全社協、「中央福祉人材センター」の調査結果によると、今年2月の介護支援専門員(ケアマネジャー:以下ケアマネと略)の有効求人倍率は9.70倍となって、介護職員の6.13倍を大きく上回っている。

介護人材不足と言えば介護職員の不足という事態がまず頭に浮かぶが、それ以上にケアマネが不足しているという事態が出現しているのだ。

ケアマネ不足という状況は、上記の調査データを見るまでもなく様々な地域で関係者が実感していることだろう。特に居宅介護支援事業所のケアマネ(以下、居宅ケアマネと略)の不足は深刻で、それによって重大な問題を引き起こしている。

小さな町や村で居宅ケアマネの数が減り、多くの居宅ケアマネが担当者を限度ぎりぎりまで抱えて、新規利用者を受け入れることができなくなっている。そうした町村では、近隣市の居宅ケアマネに担当を打診するが、そこでも多くのケアマネが新規利用者を受け入れることができないほど担当人数を抱えていたり、移動距離がネックになって受け入れを拒否するケースが目立っている。

その為、居宅介護支援を受けられないというケースも出現している。

だからと言ってそのことで介護保険サービスを利用できなくなるわけではなく、セルフプランという手もあるし、居宅サービス計画(ケアプラン)が作成されないことを前提にした償還払いサービスという手はある。(参照:居宅サービス計画なし=保険給付されない、ではない。
深刻なケアマネ不足
しかし居宅ケアマネは、単にケアプランを作成するケアプランナーではない。

居宅ケアマネは相談援助職として利用者に寄り添い、ケアマネジメントという手法を使って利用者の生活課題を見出し・解決する専門家である。

そうした対人援助の専門家の支援を受けることができない地域住民が増えているということ自体が問題なのである。この状態は国民の福祉を低下させる問題であると言って過言ではない。

このような深刻なケアマネ不足を招いた原因ははっきりしている。それはケアマネを処遇改善の対象外に置いた国の誤った施策によるものだ。特に居宅ケアマネは、処遇改善加算の蚊帳の外に置かれてきており、処遇改善加算の配分を一部受けることができた施設ケアマネより処遇面で不利益を被ってきた。

そのことによってケアマネより介護職員の方が給与が高く設定されている介護事業者が増えた。さらに継続的に処遇改善される見込みがある介護職の方が先の見通しも明るいと考える人も増えた。

こうした状況に嫌気をさして、居宅ケアマネを辞めてしまった人も少なくない。

だがそれらの人が介護職員に転身したとも限らない。元職が介護職員であった人なら、ケアマネから介護職に復帰するという人もいるだろう。しかし元職が相談援助職であった人は、ケアマネに見切りをつけた時点で、介護業界そのものに見切りをつけて、まったく別の異業種に転職してしまった人もいる。

現に国税庁の調査によれば、今年度の賃上げ率の平均は正社員の介護職2.15%全産業の平均(春闘)は5.37%で、その格差は3.22ポイントと大きい。(前年度の2.07ポイントからさらに拡大)

このため介護業界から離れて、他産業への離職者が増加しているという。

ケアマネの仕事は、ケアマネジメントを通じて利用者の暮らしを支える仕事だ。利用者から信頼され、様々な相談を受けて一つ一つの課題を解決していく過程で、利用者の笑顔や感謝の言葉に出会う仕事でもある。

自分が利用者に寄り添うことによって、その方が地域で仕事で暮らし続けることができることを実感できる仕事でもある。

そのような社会的使命と役割を実感できる仕事から離れ、他産業に転身しなければならない理由が、給与をはじめとした処遇が低いままで将来の見通しが立たないというものである。それは余りにも残念な理由だ。

ケアマネがその社会的役割に見合った処遇となるように、期中改定も厭わず早急な処遇改善策を打ち出す必要があるのではないだろうか。

いやその必要性は絶対にある。国は誤った施策の間違いを正して、国家の責任を果たすべきだと思うのである・・・。
メディカルサポネットの連載・菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営〜Vol.5の最新記事が5/14にアップされました。菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営

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