第3者の目や耳が届かない場所で、利用者に1対1で相対する介護支援者には、善なる性質が求められる。
人間の性が善なのか悪なのか、はたまた無なのかは知らないが、対人援助という職業を選び、そこで利用者に向かい合う際には、プロとしての使命感を持つと同時に、ひたすら善意で関りを持つ必要がある。そこは忘れてはならないところだ。
だが介護事業はと考えると、それは善意だけでは経営が成り立たない。経営者には相応の能力と期を見る感覚が求められる。
会社経営を続けるためにも、従業員や家族の暮らしを護るためにも収益を出す必要がある。
しかも護るべき従業員や家族の暮らしは、食べてさえいければよいという程度であってはならない。
介護事業とは、社会のセーフティネットという重要な役割を担うものだ。そういう仕事に就きたいと思う人材が枯渇することがないようにするためにも、介護という仕事を何とか食えるだけという底辺職業にしてはならないのである。
少なくともその職業に就けば、全産業平均並みの年収・待遇が得られるようにすべきであり、昨今の物価高や人件費高騰に応じた介護報酬の期中改定を求めることは、決して過度でも不当でもない正当で当然の要求だ。

来月示される政府の「骨太の方針」には「公定価格の引き上げを含む」と明記されそうだ。当然それは介護報酬の引き上げも視野に入った表現だろう。
これに関連して厚労相は、「次期報酬改定などにおいて、経営の安定や現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる対応が必要。あわせて、それまでの間も必要な対応を行っていく」と次期改定前の期中改定もにおわせる発言をしている。財務省はそのことを強く否定するが、ぜひ実現してほしいとことである。
だがそうした要求を度を越したものであると烙印付けするような出来事も起きている。
それは介護事業における利用者虐待・不適切対応であり、それが様々なマスメディアを通じて報道されることだ。
介護サービス利用者に対する暴力や暴言、窃盗事件などが利用者と1対1で向か合う場面で起きている。認知症などで自らの危機を訴えられない利用者に対し、他者の眼のない密室化した場面で卑劣な行為が起きている。
例えば訪問介護において、日中独居になる高齢者宅は密室化されているといってよい。そこでヘルパーが悪意を持って、利用者の所持金や貴重品を盗むという事件が起きている。認知能力の低下した要介護高齢者は、そうした被害を受けたことすら理解できずに、誰も犯罪行為が行われたことに気が付かない。
しかし自分の親に少なくない金銭を渡しているはずなのに、いつも残金がない状態に疑問を持った家族が、隠し撮りを行って犯罪行為が明らかになるというケースが何件も報道されている。
そのようなことが繰り返し報道されれば、そうした虐待や犯罪行為が氷山の一角で、介護事業であれば多かれ少なかれ似たような行為が行われていると考える国民は増えるし、そんな事業にこれ以上公費をかけてはならず、底辺職業に陥ってやむを得ないという声が出てしまう・・・それは介護報酬の引き上げに対する一番の足かせと言ってよい。期中改定などもってのほかと言われてしまうだろう。
ほとんどの介護事業者において不適切対応が行われているという事実はなくとも、そのように思ってしまう人が増えているという事実を、介護事業関係者は認識して対策を立てなければならない。
だからこそ人材マネジメントは、優秀な人材を育て定着させるだけではなく、対人援助に向かない人材を排除することも念頭に置きながら考えていかねばならない。
介護サービス利用者が顧客であると意識させ、単にサービス提供して良しと終わらせず、お客様に対しておもてなしの精神=ホスピタリティ精神をもって対応するための基盤となるサービスマナー教育は不可欠である。
27日に財政制度等審議会がまとめた提言(建議)を受け取った財務大臣政務官は、「今後の生産年齢人口の減少を踏まえれば、介護分野にばかり人材が集中するのは適切でない。」と語ったそうである。
介護職員の平均年収が、全産業平均年収より低いままでよいとするようなそのような発言は許されないが、そうした発言がおかしいという問題提起に、全国民が賛同してくれるような介護事業にしていかねばならない。
介護事業の経営能力として、いかに従業員がサービス利用者に顧客意識を持ってホスピタリティ精神を養えるかということが問われていることを理解する必要がある。
いかに収益が上がっていても、ひとたび人権侵害事件を起こした場合は、すべてを失うという危機意識を持って経営に当たってほしい。
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感動の完結編。
