最近のAIの進歩は大したものだ。文章とか動画をあっという間に創って、動画にはセリフも入れてくれる。
その技術は何らかの形で介護事業にも取り入れて業務削減ができると思うし、そうすべきある。
だがその範囲はデスクワークの部分が主でしかないという現実もある。
議事録を生成AIが正確に作成し、担当者は最終チェックするだけで良くなり、さらに各種加算の算定要件も生成AIが読み込んでチャックすることができるといっても、そこで削られるのは事務担当者の仕事でしかない。
介護支援専門員(※以下、ケアマネと略)の行ったアセスメントを生成AIが読み取って自動的にケアプランを提案でき、それをケアマネはチェックし修正を入れるだけということになっても、肝心のアセスメントやモニタリングはケアマネ自身が行わねばならない・・・利用者宅やサービス事業者に訪問してサービス利用表や提供表等を届けてくれロボットなんて存在しないし、ケアマネに替わって担当者会議を開催してくれるロボットも存在しないわけだから、ケアマネ実務が大幅に削減できるという現状にはない。
それでも今存在するAI技術によって、少しではあってもケアマネ業務は省力化が図れれるのだから、そうしたテクノロジーを利用しない手はない。この部分にはお金をかけるべきである。

だが介護業務となるとテクノロジーが代替してくれる部分が非常に少ない。施設サービスにおいて、見守りセンサー設置や、看護・介護職のインカム利用は当たり前になりつつあるが、それによって削減できているのは定期巡回時間と連絡機器の設置場所への移動時間でしかない。逆にセンサー反応に走り回る時間が増えるというケースも見受けられる。
それよりも交換回数が少なくて済む高性能紙おむつといったアナログ介護用品の方が、介護業務の削減に直結している。だがそれは介護DXとは呼べない部分の業務改善だ。
もっと劇的に介護業務が省力化できる介護DXは実現できないだろうか・・・。
自動体交機能のあるエアマットや介護支援ベッドは、褥瘡予防にある程度の効果があることは示唆されるものの、研究者、専門医の間でも意見が分かれており、絶対的な有効性が確立されているとは言いきれない。この部分の技術革新ができないだろうか。
例えば人の手をかけずともベッド上の利用者の生体反応等を感知して、最も適切な体位を取れるようにできるマットやスマートベッドができたならば介護業務は大幅に削減できるだろう。生成AIの技術進歩を鑑みると、それは可能な範囲ではないのか。
デスクワークという部分でも、事務職員のそれではなく、介護職員に特化した記録削減を目指せないだろうか。
介護職が記録業務から解放されない最たる理由は、それが適切な介護を行っているという唯一の証拠となるものだからだ。実際の身体介護を行った記録、そこで観察した利用者の身体・精神状況等は事務職員が替わって記録できない問題である。
そうであるがゆえに、例えばAIにケアプラン内容を読みませたうえで、同時に介護業務を何らかの方法で読み取って、ケアプランに沿ったケアが行われているか否かを記録できないか・・・さらに加算算定要件を読み取ったAIが、その要件に沿ったケアができているかどうかも読み取って記録できるようにならないものかと思う。
このような研究開発を進めて、介護職員が記録をしなくてよい介護サービスを実現できれば、それは大いなる介護DXと云えるのではないだろうか。
それができていない現在の状況では、一番の介護生産性向上は、介護知識と技術に長けた介護職員を育て定着させることに尽きるように思われる。
だが生産年齢人口が減り続け、介護人材の不足解消に見込みのない現実において、そのような取り組みの限界点も下がっており、一日も早い介護DXにつながる技術革新が求められる。
※株式会社マイナビさんが運営するポータルサイト、「メディカルサポネット」の連載、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」の第6回配信記事が6/9にアップされました。

今回のテーマは、「2027年度介護保険制度改正の展望と課題」です。下記目次を参照してください。

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