もいる。医療機関や介護事業者がすぐ近くに数多く存在する地域というのも、住み替えの選択肢の一つである。

その中には、住み慣れた地域で暮らし続けたいけれど、やむにやまれずそうもできないという人もいるだろう。

だからと言ってどうしたと云いたい。新たな暮らしの場で、そこが安住の地と思えるような暮らしができれば良いわけであり、そのための支援者として私たちが存在するのだと思えば良いだけの話だ。

地域包括ケアシステムは、地域ニーズに即した社会資源を高齢者等に結びつける重要なシステムではある。だからと言ってそのシステムの理念や、目指す目標を地域住民に押し付けても始まらない。

対人援助の専門家は国の掲げたスローガンを妄信せず、何事にも例外があることを忘れずに、目の前の一人一人の介護サービス利用者のニーズを曇りのない目で探し続けるという使命を持っている。

政治家や役人や学者とは異なる視点から、利用者の暮らしの豊かさとは何かを考えなければならない。

私たちがそれを忘れたとき、死ねまで地域という檻に入れられて、ただ生を刻むだけの時間に苦しむ人を生み出さないとも限らないのだ・・・そんな地域にしてはならない。
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