先週末、経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)の原案が示された。

いうまでもなく骨太の方針とは、内閣府に設置された経済財政諮問会議にて決議する政策の基本骨格のことである。

ここで示された考え方が令和8年度の予算編成に影響してくることになる。
骨太の方針2025
その内容を見ると、「医療・介護・保育・福祉等の人材確保に向けて、保険料負担の抑制努力を継続しつつ、公定価格の引上げを始めとする処遇改善を進める。(6頁)」と記されている。

処遇改善加算については2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップができる財源措置をすでにとっているが、2026年度(令和8年度)については、賃上げの進捗や他産業の動向などを踏まえて直前の予算編成過程で判断し、2026年度の期中改定も視野に対応を検討するとされていた。(2023/12/20当時の鈴木俊一財務相と武見敬三厚生労働相が折衝で合意済み)

今回の骨太の方針によって、2026年度(令和8年度)の処遇改善加算の加算率の引き上げが現実的になったと言えるだろう。だが単に加算率がアップしさえすればめでたいということにはならない。

問題は医療・介護・保育・福祉等以外の各産業で、2024年度以降5%前後の給与ベースアップがされていることだ。その為、全産業平均給与月額と介護職等の平均給与月額の格差が広がっている。それをどれだけ縮小できる予算措置がとられるのかが問われる。介護関係者はそこに注目していかねばならない。

また介護報酬についても、「足元の物価上昇に的確に対応できるような仕組みづくり〜公定価格(医療・介護・保育・福祉等)の引上げ (47頁)」というふうに明記されている。6日には石破首相も介護報酬の引き上げを明言した。

ということは物価高等の経営コスト上昇に応じた介護報酬の改定が、2027年度の定期改定を待たずに、2026年度に期中改定されるということではないだろうか。ここは大いに注目したい。

賃金引き上げによる人材確保という面だけが強調されると処遇改善加算の引き上げが=報酬引き上げとされて終わる可能性がある。しかし物価高・経営コスト上昇に対応した報酬引き上げが明記されたことで、それで終わらない期待が出てきた。だがそれがきちんと物価上昇に応じたレベルのプラス改定でないと廃業しなければならない事業者が出てくる。

そうならないようにきちんと声を挙げ続けていかねばならない。そういう意味では介護関係者はプラス改定という掛け声に安心してはいられない。

なお当然のことながら財源確保の痛みも覚悟せねばならない。介護保険サービスを受ける際の利用者負担2割対象者が、現在の20%から30%に拡大される可能性が高い。

また「ケアマネ処遇改善必要論に3つの温度差」で指摘したように、介護支援専門員の処遇改善と居宅介護支援費の自己負担導入は紐づけされたままである。

要介護1と2の訪問介護と通所介護の市町村事業への移行については、2027年4月から生活援助の先行実施の可能性が高まっている。

また今回の骨太の方針では、「有料老人ホームの運営やサービスの透明性と質を確保する。(38頁)」と指摘されている。有料老人ホーム経営主体が、入所者に対して自社の居宅サービスを限度額近くまで提供して囲い込む状態などに鋭くメスが入る可能性が高い。

この他、介護DXや外国人材活用の推進、保険外サービスの推奨などにも触れられているので、一度その内容を通読してほしいと思う。
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